無料版のPro Tools|Firstの配布が開始。お披露目イベントも7/10に開催

今年1月に「無料版のPro Toolsが登場する」ということで大きな話題になったPro Tools|Firstの配布がいよいよ始まったようです。Pro Tools|Firstは主にエントリーユーザーをターゲットにしたPro Toolsであり、「プロと同じツールを誰にでも」というコンセプトで誕生したソフトです。実際画面のユーザーインターフェイスや基本的な機能も、プロのレコーディングの世界で業界標準となっているPro Toolsを踏襲したものとなっています。

配布が始まったとはいえ、まだ誰でもすぐ入手できるというわけではなく、「Pro Tools|Firstが欲しい!」とメールアドレスや名前、仕事などの情報を登録したユーザーに対して少しずつ案内を始めているという段階。世界中にいる膨大な人が登録しており、順番に案内していることから、入手可能になるまではもう少し時間がかかる可能性もありそうです。そうした中、いくつかの情報をつかんだので紹介していきましょう。

ついに、無償版Pro ToolsであるPro Tools|Firstが公開になった


Pro Toolsシリーズは、これまで上からPro Tools|HDPro Tools、そしてMboxシリーズやAKAI製品、M-Audio製品などにバンドルされるPro Tools Expressという3種類がありました。そこに今回、無償版のPro Tools|Firstが追加されたのです。

これら4ラインナップの主な機能の違いをまとめたものが以下の表です。

  Pro Tools|HD Pro Tools Pro Tools
Express
Pro Tools|First
最大同時オーディオトラック数
48/96/192kHz
256/128/64
(Pro Tools|HDX利用時 最大768/384/192)
96/48/24 16/16/- 16/16/-
最大入力
(ハードウェアに依存)
192 32 8 4
同時録音トラック 256 32 4 4
インストゥルメント
トラック
128 64 8 16
MIDIトラック 512 512 16 16
AUXトラック 512 128 8 16
ビデオトラック 64 1 1
プロジェクト 無制限(ローカル/ネットワーク) 3(クラウド)
追加は有料
最大サンプリングレート
(ハードウェアに依存)
192kHz/32bit 96kHz/32bit 96kHz/32bit
最大I/O 256 32 8 4
サラウンド 最大7.1ch

この表からも分かるとおり、オーディオトラック、MIDIトラックともに16トラックまでなど、ある程度の機能制限はあるものの、DAWとしての基本的な機能は備わっているとともに、32bit/96kHzまでのサンプリングレートが扱えるなど、かなり充実した内容になっています。

数多くのプリセット音色が用意されているXpand!2も標準搭載

プラグインもAAXに対応するとともに、ピアノ、オルガン、パッド、シンセ、ドラム、パーカッション、ブラス、ウッドウィンドなど2,500以上のプリセット音色を持つマルチ音源、Xpand!2を標準搭載するとともに、20種類以上のエフェクトプラグインを備えるなど、とりあえず一通りのものが揃っているなど、DTM初心者にとっては十分過ぎる機能となっているし、ほかのDAWのユーザーが試しに使ってみるという場合でも十分な性能を発揮してくれる内容となっています。

作成したデータは最大3曲までクラウド上で管理できる

ただし、上位版のPro ToolsやほかのDAWと比較して、やや特殊な点があるので、そこについて確認をしておきましょう。最大の違いともいえるのは、レコーディングしたプロジェクトデータを手元のハードディスクなどへ保存できない、という点です。保存できるのはAvidが用意するクラウド上に限定されているほか、最大3つのプロジェクトしか保存できない(有償で保存可能なプロジェクト数を増やすことは可能)という仕様になっているのです。


オーディオは圧縮で音質劣化されるようなことはなく、クラウドへアップできる

3曲までしか保存できないのでは使えない!」と思う方もいるかもしれませんが、ここは工夫のしどころです。曲が完成したら、それをバウンスして2ミックスを作ることが可能で、これをローカルにWAVファイルとして保存することは可能です。別の見方をすれば、作成したトラックを1つずつソロにしてバウンスしていけば、マルチトラックのWAVファイルを生成することはできるわけですね。


見た目も使い勝手も、基本的に従来のPro Toolsを踏襲しているが、セッションファイルのやりとりは不可 

一方、クラウドへ保存するプロジェクトファイルは、従来のPro Toolsのセッションファイルとは別形式の特殊データとなっているため、既存のセッションファイルをPro Tools|Firstで開いたり、その逆もできません。ただし、まもなく、Pro Tools 12やPro Tools|HD 12用に、このクラウドへアクセスできるクラウド・コラボレーション機能がリリースされる予定で、これが対応すれば、データのやり取りが可能になります。


