これまで何度か取り上げてきたUniversal Audioapollo twin。これは小さな機材でありながら24bit/192kHzのオーディオインターフェイスを備えるとともに強力なDSPが内蔵されていることで、実質的に大型コンソールを内蔵しているようなシステムになっており、しかも数多くのビンテージエフェクトを再現できるようになっていることから、プロユーザーを中心に大きな広がりを見せているユニークな機材です。

そのapollo twinを動作させるためのシステムウェアであるUAD-2の新バージョンUADソフトウェア v9.0の登場によって、これまでMac専用だったapollo twinがWindowsでも使えるようになったのです。まあ、すでにWindows専用のapollo twin USBという製品があったので、大した話ではないように感じるかもしれません。ところが、今回の対応はDTMの世界のみならず、ThunderboltUSBに関わるコンピュータ界全体における大革命ともいえる意味を持った動きなんです。それがどういうことなのか、先日の楽器フェア2016に合わせて来日していたUniversal Audioのインターナショナル・セールスマネジャーであるユウイチロウ“ICHI”ナガイさんに話を伺ってみました。


ICHIさんにapollo twinがWindowsで使えるようになったことの意味を聞いてみました
 
--今回のapollo twinがWindowsに対応しました。これについて、いろいろと分からないことも多いので教えてください。
ICHI:apollo twinより以前、2012年にFireWire接続のapolloをリリースしたときから、ここにThunderbolt用カードスロットを搭載しており、Thunderbolt対応しますよ、とアピールしていました。そして事実世界初のThunderboltオーディオインターフェイスとして、世の中へ出していったのですが、これまではMac対応のみとなっていました。当時からいずれWindowsに対応する、ということは言っていたのですが、なかなか環境が整いませんでした。


Universal Audioのユウイチロウ“ICHI”ナガイさん

--環境が整わないとはどういう意味ですか?
ICHI:Windows PCにおいて、なかなかThunderboltが普及していなかったというのが根底にあるとは思いますが、Windowsにおいて使えるThunderboltのインターナルドライバがなかなか出てこなかったのです。正確にいえばオーディオを流せるシステムがなかったのです。もちろん個別に開発するという選択肢もありましたが、数多くのシステム環境があるWindows用に我々のような1メーカーが取り組むのには、いろいろと無理も生じます。そのため、多くのオーディオ機器メーカーとともに、Microsoftに要望していたのです。それがずいぶんと時間が経ってしまったものの、ようやく正式に対応されたので、我々もそれに則る形でapollo twinをWindows対応させることができたのです。


Thunderbolt接続のapollo twinが、そのままWindowsへ接続可能になった 

--Windowsがそんな対応をしたということをよく知らなかったのですが……。
ICHI:あまり大々的には言われていませんが、先日MicrosoftからリリースされたWindows 10 Anniversary Updateによって対応しています。昨年12月には、その詳細も公開されたので、確認したところ、ハイスピードでオーディオを流せる我々の求める条件に合致したものであることが分かったので、Universal Audioとしても開発を進め、今回のUAD-2 v9.0で対応させたわけなのです。


Windows 10 Anniversary Update上で動作しているUAD-2のシステム

--ということはapollo twinがWindows対応した、というのはWindowsであれば何でもOKというわけではなく、最新版のWindows 10 Anniversary Updateのバージョンであることが条件ということなんですね。
ICHI:その通りです。Windows 7など古いOSで使えるわけではありません。あくまでもWindows 10 Anniversary Update以降のOSを使うことが条件であり、ハードウェアとしてもCPUはSkylake以降のプロセッサでの対応としています。またマザーボードも最新版のBIOSにアップデートしていただくようにお願いしております。


確かにWindows上で、コンソールもしっかり動作している 

--このWindows 10 Anniversary UpdateにすることでMacと条件が揃ったわけですね。
ICHI:はい。ただし、現時点においては、接続できるのはapolloは1台のみ。プロセッサであるUAD-2のほうは複数台カスケードできるのですが……。とはいえ、2017年の第1四半期には複数台のapolloが接続可能となりますので、ご安心ください。


現時点でWindowsに接続できるapolloは1台のみだが、2017年の第1四半期には複数接続対応する 

--複数台のapolloが繋げるようになると、PC側からは1台のオーディオインターフェイスとして見えるわけですよね。
ICHI:そうです。完全に1つのオーディオインターフェイスとして扱うことができるので、apollo twinというよりもapollo 16などを組み合わせることで、かなり大規模な入出力を持ったシステムを構築することが可能になります。

