初心者向けのDAW、Music Maker 2021が13,500円でリリース。これでもかという機能テンコ盛りは既存DAWユーザーにも有益かも!

ドイツMAGIXからDTMエントリーユーザー向けのDAW、Music Makerの最新版、Music Maker 2021 Premium Editionがリリースされ、国内ではソースネクストが発売を開始しました。まだ9月に入ったばかりなのに2021とは、ちょっと気が早い気もしますが、毎年恒例のバージョンアップにより、さらに機能強化すると同時に、今回は大きく性能も強化。

初心者ユーザーを強く意識して設計・開発されているWindowsに特化したDAWだけに、ある意味ほかのDAWとは異なる独自路線を突き進んでいるのもMusic Makerの特長。特に自動作曲・自動アレンジ系は非常に進んでおり、音楽制作経験も楽器演奏経験がまったくない人でも簡単に楽曲が作れてしまうのが面白いところ。それだけに、ほかのDAWユーザーやプロの作曲家であっても、アイディア作りツールとしてMusic Makerを利用するというのもアリではないかと思います。実際にそのMusic Maker 2021 Premium Editionを使ってみたので紹介してみましょう。

Music Maker 2001 Premium Editionがリリースされた

Music Makerって何?MAGIXって何の会社だ?と思われる方もいると思うので、先に簡単に紹介しておくと、開発元のMAGIX(正式名称:MAGIX Software GmbH)はドイツ・ベルリンにある今年で25周年を迎えた音楽制作ソフトウェアメーカー。最上位版はSEQUOIA(セコイア)というマスタリングソフトを開発しており、世界中のプロのマスタリングエンジニアが利用し、放送局やポスプロの世界で活用されていることで有名です。国内ではRME製品と一緒にシンタックスジャパンが取り扱っています。

25周年を迎えた開発元のMAGIX

また音楽制作用としてはSamplitudeがあります。もともとSampletudeの上位版としてSEQUOIAが誕生したという経緯がありますが、私の知る限りDAWとして最も長い歴史を持っているソフト。そう、まだCubaseやDigitalPerformer、LogicなどがMIDIシーケンサの時代に、DAWとして誕生し、進化してきたソフトです。国内ではメジャーとはいいがたい普及具合ではありますが、昔からのマニアックなユーザーが多いDAWでもあります。

今年4月にリリースされたACID Pro 10 Suite

さらに2016年にMAGIXが米Sony Creative SoftwareからACID、SOUND FORGE、Vegas、Spectralayersを買収したことで、そのラインナップは大きく広がりました。詳細はDTMステーションでも頻繁に取り上げているので、そちらをご覧いただければと思います。

そうした中、エントリーユーザー向けという位置づけでMAGIXが開発しているDAWがMusic Maker。初期バージョンが誕生したのは1994年なので、非常に長い歴史を持っていることが分かると思います。SEQUOIAやSampletudeのエンジンをベースに作られており、製品名こそMusic Maker 2021となっていますが、実際のバージョン名は29。まさに歴史ある由緒正しいDAWなんです。

今回リリースされたMusic Maker 2021、バージョン的には29になる

ちなみに以前、国内での取り扱いはAHSが行っており、VOCALOIDとの連携など日本からの要望での機能搭載に尽力されていましたが、その後、国内流通はソースネクストになり、ダウンロードのみの販売に切り替わっています。

と、前置きが長くなってしまいましたが、そのMusic Maker 2021を使ってちょっと、リアルタイムに曲を作っている風なデモを行ってみたので、以下のビデオをご覧ください。

お分かりいただけたでしょうか?これはMusic Makerが持つライブパッドという機能を用いて行ったもので、それをiPadから操作しています。もちろんiPadなしにPC画面をマウス操作で行うこともできますが、あらかじめ数多く用意されているプリセットのサンプルデータを読み込んだ上で、適当にパッドを押すと音を重ねていくことができ、それで楽曲になってしまうんです。

