Steinbergが5月に発表していた楽譜作成ソフト、Dorico(ドリコ)が11月下旬にヤマハミュージックジャパンから発売されることが決まりました。楽譜作成ソフトといえば、これまでMakeMusicのFinale(フィナーレ)、AvidのSibelius(シベリウス)が二大ソフトとして圧倒的なシェアを誇っていましたが、そこにSteinbergが殴り込みを掛けた格好です。

Windows、Mac対応のハイブリッドで、価格も通常版の想定売価が58,000円(税抜き)とFinaleに完全にブツけてきているとともに、Finale、SibeliusさらにPresonusのNotionからの乗り換えユーザーには30,000円で提供するクロスグレード版を用意するなど、先行2製品をかなり意識してリリースする模様です。先日そのDoricoの内覧会で製品を見てきましたので、その概要について紹介してみましょう。
 

Steinbergが開発した楽譜作成ソフト、Dorico
 
ご存じの通り、Steinbergが出すDAW、Cubaseにも古くから譜面作成機能は搭載されています。しかし、それはあくまでもDAWの付加的機能であって、ホンモノの楽譜作成ソフトとは、役割が違っていたのも事実。FinaleやSibeliusは、いわゆる浄書屋さんと呼ばれる楽譜作成業者も使うソフトであり、市販の譜面や雑誌のスコアなども、こうしたソフトを使って作られているのです。

今回、Steinbergが発売するDoricoも、その浄書屋さんが使うプロ用途の楽譜作成ソフトであり、後発であるだけに、「機能面、性能面においてFinaleやSibeliusを超える」と打ち出しているのです。

発売元であるヤマハミュージックジャパンの説明によると、Doricoは以下のような7つの特徴を持っているとのこと。


Doricoの7つの特徴

順に簡単に説明していきましょう。Doricoは単一ディスプレイのノートPCで快適かつ効率的に使用できるように設計されており、ソナタ、交響曲、歌集、ミュージカル、オペラなど複数の楽章で構成される音楽を簡単かつシンプルに編集できることを売りにしています。各プロジェクトファイルには「フロー」と呼ばれる独立した楽譜を必要なだけ含めることができ、各フローには記譜、配置、処理を個別に行えるため、複雑な楽譜でも効率よく作成できるのだそうです。


Doricoのパッケージ。通常版は実売で58,000円、クロスグレード版が30,000円程度の見込み


また最新のソフトであるだけに、64bit OS、マルチコア・マルチスレッドに対応して開発されているために、非常に高速に軽く、安定して動作するのも特徴となっています。実際、内覧会のデモでは非常に大規模なオーケストラ譜面を思い切り高速にグルングルンと縦横無尽にスクロールしながら、表示させていましたが、とても滑らかに、もちろん途中で止まるようなこともなく動いていました。


大規模なオーケストラ楽譜もスムーズに作成できる

またインターフェイスには「設定」、「記譜」、「浄書」、「再生」、「印刷」の5つのモードがあり、ツールバーから1クリックでアクセスできるようになっています。ウィンドウの左右と下部には折り畳み式パネルがあり、ディスプレイ上に大きく楽譜を表示したいときは1クリック、またキーボードショートカットでパネルを非常にできるようになっています。


音符を入力する記譜画面


記譜は単一のキーでデュレーション、臨時記号、アーティキュレーション、音符のピッチを設定でき、その他の項目についてもSHIFTと文字キーなど、ショートカットを使用して、ほぼすべての記譜をコンピュータのキーボードだけで入力できるのも特徴です。


ショートカットキーを使って効率のいい入力が可能

さらに楽譜では、デザイン性は非常に重要な要素となります。そのため「世界で最も要求の厳しい楽譜出版社と仕事をしている経験豊富な浄書家」の監修のもとで浄書エンジンが開発されたとのこと。さらに専用に独自開発されたBravuraフォントが搭載されるなど、ここにもかなりのこだわりを持っているようです。

キレイなグラフィックと美しい音符間隔を実現


また独自のページレイアウト機能によって、楽譜、テキスト、グラフィック用のフレームを自由に配置できるのも特徴となっています。フレームのプリセット配置をマスターページとして定義しておけば、複数のプロジェクトに繰り返し適用でき、ページサイズが異なる場合でも、動的かつ自動的に調整されるとのことです。


DTP的な印刷物を作成するための記譜画面


このようにDoricoは、楽譜を作成するソフトであり、ある意味、Adobe InDesignやQuarkXPressのようなDTPソフトに近い、印刷を目的にしたソフトと言えるわけですが、もちろん、Steinbergが開発するソフトですから、演奏して音を確認するという面でも、強力な機能を装備しています。

まずはCubaseやNuendoと同じオーディオエンジンを搭載しており、VST3プラグイン準拠のソフトウェア音源、エフェクトを扱えるようになっています。実際、Cubaseでもお馴染みの音源であるHALion Sonic SE 2およびHALionSymphonic Orchestraがバンドルされているほか、コンボリューションリバーブのREVerenceなどのエフェクトが25種類入っており、これらで演奏できるようになっているのです。


HALion Sonic SE 2、HALionSymphonic Orchestraも搭載され、高品位な演奏も可能

もっとも楽譜作成ソフトにおいては、譜面データ=MIDIデータというわけではありません。譜面は読む人がどう解釈するかによって演奏が変わってくるので、簡単ではないのです。それでも、このDoricoでは楽譜に期された演奏技法=アーティキュレーションをソフトウェア音源の再生にマッピングできる「VST Expression 2」と、ノートごとにエクスプレッションコントロールを行える「VST Note Expression」をサポートするなど、かなり強力な演奏機能を持っているのです。

もちろん、Cubaseだけでなく、ほかのDAWや譜面作成ソフトから出力されたMIDIファイル、さらにはMusicXMLファイルを読み込むことができるほか、反対にDoricoで作成したデータをMusicXMLで出力して、ほかのソフトにもっていくことも可能になっているなど、かなり柔軟性のあるソフトに仕上がっています。



なお、この内覧会において、15分弱のDoricoのデモが行われ、その内容をビデオ撮影してみました。手持ちのiPhoneで撮影したので、解説の声が小さかったり、途中、ピンボケしている箇所があるなど、多少見ずらいところはあると思いますが、Doricoがどんなソフトで、どんな動きをするのか、ぜひご覧になってみてください。

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