--今回、ようやくWindowsでもThunderbolt版のapollo twinが利用可能になったわけですが、これがなかなか実現しなかったからapollo twin USBを出したんですよね。今後、これはどうなるのでしょうか?また現在Windows専用のapollo twin USBをMac対応させる考えはあるのでしょうか?
ICHI:まずapoll twin USBは今後もずっと継続していきます。WindowsのThunderbolt接続に対応したとはいえ、そもそもThunderboltが利用可能なWindowsのPCはほとんど普及していないので、当面はapollo twin USBが主流であると考えています。一方で、MacのほうはThunderbolt端子がないマシンのほうが少ないので、下手にMac対応させると混乱が生じるだろうと考えています。したがって、今のところMac対応させる予定はなく、切り分けています。


apollo twinのリアパネル

--楽器フェアでのブースの展示を見ると、確かにWindows上で動いているのは分かるのですが、接続端子を見るとPC側はUSB Type-Cで接続していますよね?この辺がよく分からないのですが……。
ICHI:USB Type-Cについては、ユーザーの間でもかなり混乱が生じていると思いますが、これを理解するには頭の整理が必要になっていきます。まず、このUSB Type-CはUSBの規格というよりも、単に物理的な端子だと考えるのが正解です。USB Type-Cは裏表のない端子であり、iPhoneのLightning端子のように、どちら向きで差し込んでも問題がない便利な設計になっています。ここに通す信号の規格としてUSB 3.1とThunderbolt 3の2つがあるのです。正確にはUSB 3.1には大容量の電源供給を行うものと、そうでないものがあるので、3種類と考えてもいいかもしれません。したがって、apollo twinはUSB Type-Cのケーブルを使いながらもThunderboltで接続しているわけなのです。


USB Type-Cの端子には雷マークの記載が確認できる 

--ええ??そんなことになっていたんですか?ということは、USB Type-Cのコネクタが出ているPCならThunderboltデバイスが使えてしまう、と!
ICHI:そこが分かりにくいところなのですが、さっき言った通り、USB Type-Cは単なる物理的な端子、ケーブルでしかないんです。それがUSB 3.1に対応しているかThunderboltに対応しているかはPC側によって異なります。見分け方としては、その端子に記載されたマークを見ればよく、雷のマークがついていればThunderboltに対応していることを意味しています。実際、今回使っているマシンにも雷マークがついていますよね。ただし、apollo twinはThunderbolt 2に対応した端子形状となっているので、USB Type-CからThunderbolt 2に変換するコンバータを入れているのです。今回使ったものは、ちょっと大きめですがAppleが出しているものだとコンパクトで使いやすそうです。今後は各メーカーからもリーズナブルなコンバータが出てくるでしょうね。



手のひらサイズの機材でUSB Type-CからThunderbolt2に変換していた

--なるほど、なかなか混乱して難しいけれど、USB Type-Cが単なるケーブルだと考えるとスッキリ分かる気がします。あとは、こうしたPCがどのくらい普及するか、ですね。
ICHI:AppleもMicrosoftもIntelもこの規格で合意したので、今後は確実にこちらに変わってくると思います。Thunderboltは、CPUの端子をそのまま出しているのにも近い規格だから万能なんですよ。これを元にUSBでもFireWireでも、SATA、PCI、さらにはHDMIなどのディスプレイでもどんな端子にでも変換できますから。今後、本体はとっても小さいPCが登場し、そこにThunderbolt対応したUSB Type-Cの端子だけを持つもの、なんていうのが出てくるのではないでしょうか?外部に自分の好きな端子に変換するDOCKを接続する……なんて使い方が増えていくかもしれませんね。DOCKさえあれば、すごく古い機材でも接続できるわけですから。

--本日はありがとうございました。

今回のICHIさんへのインタビュー、apollo twinの話を伺うつもりが、コンピュータ界全体を見渡すような話になってしまいましたが、個人的にはとっても勉強になりました。DTMユーザーのみなさんでも知らなかった方が多いのではないでしょうか?

まずは私も、Thunderbolt 3に対応したUSB Type-C端子を持つPCを入手するところから始めてみたいと思いっているところです。ちなみに、今回、楽器フェアで展示されていた、このPCはフックアップで扱っているOM Factory制音楽制作用マシン、ARMSTRONG(アームストロング)というのだとか!実質的にはapollo/UAD-2専用といってもよいPCになっていましたが、もちろん名称は、アポロ11号の船長の名前に由来するわけですよね(笑)。