これからDTM(デスクトップ・ミュージック)を始めたい」という方、「なんとなく興味のあるけどよく知らない」という方にとって、最初にぶつかる関門は「DAWって何だろう?」ということではないでしょうか?「コンピュータは古くから使っているけど、DTM分野はちょっと…」という方でもDAWとなると何だから難しそうで…という方が多いと思います。

実際、私に寄せられるもっとも多い質問の一つが「DTMとDAWって何が違うの?」というものです。そこで、改めてDAWとは何なのかについて、まったく知らない人に向けて説明してみようと思います。


DAWって何!?

まず、「DTMとDAWの違い」ですが、DTMというのは、「机の上で作る音楽」のことを指しており、別のいい方をすれば「コンピュータを使って音楽制作をすること」ですね。楽器を持ってスタジオに行ってレコーディングなんてことをしなくても、コンピュータさえあれば机上でできてしまう……というわけです。

そのDTMをするためのメインとなるツールがDAWなのです。DAWDigital Audio Workstationの略。私は「ディーエーダブリュー」って呼んでますが、「ダウ」と呼ぶ方も多く、最近は日本でも海外でも「ダウ」と発音するのが主流になっているように思います。

そのDAWがあれば、WindowsやMac上で音楽制作が可能になるわけですが、DAWは国内外、数多くのメーカーが数多くの製品を出しています。主なものを並べてみると以下のようなものがあります。

DAW名 メーカー Win Mac
Ability インターネット
ACID Sony Creative
Bitwig Studio Bitwig
Cubase Steinberg
Digital Perfomer MOTU
FL STUDIO Image-Line
Live Ableton
Logic Apple
Music Maker MAGIX
Pro Tools Avid Technology
SONAR Cakewalk
Studio One PreSonus

これらのDAWがあれば、自宅で一人で音楽制作ができてしまうわけですが、もちろん、これをスタジオでのレコーディングに使ってもOK。実際、プロミュージシャンのステレオのレコーディングでも、コンサートホールにおけるオーケストラのレコーディングにおいてもDAWが用いられいるので、DAWは机上での音楽制作というよりも、コンピューターを使った音楽制作ツールという意味でのDTMソフトと理解したほうがいいと思います。

もちろん、各製品によって機能や性能に違いがありますが、2014年4月に行ったDTMステーションで行ったアンケート調査によると、国内シェアでは
1位 Cubase
2位 Logic
3位 SONAR
4位 StudioOne
5位 Ableton Live
となっていました。前述のプロのレコーディングにおいてはPro Toolsが業界標準といわれていますが、国内シェアという見方をすると、少し違ってくるわけですね。

ちなみに、海外でも、DAWのシェア調査などをよくやっていますが、同じころにSynthtopiaというサイトで行われた結果を見てみると
1位 FL Studio
2位 Ableton Live
3位 Logic
4位 Bitwig Studio
5位 Cubase
となっていますから、だいぶ違った順位であるのも面白いところです。

さて、では、これらDAWで何ができるのでしょうか?DAWは音楽制作のための統合ソフトともいえるものなので、さまざまなことができるのですが、端的にいうと以下の大きく3つの機能を持っています。
  • 多重録音機能
  • 打ち込み機能
  • ミックス機能
のそれぞれです。順を追って説明してきましょう。

まず多重録音ですが、これはその文字通りであり、いっぱい音を重ねながらレコーディング=録音していくことを意味しています。昔でいえばテープレコーダーの機能であり、今でいえば、ICレコーダー、ボイスメモ機能の強力なものといえばいいでしょうか……。


さまざまなパートの音をトラックごとに録音して音を重ねていく(Cubase)

一人で音楽制作をすることを考えてみましょう。いくらいろいろな楽器が弾ける人でも、同時に複数の楽器を鳴らすのは難しいですよね。そこで、この多重録音機能を用いて、まずはドラムだけを録音し、次に録音し終えたドラムの音を聴きながらベースを録音、さらにギター、キーボード、ボーカル……というように、さまざまなパートの音を重ね録りしていくことができるのです。

この際、大きなポイントとなるのは、ドラム、ベース、ギター……と全部別のトラックに独立してレコーディングされるということです。とりあえずレコーディングしたギターのトラックが気に入らなければ、そのギターだけを消して録り直すことも可能だし、あとからボーカルの一部を修正する…なんてこともできるわけですね。


レコーディングした音は波形として表示することができ、必要に応じて編集も可能(SONAR) 

昔のテープレコーダー時代でも、同様のことを磁気テープに記録する形で行っていたのですが、複数のトラックにレコーディングしていく、ということからMTR(マルチ・トラック・レコーダー)と呼んでいたため、いまでもDAWのことをMTRと表現することがありますよ。

では2つ目の機能である、打ち込み機能についても簡単に説明しましょう。「最近のポップス系音楽では打ち込みが使われている」などとよく言われていますが、そもそも打ち込みって何なのでしょうか? これも20~30年昔、シーケンサと呼ばれる特殊な機器を使って、シンセサイザを自動演奏させるためのデータを電卓のようなテンキーを用いてカチャカチャと打ち込んでいたことから、そう表現されている言葉です。


