Melodyneの新Ver登場で、音楽制作の概念が抜本から変わる!

DTMのツールの中でMelodyne(メロダイン)だけは絶対に手放せない」という声もよく聞きますが、CelemonyのMelodyneはプロ、アマを問わず、多くの人に浸透している現在の音楽制作における重要なツールです。そのMelodyneが久しぶりに新バージョンを発表し、MelodyneシリーズすべてがMelodyne 4となりました。

 

これまでも、さまざまな魔法を実現してきたMelodyneですが、今回のバージョンアップにより、音楽制作の手法というか、概念を大きく変える画期的な機能が搭載されました。これがどんなものなのかを紹介すると同時に、Melodyneそのものをよく知らない方もいると思うので、改めてMelodyneがどんなツールであるかを紹介してみたいと思います。


トンでもないことを実現してくれたMelodyneの新バージョン、Melodyne 4 Studio

Meldyneは2001年に「オーディオを音楽的に編集する画期的なソフト」としてデビューしたツールで、たとえばボーカルを読み込ませると、ピアノロールのような画面で表示することを実現したのです。そして、そのピアノロール表示された各音符を上下に動かせば、ピッチを変えることができるし、左右に動かせばタイミングを変えることができ、音符の長さも変更することができます。


Melodyneはオーディオを解析し、MIDIのピアノロールのように表示させ、エディットを可能にするツール

 

そのため、本来ボーカルをミスったら録音しなおすべきところ、Melodyneがあれば、あとからコンピュータ上で修正することができ、ちょっとした直しであれば、まず誰も気が付かないほどの仕上がりになるのです。だからこそ、Melodyneはプロの現場において必須の御用達ツールとなっているわけですね。

 

そのMelodyneは2010年に誕生したDNA=Direct Note Accessという技術を追加することで、さらに大きく飛躍しました。このDNAを一言でいえば「ミックスされた音を一つ一つに分解して解析することができる機能」です。単に和音がどんなコードであるかを解析するといったレベルではありません。


DNA技術により、ミックスされた音も、どんな構成になっているかをすべて解析し、その音を1つ1つエディットできる 

 

たとえばギター、ベース、ピアノ、ボーカルと混ざった音であっても、一つ一つを解析して音符表示していくのですから、究極の耳コピ・ツールといってもいいですよね。ただし、ミックスした音を楽器ごとに完全に分離し、ピアノパート、ギターパートを丸ごと抽出する……というのはなかなか難しいところですが、ミックスした後に、「18小節目の2拍目のピアノのコードが1つ間違ってる…」なんてのを修正することは可能なんです。

 

なんでMelodyneでこんなことができてしまうのか、とっても不思議ではありますが、そのMelodyneが今回さらに進化をしているんです。

 

その目玉機能ともいえるのが、サウンドエディターによる音のエディット機能です。元々Melodyneでは音程や音調、タイミング、また音量の調整、さらにはボーカルの声質をいじるフォルマント調整はできたのですが、今回のバージョンでは、その点がさらに大きく強化されているのです。

 

Melodyne 4に搭載されたサウンドエディターには「倍音」、「EQ」、「シンセ」という3つのカテゴリーのエディターが搭載されており、これらを使うことで、各楽器の音を大きく異なるものに変えてしまうことができるのです。


倍音構成をいじれるサウンドエディター。たとえば3倍音だけを持ち上げると、ずいぶん違った音色になる

 

たとえば面白いのが「倍音」です。通常、音質ってEQを使って、高域を上げるとか、低域をカットする……といった処理をするのに対し、これは「楽器の音は基準音を元に、さまざまな倍音で構成されている」ということを前提に「3倍音をブーストする」とか「5倍音を下げる」……なんて設定ができるのです。最初慣れないと、何をどうしていいのやら……と思ってしまうのですが、これ試してみると、すごいです。

 

たとえばギターパートにかけた場合、高い音を弾いているときも、低い音を弾いているときも、その倍音構成となるので、まさにギターにエフェクターを掛けたような音になるんです。もし単純なEQで設定しても絶対こうはならないですからね。


EQは音階ごとにブーストしたり、下げたりできる、ちょっと不思議なものとなっている 

 