リアルタイムに楽曲を作っていくことができるライブパッド

パッドを押した次の小節のタイミングで切り替わるから適当に操作していても、キレイに合うのです。もちろん、単なるライブパフォーマンスとして使ってもいいし、RECボタンを押せば、その操作が記録され、楽曲として作り上げていくことができるからとっても簡単なのが分かると思います。

iOSおよびAndroidで動くリモートコントロールアプリ、MAGIX Audio Remote

このiPadで使ったアプリはMAGIXが無料配布しているAudio Remoteというものを用いており、PCと同じWi-Fi環境にあれば、簡単に連携させることが可能でライブパッドの操作だけでなく、再生・録音・停止などのトランスポート操作、フィルター操作、リバーブ操作などもできるようになっています。このAudio RemoteはiPadに限らずiPhoneで使えるのはもちろん、Androidスマホ、Andoroidタブレット用にもあるので、便利に使うことができます。

Audio Remoteはライブパッドに限らずさまざまなリモート操作が可能

さらに先日「DAW操作を超絶快適にするNovationのコントローラー搭載MIDIキーボード、Launchkey MK3の実力」という記事で紹介したNovationのLaunchkey MK3とも連携できるように設計されているので、これを使ってリモート操作してみるのもよさそうです。

NovationのLaunchkey MkIIIシリーズとの連携性も抜群

一方で、Music Makerと言えば……という代名詞的な機能になりつつあるのが自動作曲ツールのソングメーカー機能も健在です。好きなジャンルを選んで、それにマッチした素材集=サウンドプールを選び、必要に応じて使うパートを設定したり、フル楽曲作るのか、イントロだけでいいのか、サビも作るのかなどの設定をして「曲を作成」ボタンを押したら、自動作曲機能によってもう楽曲完成。気に入らなければ再度ボタンを押せば次の楽曲に……ということができるので、まさにアイディアづくりようには最高のツールだと思います。

誰でも数クリックするだけで曲が作れる自動作曲機能、Song Maker機能も健在

ちなみに、以前のMusic Makerのソングメーカー機能をご存知の方だと、「あれ?画面の雰囲気が違う」と思われるかもしれません。今回のMusic Maker 2021では大きくユーザーインターフェイスを変更し、より今っぽいデザインになるとともに、グッと使いやすくなっています。

Music Maker 2021 Premium Edtionは、これでもか…というほど機能満載

なお、性能面において、今回のバージョンで大きく機能UPしています。最大のポイントは64bitアプリにようやく対応したこと。これまでは32bitアプリとなっていたので、不満に感じていた方も少なくないと思いますが、それがついに64bit対応したのと同時に、マルチコアオーディオエンジンとなったので、CPUを最適に利用できるようになり、従来バージョンにより圧倒的に軽く動作するようになりました。

32bitアプリか64bitアプリかの違いで大きく問題になるのが、VSTプラグイン。一般的に32bitアプリは32bitのVSTプラグインだけが動作し、64bitアプリは64bit対応のVSTプラグインだけが動作します。最近は多くのプラグインが64bit化していますが、中には以前の32bitプラグインを使いたいという人も少なくありません。それに対し、Music Maker 2021は32bit Bridgeという機能を搭載したことにより、64bitプラグインはもちろん32bitプラグインも動くようになっているので、VST2/VST3のいずれも問題なく使用することが可能になっています。

サードパーティー製やフリーウェア、シェアウェアなど、さまざまなVSTプラグインが利用できる一方、MAGIX製のソフトウェア音源、エフェクトも非常に充実しています。

グランドピアノのサウンドを演奏できるピアノ音源、CONCERT GRAND LE

具体的にはピアノ音源のCONCERT GRAND LE、ステップシーケンサ搭載のシンセサイザRevolta2、そしてドラム音源としても強力なプレイバックサンプラーのVITA2の3つが装備されているので、これらを使って打ち込みが可能です。さらに、数多くあるMAGIX音源のうち3つまでを選んで入手することができるようになっています。もちろん、その後、購入する形で音源を追加していくことも可能です。

