Cubaseのスペシャリストとしてお馴染みの青木繁男さん。「YAMAHAのビデオで見た」、「Cubase関連のイベントでセミナーをしていたのを見かけた」……といった方も多いのではないでしょうか?その青木さんの本職は、超売れっ子のプロデューサーであり、アーティストのプロデュース、楽曲提供、アレンジ、ミックス、ライブマニピュレーターなどさまざまな業務をこなされています。普段、青木さんのTwitterを見ていても日々全国を飛び回りながら仕事をされて「これだけ忙しい人もいないのでは?」と思うほど。

先日、その青木さんの自宅スタジオに伺いし、実際どんなマシン環境を使い、どんな音源を利用して仕事をされているのかなどいろいろ聞いてみました。もちろんDAWは最新のCubase Pro 9で、制作用に使っているのはカスタマイズされたハイスペックなWindows PC。音源はいっぱい入っているけれど一番多様しているのはNative InstrumentsKOMPETELE 11 ULTIMATEとのことでしたが、なかなか知れない面白いネタもいっぱいだったので、インタビュー形式で紹介していきましょう。



Cubaseのスペシャリストとして誰もが知っている青木繁男さんの自宅スタジオで話を伺った
--青木さんのお仕事、本当に多岐に渡っていて、なかなか把握しにくいので、改めて今どんなことをされているのか教えていただけますか?
青木:ディオスタという事務所に所属していて、肩書上はプロデューサーとなっていますが、実際にはクリエイターとしての仕事が主軸です。DAWを用いて作曲・アレンジをする一方でレコーディングしたり、ミックスしたり、さらにはライブでマニピュレーターとしてオペレーション業務を行ったり……。ときには作品そのものにはまったく関わっていないアーティストのミックス、マスタリングをしてDDPで納品なんてことも行うこともありますよ。唯一やらないのは作詞ですね。


とにかく幅広い活動をされている青木繁男さん

--関わっているアーティストもかなりいろいろいますよね?
青木:そうですね、マニピュレーターとしてソナーポケットMY FIRST STORYのツアーに参加するほか、寺島拓篤さんへの楽曲提供やオンステージのマニピュレーターおよびDJを担当しています。また最近は声優さんとのお仕事も増えてますね。直近では5アーティストにレギュラーで携わっているほか、イレギュラーで入ってくる仕事もいろいろです。年間で80本近いライブに参加しているという感じです。

--そうした中で、YAMAHA/Steinbergのスペシャリストとしての活動もされているんですね?
青木:そうですね。YAMAHAさんのお仕事は、音楽普及のための貢献として位置づけており、自分の中でも重要な位置を占めているんですよ。やはりどんどん変化していく音楽の世界において、若いアーティストと関わっていくことで刺激を受けるし、自分のセンスを崩さないでいることができます。そうした若いアーティストが「高校生のころに青木さんのビデオでCubaseを覚えました!」なんて言ってくれるのは嬉しいし、今後もそうした人たちが生まれるかもしれない、そんな人たちと一緒に仕事ができるかもしれないとなると、未来も広がりますからね。


青木さんは10年近く前からNative Instrumentsの音源全部入りパックであるKOMPLETEを活用している

--さて、先日、青木さんとお話をしていた際にNIのKOMPLETEを多用されているという話を伺いましたが、いつごろから使っていたんですか?
青木:Native Instruments製品としては、かなり古く、KONTAKTの前身であるIMPAKTKOMPAKTの時代ですね。MASSIVEFM4など他社にない音源を中心に集めて使っていました。でも、なんだかんだと多用していたのはTRAKTORだったりします。20歳~25歳くらいまで六本木のクラブでDJをしていたこともあるのですが、そのときはずっとTRAKTORを使っていましたから。KOMPLETEを最初に導入したのは確かKOMPLETE5のころですから2007年くらいからだったと思います。

--当時KOMPLETEは実際どんな用途で導入されたんですか?
青木:それまで、生楽器を中心にいわゆるバンド系の楽曲を作ることが多かったのですが、当時、中田ヤスタカさんの影響もあり、エレクトロ系サウンドを積極的に取り入れたいと考えていたんです。そんな中で、KOMPLETEにはAbsynthMASSIVEPro-53など一通りここに揃っていて、これをシンセを学びなおそうという思いがあったんです。当時ハードのシンセを中心に使っていて、いわゆるモデリングタイプのソフトシンセにはまだ疑いを持っていたんですよ。ホントにこれでいいんだろうか…、まともに使えるんだろうか…って。サンプラーはもともとデジタルモノですから積極的に使っていたけれど、モデリングは怪しい、って。でも、KOMPLETEを使ってみて、「これでいいや!」って初めて思ったんです。その後、自分の制作環境もハードシンセからソフトへ急速に移行していき、すでに現状ではNord Lead 3が念のために残っているだけで、すべてソフトシンセで制作しています。