さらに、EQというのも普通のEQとはだいぶ違います。画面を見ても分かる通り、確かに上の目盛りには周波数が書かれていますが、下には音階名があり、各音階ごとに調整できるようになっているんです。やりようによっては「C3の音をほぼ出なくする」とか「D5の音を強く出す」なんてことができるんですが、ん~、どのようなシーンで活用するのか、いまいちよく分からなかったです。


スペクトルとフォルマントをいじると、まったく違った音色に変えることができる

 

そして、もう一つのシンセというのが、かなりのビックリ機能でした。こちらはスペクトル、フォルマント、音量という3つの画面が用意されているのですが、まさに、これらを使ってシンセサイザ的に音を変えてしまうことができます。従来もボーカルのフォルマントをいじることなどはできましたが、その次元ではなく、スペクトルとフォルマントの設定で自由自在に音色が作れてしまうのです。


さらに音量のところでエンベロープ設定すると、アタックやリリースなども自在に変化させられる 

 

しかも音量というのは、シンセサイザにおけるエンベロープの設定なんです。つまり、ここでアタックを遅くして、リリースを短くなんて設定ができるわけですが、やりようによってはブラスの音をストリングス風の音に変換なんてことができてしまうわけです。

 

言っている意味が分かりますか??これ、別にDAW上で鳴らすソフトシンセの音を変えようというのではないんですよ。もうレコーディングも終えてある、すでにレコーディングが終了している生楽器の音に対して、演奏を修正するだけでなく、音色まで自由にいじれてしまうというトンでもない話なんです。


マルチトラックに対応したので、各パートごとに別の設定で使うことができる

 

さらに、今回のMelodyne 4においては、マルチトラックが利用できるようになりました。すでに完全にミックスダウンしてあるデータをいじるのであれば、DNA技術で分解していくわけですが、もしマルチトラックで分解されている音があるのなら、それぞれ別に読み込むことで、ギタートラック、ベーストラックと、それぞれまったく別の処理ができるので、ちょっとした修正ではなく、抜本的な音作りをし直すことが可能になるんです。

 

これってある種、DTM革命ともいうべきものじゃないですかね!?

 

なお、Melodyne 4には以下の4つのエディションが存在します。
Melodyne 4 Studio
Melodyne 4 Editor
Melodyne 4 Assistant
Melodyne 4 Essential
のそれぞれで、今紹介した、サウンドエディターやマルチトラックが使えるのは最上位のStudioのみとなっています。また、各エディションの違いは以下のようになっています。

 

studio editor assistant essential
アルゴリズム ポリフォニック(DNA) ピアノ、ギター、弦楽四重奏など
メロディック リードボーカル、ベースギター、サックスなど
パーカッシブ ドラム、パーカッション、ドラムループなど
ユニバーサル 複雑なポリフォニック素材(DNA)
ツール メインツール ピッチセンター、位置、長さ、ノート分割
ピッチ ピッチセンター、ピッチ進行
ビブラート ビブラートとトリルの強度/方向
ピッチドリフト ピッチドリフトの強度/方向
フォルマント フォルマントシフト、フォルマント進行をコントロール
音量 ノートの音量、音量進行、ミュートをコントロール
タイミング ノートの位置、長さ、クオンタイズをコントロール
タイムハンドル ノート内の時間進行を変更
アタックスピード ノートの冒頭のトランジェントとパーカッシブさをコントロール
ノート分割 ノート分割を挿入、削除、移動
機能 マルチトラッキングとマルチトラックノート編集 複数のトラックを同時に表示および編集
サウンドエディター パーシャル間のバランスを調整して音色を変更
テンポ検出 録音内のテンポ変化をマップおよび編集
テンポエディター 録音内のテンポ変化をマップおよび編集
ノートアサインメントモード ノート分割のエラーを修正
カット、コピー、ペースト クリップボード機能を使用して素材を再配置
ピッチとタイミングのマクロ ノートのインテリジェントな自動補正と最適化
オーディオ-MIDI変換 オーディオノートをMIDIとして保存
音階補正 選択した音階に従ってノートを移動、または音階に合わせてノートをクオンタイズ
音階を編集 音階を変更または独自の音階を作成
音階検出 オーディオから音階を抽出
参照トラックにクオンタイズ あるトラックのタイミングを別のトラックに適用
互換性 スタンドアロンモード Melodyneを独立したアプリケーションとして実行
プラグイン Melodyneをプラグイン(AU、VST、RTAS、AA○、ARA)として対応するDAWで使用
ReWire MelodyneをReWireクライアントとしてスタンドアロンで使用
32/64ビット対応 Melodyneを32/64ビットシステム上でネイティブアプリケーションとして使用
相互互換性 他のエディションで作成したプロジェクトを開いて編集

