MIDIは数値入力で効率よく打ち込もうよ!

みなさんは、MIDIデータってどうやって入力してますか?キーボードが得意な人の場合、リアルタイムレコーディングがもっとも効率的だとは思います。でも、そうでない方の場合、譜面入力だったり、ピアノロールを使っている方が大半ではないでしょうか?

でも古くからMIDIを扱っている人の多くは数値入力を使っているのってご存知ですか?そもそも「打ち込み」という言葉自体、テンキーを使ってカチカチと数字を打ち込んでいくことから、そう呼ばれているんですよね。「数値入力」なんていわれた瞬間に「無理!」と思う方もいるとは思います。でも、この入力方法、5分で覚えることができ、譜面入力ピアノロール入力と比較して入力効率は、おそらく10倍以上。どんな方法なのか、簡単に紹介してみましょう。
数値入力で効率のいいMIDI打ち込みをしてみよう


具体的な入力方法に入る前に、背景的なことを整理しておきましょう。もともと数値入力という方法が登場したのは、1977年にRolandが開発したMC-8というシーケンサ。これについては、また後日、記事を書こうと思っていますが、MC-8で生み出された数値入力が、その後のMC-4、さらにはそれをパソコン上で再現させたカモンミュージックレコンポーザシリーズでした。

レコンポーザシリーズでは

ノート(Note)
ステップタイプ(ST)
ゲートタイム(GT)
ベロシティ(Vel)

という4つのパラメータで音符を入力していく形になっており、数値の羅列であるため、一見難しそうにも思えるのですが、これがとても使いやすいユーザーインターフェイスになっていたのです。

では、数値で、どうやって音符を表現するのでしょうか?ここではインターネットのDAW、Singer Song Writer 9の数値入力画面、ステップエディタを使ってみていきましょう。

たとえば中央ドの4分音符を入力する場合

       Note   ST      GT     Vel
       C4     480     432    100

となります。C4は下から数えて4オクターブ目のCの音、480はステップタイプを意味します。ステップタイプは音符の長さのことで、ここでは4分音符の長さを480としています。したがって、8分音符なら240、16分音符なら120、反対に2分音符なら960、付点4分音符なら720ということになりますね。
Singer Song Writerで4分音符のドを入力した画面
その次の432はゲートタイムを表すのですが、STのうち、どれだけの時間音を出すかを表すものです。つまり432/480という時間、鍵盤を押していると考えればいいでしょう。もし、100とか50に設定すればスタッカートに、432以上を設定すると次の音符にまで差し掛かるたため、スラーやタイになるわけですね。

最後の100はベロシティ。これは音の強さを表すもので、MIDIでは0~127で設定します。0なら音量ゼロ、127で最大ということになるので、100なら8割程度の音という理解でいいでしょう。
でも、こんな細かな数字を1つ1つ入力するとしたら、結構大変そうですが、実際には
「C4」+「Enterキー」
を押すだけで、ほかの数値は自動的に入力され、続いて
「D」+「Enterキー」
「E」+「Enterキー」
「F」+「Enterキー」

で、もう4分音符でのドレミファ、と1小節分が入力されてしまうのです。

ドレミファと1小節入力するのに要した時間は3秒弱

同じ音符なら「Enterキー」を押すと繰り返されるからです。もし、2分音符や8分音符を入力したいときは、ファンクションキーである「F2」や「F4」キーを押せばいいという手軽さです。

確かに画面にはいっぱい数字は並んでいるものの、実際に入力でのキー操作は極めて少なくて済んでしまうのです。ちなみに、Noteでは「C4」の隣に「60」という数字が表記されています。この数字は1大きくなるごとに半音上がるもので、60が「中央ド」、62なら「レ」、64なら「ミ」を表します。そのため「C4」の代わりに「60」と入力してもいいようになっており、数値を使えば、本当にテンキーだけでの操作が可能になって、効率が上がるというわけなのです。

ほかにも入力を効率よく行うためのキー操作がたくさん用意されているのも嬉しいところ。またSinger Song Writerの場合、スコアエディタでも右側に数値入力のステップエディタが表示され、数値入力すると自動的に左側の譜面に反映されるので、よりわかりやすいかもしれません。

譜面と数値が1つのウィンドウに並んで表示される
ところでCubaseLogicSONARProTools……といった海外のDAW、シーケンサにも数値エディタというものは搭載されています。しかし、欧米方式と日本方式は根本的に考え方が異なるのです。機会があれば、その違いを詳細に紹介してみたいと思っていますが、ここでは割愛しましょう。ただ、ひとついえることは、欧米方式の数値エディタは、あくまでも1つの音符を細かく調整するためのものであって、ゼロから入力するためのものではなく、これで入力するのは非現実的だ、ということです。

では、どんなツールを使えば、数値入力が可能なのでしょうか? 実は残念ながら現行の環境で日本式の数値入力ができるのはSinger Song Writer 9(ProfessionalでもStandardでもOK)だけなんです。以前は多くのメーカーがこの方式を採用したシーケンサを開発していましたが、いまはほかにないんですよね。
現在数値入力に対応しているのはSSW9のみ
ご存知のとおり、Singer Song Writer 9(SSW9)はDAWであり、数値入力機能はその中のほんの一部でしかありません。ただ、この数値入力のためだけにSinger Song Writer 9を使っても、入力効率などを考えれば十分メリットがあるソフトだと思います。たとえばVOCALOIDのデータ入力もSSW9のステップエディタで入力し、MIDIデータをエクスポートしてからVOCALOID Editorに読み込ませてもいいし、ほかに慣れているDAWがあるなら、MIDIだけはSSW9で行って、手持ちのDAWとReWire接続したり、MIDIデータを受け渡ししてもいいわけですし……。

この数値入力にもう少し、日が当たってもいいはず、と思っているのは、きっと私だけではないと思います。

【関連情報】
Singer Song Writer 9 Professional製品情報

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