--そうしたソフト音源は、制作用として使う一方、ライブステージでもリアルタイムに演奏する音源として使うのですか?
青木:やはりライブでは絶対に事故を避けなくてはならないので、ソフト音源をリアルタイムで鳴らすことはないですね。予めミックスダウンしたものを用意しておいて、これを鳴らすようにしています。ただ、現場に行ってみると想定していたのと尺が少し違っていたとか、どうしても足りない音がある……なんてことがあるので、ツアーでは必ず一通り入ったMacBookを持っていって、それで作業をすることはありますね。


『5th ANNIVERSARY TAKUMA TERASHIMA LIVE TOUR 2017 3rd STAGE “REBOOT”』
写真はファイナルZeep Tokyo公演のセッティング

--なるほどツアーにはMacBookを持って行くんですね。でも、青木さんのスタジオにあるマシンはWindowsのPCですよね?
青木:元々、音楽用はMacだという考え方しかなかったし、普段Webを見たりするのもMac。メールだってWindowsでどうすればいいかよく分からないくらいです。その昔はDigital Performerを使っていて、初めてCubaseを使ったVST5だってMacで使っていました。ただKONTAKTなどを使うようになると、当時のMacでは2、3個立ち上げるので精一杯で、マシンパワー的に非常にキツかったんです。そんな中、某PCショップの方から「ぜひ自分を信じてDAW専用カスタマイズしたWindows PCを使って欲しい」と言われ、騙されたつもりで1台作ってもらったら驚きでした。そのころ使っていた50万円程度のPowerMacの3倍近いパワーを持ったものが半額以下で導入できてしまったんですから。これだとKONTAKTを10個以上立ち上げてもサクサク動くということで、音作りの可能性を見てしまってからは、もう戻れないんですよ(笑)。あくまでもDAW専用マシンであって、汎用的なPCとして使っているわけではないんですけどね。現在は、OMFACTORYさんに作ってもらった超パワフルなマシンを使ってます。


音楽制作用として使っているのはOMFACTORYのDAW専用Windows PC

--今はKOMPLETE 11 Ultimateを使っているんですよね。以前のエレクトロサウンド用からその後使い方に変化はありますか?
青木:もちろん、Native Instruments以外の音源としてOutput製品やSugarBytesの音源、reFXNEXUS2UVIFalcon、そしてもちろんHALionを中心としたSteinberg音源も使うのですが、他社製品で出せない音をKOMPLETEに任せ、頼っているという感じですね。Action StrikesDamage、またRise&Hitなどは類のない音源であり、絶対に手放せないです。音源に迷ったらKOMPLETEに戻るというのが私の制作の基本になってますね。しかも、ここで今絶対的に重要なのがKOMPLETE KONTROLです。これを使うことで、どの音源であるかを気にすることなく、たとえば「ベルの音」として音色を探していけるのは、非常に大きなメリットです。従来はまず音源を起動して、プリセットを探し、それを元に音色を手直ししていくという使い方が基本でしたが、これなら思いもしなかった音源と出会うこともあります。まさに自分にとってのソフト音源の世界観が大きく変わりました。とはいえ、その昔あったNative InstrumentsのKOREを愛用していた自分としては、KOREが少しイメージチェンジして登場したのがKOMPLETE KONTROLの初期バージョンだったという印象なんですけどね。いずれにしても、とにかくありとあらゆる楽器の音源が収録されているというのはありがたいですね。


KOMPLETE KONTROLなら、ベルの音を検索すると、FM8やPRISMなどさまざまな音源が同列に並んで音をチェックできる

--何か妙な音源が役立ったなんていうこともあるのですか?
青木:アイドルの楽曲の仕事なんかも多いのですが、そうした仕事は歌唱に絡むものだけでなく、ライブのオープニングに使われる曲だったり、ダンス用のトラックだったり……といったこともあり、変わったオーダーが来ることもあるんです。たとえば、先日は「アラビアンな楽曲をやる前のテーマ曲としてシタールを使った音楽を作ってくれないか?」なんてオーダーが来たんですが、そもそもシタールなんて自分で弾いたこともないし、使ったこともなく、知識がありません。でもこれをKOMPLETE KONTROLで検索してみると、Indiaという音源が見つかり、そこに数多くのライブラリが入っててシタールもいろいろ収録されているんですよ。ここで問題になってくるのがスケール。シタールの音色を選んだのはいいけれど、適当に入力すると、「本来そんな音域は出ない」とか「その音階を弾くことはない」なんてことが起こり得ます。でもNative InstrumentsのMIDIキーボードであるKOMPLETE KONTROL Sシリーズ・キーボードと組み合わせて使うと、鍵盤に使うべき音階がアサインされ、それを弾くと、まさにシタールっぽくなり、間違いがないんですよね。さらにベロシティーを活用して感情を込めてやると、割といい仕上がりになるんです。インド人が聴いても、割とすんなり受け入れてもらえるんじゃないかと思いますよ。


