ドイツのボカロPに、海外でのボカロについて聞いてみた

日本の音楽シーン、そしてDTMの世界を語る上で重要なファクターとなっているVOCALOID。まだ日本独特のものであることは否めませんが、少しずつではあるけれど、海外へも広がっているようです。先日、Musikmesseの取材でドイツ・フランクフルトに行った際、ドイツでVOCALOID曲を作っているというドイツ人大学生、Kentai-Pに会って話を聞くことができました。

国内でもまだユーザーが多くはなかった2009年9月ごろからVOCALOID曲を作ってはYouTubeなどにUPしているツワモノのKentai-P。カタコトながらしっかりとした日本語でインタビューに応じてくれたので、ドイツから見たVOCALOIDとはどんなものなのか、なぜVOCALOIDを使うようになったのかなど、いろいろ話を聞いてみました。
フランクフルトのMusikmesse会場で話を聞かせてくれたKentai-P



--もともとVOCALOIDのことを知ったのは、いつごろでどんなキッカケだったんですか?

Kentai-P:最初に知ったのはVOCALOID1のころで、友人から教えてもらったのですが、当時は特段興味を持ちませんでした。ただ日本文化については、子供のころから好きだったので、VOCALOIDやアニメの話などネットや友人を通じていろいろと情報が入ってくるんですよ。

日本語、英語を駆使したKentai-Pの作品、Mainframe Revolution
--子供のころから?
Kentai-P:ドイツではセーラームーンやポケモンなど、日本のアニメが普通にいっぱいテレビで放送されています。まあ、ドイツ語に吹き替えられていることもあり、当時はそれが日本のアニメであることすらまったく知りませんでしたが小さいころから馴染んでいたのは確かです。ただ11歳のころ、インターネットを通じて日本語アニメを見たんです。「D・N・ANGEL」というものですが、それがすごく面白くて、それをキッカケに日本というものに興味を持つようになったんです。

--「D・N・ANGEL」??スミマセン、まったく知らないです(汗)

Kentai-P:え?知らないんですか?杉崎ゆきる先生の作品ですよ。すっごく面白いのに……。それから日本のアニメをいろいろと見るようになり、アニメのために日本語を勉強するようにもなりました。また、ネットを通じて日本人の友達ができるようになったりして、ますます日本に興味を持つようになったのです。ただ、まだ日本には行ったことがないので、いつか日本に行くというのが僕にとって大きい夢なんですよ!

アニメで学んだ 日本語でインタビューに答えてくれる

--日本に来たことがなくて、独学で日本語の勉強をして、これだけ話ができるんですか!?
Kentai-P:はい、まだすごく下手ですが……。日本語の歌詞を作るのも大変です。

--音楽はいつごろからやっていたのですか?
Kentai-P:ピアノは子供のころから習っていました。ギターは5、6年前に始め、クラリネットを3~4年やったこともありますね。あとはバイオリンを1年程度かじったといった程度でしょうか……。いろいろ楽器をやっていたこともあって、小さいころから曲を作るのは好きでした。もっとも以前はピアノと歌、ギターと歌といったシンプルなものでした。

--現在はDAWを使って楽曲を制作していると思いますが、DAWとの出会いとVOCALOIDとの出会いはどちらが先でしたか?

Kentai-P:DAWが先ですね。兄がレゲエをやっていて、その兄からFL STUDIOを教えてもらったのが最初でした。当時はまだサンプリングソフトなんてものの存在を知らなかったし、FL STUDIOはモジュラー式ソフトで自分にとって非常に難解なものでしたが、少しずつ使い方を覚えていきました。VOCALOIDの初音ミク巡音ルカに出会ったのはその後のことです。

--VOCALOIDに出会ってどうでしたか?
Kentai-P: 本当に衝撃的で、すごいと思いました。これでプロフェッショナルな音楽が作れるぞ、って。ただ自分にとって日本語の歌詞を作るというのは、非常に難しいので、英語を歌わせることができるルカは最高だと思いましたね。いつかはドイツ語が歌えるVOCALOIDも登場してほしいところですが、VOCALOIDは素晴らしいです。

--これまでにも、数多くのVOCALOID曲を作っているようですが、主にKentai-Pの作品を聞いているのは、どんな人たちなんですか?

Kentai-P:ハッキリは分かりませんが、Google Analyticsの分析結果を見る限り、アメリカの若い女の子が多いみたいです。その次が日本で、3番目がヨーロッパという感じ……。

YAMAHAブース前で。残念ながらYAMAHAでのVOCALOIDに関する展示はまったくなかったが…

--初音ミク、巡音ルカ以外はどんなVOCALOIDを使っているのですか?
Kentai-P:持っているのはSonikaAvannaです。やはり日本語の歌詞は難しいので、英語を使うことが多いので……。ただほかにもMikiや、がくっぽいどなど、いろいろなVOCALOIDの声を使うことはあります。持っていないものを使いたいときは友人にお願いして、レンダリングしてもらい、その出力WAVをFL STUDIOで読み込んで使っています。

--ドイツの友達とVOCALOIDについてやりとりすることはないのですか?

Kentai-P:ドイツにはとても大きなアニメのコミュニティーがあるので、そこでVOCALOIDが話題になることはしばしばです。実際、VOCALOID関連のマーケットが開かれてグッズは販売されたり、VOCALOIDのコスプレをする人たちもいっぱいいますから。たとえば「みらいのねいろ」などが大きいイベントを主催していますよ。ただし、VOCALOIDを使っている人はというと、まだごく限られた人という印象です。あとはドイツ国内に留まらないのですが、VOCALOIDOTAKU.NETなどを通じて、世界中の人たちとやりとりをしています。そうした中で、アメリカ、台湾、フィリピン、中国などの人たちといっしょに楽曲を一緒に作るなんてことをしたりもしています。また、欧米におけるメディアハブにしようと、「Vocanode」(http://vocano.de/)という新しいサイトを作ってみたり……。

--なるほど、ずいぶん多角的に活動をされているんですね。最後に、Kentai-Pの今後の活動について教えてください。

Kentai-P:これまで4つのアルバムを作り、現在はMainframe Revolutionというアルバムの製作途中です。まずは、これを早く完成させたいと思っているところです。またこれまでのアルバムはすべてフリーで配布をしていましたが、今度は販売できるものにしたいと思っているところです。

--ありがとうございました。

【関連サイト】
Kentai-Pの作品サイト
Vocanode

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