古くはYAMAHAのKX5、RolandのAX-1、KORGのRK-100など、ステージでよく使われていたショルダーキーボード。その後、各社とも撤退していき、数少ない現行製品として注目を集めているのがAlesisVORTEX WIRELESS 2という製品です。このVORTEX WIRELESS 2は今年2月に発売された製品で、名前からも分かる通りワイヤレスでMIDI信号を飛ばせるのが大きな特徴の37鍵キーボード。

これ自体に音源機能は備えていませんが、外部MIDI音源モジュールやPC上のソフトシンセを活用することで、機動性高く活用することができるのです。7月にDTMステーションPlus!のゲストとしても登場いただいたビジュアル系バンド「摩天楼オペラ」のキーボーディスト、彩雨(@opera_ayame)さんもVORTEX WIRELESS 2をライブで活用しているとのこと。先日、全国ツアーのファイナルとして赤坂BLITZで行われたステージも見学してきたところです。加速度センサーでユニークなプレイができるといったメリットがある一方、USB端子を備えているからワイヤードでPCと連携でき、しかも数多くのソフトウェアをバンドルするなど、DTM用にも超優秀な機材なのです。実際どんなキーボードなのか、紹介してみましょう。


Alesis VORTEX WIRELESS 2をステージ上で弾く、摩天楼オペラの彩雨さん Live Photo : 土屋良太(artoy)
ショルダーキーボードとしては、ちょうどRolandからAX Edgeという製品が実売価格108,000円で発表されたタイミングですが、VORTEX WIRELESS 2は、実売価格3万円弱という手ごろな価格であるのも大きな魅力。それでいて、非常に多くの機能を備え、PCとの連携機能が非常に充実しているのも重要なポイントです。


各社がショルダーキーボードから撤退する中、今年2月にリリースされたVORTEX WIRELESS 2

ちなみに「ショルキー」というのはYAMAHAの登録商標となっているので、他社では使えない名前なんですよね。また海外ではショルダーキーボードというよりもKeytar(KeyboardとGuitarを合わせた造語ですね)という名前のほうが一般的なようです。


リハ中の彩雨さん。かなり低めのポジションで構えているのは両手で弾くケースが多いためとのこと


これまでの多くのショルダーキーボードは音源を内蔵している楽器だったわけですが、VORETX WIRELESS 2も、その前身であるVORTEX WIRELESSも音源機能は持っておらず、MIDI信号を出力するキーボードであるという点で、従来製品とは一線を画しています。だからこそ、2.9kgとほかのショルダーキーボードと比較して非常に軽く、また単3電池×4本で駆動でき連続4~5時間使えるというのも、ステージを考えると嬉しいところです。


単3電池×4で駆動し、連続4~5時間使える


その電池ボックスの隣にも蓋があるのですが、ここを開くと、何も入ってないんです。実はここは小モノ入れ。ギターじゃないのでピックを入れておくこともないですが、チューナーとかペン、ライトなどステージで使いそうなものをしまっておくといいかもしれません。


電池ボックスの左側に小モノ入れが!?


さて前述の通り、最大のポイントはワイヤレスであることですが、これはBluetooth MIDI(BLE-MIDI)を使っているわけではありません。BluetoothやWi-Fiと同じく2.4GHz帯の電波を使っているようですが、独自規格であり、30m程度なら余裕で飛ぶようです。アリーナクラスになると厳しいかもしれませんが、先日の赤坂BLITZでのステージを見る限り、彩雨さんは、結構動き回っていたけど、電波的の届く範囲という意味ではまったく問題なかったようですよ。実際に使ってみてもワイヤレスで使った場合と、USBケーブルで接続した場合で、レイテンシーの違いはまったく感じません。プロミュージシャンがステージで実際に使っているという実績を考えても問題はなさそうですよね。


しっかりとした重さのあるキータッチ

では少しスペック面を見てみましょう。VORTEX WIRELESS 2のキーボードはベロシティー、アフタータッチ対応の37鍵。また右上には8つのRGBライト搭載ベロシティ対応ドラムパッドも装備しています。これらパッドの色も8つ別々に、しかもベロシティ4段階で自由に設定できるのでステージ映えもしそうですね。


色を自由に変えることが可能な8つのパッド

その左には8本のフェーダーがありますが、これらは自由にMIDIアサイン可能なもので、音源のシンセサイザーパラメーターをコントロールしたり、DAWのフェーダーをコントロールするなど、いろいろな使い方が可能です。


自由にアサイン可能な8本のフェーダー

そしてネック部分にはボリューム・スライダとピッチベンド・ホイールがあり、親指で操作可能となっています。さらに、ここにはMIDIアサイン対応のリボン・コントローラ、そしてゾーン、サスティン、オクターブ・ボタンを装備しているので、演奏におけるさまざまなコントロールができるわけです。


持ち手の部分に各種コントローラーが装備されている

そして極めつけはなんといっても内蔵の加速度センサー。つまりVORTEX WIRELESS 2を持つ角度を変化させることで「ギュイーン」っとピッチチェンジさせるとか、モジュレーションを掛けるといったプレイができるんです。これもMIDIの何にアサインするか自由に決めることができます。