プラグインの追加はアプリ内課金によって可能となる 

もう一つの大きな違いがプラグインです。Pro Tools|Firstは「AAX Native 64 および AAX AudioSuite 64 追加プラグインをサポートします」と記載されているのですが、手持ちのプラグインや市販のプラグインが使えるわけではないのです。ちょうど「iOSのアプリ内課金による機能追加」と似たような感じで、Avidマーケットプレイスを通じてアプリ内購入したプラグインのみが使えるようになるとのことです。またPro Tools|First本体を起動するのに、USBドングルであるiLokは不要で、アプリ内購入するプラグインも基本的にはiLok不要ですが、ものによってはiLokが必要なものと登場する可能性はあるようなので、その点は購入時によく確認するようにしてください。

Pro Tools|Firstの国内初お披露目のイベントとなるAVID Ctreative Summit 2015が7月10日開催される

ぜひ、このPro Tools|First、早く試してみたいところですが、これの国内初のお披露目となるイベント「AVID Creative Summit 2015」が7月10日に、東京都千代田区にあるSOUND INNで開催されます。これはRock on Pro主催の元、Avid Technology、MI7 Japan、フックアップ、シンタックスジャパン、Native Instruments、ハイ・リゾリューションなど11社がブースを出して展示を行ったり、さまざまなセミナーが行われるというものです。

タイムスケジュール的には、以下のようになっており、3つの会場で行われるセミナーに参加したり、常時展示されているブースを見て回ることが可能になっています。

気になるPro Tools|Firstについては14:30~16:00にA studioで行われるセミナー「1st Session for Music」で紹介されるほか、Avidの展示ブースでデモが見られるようになります。

一方で、各社のセミナーも気になる内容がいっぱいです。たとえば、17:30~18:30で行われる「飛澤正人の Mixing Method!  Avid + Waves!!」は、以前DTMステーションの記事「プロのエンジニアがこっそり教える魔法のEQテクニック」でも登場いただいた飛澤さんによるセミナーです。ここでは、最新のネットワーク環境で、レコーディングからミックスまでを行った『SOUNDAHOLIC』のプロジェクトの中身を大公開、「EQの基本から、すぐに使える簡単EQ法」「コンプの種類と、そのかかり方や使い分け」など、Wavesプラグインの基本的な使い方から応用までを徹底解説してくれるとのことで、かなり気になるところです。


レコーディングエンジニアの飛澤正人さんによるセミナーも開催

また16:00~17:00で行われる「モバイル環境でも妥協のないスタジオクオリティを。期待の新製品 RME Babyface Pro の実力を徹底検証」では、4月にフランクフルトのmusikmesseで発表されて大きな話題となったRMEのBabyface Proがお披露目されます。2011年に誕生して大ヒットになったBabyfaceの後継モデルとして登場するBabyface Proはデザインを一新するとともに、オーディオ回路やドライバも新たに開発。従来機よりも大幅に性能が向上しているとのこと。このBabyface Proについて、ドイツから来日するRMEのMax Holtmann(マックス ホルトマン)さんが徹底解説してくれる予定となっています。

RMEのBabyface ProもAVID Creative Sumit 2015で初お披露目に

そのほかにもNative InstrumentsがKONMPLETE10に関するセミナーや展示を行ったり、フックップがUniversal AudioのApollo/UAD-2製品ラインップを中心にRupert Neve Designsのマイクプリアンプ、Rosendahlのマスタークロックなどの展示を行い、ハイリゾリューションではDanteブリッジとしても機能するFocusrite RedNetを使用した、Pro Toolsシステムと、MOTU AVBシリーズを活用したAoIPソリューションの展示を行うなど、見どころもいっぱいです。


AVID Creative Sumittの昨年の会場の様子 

このAVID Creative Summit 2015は入場無料で、誰でも入場可能。ただし、セミナーについては定員があり、事前に登録が必要とのことですので、気になるセミナーがある場合、早めに登録をしたほうが良さそうですよ。私も当日、取材という形で参加しようと思っているところです。

Avid Creative Summit 2015の詳細&お申し込みはコチラ 

【関連情報】
Pro Tools|First製品情報
Pro Tools|First登録ページ
AVID Creative Sumitt 2015情報

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