Sound Canvas for iOS徹底活用術[発展編] ~ ついにIAA、Audiobus対応。オーディオ化の手順を完全解説

1月末にRolandからリリースされて大ヒットとなったiPad用、iPhone用のアプリ、Sound Canvas for iOS。「すでに購入して使ってるよ!」という人も多いと思うし、「昔のままだ、懐かしい!」といった声も多数聞こえてきます。そのSound Canvas for iOSで要望の多かった機能が、演奏したデータのオーディオ化です。リリース当初の1.0というバージョンではオーディオ化に関する機能を装備していなかったため、演奏した音をWAVなどのデータにするには、出力される音を外部のレコーダーで録音するなど、面倒なことをするしかありませんでした。

しかし、間もなくリリースされる1.1というバージョンはInter-App Audio、またAudiobusという機能に対応したため、これに対応したアプリと組み合わせることでオーディオ化した上でPCに取り込むといったことが可能になったのです。そのVer1.1を一足早く入手することができたので、どうやって使えばいいのか、その手順を紹介してみたいと思います。


Sound Canvas for iOSがVer 1.1になりInter-App Audio、Audiobusに対応



Sound Canvas for iOSをどのように活用しているかは、人によってさまざまだと思います。CubasisGarageBandなどのDAWアプリと組み合わせて鳴らす人、MIDIキーボードを取り付けて弾いている人、またPCと接続して昔のSC-55mKIISC-88Proと同じような外部音源として使っている人……、いろいろです。でももっとも多いのは、10~20年前のGS音源用のMIDIデータを引っ張り出して鳴らしている人ではないでしょうか?

実際に試したことのある方なら分かるとおり、Sound Canvas for iOS自体がMIDIファイルのプレイヤー機能を装備しているため、簡単に昔のデータの再生ができます。そして、まさにミュージ郎時代のSound Canvasの音がここから飛び出してくるんですよね。「懐かしい!」と思って、「これをYouTubeにUPしてみよう」、「SoundCloudにアップしてみよう」、さらにはこれをCDに焼いておこうと思っても、オーディオデータ化する手段がなかったので、結構面倒だったんですよね。


今回はInter-App Audio AppとAudiobusを使って、Sound Canvas for iOSの音をオーディオ化する手順をじっくり紹介していく 

ところが今回のバージョンアップによって、その辺がかなり使いやすくなってくるのです。もっともSound Canvas for iOS自体にオーディオ化機能が搭載されるのではなく、現在iOSで標準となってきている規格、Inter-App Audio、Audiobusに対応するので、これらをうまく利用することで、手軽に、そして高音質にオーディオ化ができるようになるというわけなのです。

DTMステーションでもこれまで何度もInter-App AudioやAudiobusについては記事にしてきましたが、「まだ使ったことがない」という人が大半だと思うので、「Sound Canvas for iOS内のプレイヤー機能を使って鳴らした音をオーディオ化する」という観点で、その手順を追っていきましょう。

Inter-App AudioとAudiobusはそれぞれまったく別の規格なので、順番に見ていきましょう。まずはInter-App Audioでの使い方です。ここではGarageBandのトラックにレコーディングしていく方法です。


GarageBandを起動し音源にInter-App Audio Appを選択する

まずはGarageBandで新しい曲を作成した上で、音源としてInter-App Audio Appを選択します。Inter-App Audioとしては「音源」と「エフェクト」がありますが、Sound Canvas for iOSは音源なので、「音源」を選んでください。現在インストールされているアプリのうち、Inter-App Audio対応のアプリが一覧で表示されるので、この中からSoundCanvasを選択します。

自分のiPad/iPhone内にいろいろ入っているInter-App Audio対応アプリの中からSound Canvas for iOSを選択

すると画面はSound Canvas for iOSへと切り替わると思います。ここで「FILE OPEN」ボタンをタップしてオーディオ化したいMIDIファイルを読み込んでください。もしPC上にあるMIDIファイルを再生したい場合はiTunesやメール、GoogleDriveなどを介してiPad/iPhone上に転送した上で、それを読み込みます。そして、再生できるかちょっと試してみてください。


ホームボタンを素早く2回押すと、裏で動いているアプリへの切り替えができるのでGaregeBandを選択 

問題なく再生できていれば、再生したままの状態で、画面をGarageBandへ切り替えてみましょう。ホームボタンを素早く2回押すとアプリが切り替えられるので、GarageBandを選んでみましょう。レベルメーターが触れているはずですが、うまくいっているでしょうか?これはInter-App Audioを通じてアプリ間でオーディオ信号が流れてきていることを意味しています。


