2月に「AKAIのMPCが原点回帰。スタンドアロン版のMPC X & MPC LIVEは今の時代にマッチするのか!?」という記事を書いたものの、なかなか発売されなかったMPC LIVEがいよいよ6月23日に発売となります。見た目はMPC TOUCHとそっくりな機材ながら、PCとの接続不要で、これ単体で動作させることができるスタンドアロンのMPCとなっています。

このMPC LIVEはどんな特徴があり、どんな利用法が考えられるのか、発売より一足早く入手して、すでに思い切り活用しているトラックメーカー・DJであるMPCプレイヤー、熊井吾郎さんに話を伺いつつ、MPC LIVEとはどんな製品であるのかを探ってみました。


熊井吾郎さんにMPC LIVEの面白さを聞いてみた

MPCって何?」という方も少なくないと思うので、まずはこれまでの歴史を振り返りつつ、MPCって何なのかを簡単に紹介してみましょう。MPCは1988年、赤井電機MPC60を開発・発売したのがスタートです。Music Production Controllerの略だそうですが、一言でいえば4×4のパッドを使ってプレイができるサンプラーマシンです。


6月23日に発売されるMPCシリーズの最新製品、MPC LIVE

つまり、各パッドにキック、スネア、ハイハット、シンバル……とサンプリングデータを割り当てておくと、パッドを叩くことでリズムをプレイできるというものです。ドラムに限らず、さまざまな音色を割り振ることもできるし、MPCを用いてマイクから入ってきた音をサンプリングしたり、それをエディットした上で配置することができるというものです。その後AKAI PROFESSIONALブランドの製品へ変化していったMPC、現在のEDMにつながる音楽シーンを築いてきたもっとも重要な電子楽器の一つと言って間違いないと思います。



AKAIの歴代MPCシリーズ

そのMPCはこれまで大きく15世代の製品が登場し、時代とともに進化してきたのですが、2012年にリリースされたMPC RENAISSANCE以降、システム的に大きな変化がありました。それはMPC5000まではMPC単独で動作する機材だったのが、MPC RENAISSANCE以降はPCと接続して使う機材へと変わったことです。


MPC LIVEは2008年登場のMPC5000以来8年ぶりとなるスタンドアロン版

MPC60当時は比較的単純なサンプラー&リズムマシンだったMPCも、進化とともにDAW的な機能を備えていったのですが、やはり性能的に単体では処理しきれなくなり、PCと接続して使うシステムへと変わっていったわけです。それが今回登場するMPC LIVEで、9年ぶりに単体動作するスタンドアロンマシンになったのです。このことはMPCユーザーにとってどんな意味を持つのでしょうか?


トラックメーカー・DJであるMPCプレイヤー、熊井吾郎さん


自宅スタジオで音楽制作をする上で、MPCをPCと接続して使うのは当たり前のこととなっているし、まったくストレスはありません。でもMPCをライブ現場に持ち込んで使うことを考えるとスタンドアロンになったことは、すごく嬉しいですね。出力端子をPAに接続し、電源を入れればすぐ使えるというのはフットワークが軽くて非常にいいです。現場にPCを持ち込むと、PCをどこに設置すればいいか……と結構苦労するのですが、MPC LIVEなら、これを置く場所さえ確保できればいいですからね」と熊井さん。


タッチパネル型液晶ディスプレイを使うことでPCが不要になっている

確かに自宅であればスタンドアロンであることにこだわる必要はあまりないですが、ライブステージとなると、いかにテキパキ作業ができ、確実に動作するかが重要ですもんね。

個人的には、『スタンドアロンに戻った』という感覚よりも『MPCの中にコンピュータが入っちゃった』という印象なんですよ。できることが、昔のMPCと今のMPCでは次元が違いますから復古したというよりも、大きく進化していますから」(熊井さん)


MPC LIVEにはMCSというロゴシールが貼られている

実は熊井さんの指摘どうり、MPC LIVEはコンピュータそのものといってもいい機材になっています。MPC LIVEを見ると「MCS」というロゴのシールが貼られていますが、これはAKAI PROFESSIONALを擁するinMusicが作り出したコンピュータシステムを示すももの。MCSMULTICORE SYSTEMの略なのですが、実際ここには4コアのCPUが搭載されており、内蔵メモリが2GB、オンボードで16GBのストレージを備え、タッチパネル型の液晶ディスプレイも備えているんですから、ほぼノートパソコンですよね。このMCSはAKAIのMPC LIVE以外にもDENON DJのメディアプレイヤー、SC5000 PRIMEでも採用されています。


リアパネルにはSDカードスロットがあるほか、USBメモリも2つまで接続可能

ちなみに16GBのストレージでは足りないという場合、ボトムにはSSDが刺さるSATAのスロットもあるし、リアにはSDカードスロットがあるほか、USB 3.0の端子にUSBメモリーを接続して使うこともできますからかなり膨大なストレージを接続して使うことができるので、かなり大規模な拡張もできそうですよね。


10GBのサウンドコンテンツを呼び出してすぐに鳴らすことができる

またこの16GBのストレージには予め10GB分のサウンドコンテンツが収録されています。
昔のMPCは、まず電源を入れたら、それに読み込ませるサンプル素材を探してフロッピーディスクをセットして……と音を出すまでにかなりの時間がかかりましたが、内蔵のメモリ上に膨大な音ネタが仕込まれているので、即呼び出せて使えるのは快適です。また自分でサンプリングライブラリをMPC LIVE側に持ってくることも簡単なので、便利に使えますよ」と熊井さん。