打ち込みの語源ともいえる数値入力の画面(Ability) 

そのため一般的に打ち込みというと、「無機質で正確なリズムの音楽」、「人間業では到底弾けないようなフレーズの演奏」を想像することが多いと思いますが、要するに電子楽器を自動演奏させることの全般を打ち込みと呼んでおり、シーケンス機能とかMIDI(ミディ)機能なんて言い方をすることもあります。MIDIが何かを説明しだすと長くなるので、別の機会にゆずりますが、この打ち込み機能を用いれば、それこそ楽器が弾けない人でも、そして何より楽器を持っていない人でも音楽を演奏できるようになるというのがすごいところなんです。

実は、ここでいう打ち込み機能には大きく2つの機能が含まれています。一つは、自動演奏するための機能であり、「ドを鳴らし、レを鳴らし、ミを鳴らし……」といった情報を入力したりエディットしたりするものです。これはピアノロールと呼ばれる画面で行うケースもあれば、譜面入力をするといったことできるし、場合によっては昔のように数字を使って入力していく、まさに無機質な入力方法なんかもあります。これはDAWによって違いのあるところの一つですね。


ピアノロールでの打ち込み。音の高さと長さがグラフで表示されている。画面は「ドレミファソラシド」のデータ(FL STUDIO) 

ただ打ち込みといっても、1音1音細かく入力するだけでなく、外部に接続したUSB-MIDIキーボードと呼ばれる鍵盤を用いて弾いた情報をデータとして記録する方法もあります。これなら鍵盤演奏ができる人なら、チマチマと入力せずとも効率よく入力することができ、ミスタッチなどを後から画面上でエディットすることも可能になります。

打ち込みにおけるもう一つの機能が音源機能です。もともとは外部に接続したシンセサイザを制御するための打ち込み機能でしたが、今のコンピュータの処理能力をもってすれば、ソフトウェアだけでシンセサイザを実現させることができます。シンセサイザといったって、テクノサウンドのようなサウンドだけではないんですよ。たぶん聴いてもアコースティックな楽器と区別がつかないほどのピアノ音やギターの音、トランペットやバイオリン、そしてドラムの音も出せるようになっているんです。

 
DAWにはさまざまなソフトウェア音源が搭載されている(Music Maker)

この音源機能はDAWに付属のものがあるほか、プラグインという形で数多くの音源を追加できるようになっています。つまり異なるメーカーのDAWでも規格が統一されており、市販のもの、ネット上のフリーのものを含め、さまざまな音源を追加できるようになっています。ただし、その規格もVST、AudioUnits、AAXなどいくつかのものがあるのが、初心者にとっては難しいところですが、その辺の理解は後でも十分でしょう。

そして3番目がミックス機能です。これは今まで見てきた多重録音機能、打ち込み機能で作った各トラックをバランスよくミックスするための機能を表します。プロの現場においてはレコーディングエンジニアとかミックスエンジニアと呼ばれる人たちが行う作業であり、何十万円、何百万円もするミキシングコンソールという大きな機材を使って操作を行うものですが、DAWではそれが画面上ですべてできてしまうのです。


大型ミキシングコンソールと同等のことがPC上でできる(Pro Tools) 

多重録音機能で録音したギターとベースとボーカル、打ち込みで作ったドラムとキーボードのトラックを、うまく音量を整えるとともに、音質を調整したり、左右バランスを調整して仕上げていくわけです。パラメーターが膨大にあるので、初めて見ると、ビックリしてしまうかもしれませんが、最初はとくに何も触らなくても大丈夫。ボーカルがちょっと目立たないので大きくしたいとか、ギターが出すぎているので、ちょっと音量を下げる……といったあたりから調整すれば十分でしょう。


たとえばボーカルの音量の上げ下げなどを自動でコントロールすることもできる(Studio One) 

必要に応じて曲の進行にともなって、コーラスパートの音量を上げたり下げたりといったこともできるし、左右を変化させていくこともできるので、そこから先は曲を制作する人の思い次第というわけです。

ちなみに、ここでは各トラックごとに、また全体に対して、エフェクトをかけられるというのもDAWの大きな特徴です。エフェクトとは何なのかについては、ここでは割愛しますが、エフェクトを使うことによって、音を自在に変化させることができるのです。そして、このエフェクトもプラグインとして追加することが可能になっているのも重要なポイントですね。


ミキサーと連携させる形でさまざまなエフェクトを利用できる(Bitwig Studio) 

DTMの中枢を成すDAWでは、このようにさまざまな機能を駆使して音楽を作っていくものなのです。膨大な機能があるので、最初からすべてを使いこなすのは不可能に近いし、プロのレコーディングエンジニアだって、一部の機能しか使っていないのが実態なんです。

手頃な価格なものも数多くありますし、中にはオーディオインターフェイスやUSB-MIDIキーボードなどのハードウェア製品のオマケとして付属してくる場合もあるので、まずはその辺から試してみてはいかがでしょうか?その先にはDTMの広い世界が待っていますよ!

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