 

なお、このMelodyne 4はスタンドアロンのソフトとしても使うことができるし、VSTやAudioUnits、RTAS、AAXなどの各種プラグイン環境でも使えるので、DAW内で利用するというのが一般的な使い方だと思います。


ARAに対応しているのでSONARやStudio OneではDAWに完全に同化する 

 

ただ、これらのプラグインとは別にARAというものに対応しているのもMelodyneの大きな特徴です。ARAはSONARやStudio Oneに備わっているものなのですが、完全にDAWの一機能として統合されちゃうんですよね。このSONARの画面を見ても分かる通り、SONARと完全に同化してしまっているので、すごく使いやすくなります。


SONARのメニュー内にオーディオをMelodyne編集するための項目が用意されている 

 

実際、SONARやStudio Oneの上位版にはMelodyneのEsseintialがバンドルされているものがありますが、まったく同じようにStudioやEditorも同化して使うことが可能です。もちろん旧バージョンのMelodyne Essentialを使っている人が、Melodyne 4 Studioをインストールしても、従来と同じように同化させて使うことができますよ。

一方、ちょっとビックリしたのは、私のユーザーアカウントで、Celemonyのサイトにログインしたら、Melodyne 4 Esseintialへ無料アップグレードできるようになっていたことです。「何で!?」と思ったら、旧Melodyne EssentialおよびAssistantのユーザーはみんなMelodyne 4は無料アップグレードするサービスを行っていたんですね。私の場合はSONARおよびStudio Oneユーザーとして旧Melodyne Essentialをユーザー登録していたのですが、そこも対象となっているという太っ腹。以前、Melodyne Essentialを入手したという人はぜひチェックしてみてくださいね!

さらに旧Melodyne Editorのユーザーは2016年4月30日までの期間限定で、通常35,000円のところ15,000円でStudioにアップグレードできるサービスも行われています。詳細は国内代理店であるフックアップのサイトをチェックするのが早いですが、メーカーとしてぜひフル機能を持ったStudioを使って欲しいという姿勢のようですね。

とはいえ、まずは30日の試用版があるので、これをダウンロードして試してみることをお勧めします。

【製品情報】

Melodyne 4製品情報
Melodyne 4試用版ダウンロード
Melodyne 4アップグレード

【価格チェック】

◎Amazon ⇒ Melodyne 4 Studio
◎サウンドハウス ⇒ Melodyne 4 Studio
◎Amazon ⇒ Melodyne 4 Editor
◎サウンドハウス ⇒ Melodyne 4 Editor
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◎サウンドハウス ⇒ Melodyne 4 Assistant
◎Amazon ⇒ Melodyne 4 Essential
◎サウンドハウス ⇒ Melodyne 4 Essential

その他販売店リンク

 

Commentsこの記事についたコメント

11件のコメント
  • KUO

    自分の環境ではSONAR X3のRegionFXからMelodyne4が使えないです…
    トラックを選択→RegionFX→Melodyne→RegionFXの作成 といつも通りやってるはずなのですが、
    一瞬読み込んだかと思えばパッと消えてしまって使えません…。
    更にもともと使っていたMelodyne2のセッションファイルも開いたら「ユーザーアカウント制御」→「エラー 処理されない例外」→「プラグインMelodyneに致命的なエラーが起こりました。」となり完全にお手上げです…。
    全くストレートに保存場所も考えず次へ次へでアップデートしてたらこうなりましたが、藤本さんは普通にやっても大丈夫だったんですか?
    現在ceremonyにメールで問い合わせてますが、早急に使えないと不便で…