Sound Canvas for iOSの音が入力され、メーターが触れているのを確認できる 

うまくいっていることが確認できたら、一旦トラック表示の画面に移ります。GarageBandの初期設定では1つの曲を8小節としているため、テンポ120であれば16秒しか録音できません。普通はもっと長いでしょうから、8小節という制限をなくすために画面右上の「」をタップし、さらに「セクションA」をタップ。ここで「自動」をオンにするのです。


トラック表示の画面の右上に「+」をタップし、セクションの長さを自動に設定する

これで時間制限がなくなりました。ちなみに、GaregeBandとSound Canvas for iOSはテンポ的に同期するわけではないので、GaregeBandのテンポ自体に意味はありません。また初期設定ではレコーディング時にメトロノームが鳴ってしまいますので、これも切っておいたほうがいいかもしれません。もっとも鳴っていても、これが録音されることはないので、気にしなくてもいいのですが……。


GaregeBand側で録音、Sound Canvas for iOS側で再生すると、録音されていく 

これで準備は完了したので、GarageBandの録音ボタンをタップした上で、改めてSound Canvas for iOSへ戻り再生ボタンをタップします。これによってGarageBandへ録音されていきます。曲の再生が終わったところで、再度GarageBandへと戻り、ストップボタンをタップすれば完了。2つのアプリ間を行ったり来たりするのが、多少煩わしいところではありますが、アプリ同士がデジタル的に繋がっているから、ノイズが入ることが一切なく、完璧な形でGarageBandへ録音ができているはずです。


トラックに波形が表示され、無事レコーディングされたことが確認できる

本当にうまくいったか確認するため、再度トラック表示の画面に移ってみましょう。どうですか?波形が表示されていますよね。頭と最後に無音区間が入ってしまうのは仕方がないところ。気になるようならGaregeBand上でトリミングしてしまってもいいですし、その後PCなどへ転送してから削除してもいいでしょう。


保存した後、そのファイルのアイコンを長押しすると、各ファイルがグラグラ揺れるような表示になる

最後に左上の「My Sound」と書かれたところをタップしたらプロジェクトの保存は完了。必要に応じてファイル名を書き換えておくと分かりやすいでしょう。そして、その保存したプロジェクトを長押ししてみてください。すべてのプロジェクトがグラグラと揺れる状態になるので、ここで画面上、一番左上のアイコンをタップします。するとどこに転送するかの選択肢が出てくるので、SoundCloudやYouTubeを選べば、そこへ直接アップロードすることができます。


メール、Facebook、SoundCloud、YouTubeなど送りたい方式を選択して操作していく

またPCへ転送したい場合は、iTunesを選んだ上で、さらにiTunesを選び、必要に応じて情報をせてちしたり、オーディオ品質を設定。できるだけ高品位にということであればAIFFを選ぶのがいいですね。そして「送信」をタップすればAIFFとしての保存が完了します。


PCに送りたい場合は、iTunesを選択の後、上記画面でiTunesを選ぶ

最後に、PCとLightning-USBケーブルで接続した上で、iTunesを通じてiPadやiPhoneにアクセスした上で、Appの中にあるGaregeBandを選択すれば、いま保存した曲データが見つかるはずですよ。それなりの手間はかかってしまいますが、これによって、音を一切劣化させることなく、PCへ持ってくることができました。


さらに表示される画面でAIFFを選べば、GaregeBandの領域にAIFFデータとして保存される

このGaregeBandを使う方法がもっとも安くできる方法だと思いますが、もう一つのAudiobusを用いた方法も簡単に紹介しましょう。Audiobusの詳細については、以前「iOS上のシンセ、エフェクト、レコーダーを有機的に接続するAudioBusはスゴイ!」や「iOSのDTMを大きく進化させるAudiobus2を使ってみた」で詳しく紹介しているので、そちらを参照いただきたいのですが、ここではAudiobusを使って、Sound Canvas for iOSの再生音をCubasisへレコーディングする方法を見ていきましょう。


まずはAudiobusの画面のINPUTにSound Canvas for iOSをセットする

まずAudiobusを起動した上で、INPUTのところをタップするとさまざまなアプリの一覧が表示されますが、その中からSound Canvasを選択します。すると、グレーアウトした寝ているような状態で表示されるので、Sound Canvas for iOSのアイコンをタップして起動してやります。


Sound Canvas for iOSのアイコンがグレードアウトされ、「Zzz…」と寝ているので、これをタップして起こす

一旦Sound Canvas for iOSの画面に切り替わった後、またAudiobusの画面に戻ってくると思うので、今度はOUTPUTのほうをタップしてみてください。今度は録音する側のアプリがいろいろと表示されるので、その中からCubasisを選択します。


続いて録音側のアプリとしてCubasisをセットする

こちらも起動してやると、オーディオ信号の流れが確立するはずです。そうAudiobusはアプリ間を有機的に接続してオーディオ信号の橋渡しをするためのアプリなんですよね。


