作曲の授業はすべてCubaseで。Steinberg認定の専門学校を覗いてみた

専門学校におけるDAWに関する授業というと、これまでPro Toolsを使うというケースがほとんどだったと思います。確かにレコーディングスタジオの多くの現場でPro Toolsを使っていることを考えれば即戦力という点でそうした選択になるのでしょう。一方で、作曲やアレンジとなると、ほかのDAWが使われるケースも多いのが実情。

そうした状況に合わせて、専門学校側も対応を進めてきているようです。先日お伺いした大阪スクールオブミュージック専門学校は、1999年からCubaseを用いた授業を行っており、現在は「Steinberg Certified Training Partners(Steinberg認定トレーニングパートナー)」としてもSteinbergの認定を受けているとのこと。実際どんな授業なのか、また卒業後どんな道に進もうとしているのかなど、先生や学生にお話しを伺ってきたので紹介してみたいと思います。

大阪スクールオブミュージック専門学校の「作曲コース」を見学してきました

大阪スクールオブミュージック専門学校は、全国に70校あるグループ学校の中で最初にできた音楽学校であり、1987年に開校だったから、今年で30年目になります。当校の設立当初からのコンセプトは『業界と一緒に、業界が求める人材を輩出していく』ということで一貫してやってきました」と語るのは教務部カレッジ音楽科の立石一成さん。


教務部カレッジ音楽科の立石一成さん 

同校では音楽プロデューサーを目指すコースやトラックメイカーを目指すコース、レコーディングエンジニアを目指すコースなど、さまざまなカリキュラムがある中、音楽制作というジャンルにおいては「作曲コース」というものがあり、ここは細かく分類すると、
・作曲家デビューコース
・サウンドクリエーターコース
・作曲&ミュージシャンコース
の3つに分かれます。そしてそのいずれもが音楽制作用のDAWとしてCubaseを使っているのです。

多くのレコーディングスタジオではPro Toolsが導入されていることもあり、レコーディングの授業ではPro Toolsを用いていますが、作曲やアレンジの世界ではCubaseが広く普及していることから、授業でもCubaseを使うという選択をしました。入学したての1年生の場合、DAWの経験がない初心者がほとんどですので、『DTM』という必修科目でCubaseのオペレーションを習得していきます。その後、さまざまな授業を通じて作曲スキルや音楽制作のスキルを身に着けてもらうとともに、数多くの企業から来るコンペにも積極的に参加してもらっています。その制作用として各個人ごとに使えるMacとCubase、オーディオインターフェイスとしてのUR242などの環境を整えています」(立石さん)


なかなか贅沢な機材が揃っている羨ましい環境

実際に校内を見学させてもらいましたが、全員が使える数のMac、それにCubaseが動く環境が揃っているなかなか贅沢な環境でちょっと驚きました。これだけ導入するには、かなりのコストがかかるだろうな……と。

職員室には、Steinbergキーがいっぱいぶら下がっていた

では、実際にここに通っている学生のみなさんは、どういうことを目指しているのでしょうか?何人かに話を伺ってみました。


作曲家デビューコース・2年生・永澤和真さん

中田ヤスタカさんに憧れて、中学校3年生のときにCubaseを使いだしました。将来は音楽の道に進んでいきたいと考えていて、そのためにどう進学するといいのかを調べた結果、ここを選びました。現在は、楽曲の制作に取り組む毎日で、とっても充実しています。授業で使うのもCubaseなので、とても分かりやすく、知らなかった機能や技法を身に着けることができたし、細かなところまで先生から教えてもらえるので心強いです。コンペは高校のころから参加していて、アイドル系で採用されてCDになった作品もあるんです。また学校からの紹介で、ダンス系ユニットのコンペに出したりもしています。将来的には、作家事務所に所属して活動したいと思っているところで、すでに何件かのオファーもいただいているので、どこに行くといいのか先生とも相談しつつ、検討しているところです」(作曲家デビューコース・2年生・永澤和真さん)


