Rupert Neve Designsのアナログ機材のVST化を実現

アメリカのRupert Neve Designsというメーカーをご存知ですか?ここは1950年代からプロ用の著名なオーディオ機材を生み出してきたRupert Neve(ルパード・ニーブ)さんというエンジニアが今までの歴史的な機種を総括する意味で立ち上げた会社です。カスタムチップなどを使わず、トランジスタ、コンデンサ、抵抗などだけで作る完全なディスクリート回路による名機をいろいろとリリースしており、知る人ぞ知るという機材になっています。

国内ではフックアップが輸入販売代理店として展開しており、Portico(ポルティコ)シリーズという製品群が人気となっています。さすがディスクリート回路製品だけに、ちょっと素人には手が出せない価格になっていますが、そのRupert Neve Designsの製品が先日SteinbergからVSTプラグインとして発売されたのです。
Rupert Neve Designsの262,500円のEQ、Portico 5033

そのVSTプラグイン化されたというのは、Porticoシリーズの代表ともいえる5033と5043。Portico 5033はシングルチャンネルの5バンドEQで、実売価格が262,500円。Portico 5043は2chのコンプレッサ/リミッタで、同じく283,500円と結構なお値段。いずれも縦型と横型が販売されており、完全な業務用として利用されているのです。仮に8chのそれぞれに5033を入れて、最終段に5043を入れるのだとしても250万円コース。もし16chのコンソールに、それぞれをチャンネルストリップとして組み込んだとしたら……、もう私には計算できない、天文学的?値段です。

同じく2chのコンプレッサ/リミッタ、Portico 5043は283,500円

その5033と5043をプラグイン化したといっても、「そりゃ、まぁ別モノでしょ」というのが、一般的な印象。ところが、実はかなりの再現性を持っているらしいのです。話をすると長くなってしまいますが、それを実現しているのはヤマハの「VCM(Virtual Circuitry Modeling)テクノロジー」というもので、ハードウェアのアナログ回路を素子レベルから正確にモデリングし、実機の持つ繊細かつ温かい音色を再現するという技術です。VCMテクノロジー自体は特にRupert Neve Designsのハードを再現するために生まれたというわけではなく、ヤマハのDM1000などの機材用としてすでに実用化されていたもの。

そのVCMテクノロジーを用いて2007年ごろからPortico 5033や5043の開発を行い、ついにRupert Neve氏も納得し、太鼓判を押すプラグインができたのだとか……。見た目もそっくりなUIに仕上がっており、それをWindowsそしてMac上で再現できるというわけです。

ヤマハのVCMテクノロジーはアナログ回路を素子レベルから正確にモデリングする技術 

気になる価格ですが、オープン価格となっていますが、5033、5034ともに実売価格が49,800円前後。またセットとなったものが79,800円で6月1日から発売されています。やはりプロテクトはかかっており、USBドングルが必要になりますが、これがいいのは、複数チャンネルで同時に立ち上がられること。確かに、プラグイン単体として見ても決して安い価格ではないですが、16ch同時に立ち上げても価格は変わらないというところが大きな魅力といえそうです。また32bit環境だけでなく、64bit環境にもネイティブ対応しているのもポイントです。

32bit版、64bit版をインストール時に選択することもできる

で、その5033と5043を借りることができたので、Cubase6上でちょっと試してみました。といっても私自身、実物の5033や5043を触ったことがないので、その再現性については正直分かりません。ただ、使ってみると不思議と扱いやすいんです。たとえば5033の場合、適当にローを絞ってみると音が軽くなるというより、低域が引き締まるという感じだし、ハイを持ち上げてもシャカシャカするというより、いい感じに効いてくれるんですよ。5バンドを使い切る自信はないですが、これは音の作りこみ甲斐のあるEQですね。もちろん、ハードウェア製品の場合と違い、EQの設定状況がグラフィカルに確認できるのも大きなポイントです。

とてもいい感じに効いてくれるプラグイン版の5033
一方の5043はスレッショルド、レシオ、アタック、リリース、ゲインと5つのパラメータのコンプですから、いたってシンプルなもの。こちらも扱いやすく、温かみのあるアナログっぽい音に仕上がります。Feed BackモードとFeed Forwardモードを切り替えることで、コンプレッサとしての特性を大きく変えることができるほか、バイパス時にも動作するPortico特有のインプット/アウトプットトランスフォーマーも再現されています。
プラグイン版5043は1chだが、クリアでパンチと温かみのあるコンプ

なお、Steinberg製品であるためVST3およびVST2.4(Windowsのみ)に対応しているのはもちろんのこと、AudioUnitsにも対応しているため、さまざまなDAWで利用することができます。

【関連サイト】
Steinberg RND PORTICO プラグイン
Rupert Neve Designs
フックアップ Rupert Neve Designs

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