オーディオトラックが8つあり、波形編集も自由に行える

以前の記事でも紹介したとおり、見た目はMPC TOUCHとソックリで、実は使い方もほぼ同じ。でもここには1つ大きな進化点があります。それは、MPC LIVEにはオーディオトラックが8つ用意されているということ。これらを使うことで、MPC LIVE単体でオケを流しながら、パッドを叩いて演奏するということも可能になっているのです。

ただ、この8つのトラックも単なるオーディオトラックというわけではないんです。タイムストレッチが可能になっていて、テンポを変更しても、それに追従するようになっているんです。


ピンチアウトで波形を拡大するといったことも可能

こうしたオーディオデータを液晶ディスプレイに波形表示することができるのはもちろん、タッチパネル式なので、ピンチイン/ピンチアウトで拡大縮小をしたり、ハサミアイコンを使ってカットしたり、スライスした上で無音部分を削除したり……といった操作も自由自在。MPC LIVE単体で、まさにDAWのような使い方ができるわけですね。


リアルタイムに叩いて演奏するだけでなく、クリッププログラムという手法も用意された

さらにクリッププログラムという機能も搭載され、従来のMPCとはちょっと違った使い方もできるようになってます。普通はタイミングに合わせてパッドを叩くプレイスキルが必要になりますが、このクリッププログラムでは、パッドを押すと、次の小節のタイミングでそのクリップが鳴る形です。そう、Ableton Liveのクリップローンチとそっくりな機能ですね。


WindowsやMacと接続して、まさにMPC TOUCHのように使うこともできる

ところで、このMPC LIVEはスタンドアロンのマシンでありつつも、これまでと同様にWindows/Macと接続して使うことも可能となっています。この場合は、MPC TOUCHとほぼ同等のものとなるのです。


PCとUSB接続した上で、CONTROLLER MODEに切り替えることでMPC TOUCHと同様になる

実際に使ってみたところ、スタンドアロンで使っても、PCと接続して使っても、機能的にはほぼ同じです。唯一の違いはスタンドアロンで使う場合にはVSTプラグインが使えないという点ですね。自分ではVSTプラグインを結構使うので、制作ではやはりPCと接続して使い、外に持ち出すときはスタンドアロンで、ということになりそうですね」と熊井さん。


PCと接続してMPC LIVE自体がコントローラとなっても画面を含め使い勝手や機能は基本的に同じ

USB接続すると、MPC LIVEはMIDIコントローラ兼オーディオインターフェイスとなり、PC側からは2in/2outで24bit/96kHzのデバイスとして見えます。MacならCoreAudio、WindowsならASIO対応のデバイスです。


MPC LIVEスタンドアロンで動かす際はバッファサイズの設定などはなく最適な状況で動作する

人によっては、PC接続するよりもスタンドアロンで使ったほうが反応性がいい、という人がいますが、おそらくこれはPC側のソフトウェアの設定の問題だろうと思います。やはりバッファサイズが大きいとレイテンシーが出てしまうんです。とくに遅いPCだとモタってしまうので、ここは使い分けが必要かもしれませんね」と熊井さんが教えてくれました。


今回新バージョンとして登場したWindows/Mac用のソフトウェア、MPC SOFTWARE 2.0

このPCと接続した際に使うMPC SOFTWAREが、今回のMPC LIVEの登場に合わせてMPC SOFTWARE 2.0へと進化しています。前述のクリッププログラムなどの新機能はMPC SOFTWARE2.0で追加されているわけなのです。つまり、従来のMPC TOUCHユーザーもMPC SOFTWARE2.0にアップデートすることで、MPC LIVEと同等の機能を持つことが可能となっているのです。そしてMPC TOUCHユーザーは無償でMPC SOFTWARE2.0をダウンロード可能になっていますから、ぜひ試してみてくださいね。


MPC LIVEのモード切替を行う画面

なお、MPC RENAISSNCEやMPC STUDIOなどMPC TOUCH以前のマシンのユーザーも有償ではあるもののMPC SOFTWARE 2.0を入手してインストールすると同様の機能が使えるようになるそうです。


MPC内蔵のエフェクトはリアルタイムに鳴らしながらXYパッドで操作することもできる

気になるMPC LIVEの実売価格は128,000円(税込み)程度とのこと。ただ、6月23日発売の初回出荷分はすべて予約で完売状態。次は7月中の入荷とのことですので、店頭でデモ機が触れるようになるには、まだ少し時間がかかるかもしれませんね。

そこで、その6月23日の発売に先駆けて6月20日、DTMステーションPlus!のネット放送において、熊井吾郎さんをお招きしてMPC LIVE特集をお送りする予定です。実際の使い勝手やそのサウンドをお見せするとともに、質問などもお答えしながら放送しますので、興味のある方はぜひチェックしてくださいね。

【価格チェック】
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【製品情報】
MPC LIVE製品情報
MPC TOUCH製品情報
MPC SOFTWARE 2.0製品情報

【DTMステーションPlus!】
2017年6月20日 21:00~22:30
第84回 DTMステーションPlus!(ニコニコ生放送版)
第84回 DTMステーションPlus!(Fresh!版)