MAGIXが用意している数多くの音源のうち3つまでを無料で入手可能。画面はアナログシンセ

またエフェクトとしてもコーラス、フランジャー、ディレイ、ディストーション、リバーブ、EQ、コンプレッサ……一通り何でも揃っています。

また、マスタリング専用のエフェクトが用意されているほか、90年代風にとか、50年代風に……など雰囲気を選ぶだけで、それっぽいサウンドに仕立ててくれるとっても簡単なマスタリング機能もあるので、初心者でなくても、まずそれを試してみて、その後調整していくという作り方もいいと思います。

雰囲気を選ぶだけで自動マスタリングをしてくれるAuto Mastering機能

さらに、もっと本格的なマスタリングを……という場合は、なんとiZotopeのOzone 9 Elementsもバンドルされているので、これを使うのもあり。かなり上から下まで何でもありのシステムになっているのです。

波形編集ソフトのSound Forge Audiuo Studiuo 12.6も付属

ほかにもギターアンプシミュレーターが搭載されていたり、波形編集ソフトのSound Forge Audio Studio 12が付属していたり、CelemonyのMelodyneのようにボーカルなどを分析し、ピッチ修正やタイミング調整が可能なVocal Tune 2という機能が搭載されているなど、とにかく機能テンコ盛り。このMusic Maker 2021の機能を全部紹介していくと、キリがないので、この辺でやめておきますが、これが13,500円で入手できるというのは、かなりすごいことだと思います。

ボーカルのピッチやタイミングを自由に調整できるVocal Tune 2

ただし、Music Maker 2021はWindows専用でMacには対応していないので(以前「仮想環境ソフトParallelsでWindows専用のDTMソフトをMac上で普通に使うワザ」という記事で紹介したParallelsを使うことで動作しますが)、その点は注意してください。

※2020.09.24追記
2020.09.15に放送した「DTMステーションPlus!」から、第159回「Serato StudioがDTMをお洒落にトラックメイキング♪」のプレトーク部分です。「初心者向けのDAW、Music Maker 2021が13,500円でリリース。これでもかという機能テンコ盛りは既存DAWユーザーにも有益かも!」から再生されます。ぜひご覧ください!

【関連情報】
Music Maker 2021 Premium Edition製品情報

【価格チェック&ダウンロード】
◎ソースネクスト ⇒ Music Maker 2021 Premium Edition

Commentsこの記事についたコメント

10件のコメント
  • 西園寺成弼

    藤本様、ひとつ質問なのですが、動画を拝見した限りでは、ダンス系というかEDMというか、現代的なサンプルがメインとなっているものに感じましたが、いかがでしょうか? また、MIDIシーケンサーについては、他のたとえばCubase並みの打ち込みも出来る、という事で宜しいのでしょうか?
    買ってみたら、KORGのGadgedみたいで、私のような老人DTMerだとちょっと面食らっちゃう、という事はないかと心配です(微笑)宜しかったらご解説いただけると幸いです。あ、DTMステーションPlusにて実演していただけたら、一番理解しやすいかも・・です♪

    2020年9月10日 7:56 PM
    • 藤本 健

      西園寺さん

      こんにちは。すみません、レスが遅くなりました。
      DAWとしては、「EDMに特化した……」というものではまったくなく、いたって普通のものです。
      その意味ではGadget的なものではなく、Cubase的なものといってもいいと思います。
      ただ、すでにCubaseを使っている人が引っ越すようなDAWではなく、やはり初心者用のDAWであると考えた方がいいと思います。
      面白いのは記事にも書いた通り、自動作曲や自動アレンジ機能があるので、それで作ったデータをほかのDAWに取り込んでたたき台にして使う
      といった感じになると思います。

