プロのミュージシャンやエンジニアに取材していて、よく話題に上るAntelope Audio(アンテロープ・オーディオ)というメーカー。世界中のマスタリングスタジオでAntelopeのルビジューム・クロックが使われているほか、USBやThunderbolt対応の高級オーディオインターフェイスも出しており、以前「Antelopeの超高機能USB/TBオーディオIF、Zen Tourを触ってみた」という記事で紹介したこともありました。

そのAntelopeから「いまオーディオインターフェイスを購入すると、30本のプラグインをプレゼントするSynergy Bundleというキャンペーンを行っているので、ぜひ試してみて!」という連絡があり、Orion Studioという超高級オーディオインターフェイスが送られてきたのです。もちろん、もらったわけではなく、数週間の貸し出しということではあるのですが、実売価格31万円というオーディオインターフェイスなんて、そうそう使えるものではないので、どんなものなのか試してみました。



実売31万円のオーディオインターフェイス、Orion Studioを使ってみた
 
改めてAntelope Audioという会社を紹介すると、ここはブルガリアの首都、ソフィアにあるメーカーで、20年以上、デジタルクロックやアナログ回路、A/DやD/Aの変換といったことに特化して研究・開発を行ってきた会社です。こうしたデジタルオーディオ系のメーカーって、日本、アメリカ、ドイツが中心である…という印象を強く持っていましたが、ブルガリアで、そんな高性能なものが作られていて、世界中のプロが愛用しているという事実はちょっと驚きですよね。

同社のルビジューム・クロック、Isochrone 10Mなどは80万円以上する機材なので、一般ユーザーにはなかなか手が出せないわけですが、USBやThunderbolt対応のオーディオインターフェイスとなると、もう少し価格的にバリエーションが出てきます。現行機種でいうと、以下のような機材があります。

Orion32 HD ¥450,000
Orion Studio ¥310,000
Goliath ¥590,000
Orion 32+ ¥380,000
Zen Tour ¥190,000
Zen Studio ¥250,000
Orion 32 ¥280,000

どれも、そう気軽に手を出せる金額ではありませんが、数万円で入手可能なオーディオインターフェイスと比較して、何がどう違うのかちょっと試してみたいところですよね。


1Uラックで24bit/192kHz、32in/32outを装備するOrion Studio 

今回、私の手元に届いたのは1UラックサイズのOrion Studio。ThunderboltでもUSB 2.0でも使えるオーディオインターフェイスで、Thunderbolt接続の場合は32in/32out、USB 2.0接続の場合は24in/24outで使えるという仕様です。最大の特徴は、世界中が絶賛するAntelopeのクロックシステムを搭載していること。ジッター管理を可能とした64bit制御によるAFCクロッキング技術というものを使ったシステムとのことです。


USBまたはThunderboltでPCと接続する

英語ではありますが、以下にOrion Studioを紹介するビデオがあるので、これを見るとイメージが付くのではないでしょうか?



このビデオにもあるように、12個のクラスAマイクプリアンプを搭載したアナログ入力を装備しており、フロントに4つ、リアに8つのコンボジャック端子を備えています。すべてに+48Vのファンタム電源供給ができ、ライン入力にも切り替えられるほか、フロントの4つに対しては、Hi-Z入力にも対応可能となっています。


マイク、ライン、Hi-Zを選択可能なマイクプリ内蔵の入力端子

また、リアにはD-Sub端子経由で出力できる8×2=16個のアナログ出力、モニタースピーカー出力がステレオで2組を装備する。さらにS/PDIFの入出力、ADATの入出力、そしてWordクロックの入出力を装備しています。


Orion Studioのリアパネル

ユニークなのはフロント右側にヘッドホン端子が2つあるのに加え、リアンプ用の出力も備えているんですね。まさにオールマイティーなオーディオインターフェイスとなっています。


フロント右側にはヘッドホン端子×2に加え、リアンプ用の端子も2つ装備されている

サンプリングレートは44.1kHz、48kHz、88.2kHz、96kHz、176.4kHz、192kHzのそれぞれを切り替え可能で、サンプリング分解能は最高で24bitとなっています。このOrion StudioをUSBまたはThunderboltでPCと接続するわけですが、もちろん、MacでもWindowsでも使うことが可能で、MacならCore Audioデバイス、WindowsならASIOデバイスとしてに認識されるので、どのDAWでも利用することが可能ですね。

実際、ヘッドホンおよびモニタースピーカーを接続して24bit/96kHzでレコーディングされたデータを再生してみると、非常にクッキリしたサウンドが飛び出してきます。なるほど、これが31万円するAntelopeの音なのね、とちょっと感激。もちろん好みの問題というのはあると思いますが、個人的には非常に解像度の高い感じのサウンドで好きですね。ただOrion Studioがスゴイのは、マスタークロックやアナログ回路がよくできているというところに留まりません。

Zen Tourと同様、ここに強力なFPGAというチップが搭載されており、これでミキシング処理からEQやコンプ処理、さらにはさまざまなエフェクト処理をこなせてしまうのです。そう聞くと「FPGAってDSPのこと?」と思う方もいると思いますが、そのように受けて止めてもらってOKです。