傾きを変化させることで加速度センサーが反応し、ボリュームやピッチ、モジュレーションなどを変化させる演奏ができる

そうしたアサイン、多くの機材だと本体ボタンと液晶画面などを用いてチマチマと設定して面倒なわけですが、基本的にPCとの連携が前提となっているVORTEX WIRELESS 2の場合、Windows、Mac用に用意されているPreset Editorというソフトを使うことで細かく、そして簡単に設定していくことができるんです。しかもその設定をPreset 1~25の25種類バラバラに登録することができるので、セットリスト順に並べて置いたりすると便利そうですよ。


各コントローラーを自由に設定することができ、それを25種類のプリセットに保存が可能

このような各種機能を持ったVORTEX WIRELESS 2はワイヤレスでMIDIを飛ばせるわけですが、インターフェイス部分について改めて紹介すると、キーボードの右側側面にMIDI OUT端子およびUSB端子、そしてUSBの切り替えスイッチがあります。まずMIDI OUT端子はMIDI音源モジュールなどに接続すれば、すぐにMIDIキーボードとして使えるというものです。


ワイヤレスで飛ばせるだけでなく、MIDI OUT端子も装備し、USB接続で普通のDTM用キーボードに

それに対しUSB端子はWindowsやMacなどにUSBケーブルで接続するためのもので、この接続を行えばUSBケーブルでMIDI信号をやりとりできるだけでなく、USBバスパワー供給で動作するため電池も不要で使うことが可能になります。まさにDTMで活用するための一般的なMIDIコントローラー機能付きUSB-MIDIキーボードになるわけです。


ワイヤレスで飛ばす場合は、このレシーバーをPC側に接続

一方で、VORTEX WIRELESS 2にはUSBメモリーのようなレシーバーが付属しています。これがワイヤレス接続のためのドングルとなっており、これをWindowsやMacに接続すれば、ドライバも不要で、すぐにVORTEX WIRELESS 2とMIDI接続してくれるのです。USBケーブルを使うのか、ワイヤレスで使うのかをスイッチで切り替えるようになっているんですね。

こんなさまざまな機能を持つVORTEX WIRELESS 2ですが、なぜこれを彩雨さんが使うことになったのでしょうか?もともとRolandのショルダーキーボードを使っていた彩雨さんですが、2月にVORETEX WIRELESS 2が発売されたのを知り、3月にさっそく乗り換えたのだとか。


ステージ上で制約なく動き回れるワイヤレスキーボードは彩雨さんにとって必須のアイテム

「VORTEXを使うようになった最大のきっかけは、8つのパッドにプログラムチェンジをアサインできるという点でした。実は以前からMIDIのワイヤレス装置を使って飛ばすことは行っていたので、ワイヤレスに違和感はないというか、ステージ上でワイヤレスは必須のものという意識もありました。その機能を内蔵しているというのも大きなポイントでした。見た目もいいので、VORETX WIRELESS 2へと乗り換えました」と彩雨さん。


パッドにプログラムチェンジを割り振れるのが大きな決め手になったとのこと

なんとなくワイヤレスが途切れる事故などを想像してしまうのですが、これまでワイヤレスが途切れたことは1度もないそうです。数多くのコントローラーや加速度センサーも搭載しているVORETX WIRELESS 2をどのように活用しているのかを聞いてみたところ、面白い答えが返ってきたのです。


サステイン、モジュレーション、ピッチ以外のコントローラーは全部無効にしているとのこと

「実は加速度センサーはまったく使ってないんです。それどころか、サステイン、モジュレーション、ピッチ以外のコントローラーは全部無効にしているですよ。これはライブ中に誤って操作しないようにするためで、VORETX WIRELESS 2の数多くの機能をまったく使ってないのが実情です。またステージ上で何かトラブったときのために音をすべて止めるパニックボタンをキーボードにアサインしていましたが、いまはこれをフットスイッチで操作できるようにしています」(彩雨さん)

なるほど、絶対失敗が許されないプロのステージだからこそ、徹底した安全策をとっているということなんですね。


MIDIパッチベイとしてのみ使われているステージ上のWindowsノートPC

そのライブステージ上で、どのような配線になっているのかを見せてもらったところ、いろいろな工夫がされていました。まずステージ上に持ち込んだWindowsのノートPCに長いUSBケーブルが接続されており、その先にUSBハブがあります。ここにVORTEX WIRELESS 2のドングルとともに、MIDIインターフェイスが接続されていて、そこにフットペダルなどが接続されてます。


このPCに長いケーブルを経て設置されたUSBハブにレシーバーが接続されている

一方、PC上にはMIDIパッチベイの役割をするMIDI Matrixが起動しており、これでVORTEX WIRELESS 2からの信号がMOTIF RACKに接続される形になっているのです。PCの役割は本当にMIDIのパッチベイのみとなっていましたが、これなら負荷もかからなく安定動作し、落ちる心配もないということのようです。


