サンプラーの枠に収まらない、強力な音源に進化したHALion 6を使ってみた

Steinbergからソフトサンプラーの代名詞的な製品、HALionの新バージョン、HALion 6が発売されました。Steinberg製品ではありますが、VSTのみならず、AudioUnitsさらにはAAX(Steinbergプラグインでは今回初!?)にも対応したプラグイン音源となっており、スタンドアロンでも動作させることが可能です。Windows/Macハイブリッドの製品で、価格は実売で38,000円(税抜き)と手ごろなものとなっています。

このHALion 6をさっそく試してみたところ、もうサンプラーという枠には収まらないすごい音源となっていました。アナログシンセ・エミュレータにもなるし、グラニュラーシンセにもなるし、ウェーブテーブルシンセにもなる上、リズムマシンになったり、波形を3次元表示しちゃう、トンでもない音源にも変身しちゃうんですね。実際、これがどんなものなのか、同時発売されたHALion Sonic 3(実売28,000円)やCubase付属のHALon Sonic SEとどう違うのかも含めて紹介してみたいと思います。


HALion 6およびHALion Sonic 3が2月16日より発売された


サンプラーっていう存在は、DTMをしている方ならたいていご存じだと思います。そう、実際の音をサンプリング=録音したデータを使って音を出すシンセサイザーのことであり、だからこそ、ホンモノとそっくりなリアルな音が出せるという音源です。


強力なサンプラーであるHALion 6 

ただし、ちょっぴり混乱しやすいのが、サンプラープレイバックサンプラーの違いです。実際、同義で使っているケースも多いのですが、正確にいえばサンプラーというのは、音をサンプリングするところから、それを加工して音源として使うところまでのすべてができるツールであり、プレイバックサンプラーとはサンプラーで加工してできたデータを利用して音源として使うツールのことを意味しています。


音色を読み込んで、パラメータをいじって、演奏するという点ではHALion Sonic 3でも同様のことが可能 

そしてHALionはサンプラーであり、HALion Sonicはプレイバックサンプラーという位置づけで、そのHALion Sonicの機能限定版がCubase付属のHALion Sonic SE。基本的にHALion 6で作ったデータの利用はできるけれど、新たに作ることはできないというわけですね。詳細の違いはSteinbergサイトの「HALionシリーズ機能比較」のページにあるので、ご覧ください。


インストーラを起動すると、HALion 6とともにHALion Sonic 3、そして多くの音色ライブラリもインストールされる

一方で、HALion 6をインストールしてみて初めて気づいたのは、HALion 6という製品には、HALion Sonic 3も付属しているということ。そう、プレイバックサンプラーであるHALion Sonicの新バージョン、HALion Sonic 3もHALion 6と同様に単体発売されているものなんですが、それそのものがHALion 6の中に含まれているんですね。

スタンドアロンで起動すると、まずはMediabayでの音色選択画面が登場する

さて、このHALion 6を、まずはスタンドアロンで起動してみました。まずはMadiaBayというCubaseでお馴染みの音色選択画面が出てくるので、ここから楽器カテゴリーや音色の雰囲気などを指定しながら、目的の音色を探し出して読み込みます。ピアノ、ギター、ベース、ドラムといった音色から、バイオリン、トランペットなどのオーケストラ音色、シンセ系のさまざまな音色など、3,400音色以上(表示上は4905音色ありました)が入っており一通りなんでも揃っているようです。もちろん、SonicWireなどのサイトではサードパーティーによるHALion専用パッチも多数販売されているので、それらを入手して音源を増やしていくことは可能ですよ。


さまざまな音源タイプから選択することも可能 

また、この音色の選び方で面白いのは、音源のタイプ?から選択する方法です。アイコンで、さまざまな種類の音源が表示されて、選べるようになっているのですが、たとえば、B-Boxというものを選ぶと215音色に絞られ、ここから適当に一つを選んでみると、なんとドラムマシンが現れるんですね。


ステップ入力可能なリズムマシンが登場してきて、ちょっとビックリ

プリセットでいくつかのパターンが入っているし、このステップシーケンサでリズムを打ち込むこともできます。もちろんパラメータを使って音色をいじることも可能ですよ。


サンプリングデータを3D表示できるAnima 

またAnimaという音源タイプのものを選ぶと、ウェーブテーブルデータを3D表示させた画面が登場し、ここで音色をいじっていくことができるようになっています。


完全なアナログシンセサイザー・エミュレータであるVOLTAGE 

さらにVOLTAGEというものは、完全にアナログシンセ風になっていて、自在に音作りができるようになっているし、この中には、アルペジエータというかステップシーケンサ的なものがはいっていて、およそサンプラーという世界とは違う音色になっているんですよね。ほかにもオルガンシミュレータ音源やMelotron風音源など、いろいろあって、面白いですよ。