Routing Matrix Viewを使うことで自由自在にルーティングを行うことができる

ここで、FPGAについてあまり詳しく語っても仕方がないので、ごく簡単に紹介しておくとこれはプログラム(ファームウェア)で書き換えが可能なLSIで、プログラム次第で何にでも変身してしまうチップです。一般的にDSP搭載のオーディオインターフェイスというと、AnalogDevicesやTIなどが出している汎用的なDSPを使ってプログラムしているのに対し、これはFPGAを利用した完全に独自設計のDSPとなっているだけに、高いパフォーマンスを発揮できるようになっているんですね。


必要に応じて、さらに細かくどことどこを結線するかを指定していくこともできる

そのFPGAを利用したOrion StudioをコントロールするソフトがOrion Studio Contorl Panelです。このROUTINGを使うことで、まずはどの信号がどこにルーティングされるかを自由自在に設定することが可能です。


Orion Studio Contorl PanelのMIXER画面

そしてMIXERを使うことで、Orin Studioをまさにミキサーコンソールとして扱うことが可能になります。ここでは各チャンネルのレベルやPANなどの設定はもちろん、FPGAの能力を活用したAuraVerbというリバーブも利用でき、センド・リターンの設定で細かく調整していくことが可能です。


FPGAパワーで動作するエフェクトが数多く収録されている

さらに各チャンネルことにFPGAパワーを使ったエフェクトを組み込んでいくことが可能になっています。具体的にいうと標準のイコライザ、標準のコンプレッサに加えて、
   Vintage EQs (20種類)
   Vintage Compressor (1種類)
   Guitar Amp (10種類)
   Guitar Cabinet (10種類)
が利用可能で、それぞれのチャンネルで最大8段までの組み合わせが可能な贅沢な設計となっているんですね。


ビンテージEQやコンプレッサなど、各チャンネルごとに使うことができる

CPUではなくFPGAで処理している大きなメリットは、ミキサーを介しても、エフェクトを通してもレイテンシーが生じないでモニタリングが可能という点。そうハード処理なので、ゼロレイテンシーで使うことができるんですね。厳密にいえば、このハード処理におけるレイテンシーはあるのですが、CPU処理するのと比較すればゼロといって過言ではないでしょうね。


エフェクトやアンプシミュレータはOverloudの協力の元、設計されている

見た目的にもなかなかカッコいいデザインになっていますが、このUIを含め、音作りはOverloudの協力の元、開発されたとのことで、なかなか使いやすいシステムになっていますよ。繰り返しになりますが、これらのミキサー、エフェクトはすべてFPGAのパワーで処理されるため、接続しているPC側のCPU負荷がかからないというのが大きなポイントです。

さて、このように多チャンネルで超高音質で、FPGAによる超高速処理能力を備えているOrion Studioですが、ブルガリアからメールで連絡をいただいた通り、現在キャンペーン中とのことで、3月末までに購入すると、Overloudのエフェクト30種類と、Studio One 3 Artistがもらえるとのことです。

どのようにもらえるんだろう……と思っていたら、結構簡単なシステムになっていました。そう、Orion Studioのドライバ類をインストールし、コントロールパネルを起動すると、初回、ユーザー登録の画面が出てくるので、ここでメールアドレスなどを入力して登録すると、Antelope側からメールが届くとともに、ここにダウンロード情報が記載されているんですね。


Antelopeロゴの入ったAntelope版のStudio One 3 Artist 

Studio One 3 Artistは通常、11,852円で販売されているソフトですが、Antelopeのロゴが入ったAntelopeバージョン(機能的な差はなさそうです…)が入手できます。


いま購入すればOverloudのTH3が無償でダウンロードできる 

またOverloudのエフェクト30種類というのをバラバラにインストールするのかな…と思っていたら、3本のアプリケーションの中に入っているという形になっていました。具体的にいうと
   TH3
   BREVERB 2 Antelope
   REmatrix Player
のそれぞれです。この中に入っているOverloudのエフェクトは、すべてCPUベースで動作するネイティブ版なので、実はOrion Studioが接続されていない環境でも動作してしまいます。また、VST版、AudioUnits版、AAX版のそれぞれが用意されているため、さまざまなDAWで利用することが可能です。


BREVERB 2 Antelopeも入手可能

ただし、前述のStudio One 3 ArtistはVSTプラグインが利用できないためこれらネイティブ版の30種類のプラグインは使うことができないのが、ややチグハグな印象を受けましたが、30種類の中の多くはFPGAで動作させることが可能なものなので、これをStudio One 3 Artistでも使えるのは大きなメリットですよね。

以上、Antelope Audioの高級オーディオインターフェイス、Orion Studioについて見てきましたが、いかがだったでしょうか?このキャンペーンはOrin Studio以外にも以前紹介したZEN Tour、またZen Studio、Orion32、Orion32+、Goliathの購入でも適用されるとのこと。Antelope製品の購入を検討している方は3月までに決めるのが良さそうですよ!

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【関連情報】
Antelope Audio日本語ページ
Orion Studio製品情報

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