同人もCDからカード&ダウンロードの時代へ。クリプトンのSONOCAが秀逸

自分の作った音楽作品をどんなメディアに収めて、配布・販売するか。「そんなのCDに決まってるだろ!」という人は多いとは思いますが、最近ダウンロード型に切り替える人も増えてきています。とはいえ、同人即売会などを考えると、モノとして形のあるものが欲しいと考える人は少なくないでしょう。そこで注目を集めているのがカード型の音楽メディアです。

そうカードに書かれたコードを利用することで、音楽データをダウンロードできるというもので、最近はメジャーレーベルの作品でも、そうしたカードで販売しているものが出てきています。そして、こうしたカードを生産する会社がいくつか存在していますが、その多くは既存のレコード会社が展開するプロ向け、メジャーレーベル向けのもので、一般ユーザーが利用できるサービスは限られていました。そんな中、先日クリプトン・フューチャー・メディアSONACAというサービスの展開をスタートし、100枚で9,800円(サーバー側料金も込み)という手ごろな価格での注文をオンラインから行えるようになったのです。このSONOCA、同人即売会用としての発行や、名刺代わりに用意しておく音楽メディアとして、なかなかよくできているんです。どんなメディアなのか、紹介してみましょう。

クリプトン・フューチャー・メディアが「SONOCA」というスマホ用音楽カードの制作サービスを開始した

SONOCAはクレジットカード、キャッシュカードなどと同サイズの紙製のカードで表面は自分の好きなデザインを施せるようになっています。CDでいうところのジャケットに相当するものですね。


先日入手した、SONOCAのカード。デザインはカードの制作者が自由に作ることができるようになっている

一方、裏側にはシリアルコードとQRコードが印刷されています。これらはいずれも1枚1枚異なるコードとなっているのですが、このコードを利用することで、楽曲データをダウンロードできるようになっているのです。ちなみに、この写真にあるコードは私がすでに使ってしまったので、これを再度利用することはできませんよ。


SONOCAの裏面にはシリアルコードとQRコードが記載されている

そのダウンロードはiPhoneアプリ、Androidアプリを使ってできるようになっており、いわゆるストリーミングではなく、MP3-320kbpsのデータとして手元に届く形になっています(ほかのファイルフォーマットについては後述)。もちろん、iPhoneやAndroidをPCと接続することで、PCで再生することもできるほか、オフィシャルサイトでPCから曲をダウンロードすることもできます。


SONOCA Playerというアプリを使い、シリアルコードかQRコードを用いてダウンロードする 

最近、CDを買っても、CDプレイヤーで直接聴くことはほとなく、PCのCDドライブでリッピングしてからiPhoneなどで聴くという人が大半なのではないでしょうか?私も、その一人ですが、今使っているメインPCはデスクトップもノートもCDドライブを搭載していないため、CDをリッピングすること自体が結構面倒。そういう意味でも、ダウンロード型メディアというのは、便利ではありますよね。


ジャケット表示をした状態でプレイヤーを鳴らす

このSONOCA、1枚で扱えるのは1曲のみというわけではなく、アルバムとして使うことも可能なのも便利なところ。そう出す側のニーズとしては、シングルとして販売したい場合も、アルバムとして販売したい場合もありますから、そのどちらのニーズにも対応できるというのは嬉しいところです。


まずはSONOCAのサイトで新規クリエイターとして登録を行う 

では、このカード、どうやって作成するのでしょうか?その流れを簡単に追ってみましょう。まずSONOCAを作るためには、SONOCAサイトでユーザー登録する必要があります。このユーザー登録には「新規リスナー登録」と「新規クリエイター登録」という2種類があるのですが、SONOCAを作る場合には「新規クリエイター登録」のほうですね(2つを関連付けた統合型の登録も可能です)。
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SONOCAとして印刷するカードの枚数をしてし、収録する曲数などを指定
登録が終わり、ログインしたら、ここから先はカードの注文に入っていきます。まずはカード枚数を指定するとともに、収録曲数を指定します。さらにデザインのところで、カードの画像=アートワークをJPEG形式で入稿します。推奨画像サイズは1268px×827pxとのことなので、かなり解像度高い写真・文字を入れられそうですね。

所定サイズのJPEGデータのアップロードを行うとカードやアプリ画面のプレビュー表示がされる
そのほかオプションの台紙の有無などを設定するとともに、iPhone/Androidのアプリ画面上に表示される画像もJPEGデータでアップできるため、カードのジャケット写真とはまたちょっと違うデザインを入れられるというのも楽しいところです。

オプションとしてカードを入れる台紙が白と黒の2色用意されている

あとは、アルバム名、アーティスト名などを入れて、楽曲情報の入力、音楽データのアップロードへと進んでいきます。その後、音楽データをSONOCAサイトへとアップロードしていくのですが、ここでポイントとなるのが、オーディオフォーマットです。


黒の台紙に挟み込み、個包装用OPP袋に入れると、こんな商品に 

先ほども少し触れたとおり、SONOCAでダウンロードできるのは、現時点ではMP3-320kbpsなのですが、アップロードするのはMP3データではなくWAVファイル。SONOCA、1枚に対して最大で700MBまでの容量となっているんで、ちょうどCD1枚分ということですね。これをアップロードすると、SONOCA側が自動的にMP3へとエンコードしてくれるというわけなのです。

