iPhoneやiPadで動作する音源は、今や膨大な数がありますが、考えてみるとDX7互換のFM音源ってなかったんですよね。かなり昔から水引孝至さん開発のDXi FM synthesizerというDX7風な4オペのFM音源があったり、やはり4オペのFM4というアプリ、また種田聡さん開発の金属音サウンドを奏でるMersenneというちょっと変わったFM音源があったりと、FM音源自体はいろいろありました。しかし今回登場したKQ Dixieは、世界初のDX7互換となるシンセアプリで、以前「海外で大ヒット中、日本人開発のiOSシンセ、KQ MiniSynthが凄い!」という記事でも紹介したことがある雲英亮太(きらりょうた)さん開発のもの。

DX7互換のFM音源だから、もちろん6オペレータ、32アルゴリズムを装備。DX7のシステムエクスクルーシブメッセージ(SysEx)およびsyxファイルに対応しているので、DX7の実機とのやりとりはもちろんのこと、ネット上に数多くあるDX7の音色ファイルを読み込んで使ったり、KORGのvolca fmやオープンソースソフトウェアのDexedなどとのやりとりも可能となっているのです。どんなアプリなのか紹介してみましょう。


iOS初のDX7互換音源、KQ Dixie
まずは、KQ Dixieでどんな音が出るのか、どんな操作が可能なのかを雲英さんが作ったビデオがあるので、これをご覧になるのが早いと思います。



パット見、シンプルな画面だし、DXiのようにDX7のデザインを踏襲するものでもありません。でも、起動するとまず登場するedit画面の左上でアルゴリズムが選択でき、6つあるオペレータの状態や各エンベロープが表示されます。


iPhone Xでの画面。オペレータは2つの表示で、残り4つはスクロールさせて表示させる

iPadなら全オペレータを見渡すことができるのに対し、iPhoneの場合は、2オペレータの表示で、残り4オペレータは横スクロールで表示される形ですね。


テーマの設定によって表示色を変更することも可能

また各パラメータはここで直接いじるのではなく、画面をタップするとダイアログが表示されるので、ここで数値をいじっていきます。エンベロープについては、グラフを指でタップしていじれるようになっていますよ。


変更したいパラメータをタップするとポップアップが現れ、ここでいじることができる

これで基本的なDX7のパラメータ類を動かすことができ、画面上のキーボードで演奏することはもちろん、iRig KEYSなどLightning接続のUSB-MIDIキーボード、またmicroKEY AirのようなBluetooth接続のMIDI(BLE-MIDI)キーボードを使って演奏することも可能です。


MIDI周りやオーディオバッファサイズなどの変更もできる

そうした各種MIDI機器との設定のための画面もちゃんと用意されており、ここからBLE-MIDIとのペアリングもできるようになっていますよ。


BLE-MIDIのペアリング機能なども装備されている

でもKQ Dixieの面白さはそれだけに留まりません。まだまだ豊富な機能が数多く用意されているのです。まずparamというボタンをタップすると、先ほどとは別のパラメータ画面が現れます。


32あるアルゴリズムの変更も自由自在

左上にはfilter、その下にはdelayと、DX7にはないパラメータも存在するのです。FM音源はオペレータからオペレータへモジュレーションをかけて音色を作るのですが、どんな音が出るかなかなか予想がつかないのが難しいところ。でも、KQ Dixieでは最終段にフィルターが入っているから、アナログシンセ的な音作りも可能になっているんです。


paramボタンをタップすると、DX7には存在しないパラメータも用意されている

このフィルターには音を歪ませるためのオーバードライブ機能もあるし、さらに下のdelayではフィードバック付きのディレイがかけられるため、エフェクトとしてかなりいい感じで威力を発揮してくれます。そのほかにもDX7と同様にポルタメント機能が使えたり、グリッサンド機能をオンにできるなど、楽器としていろいろと使いやすくする機能が用意されているのです。

またこのKQ Dixie、デフォルトでは雲英さんによるオリジナル音色が32音色用意されているので、まずはこれで楽しむことができますが、やはりやってみたいのは、ネット上などにあるDX7音色ファイルの読み込みです。