Melotron風な音源、HALIOTRON

まあ、このように音色を選んで鳴らすだけなら、プレイバックサンプラーとしての使い方であり、基本的にHALion Sonic 3でも同様のことができるのですが、前述のとおり、サンプラーであるHALionではもっと抜本的なところからの音色づくりができるのが大きな特徴です。


録音ボタンをクリックして、サンプリングしていくこともできる

たとえばHALion 6の新機能としてサンプリング機能を装備していますから、これで録音していくこともできるし、もちろん、すでにサンプリングされたデータを読み込んで加工していくこともできます。その上でトリミングをしたり、ループポイントを設定したりすることが可能になっています。


フィルターを設定したり、エンベロープを設定することも可能

また、どのサンプリングデータを、どこのキーに置くのかといったマッピングもできるし、エンベロープを設定したり、LFOを設定し、フィルターを使って音色を作り上げていくなど、まさにシンセサイザーとしての音作りをゼロから行っていくことができるわけです。


シンセサイザーエンジンとして5種類から選択することができる

しかし、HALion 6が面白いのは、単なるサンプラーとしてだけでなく、さまざまなシンセサイザーエンジンを装備していることなんですね。もっともベーシックなところでいうと、ここには

  • Synth(アナログシンセサイザー)
  • Sample(サンプラー)
  • Grain(グラニュラー)
  • Organ(オルガン)
  • Wavetable(ウェーブテーブル)


グラヌニュラーシンセシスのエディット画面

の5つのエンジンが選択できるようになっており、これを選ぶことで、まったく違う音源に変身してくれるんですよね。ここで一つずつ解説しているとキリがないので、やめておきますが、HALion 6は、まさに何でもできるシンセサイザーに進化していたんですね。


ドローバーを使ったオルガンのエンジン

ちなみに、先ほど紹介したリズムマシン的なGUIや3D表示したり、アナログシンセサイザー的なGUIはユーザー自身が設計して作れるようにもなっているんです。そもそも、先ほどのGUIはMACRO機能によって実現されていたものなのですが、MACRO PAGE DESIGNERというものが用意されているので、オリジナルのGUIを作るとともに、ここに簡単なプログラムを組み合わせていくことで、完全に自分だけの音源を作ることもできるわけですね。まあ、そこまでやるユーザーも、あまりいないとは思いますが、HALion 6はシンセサイザー開発ツールでもあったわけですね。

GUIなどを自ら設計・デザイン・プログラムしていくこともできる

ところで、HALion 6のサンプラー機能を見て、「まあ、サンプラーなら先日リリースされたCubase 9のサンプラートラックでも実現できるようになったよね!」と思った方もいると思います。その通り、Cubase 9シリーズの最大の機能強化点といえるのが、「サンプラートラック」であり、わざわざHALionを使うまでもなく、Cubaseでレコーディングした音をサンプリング素材として利用して演奏することが可能だし、ここでトリミングしたり、ループポイントを設定したりできるので、非常に便利に使うことができます。

そのため、サンプラートラックのためにバージョンアップした方や、ほかのDAWからCubase 9に乗り換えたという方もかなりいるようですが、サンプラートラックも機能的な限界はあります。やはりサンプラートラックでは、基本的に1つのサンプリングデータをキーに割り当てていくものであり、レイヤーを組んでいくとか、より細かなエディットをして音色を作り上げていくというところまでの機能はありません。


Cubase 9のサンプラートラックで作ったデータをHALion 6へ転送して、続きの作業ができる

でも、そんなとき、Cubase 9のサンプラートラックでの続きの作業をHALion 6に任せるということが可能になっているんです。Cubase側でボタンを押して、転送先をHALionを選べば、もうサンプラートラックの内容がそのままHALionに転送されて、使えるようになっているんですね。そして、エディットした結果を保存しておけば、その後HALionで利用することもできるし、HALion Sonicで利用することも可能なので、応用範囲はいろいろと広がりそうですよね。


 HALion 6およびHALion Sonic 3は2月16日よりパッケージソフトとして販売開始した

このようにHALion 6は非常に強力なプラグイン型のサンプラーであり、さまざまなシンセサイザーエンジンを備えた音源で、VST、AudioUnits、AAXで利用可能なため、どんなDAWとも組み合わせが可能となっています。Cubase 9と組み合わせればCubase 9をさらに進化させられるという意味でも非常に魅力的な音源だと思います。

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【関連情報】
HALion 6 / HALion Sonic 3製品情報
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1件のコメント
  • baser

    HALIONは昔からのユーザーです、この新バージョンも欲しくなりました、派手すぎず使える音が多いなという印象を持っております。

    2017年2月17日 7:13 PM

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