すでにCubasis側ではトラックにSound Canvas for iOSが設定されている。Sound Canvasアイコンの右のアイコンをクリック

続いて録音準備のためにCubasisを起動すると、すでにSound Canvas for iOSのトラックが作成されていることが確認できますね。また画面の下にはAudiobusのアイコンとSound Canvas for iOSのアイコンが表示されていますよね。ここでSound Canvas for iOSのアイコンをタップすると、にSound Canvas for iOSへ移るためのアイコンが表示されるので、これをタップして画面をSound Canvas for iOSへ切り替えます。


再生したファイルをセットした上で、画面右に表示されるAudiobus関連のアイコンからRECボタンを押す 

こちらでは、また録音したいMIDIファイルを読み込んで準備をしてください。その後、やはり画面右側に表示されているAudiobusおよびCubasisのアイコンのうち、Cubasisのほうをタップすると、画面下にはRECボタンなどが現れるはずです。このRECボタンはCubasiswoをコントロールするリモコンとなっているので、これをタップした後に、Sound Canvas for iOSのほうで再生をスタートすると、これでレコーディングが開始されます。


CubasisへSound Canvas for iOSの再生音がレコーディングされる 

このレコーディングしている状態でCubasisの画面に移動してみると、しっかりレコーディングされつつあることが確認できます。そして曲の再生が終わったら、ストップボタンをタップしてい終了です。これでCubasisへのレコーディングは終了です。その際の、データの受け渡しについては割愛しますが、ほかのDAWやレコーダーソフトでもAudiobus対応のアプリであれば、ほぼ同様の方法でレコーディングすることができるはずです。

なお、いま説明したAudiobusの使用方法ではINPUTにSound Canvas for iOSを、OUTPUTにCubasisを接続しただけでシンプルにレコーディングを行いましたが、お気づきのように、INPUTとOUTPUTの間にEFFECTSという項目があります。ここにエフェクトを入れた上でレコーディングを行うと、エフェクトの掛け録りが可能になります。まあ、シングルトラックの録音であれば、フランジャーやディストーションといったエフェクトを掛けるのもありですが、マルチトラックであまり積極的なエフェクトをかけるということはないかもしれません。


Audiobusならエフェクトを利用するのも一つの手。DFXを入れてみた

でもここにマスターエフェクトとしてEQやコンプを入れれば、簡単にマスタリングができてしまうというメリットもありますよ。たとえば、先日「iPadで最強のマルチエフェクト、DFXは絶対持っておくべき!」という記事で紹介したDXFなどを使うとなかなか効果的ですよ。必要に応じて試してみてください。


コンプレッサとEQを使ってマスタリング
いかがだったでしょうか?このようにSound Canvas for iOSの新バージョンではInter-App AudioやAudiobusの仕組みを利用することで、再生した音を劣化させることなく、きれいにレコーディングすることができるようになりました。

ローランドによれば「3月中旬くらいには公開されると思います」とのことでしたが、まだ購入していないという人も、別にその日を待ったなくても、無料でアップデートできるので、早めに買っておいても大丈夫ですよ。

Inter-App AudioやAudiobusは非常に便利で強力な機能ではあるのですが、慣れないとなかなか難しい面もあるので、じっくりと解説してみました。GaregeBandやCubasisに限らず、ほかのアプリであっても基本的に同様の手段でレコーディングすることができるのできるので、ぜひ試してみてくださいね。
【アプリダウンロード】
Sound Canvas for iOS

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Commentsこの記事についたコメント

5件のコメント
  • 矩形波

    良いですね いつかAndroid版も出して欲しいです

    2015年3月7日 1:17 PM
  • たうざぁ

    これだけ出来てるならVSTiも作って欲しいなぁ…

    2015年3月9日 6:23 AM
  • 桃井

    早速アップデート後に88pro用midiをinterappaudio経由でガレバンアプリで録音してみたら録音中の外部音無視して録音されててびっくり。interappaudioの凄さに感動しました(iPhone5sだからiPad用のDTMアプリ使えない(´・ω・`))

    2015年3月11日 12:18 AM
  • 桃井

    やはりsoundcanvasのVSTi版が待ち遠しいです!

    2015年3月11日 12:19 AM
  • Tack

    藤本 様
    いつも楽しく拝見させて頂いております。
    私の環境で、Sound Canvas が正常にマウントされないのですが、、
    何かコツみたいなものがあるのでしょうか?
    INPUT で Sound Canvas を選択し、Sound Canvas が起動するまではいいんですが、
    その後 Audiobus の画面に戻らずにスリープ状態のままとなってしまいます。
    ご教授よろしくお願いします。
    使用環境;
    iPad Air2、Sound Canvas、Audiobus(アプリは全て最新版)

    2015年8月18日 8:31 AM

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