Dexedに入っているsyxファイルをまとめて、iTunes経由でKQ Dixieへコピー

もっとも簡単なのはシステムエクスクルーシブデータを1つのファイルにまとめたDX7用の音色ファイルデータ、syxファイルをiTunes経由でKQ Dixieに渡すことです。たとえば、オープンソースの音源Dexedの中にも、たくさんのsyxファイルが収録されているので、これを取り出し、iTunesを通じて、KQ Dixieのアプリのところへドラッグ&ドロップで送ってやります。


Dexedからコピーした音色を読み込むことができる

その後、KQ Dixieでcartボタンをタップすると、iTunes File Sharingのところに送ったsyxファイルが認識されているので、これを選ぶだけでOKなのです。これでほぼ同じ音が再現できるはずですよ。

一方、KQ Dixieはスタンドアロンのアプリとして動作するだけでなく、iOS上の各種DAWやエフェクト、レコーディングアプリなどと組み合わせて使うことが可能になっています。


Audiobus2でもAudiobus3でも利用することができた

まずはAudiobusに対応しているので、これのINPUTのところにKQ Dixieを組み込み、たとえばAmplitubeEchoPadなど、好きなエフェクトと組み合わせてみるのもいいですね。


GaragebandのEXTERNAL機能によりAudio UnitsまたはInter-App Audioで利用可能

また、雲英さんの前作、KQ miniSynthと同様にAudio Unit v3に対応しているので、GarageBandCubasisAuria ProFL Studio Mobileなどのプラグイン音源として使うことが可能です。


Cubasisでもバッチリ動作

さらにInter-App Audioにも対応しているから、その他多くのDAWアプリの中で動かすことができます。


Auria ProのMIDI音源としても呼び出して使うことができた

さて、そのリリースされたばかりのKQ Dixieについて、開発した経緯について、雲英さんに伺ってみました。

今回KQ Dixieを開発したきっかけは、DX7の音色はネットに大量にあるのに、iOS上でそれを読み込めるソフトが一切無かったのに気づいたからです。そこで中古のDX7を購入して、ほぼすべてのパラメーターが実機と同じようになるよう、調整しました」とのこと。

ここで気になったのが以前「DX7を完全に再現するフリーのVSTプラグイン、DEXEDで遊ぼう」という記事でも紹介したことのあるオープンソースソフトウェアのDexedとの関係についてです。


Windows、Mac用に無料で配布されているVSTi、Dexed

Dexedはエンジン部分にMusic Synthesizer for Androidというアプリのものを使っているのですが、これはApache License 2.0という商用でも自由に使ってよいライセンスでしたので、多く利用させてもらいました。しかし組み込まれていない機能や上手く動作しないパラメーターなどもありましたので、比べながら調整しています。またDexedと決定的に違うのは、実機とつないだときに、パラメーターの調整が瞬時に反映される点です。実機で音作りをする際に、パラメーターの調整がGUIで非常にやりやすくなっています。持っていないのでわかりませんが、volca fmなどでも対応しているかもしれません」と雲英さん。

私も、いまvolca fmが手元にないので、試していないのですが、お持ちの方はぜひ使ってみてください。


KORGのDX7互換の3音ポリ音源を搭載したvolca fm

syxファイルを読み込めるだけでなく、zipファイルの読み込みに対応しているので、ネット上にあるデータをiPadにダウンロードしてそのまま使うことができます。ネット上には正式なSysExではなく、ヘッダがストリップされたデータもあるのですが、それも読み込むことができるようにしています。膨大な数の音色データが公開されているので、ぜひいろいろと試してみてください」とのこと。

iPhoneでもiPadでも、思う存分DX7サウンドを楽しむことができるので、ぜひ使ってみてはいかがでしょうか?

【ダウンロード購入】
◎App Store ⇒ KQ Dixie
◎App Store ⇒ KQ MiniSynth
◎App Store ⇒ DXi FM synthesizer
◎App Store ⇒ FM4
◎App Store ⇒ Mersenne
◎App Store ⇒ Audiobus3
◎App Store ⇒ Cubasis
◎App Store ⇒ Auria Pro
◎App Store ⇒ FL Studio Mobile

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