WAVファイルでデータをアップロードする。1枚のアルバムとしては最大700MBまで

そう現状ではMP3のみなのですが、クリプトンによると、今後ハイレゾへの対応も予定しているとのことですので、そうなると、ますますCDからSONOCAへ切り替えるメリットも大きくなってきそうですね。


「料金をシミュレーション」という機能を使えば、事前に価格を確認することも可能 

なかには、自分のオリジナル楽曲をJASRACやNexToneといった著作権管理団体に信託しているという方もいると思います。そうした場合、クリプトンに費用を支払うことで、著作権処理を代行してくれるというメニューも用意されているので、SONOCAへの収録楽曲の幅も大きく広がりそうですよね。

さて、このSONOCA Playerというアプリを使ってダウンロードしたデータ、iPhoneやAndroidにおいては、このアプリでそのまま再生できるようになっているのですが、このアプリがまたよくできているんです。ここで再生できるのは、ダウンロードしたデータだけでなく、あらかじめiPhoneやAndroidに入っていた自分の音楽ライブラリも同じように再生することができるんです。


SONOCA Playerの画面。ここでは「進んだ時に 見える光が」に色がついており、歌詞が音楽と同期してカラオケのように表示される

つまりiPhoneの場合なら、iTunesで管理している楽曲(DRMがかかっているものを除く)はすべて、これで再生できるわけです。そして、SONOCA Playerが、非常に優れているのは、単に曲を再生できるだけでなく、ここに歌詞の表示ができるということなんです。もちろんユーザーは、これに課金されることなく、無料で歌詞表示できるというのは、なかなか画期的ですよね。


SONOCAは歌詞投稿コミュニティーの「プチリリ」と連携する設計になっている 

なぜ、そんなことができるのかというと、SONOCA Playerは歌詞投稿コミュニティである「プチリリ」と連携する形になっており、ここに登録されている楽曲の歌詞を自動で引っ張ってこれるからなんです。すでに「プチリリ」には膨大な楽曲の歌詞情報が入っているので、大半の楽曲の歌詞を表示させることができますよ。

SONOCAの入稿画面において、歌詞を入力する機能も用意されている

では、自分の作った歌詞を表示させるにはどうしたらいいのでしょうか?まだできたてのオリジナル楽曲であれば、当然プチリリには投稿されていないわけですが、SONOCAでデータ入稿する際に歌詞を入力する画面があるので、ここで入力してしまえば、SONOCA Player上ですぐに表示させることができるというわけなのです。

ただし、このデータ入稿する際に行う歌詞入力でプチリリのデータベースに登録されるわけではないとのこと。SONOCA Playerへ表示するための専用データベースなんですね。プチリリの場合、カラオケのように曲の進行と同期して歌詞を表示する機能があるため、見やすいけれど入力がその分、面倒になります。それに対し、SONOCAのデータベースは同期機能はないけれど、歌詞をコピペで入力できるから簡単なんです。

両方のデータベースに登録されている場合は、当然プチリリが優先されるとのことなので、まずはデータ入稿時に歌詞を入力しておき、その後、時間のあるときにプチリリへ投稿するのがよさそうです。もっともリスナーさんは、プチリリの歌詞情報なのか、SONOCAの歌詞情報なのかといったことはまったく意識することなく使えるので、なかなかうまくできていると思います。


SONOCA timeshiftの流れ (MAMI KAWADA FINAL F∀N FESTIVAL “F” © Fuctory Records / IVE  All Rights Reserved.)

さらに、もう一つ予定されているサービスが、「SONOCA timeshift」というものです。すでに法人向けにはスタートしているとのことですが、先にカードを作成してから、後で楽曲登録をできるというサービスなんです。これが何を意味しているのか、分かりますか?そう、ライブの物販でSONOCAを販売し、数日後にそのライブを収録した音を届けるといったことが可能になるのです。なかなか画期的だと思いませんか?やろうと思えば、ライブ終了後、すぐにレコーディングデータの編集作業を行えば、その日のうちに、その日のライブの音をダウンロード可能にする、なんてことも実現できるわけです。

法人向けサービスでは1つのSONOCAの注文において最大20種類のデザインを同時に印刷することもできる 

SONOCAは、このように個人が気軽に頼めるサービスとなっていますが、法人向けにもサービスを展開しており、法人向けでは1つのアルバムで20種類のデザイン=ジャケット写真のカードを印刷するサービスを展開しているそうでです。つまり、1000枚を注文した場合、20種類×50枚=1000枚が届くというオプションがあるとのこと。入っている楽曲自体は同じですが、熱心なリスナーさんであればプレミアムカードとして、複数購入してくれる可能性もあるので、ミュージシャンにとってもビジネスチャンスが広がるというわけですね。ぜひ、こんなオプションも一般向けに展開してくれたら……と期待するところです。
timeshiftやハイレゾ対応については、来年あたりの対応になる可能性もあるとのことですが、手ごろな価格でこうしたカードを発行できるというのは、音楽制作をする多くの人たちにとって、大きな武器になりそうです。

【関連情報】
SONOCAサイト・トップページ
SONOCA新規クリエイター登録ページ
SONOCA料金シミュレーション

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