    2016年1月23日 8:45 PM
  • 藤本健

    KUOさん
    私が使ったのは最新のSONAR Platinumなので、SONAR X3での検証はしていませんが、
    問題あるとはあまり思えないのですが……。V-VOCALとか旧Melodyneが入っていて、それらが
    バッティングしてしまっているんですかね…。

    2016年1月23日 10:33 PM
  • KUO

    >KUOさん
    >私が使ったのは最新のSONAR Platinumなので、SONAR X3での検証はしていませんが、
    > 問題あるとはあまり思えないのですが……。V-VOCALとか旧Melodyneが入っていて、それらが
    > バッティングしてしまっているんですかね…。
    そうなんです、自分も問題は全くないと思っていたのですが今までのMelodyne2をRegionFX使用したセッションファイルが全て開けなくなってしまって…orz
    V-Vocalは問題なく動きます…!Melodyne4のインストール時に「過去のバージョンは無効となります」とあったので旧Melodyneは無くなっているものと思います(再インストールしたりしました
    TASCAMさんのホームページは現在自分の方ではスマホ、タブレット、パソコンから全て繋がらず、Cakewalkも英語サポート、Ceremonyもドイツ語か英語、と困惑ですw
    SONARでMelodyneをRegionFXとして使うにはVST経由で認識してるみたいなので、
    一応確認してみたらRegionFXからじゃなければ使用することはできます(今までこれでやったこと無いから不便で…w

    2016年1月24日 5:56 PM
  • 藤本健

    KUOさん
    いま、SONAR Platinumをアンインストールして、SONAR X3をインストールして試してみました。
    結論からいうと、どうもうまく動きません。Region-FXを選択はでき、一瞬Melodyneの画面は
    出てくるものの消えてしまいます。また、Region FXへの変換がされてないようです。
    何等かのバグがあるのかもしれませんね。やはりTASCAMに確認するなどして、修正してもらわないとダメかもしれません。

    2016年1月24日 6:17 PM
  • KUO

    わざわざ検証の方、ありがとうございます・・・!
    そうです、その通りなんです!一瞬出るのですが消えてしまうのです…。
    自分もメール送ろうと思ってTASCAMのHPに行こうとしたら、
    TASCAMのHPが落ちてるという事態になっています。
    (更に1月31日にX3のサポートが切れてしまうようです)
    もしX3への対応が出来ないならせめてどこかでダウングレードの方法があればいいのですが…(4だとひとつでもMelodyneをRegionFXで使ってたら完全に致命的なエラーで落ちるみたいなので)

    2016年1月25日 8:52 PM
  • cap

    私もKUOさんと同じ症状です、Melodyne2から4へ変えたらMelodyneが使えなくなりました。以前のMelodyne2も使えなくなってしまったので(涙涙)です。

    2016年1月25日 11:00 PM
  • KUO

    藤本さん
    capさん
    あまり似たような症状を聞かなかったので自分のバージョンを確認してみたところ、X3dでした。
    もしや?と思い復活したTASCAMさんのページに行ったところ、
    だいぶ前にX3eが配布されており、そちらのバージョンだとMelodyne周りのバグも修正されているようです。
    自分の環境ではX3eにアップデートしたら治ったので、もしかしたらアップデートすれば治るかもしれないです!

    2016年1月26日 12:50 PM
  • 藤本健

    KUOさん
    なるほど、UPDATEで直ったんですね。
    無事、解決でよかったです!

    2016年1月26日 5:41 PM
  • cap

    KUOさん!すばらしい!X3eのアップデートで問題なく使えるようになりました、感謝しますありがとうございました。
    藤本健さま~藤本健のDTMステーションいつも見させていただいてます、ためになる情報ありがとうございます。

    2016年2月2日 11:12 PM
  • 岩佐

    すいません。
    こんな初歩的な事を書いてしまい申し訳ないのですが
    sonar plutinumをしようしていてmelodyne 4を購入したのですが、どうしてもプラグインに入れる作業が出来なくて困ってますm(__)m
    もし良ければ教えてください。

    2016年6月10日 8:32 PM
  • 藤本健

    岩佐さん
    こんにちは。以前、似たような情報があり、SONARのアップデータを使って最新版に更新したら、うまく動いたという人がいました。
    確証はありませんが、試してみる価値はあるかもしれません。

    2016年6月12日 4:01 PM

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