音源にはMOTIF RACKが使われている

「とはいえ、海外でのライブも多く、各地に行って機材をレンタルするのも面倒だし、トラブルの原因にもなるので、いずれはソフトシンセでライブをできるようにしたいと思っているところです」と彩雨さん。確かに、それが実現できると本当に身軽にライブツアーができるようになりそうです。


VORTEX WIRELESS 2には数多くのソフトウェア音源が付属している。画面はVacuum Pro

ある意味それを実現できるツールが数多く備わっているというのも、VORTEX WIRELESS 2の魅力でもあるんです。そう、ここには数多くのソフトウェア音源が標準で付属しているんです。


倍音加算式シンセサイザのLOOMも付属

具体的にはHybrid 3、Loom 2、AIR Music Tech Vacuum Pro、AIR Music Tech Xpand!2、Way Out Ware TimewARP 2600……と、それぞれを購入すれば、余裕でVORTEX WIRELESS 2の価格を上回る音源が装備されているんです。また、Ableton Live 9 Liteもバンドルされているので、これをホストとして使えば、PCをまさに音源モジュールとして活用できるわけです。


Pro Tools標準音源としてもお馴染み、Xpand!2のVST版も付属

こうしたVORTEX WIRELESS 2については、冒頭でも触れた摩天楼オペラの彩雨さんがゲストでお送りしたDTMステーションPlus!でも特集していたので、お時間のある方はご覧になってみてください。



ここで1つ新情報を。実は10月末までの期間、「VORTEX WIRELESS 2 『VIPソフト』プレゼントキャンペーン」という企画が実施されているのです。VIPとはAlesisと姉妹ブランドであるAKAI Professionalが発売している超便利なユーティリティソフト(販売価格は12,411円)。

以前「M-Audio、AKAI、Alesisが放つVST統合テクノロジー、VIP Softwareが強力だ!」という記事でも紹介したソフトの新バージョン、VIP3です。詳細はその記事をご覧いただくとして、簡単にいえば、DAWを起動することなく、複数のソフトウェア音源を統合管理し、ここで演奏したり、エディットできたりするというもの。


今なら通常12,411円でダウンロード販売されているVIP3が入手できる

上記の付属のソフトウェア音源はもちろんのこと、手持ちの各社のVSTプラグインも一括管理できます。この際、数多くの音源があっても、音色名から選ぶことができたり、レイヤーを組んで音を重ねて演奏するといったことが可能。また各種プラグインエフェクトも一緒に組み合わせて、新たな音色を作成してプリセットに保存するなど、ソフトウェア音源を思い切り使いこなすことができるユーティリティなんです。

しかもVIP3はスタンドアロンで動作するだけでなく、VST、AU、AAXのプラグインとして、各種DAW上で動かすことも可能。つまりAUしか対応していないLogicで、VIP3を介してVSTプラグインを動かしたり、AAXしか対応していないPro ToolsでVSTプラグインを使うなど、自由度も非常に高く、DTM環境を理想的に拡張することができるものなんです。


VIP3はDAWなしでもVSTの音源、エフェクトを駆使して、PCを楽器にできる強力なツール

以前は、AlesisおよびM-Audio、AKAI Professionalブランドのキーボードなどに付属していましたが、VIP3になってからは有償のソフトとして独立してしまいました。逆にいえば、VIP3だけを目的にダウンロード購入することも可能になったわけですが、そのVIP3がキャンペーン期間中、VORTEX WIRELESS 2に付属しているのです。

せっかくならこの期間に購入するというのもよさそうですよね。

※2018.9.15追記
Facebookでのコメントに「MIDIで飛ばしたあとの処理にPCがいるのが、ネックかな。タブレットで代用できるといいのだけど」というものがあり、「それは確かに!」と思ったので、さっそくiPhoneにLightning-USBアダプタ経由でレシーバーを接続して試してみました。その結果、レシーバーはバスパワーで動作し、iOSの音源を鳴らすことができることを確認しました。


iPhoneにLightning-USBアダプタ経由で使うこともできた

さらにLightning-USB3アダプタを経由し、USBハブを接続し、ここにVORTEXのレシーバーのほかに、Rubix24を接続してみたところ、VORTEX WIRELESS 2とRubix24のMIDIを認識させることができました。さらにMidi Tool Box経由でVORTEXからRubix24へMIDI THRUを実現すると同時に、オーディオをUR22mkIIから出すことにも成功。この場合、Lihgtning-USB3アダプタのおかげで、iPhoneにも給電できるのでバッテリーの心配もなく、安心して運用できそうです。もちろん、iPhoneの代わりにiPadを用いてもOKです!


電源供給可能なLightning-USB3アダプタ+USBハブ経由で外部のMIDI IFへTHRUさせることにも成功

【関連情報】
Alesis VORTEX  WIRELESS 2製品情報
VORTEX WIRELESS 2「VIPソフト」プレゼントキャンペーン
VIP3製品情報
摩天楼オペラ公式WEBサイト
アヤノ.メ(彩雨さんブログ)

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