オーディオループバックとDSPでネット生放送だ!

9月に作曲家の多田彰文さんと一緒に始めたUSTREAM番組、「DTMステーションPlus!」。番組配信に関するシステム回りは、ほぼすべて多田さんにお任せしっぱなしの状況なのですが、傍から見ていてももいろいろ勉強になることがいっぱいです。多田さんが毎回試行錯誤してくれている中、第3回目の番組からはUSTREAMのサーバー側へ送り出す最終段のオーディオインターフェイスに、多田さんが自腹で購入したSteinbergのUR22を使っています。

音質的にもなかなかいいのでは、と思っているところですが、ちょうど12月2日に行った第6回目の番組を、12月11日に再配信すると同時にそのアーカイブが見れるようにしました。これをご覧いただければ、ジャズトリオによるアニソンの演奏などもあるので、音の感じなども確認できると思います。今後、それ以前の番組についても再配信するとともに、アーカイブを行っていく予定であるほか、ニコニコ生放送などへの展開も検討しているところです。

現在のDTMステーションPlus!ではSteinbergのUR22を使用している


その一方で、私自身としても、そのシステム回りを少し研究してみたいなと思っていたのですが、先日ちょっと試してみたのが、そのUR22の上位機種であるSteinberg UR28Mです。

今回、オーディオループバック機能を利用する形で試してみたのがUR28M 

ご存じの方も多いと思いますが、UR28Mは、2年前に発売された6IN/8OUTのUSB接続のオーディオインターフェイスで、DSPを搭載しているというもの。オーディオインターフェイスというと、ハーフラックサイズも含め、いわゆるラックマウントタイプが多い中、UR28Mは卓上型というのが面白いところです。だからこそ、配信用機材として、使いやすそうに思うんですよね。

2年前に入手したUR28Mのファームウェアをアップデートしたら、機能的に大変身! 

なぜ、いまUR28Mを試したのかというと、実はこれが先日ファームウェアアップデートしたことにあります。Ver.2というファームウェアにアップデートすることで、アンプシミュレータ機能が搭載されたり、USBクラスコンプライアント対応したことでiPadやiPhoneで使えるようになったことについては、先日もAV Watchの連載記事「第573回:iPhoneの最新iOS 7がUSB Audio Class 2.0対応。使えるUSBオーディオがさらに拡大」で書いたところです。

LOOPBACKをオンにすると再生音をレコーディング可能になる 

が、それと同時にもう一つ機能強化された点として、オーディオループバック機能を搭載した、というものがあったのです。これって、もしかしたらUSTREAMニコニコ生放送などの動画配信用として、さらには「歌ってみた」、「演奏してみた」などの制作用に結構使えるのではないかな、と思ったわけです。

6IN/8OUTという仕様で、多くの機材と接続して使うことができる 

最近オーディオループバック機能を搭載したオーディオインターフェイスも、増えつつありますが、エントリー用機材が中心。UR28Mなら入出力もいっぱいある本気の機材として、結構いいのでは……、と試してみました。

オーディオループバックに関する概念図。iTunesなどの出力が入力として戻ってくる。赤い線はステレオ2ch
iTunesなどの音はdspMixFxの1/2chにギターやマイクの音に混ざってループバックされます

オーディオループバックという言葉をご存じない方も多いと思うので、簡単に説明すると、これは再生した音をそのまま入力できるという仕組みです。それの何がいいのかというと、iTunesWindows Media Playerで再生した音を、そのまま録音したり、配信したりできてしまうわけですね。できて当たり前そうな機能ではありますが、プレイヤーソフトを再生する音を録音するというのは案外、面倒。普通はケーブルを使ってオーディオ出力をオーディオ入力に接続するといったことが必要になるのです。

DTMステーションPlus!でも、ジングルをポン出ししたりするために、PCを用意し、その出力をアナログミキサーに突っ込んで……という使い方をしていますが、オーディオループバック機能があれば、その辺もスッキリさせることができるわけですよね。