シタールの音源が収録されているIndia

--なるほど、かなり重宝しているわけですね。
青木:そうですね。ほかにもTHE GIANTとかUna Cordaなど、KOMPLETEを使っていると、これまで見たことのないようなピアノ、新しい楽器と出会えるという面白さもあります。自分としては、これまで数多くの楽器を見てきたつもりではあるのですが、正直なところ「まだこんなにあるのか!」と驚かされますね。さっきのシタールの例のように、「何だろう、この楽器?」なんていう依頼が来たときに、必ず入っているという安心感はあります。マジでコイツやるな、オマエ、こんなものも持ってるのかって(笑)。きっと一生2度と使うことはないけれど、見つけられたときの感動は大きいですよ。

--KOMPLETEはWindowsでもMacでも動き、VST、AU、AAXと各フォーマットで動作するため、どのDAWとの組み合わせでも使えるという安心感もありますが、Cubaseエキスパートである青木さんから見て、Cubaseだからこそ出せるメリットといったものはありますか?
青木:インプレイスレンダリングは非常に便利な機能として使ってますね。インプレイスレンダリングとはMIDIで入力したデータをそのままオーディオ化してしまうものなのですが、ほかのDAWにおけるMIDIデータをバウンスしてオーディオトラックに持っていくというのとは意味合いが違って便利なんですよ。たとえばAction Stringsなどの場合1ノートでフレーズ演奏してくれたりします。つまり鍵盤を押し続けて4小節分とか8小節分の長さでサウンドが変化していくのですが、CubaseはMIDIノートを途中から再生したとしても発音することができるため、この場合ですと、ノートの途中から再生すると他の伴奏とフレーズがズレてしまうという現象が起きます。一方、完全にオーディオ化してしまうと、ちょっと作り直したといっても、またMIDIデータから作り直さなくてはならず、かなり面倒です。でも、インプレイスレンダリングなら元のMIDIデータにすぐに戻ることができるので、もはや手放せない機能ですね。


MIDIキーボードとして49鍵のKOMPLETE KONTROL Sを使っている

--そういえばキーボードのKOMPLETE KONTROL Sは49鍵なんですね。
青木:私は鍵盤弾きではないので、61鍵とか88鍵あっても仕方ないですからね。場所をとらないから、最初、25鍵でもいいかと思ったのですが、25鍵だとよく使うトリガーを同時に表示することができないんですよね。そう、低音のキーで奏法を選び、右手でコードを押せ合えれば簡単に演奏してくれる機能があるけれど、これを25鍵では扱いにくいんです。でも49鍵であればなんとかなる、ということからこれを購入しました。自分にとっては49鍵で十分だなという印象ですね。このKOMPLETE KONTROL-SにはNative Instruments製品だけでなく、Output製品やArturia製品、SugarBytes製品、またVirtual GuitaristIron製品など各社が続々と対応してきているので、ますます便利な存在になってきてくれていますね。



SugarBytesやArutiraなどの音源もKOMPLETE KONTROLに対応ソフトとして利用することができる

--最後に青木さんから多くのDTMユーザーのみなさんに向けて、何か一言いただけますか?
青木:KOMPLETEに限る話ではありませんが、世の中にはさまざまな音源が出ているので、ぜひいろいろな使ってみることをお勧めします。使ったことない音源、楽器に触れることで、新しい発見ができますし、音楽の幅も広がると思います。楽器が弾けなくとも、コードを知らなくとも今はDAWが音楽の楽しみ方を支えてくれますので、自分の可能性をぜひ試していたきたいです。

--ありがとうございました。

以上、青木繁男さんに、いろいろお話を伺いました。ここでのテーマとなったNative InstrumentsのKOMPLETE 11やKOMPLETE KONTROL Sシリーズ・キーボード、ご存知の方も多いとは思いますが、現在、SUMMER OF SOUNDセールが実施されていて、モノによっては普段の半額で入手中です。セールは7月2日までなので、興味のある方は早めにチェックしておくといいですよ!

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