サウンドクリエイターコース・2年生・木邨菜々さん

子供のころから映画が好きで、将来は映画に携わる仕事がしたい、とずっと思っていました。映画の仕事といっても、いろいろある中、音楽の仕事、劇伴を作る仕事に就ければいいなと考え、そのための学校探しをしていた結果、入学を決めました。私自身、学校に入るまではDAWの存在も知らなかったくらいなので、入学してからCubaseを触ったのが最初の経験です。昨年自分でもCubase Pro 8.5を買い、自宅でも作業していますが、私はMIDIでの打ち込みではなく、オーディオでのレコーディングを中心にしています。今の自分にとって、映画に関わる仕事はまだまだ遠い世界ではありますが、さまざまなチャレンジをしているところです。学校を通して企業からも課題をもらえるので、先日は関西各地を紹介する『旅の星』というネット上の番組のBGMに応募した結果、採用してもらうことが決まったところなんです。今後もこうしたことに積極的に取り組んでいきたいと思っています」(サウンドクリエイターコース・2年生・木邨菜々さん)


みんなそれぞれの道を目指しながら勉強している

ほかにもバンド活動をしながら、将来は自分自身がアーティストとして活躍したいと作曲やアレンジの勉強をしている人や、ゲーム会社に就職してゲーム音楽を作りたいとチャレンジしている人など、同じ学校にいながらも、それぞれの道を目指して頑張っているようです。大学生でも「どこかいい会社に就職したい」というボンヤリした目標しか持たない人が多い中、それぞれがしっかりした目標を持っているのがすごくいいな……という印象でした。

コンペの作品作りに関し、真剣に先生に話を聞いている学生

一方で、先生たちも魅力的な方々がいっぱいです。


小林哲先生 

本業はアレンジャーでして、これまでZARDや倉木麻衣、三枝夕夏 IN db、竹井詩織里……と数多くのアーティストのアレンジを手掛けてきました。その一方で、15年前から当校で教えているのですが、実は私自身もこの学校の卒業生なんですよ。大学を卒業後ここに入り、当初はVision、その後Cubaseを身に着けてきましたね。数多くの学生を見てきましたが、やはり個人差が激しいのは間違いないと思います。できる子には、どんどん試練を与えて成長させていく一方、そこに満たない子は落ちこぼれないように支えていく。そうすることで、誰の力を借りなくても、一人で自己完結する力を備えられるようにする、それが我々講師の務めだと考えています」(小林哲先生)


にしだかずふみ先生

私は電子音楽家、サウンドデザイナーとしてループ系の素材を作って、アメリカの企業に納品するといった仕事をしつつ、この学校で教えています。担当している授業は作曲そのものよりも、技術的な話が中心。レコーディング機材の使い方だったり、ミックスしての音作りといった辺りですね。ここに集まってくる学生の音楽性を見ても幅広いんですよ。J-POPに取り組んでいる子もいれば、映画のオーケストレーションをしている子もいるし、ノイズ系のグリッジを作っている子もいるなど、学生のバラエティーさも大きな学校の特徴といえるかもしれません。そのため、入学してくる時点では、好き勝手のバラバラだけど、お互い教えあったり、情報交換していくことで、広がっていくんです。僕らが一方的に教えるというよりも、学生同士が交流しながら音楽性を深めていくので、そこに講師がアドバイスしていくという感じですね」(西田和史先生)


大阪の中心部、心斎橋駅から徒歩10分程度のところにある大阪スクールオブミュージック専門学校 

実はこの大阪スクールオブミュージック専門学校の先生は、先生が本職というわけではなく、アレンジャーだったり、作曲家だったり、サウンドデザイナーだったりとプロとして活躍している人ばかりなんですね。そうしたプロの現場での知識を元に教えてもらえるというのは、なかなか大きな魅力だし、幅広い知識が身に着きそうですよね。


校内では映像のコースや演奏のコースなど、さまざまな学生がコラボレーションする授業も行われていた 

もちろん、音楽だけで食べていくというのは、この時代そう簡単なことではないと思います。きっとこの先、苦労もいっぱいだとは思いますが、DTMを学校で習得し、それを武器に社会へ飛び立とうという学生がいっぱいいるのは、とっても嬉しい感じでした。ぜひ、みなさん頑張ってほしいですね。

なお、この記事はDTMステーションとSteinbergとのコラボレーションによる記事です。Steinbergサイトのスクールのページにも、より詳しいインタビュー記事が掲載されていますので、そちらも併せてご覧ください。

【関連情報】
Steinbergサイト・スクール
大阪スクールオブミュージック専門学校
大阪スクールオブミュージック専門学校紹介記事(Steinbergサイト)

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