また「歌ってみた」の人であれば、iTunesでカラオケを再生し、UM28Mに接続したマイクからのボーカルをミックスした上で、これをレコーディングできてしまうから、これはかなり便利に利用できるはず。しかも、その際、単にミックスするというのに留まらない、いろいろな威力が発揮できるのです。

まずは、+48Vのファンタム電源の供給ができるため、コンデンサマイクが利用できるということ。もちろんダイナミックマイクでのボーカルレコーディングもいいのですが、コンデンサマイクなら非常に繊細な音をレコーディングできるので、自宅でのレコーディングには最適。もちろんコンデンサマイクを別途購入する必要はあるわけですが、5,000円程度の安いものでも、それなりの威力は発揮してくれるので、試してみる価値はあると思います。

各チャンネルに搭載されているチャンネルストリップ。ハード機能として用意されているが設定がPC上の画面で行う 

次に、UM28M搭載のDSPにより、チャンネルストリップが利用できること。チャンネルストリップというのは、各チャンネルごとに設定できるコンプレッサ&EQ。ボーカルの音作りにこれらは必須のツールですから、かなり大きな意味を持ってくるはずですよ。初めてのユーザーだと、とくにコンプレッサの使い方は難しいところですが、ボーカル用のプリセットも用意されているので、まずはそれを使ってみて、適当にパラメータをいじって最適な設定を探してみるというのもいいと思います。

非常に高性能なリバーブ、REV-Xも装備されている 

さらに、ボーカルを録るなら、やはりリバーブも利用したいところです。もちろんDAWを使いこなしている方なら、チャンネルストリップも、リバーブ設定も、あまり苦もなく利用できると思いますが、UR28Mにはハードウェアとしてリバーブ機能を搭載しているので、即利用することができるのです。しかもREV-Xというヤマハの超高性能なリバーブですから、音的にもかなり満足感は高いと思います。

面白いのは、チャンネルストリップもリバーブもハードウェアが持っている機能であるため、リアルタイムにモニターしながら歌えるだけでなく、そのままUSTREAMやニコニコ生放送などへ直接配信できてしまうこと。もちろん、これをレコーディングすることも可能です。

dspMixFxの画面。DAWとかかれたループバックを含めると8chのミキサーとして使える 

では、どうやってミックスをするのでしょうか?これにはドライバといっしょにインストールされるdspMixFxというミキサー画面を使って行います。前述のとおり、UR28Mには6つの入力があるので、それぞれにマイクや楽器、iPhone/iPadなどのオーディオ機器を接続すると、このミキサーに立ち上がってきます。そしてこのdspMixFxを使って音量バランスをとったり、エフェクトの設定を行うのです。さらにオーディオループバックについてはDAWと書かれたチャンネルに入ってきます。つまり、このミキサーは8chのミキサーとして利用できるようになっているんですね。

このようにしてミックスした結果は、CubaseなどのDAWにWindowsならASIOドライバ、MacならCoreAudioドライバを使ってレコーディングすることができます。さらにビデオ編集ソフトなど、ごく一般のソフトへもチャンネルストリップ、リバーブを効かせた状態でレコーディングできるというのも大きなポイントではないでしょうか?そして、USTREAM ProducerNiconico Live Encoderなどでも利用できるので、ネット配信番組制作用にもバッチリです。

ミックスした結果をUSTREAM Producerなどで、 そのまま配信することができる

私、自身が「歌ってみた」をするつもりは毛頭ありませんが(汗)、しゃべり用にも使えるし、ギターやキーボード、ドラムなどの楽器を接続しての利用も可能だから、応用範囲も広そうです。今後のDTMステーションPlus!用としても含め、どのように利用するか検討していこうかなと思っているところです。

【関連情報】
UR28M製品情報

【関連サイト】 

AV Watch Digital Audio Laboratory
第478回:操作系がユニークな“ヤマハ×Steinberg”USBオーディオ
~DSPでエフェクト設定、“0レイテンシー”の「UR28M」 ~

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