手頃価格で高音質が得られるThunderboltオーディオIF、ZOOM TAC-2

最近、にわかに製品ラインナップが増えつつあるThunderbolt接続のオーディオインターフェイス。これまでDTMステーションでもapollo twin、Lynx auroraなどを取り上げてきましたが、価格的になかなか手が出しにくい……、と思っていた方も少なくないと思います。そんな中、現時点で唯一の日本メーカーとしてThunderboltオーディオインターフェイスを出してきたのがZOOMです。

ZOOMは、これまでリニアPCMレコーダーやMTRの一機能としてオーディオインターフェイス機能を持たせた製品は出していましたが、単独のオーディオインターフェイスとしては、先日発売したTAC-2が初。2IN/2OUTながら、とても高音質でレイテンシーが小さいのが大きな特徴。このTAC-2をDTM機材としてみたとき、どんなものなのか紹介してみたいと思います。


ZOOMのThnuderbolt対応オーディオインターフェイス、TAC-2


Thunderboltって何?という人もいると思うので、まずこれについて簡単に紹介しておきます。日本語読みすれば「サンダーボルト」となる、この規格はAppleIntelが共同で策定した高速汎用データ伝送のためのインターフェイス。USBやFireWireなどと同じように、外部機器と接続するための規格なのです。

そんなに色々な規格を作らないで統一して欲しい!」なんて声も聞こえてきそうですが、やはり技術の進歩と企業間の競争によって、どうしても新しい規格が出てくるわけですね。最近FireWireは消えつつあるので、USB 2.0と比較すると、圧倒的に転送速度が速いのです。

Thunderboltの端子(左)とUSBの端子(右)

具体的にはUSB 2.0が480Mbpsであるのに対し、Thunderboltは20Gbpsと単位が違うんですよね。また単にスピードが速いだけでなく、システム的にCPUに極めて近い位置にあるというのがポイント。この辺の詳細については、以前ZOOMの開発者にAV Watchでインタビューしているので、そちらをご覧いただくと分かりやすいと思います。

また、USBと比較してバス電源供給能力が大きいのも特徴で、内部のオーディオ回路に対して潤沢に電力を送れるため、高品位なオーディオ機器を作りやすいというメリットもあるのです。

そうした背景を考えると、Thunderbolt対応のオーディオインターフェイスは、いい製品が作りやすいということが見えてくるのですが、現時点においては製品開発ができたメーカーはまだ少ないのとともに、価格が高いんですよね。そんな中に登場してきたZOOMのTAC-2は定価38,000円(税別)と手頃。でも、実際DAWとの相性など、どうなのでしょうか?

まず、予め断わっておく必要があるのは、このTAC-2はMac専用である、ということ。最近Windows PCでThunderbolt端子を搭載したものも増えてきていますが、TAC-2の場合、現時点においてMacのみの対応となっており、Windowsでは動作しません。

そこで、私の使っているMac miniにTAC-2のドライバを入れるとともに、ThunderboltケーブルでTAC-2と接続してみました。とくにトラブルこともなく、簡単に接続できるし、Thunderboltケーブルでの電源供給なのでスッキリですね。


フロント左にヘッドホン端子、右がINSTRUMENT入力端子

入出力はフロントにヘッドホン出力と、ギターなどを接続できるHi-Z対応の入力が1つ。またリアにはXLRとTRSの両方の入力が可能なコンボジャックが2つと、メイン出力が並んでいます。2IN/2OUTなので、入力の左チャンネルはフロントかリアのどちらか、となります。また出力はヘッドホン、メインともに別々に音量設定はできますが、出てくる信号自体は同じものとなります。


TAC-2のリアパネル。コンボジャックが2つとTRSでのメイン出力がある 

その入力レベル、出力レベルの設定は基本的に本体トップにあるノブを使って行います。このノブ、プッシュボタン式になっており、ボタンを押すごとに左チャンネル入力、右チャンネル入力、ステレオ入力、メイン出力、ヘッドホン出力と切り替わるようになっており、結構気持ちよく設定できます。


Cubase7で使ってみたところ、簡単に利用することができた 

ここで、さっそくCubase 7と接続してみると、あっさりと認識されました。バッファサイズは32~2048の範囲で設定できるのですが、一番小さい32に設定してみました。オーディオとMIDI合わせて60トラックあるちょっと重めのプロジェクトを再生してみましたが、まったく問題はないですね。

Cubaseのデバイス設定画面の入力レイテンシー、出力レイテンシーを見てみると0.667msと極めて小さい数値が表示されています。まあ、これはあくまでも理論値であり、実際にはもう少し大きな数値になるはずですが、さすがThunderboltという感じですね。

Pro Tools 11でもプレイバックエンジンをTAC-2に設定すれば、すぐに使える
同様にPro Tools 11でも使ってみました。こちらは、プレイバックエンジンをTAC-2に設定するだけ。その後、I/O設定画面のインプット、アウトプットで「デフォルト」ボタンをクリックすれば、自動的に最適化してくれ、2IN/2OUTのデバイスとしてすぐに使えるようになりました。