      DTMステーションPlus!、どこかのタイミングで紹介してもいいかもしれませんね。

      2020年9月11日 6:52 PM
  • 澤田 泰弘

    藤本様 いつもDTMステーション見ています。Music Maker 2021もついに64bit対応ということで、HALion等のVST3も使えて性能アップを果たしました。しかしどうしても分からなおことが一つあります。それは2018まではMxSynthもSoundpoolsと同様Dドライブに指定できていたのですが、今では自動的にCドライブに保存されます。(以前は保存先を指定できていた)容量が大きくDドライブに保存する方法はないのでしょうか。(ソースネクストに問い合わせても、できたないというつれない返事)ご教示頂ければ幸いです。

    2020年9月11日 5:57 AM
    • 藤本 健

      澤田さん

      こんにちは。いま確認してみました。
      ちゃんとできますよ!
      ファイルメニューのプログラム設定を選ぶとフォルダタブがあります。ここの中に「サウンドプール」というのがあるので、Dドライブの好きなフォルダを指定すればOKです。
      ただ、試してみたところ、ここを設定しただけでは自動的には切り替わらないので、一旦、すでにインストールされているサウンドプールを右クリップして削除した上で、再度ストアのところから同じサウンドプールを選んでダウンロードしなおしてください。これで新しく指定したDドライブのフォルダに収録されます。

      2020年9月11日 5:25 PM
  • 西園寺成弼

    藤本様、ご丁寧にありがとうございました。そうなんですね、納得いたしました。ところで先日紹介されておられたDOTEC-AUDIOのiOSアプリ、今日やっと試す時間が出来、その効果のすばらしさに思わずYouTubeの動画でレビューさせていただきました(微笑) そんなことしてたので、私の方でもこちらの確認遅くなり、お礼がおそくなり恐縮です。いつもありがとうございます。

    2020年9月11日 10:12 PM
  • 澤田泰弘

    早速の返信有難うございました。私の説明不足だったと思いますが、サウンドプールについては、すでにDドライブに保存し動作しております。お聞きしたかったのは、MxSynth(インストゥルメント)のDドライブへの保存です。何度か試したのですが認識してくれません。ご教示頂ければ幸いです。

    2020年9月19日 9:15 AM
    • 藤本 健

      澤田さん

      なるほど、失礼しました。インストゥルメントはそれほど大きい容量ではないため、やはりCドライブ固定のようですね。VSTプラグインであれば、Dドライブに持っていくことは可能だと思いますが、標準音源はやはりできないようです。

      2020年9月19日 3:19 PM
  • 澤田泰弘

    早速のご返信有難うございました。お忙しい中調べて頂いて感謝申し上げます。やはりMusic Maker固有のインストゥルメントは、Cドライブ固定ということがわかり納得しました。今後ともご指導の程宜しくお願い申し上げます。

    2020年9月19日 5:04 PM
  • 藤木

    藤本様、いつも大変勉強させていただいております、
    自分で調べてみたのですがどうしてもわからないため教えてください、Music Maker 2021 Premium Editionで作った曲をmidiで出力されることは可能でしょうか?
    例えばMusic Maker 2021 Premium Editionで作った曲を他のDAWソフトの音源で音を変えて使用するということがしたいのですが・・・

    2020年9月24日 8:58 PM
    • 藤本 健

      藤木さん

      こんにちは。Music Makerに限らずほとんどのDAWではMIDIトラックとオーディオトラックの両方を扱うことができます。
      そして、MIDIトラックに関しては、Music Makerの場合、各トラックごとにMIDIファイルとして書き出して、ほかのDAWへ持っていくことは可能です。
      ただし、Music Makerの自動作曲はほとんどオーディオトラックでの作業となるので、MIDIファイルではありません。
      もちろんオーディオファイルのまま別のDAWへ持っていくことは可能です。

      2020年9月26日 3:14 PM

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