Pro ToolsのI/O設定画面で「デフォルト」ボタンをクリックすれば、TAC-2に最適な形で設定される

さらにLogic Pro Xでも試してみました。こちらも設定はとっても簡単で、起動するとすぐにTAC-2に自動で設定されましたが、「環境設定」-「デバイス」で設定を行うこともできます。ここでもバッファイサイズを32に設定することができ、問題なく使うことができました。


Logic Pro Xならほぼ自動的に設定されて使うことができた 

 

このように簡単に設定できるTAC-2ですが、ユニークなのがTAC-2 MixEfxというアプリケーションソフトです。これはTAC-2の内部ミキサーをコントロールするソフトウェアなのですが、見るとわかる通り、単に2IN/2OUTのオーディオインターフェイスというだけでなく、Mac側からのオーディオをミックスしたり、エフェクトを利用することもできるんです。簡単に説明してみましょう。


TAC-2 MixEfxの画面。これがTAC-2の内部ミキサーを表している 

まず便利なのが入力レベルの自動調整です。TAC-2では前述のとおり本体のノブを使うことで、入力レベルの調整を行うことができるのですが、この画面左側のINPUT PREAMPのところと連動しており、画面上で調整することも可能です。しかもAUTOボタンをオンにすると、自動的に入力レベルを検知し、最大入力に合わせて最適なゲインに設定してくれるのです。一度AUTOの状態でリハーサルすれば、それにマッチしたレベルに設定されるわけですね。


AUTOボタンをオンにすると、最適な入力ゲインに自動で設定してくる 

またLO CUT、位相反転のスイッチがあるほか、+48Vのファンタム電源供給もここにあるスイッチで行えます。コンデンサマイクを使う場合は、左右にあるPHANTOMというボタンをONにすればいいのです。

さらに右側のEFFECTをONにすると、ROOM×2種、HALL×2種、PLATE×2種の計6種類のリバーブおよびECHO×2種の中から1つのエフェクトを利用することが可能です。このエフェクトは入力信号に対して掛けて、そのまま出力するもので、レコーディングには影響しません。したがって、ボーカルを録音する際、リバーブを掛けてモニターすれば気持ちよく歌うことができ、しかもDAW側はリバーブの掛かっていない素の音で録れるため、後でいくらでも調整が効くわけです。

LOOPBACK機能を使うことで、USTREAMやニコ生での配信に便利に使える
またCOMPUTERいうのは、DAWからの出力やiTunesの再生音などを意味するもので、通常はそのままヘッドホン端子やメイン出力へと出ていきます。ところがLOOPBACKというのをONにすると、そのMacの出力とTAC-2の入力端子から入った音をミックスしたものをレコーディングすることが可能になるのです。

まあ、DAWで使うことはあまりないと思いますが、USTREAMやニコ生などで配信する際に、これが大きな威力を発揮してくれます。つまりBGMをバックにマイクでしゃべる音を放送したり、ゲームサウンドを流しながら、マイクで実況する……といった利用することができるんですね。単にLOOPBACKのON/OFFだけでなく、このミキサーで最適なレベルの調整ができるので、結構便利に使えそうですよ。

以上、TAC-2について見てきましたが、実際に使ってみてもかなり高音質であるのを実感できるのとともに、レイテンシーが小さく気持ちよくモニターできるのが大きな特徴だと思います。2IN/2OUTなのでマルチチャンネルが必要という用途には向かないのですが、一人でのDTM作業であればこれで十分という人も多いと思います。また、いま使っているオーディオインターフェイスで音質的に不満があるという場合には、変えてみる価値はあると思いますよ。もちろん、従来のオーディオインターフェイスを使いつつ、マスタリング用にTAC-2を利用する、といったことも可能なので、Mac用のオーディオインターフェイスの一つの選択肢として大きな存在になりそうです。


年末の発売が予定されているUSB 3.0対応のオーディオインターフェイス、UAC-2 

ちなみにZOOMでは、Thunderbolt対応のオーディオインターフェイスTAC-2に続き、USB 3.0対応のオーディオインターフェイス、UAC-2というものも発表しており、年末の発売が予定されています。これについても詳細な情報が入り次第、レポートしてみたいと思っています。

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【製品情報】
ZOOM TAC-2製品情報

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2件のコメント
  • annex38

    「USB 2.0が480Mbps/Thunderboltは20Gbps/単位が違う」
    これは接頭辞(M、G)が異なるだけであり「単位が違う」とは言いません
    「ケタが違う」などの表現が適切と思われます

    2014年6月28日 1:47 PM
  • 藤本健

    annex38さん
    ご指摘ありがとうございます。そうですね、ここについては自分でもどうしようかと思ったのですが、やはりMbpsとGbpsは「単位が違う」という言い方のほうが一般的だと思い、このようにしました。
    ケタが違うというときは、480Mbpsと20,000Mbpsのような場合が一般的か、と。
    おっしゃりたいのは「単位が違う」とはkmとマイルのような場合だ、ということなのかもしれませんが…。

    2014年6月28日 3:17 PM

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