自動作曲サービス、ボカロネットに歌わせてみた!

8月4日、ヤマハの新サービス「ボカロネット」がスタートしました。これはVOCALOIDをまだ触ったことがない初心者から、ヒット曲をガンガン作り上げているボカロP、さらには曲作りの発想に困っている作曲家の方まで、幅広い人が使える、まったく新しいインターネット上のサービスです。

以前、ニコニコ超会議のレポートとして「歌詞を入力すると自動で曲が完成するボカロネットがスゴ過ぎる!」という記事を書きましたが、これはクラウド上の自動作曲ツールであり、VOCALOIDの機能を120%発揮させるためのサービス。VOCALOID製品を持っていない人でも、無料で使って自分のオリジナル曲を作って歌わせることができるし、VOCALOID製品を持っている人ならさらに発展的な使い方ができるユニークなものなのです。さっそく、そのボカロネットを試してみたので、紹介してみたいと思います。


8月4日にスタートしたボカロネットのサービスをさっそく試してみた!


まず、以下のビデオ、30秒弱のものですが、ちょっと聴いてみてください。

そう、これは枕草子の冒頭を歌詞として入力して、ボカロネットの目玉機能、ボカロデューサーに作曲させたものです。歌の部分は8小節と短いですが、ちゃんと伴奏もあって、イントロ(カウント?)とエンディングもついて、しっかりした曲にまとまってますよね!

ボカロネットには、会員登録するだけで使える「無料会員」と、月額500円を支払う「プレミアム会員」の2つがあるのですが、いまの曲は無料会員でできてしまうもの。しかも、ブラウザで操作するだけなので、自分でVOCALOID製品を持っていなくても、ボカロ作品ができてしまうのがスゴイところです。

ちょっと簡単に手順を説明してみましょう。まずボカロネットにアクセスして、ボカロデューサーを選択します。「カンタンモード」、「ノーマルモード」の2種類のモードがありますが、まずはカンタンモードを使ってみましょう。

カンタンモードにおいて、漢字交じりで歌詞を入力するだけ

操作自体は本当にカンタン。基本的に歌詞入力のところに、4段に分けて歌詞を入力するだけ。画面を見てもわかる通り、漢字交じりの文字で入力してもOKなのです。VOCALOIDを使ったことがある方なら、よくわかる通り、本来VOCALOIDでは「私は蝶々が好き」を「わたしわちょおちょがすき」のように入力する必要があるのですが、ボカロデューサーの場合、普通に漢字で入力すればいいのは、便利で、わかりやすいですよね。


必要に応じてシンガーや曲調の入力も可能だが、ここでは、「おまかせ」のまま「作曲開始」ボタンをクリック

シンガー、曲調は自分で指定することも可能ですが、ここはとりあえず「おまかせ」にして、「作曲開始」ボタンを押すだけ。これで先ほどのような曲ができてしまうんです。


しばらく待っているとボカロデューサーが自動で作曲してくれる 

一方、ノーマルモードを利用すると、もう少し自分の意思を反映させた作曲が可能になります。シンガーはもちろん、メロディテイスト、伴奏ジャンルや伴奏音源といったものを指定することができるので、ある程度の狙った感じの曲になるんですよね。

しかもボカロデューサーで作った楽曲は、自分で聴いて楽しむだけではく、友達と共有することも可能です。自動作曲されると同時に自動的に自分のボカロストレージ(保存領域)に保存されるので、その試聴ページをTwitter、Facebookに投稿すればいいのです。


VOCALOID3 Editorをアップデートすると、見慣れないボタンが2つ追加されている

ここまではVOCALOIDユーザーでなくても、ブラウザ上の操作だけで、すべてできてしまうのですが、VOCALOIDユーザーであれば、さらに一歩も二歩も進んだ使い方ができるのです。そう、VOCALOID3 Editor、Tiny VOCALOID3 Editor、VOCALOID Editor for Cubaseを最新のバージョンにアップグレードしてみてください。すると、これまで存在していなかったボカロネットとの連携ボタンが2つ追加されているのです。

ボカロデューサーで作った楽曲などが、一覧として表示される 

このうちの「楽曲一覧を開く」のボタンを押してみると、ボカロデューサーで作曲した曲の一覧が表示され、ここで試聴することができます。それが目的のファイルであれば、「ダウンロードして開く」のボタンをクリックすると、VOCALOID Editorの画面には作曲されたVSQXファイルが読み込まれると同時にステレオのWAVトラックには伴奏が読み込まれるので、ここで再生することができるのです。


VOCALOIDのデータおよび、伴奏データがトラック上に展開される

ということは、つまりここでVSQXファイルをエディットして、少しアレンジしてみる、なんてことも可能なので、世界は大きく広がるわけです。ボカロデューサーがキッカケを作ってくれたモチーフを元に、もっと膨らませて、より立派な曲に仕上げるというのも、アリですよね!

さらに、有料サービスのプレミアム会員にアップグレードすると、もっと踏み込んだ使い方ができます。まずは、その無料会員とプレミアム会員の違いを簡単に表にまとめてみたので、ご覧ください。

無料会員 プレミアム会員
ボカロストレージ容量 500MB 5GB
ボカロデューサー使用可能回数 3回/1日、20回/1ヶ月 30回/1日、300回/1ヶ月
使用できるシンガー 2種類
※ 歌声ライブラリは2種類
20種類
※ 歌声ライブラリは5種類
使用できる伴奏スタイル 15種類 140種類
使用できる伴奏音源 ライト音源 ライト音源 + プロ音源
ボカロデューサーで作曲できる1曲あたりの最大小節数 8小節(1パート) 32小節(4パート)
楽曲ファイルダウンロード
※ ボカロネットのウェブサイトから
VOCALOIDシーケンスファイル(.vsqx)
ステレオオーディオトラックファイル(.flac)
モノラルオーディオトラックファイル(.flac)
ミックスオーディオファイル(.mp3)
伴奏MIDIファイル(.mid)
VOCALOID3 Editor、VOCALOID Editor for Cubase、iVOCALOIDとの連携
利用料金 無料 月額500円(税別)

※この表の内容は2014年8月4日現在のものです 

いろいろと違いがあるのですが、まず1つ目の大きな違いとして挙げられるのが、ボカロデューサーを使える回数です。そう無料会員だと1日3回、1か月で20回までという制限があるのに対し、プレミアム会員だと1日30回、1か月に300回までと大幅に増えます。


プレミアム会員になると、シンガーも20種類の中から選択が可能

実際に試してみると分かるのですが、ボカロデューサーが自動で作曲してくれるだけに、同じ歌詞でもいろいろなパターンを聴いてみたくなるんですよね。その際、無料会員だと、ちょっと物足りないかな……、と。

伴奏ジャンル、伴奏音源もさまざまなものから選択できるので、いろいろ作曲させてみたくなる

またボカロストレージ容量も500MBと5GBですから結構違いますよね。作った楽曲が、ここにどんどんたまっていくので(削除することも可能ですが)、データを保存しておくためには、ある程度の容量がほしいところ。また先ほどはダウンロードすることだけを試しましたが、反対に自分の完全オリジナル作品や、ボカロデューサーで作った曲を少しエディットした結果をアップロードすることができます。そのための容量も考えると500MBだと少なそうですよね。


ボカロデューサーで作曲した楽曲のデータ4種類をダウンロードできる 

しかし、DTMユーザーにとっては、もっと抜本的な違いがあるのです。それは、プレミアム会員は、ボカロデューサーで作成した楽曲をもっと完全な形でダウンロードできる、ということ。具体的には
・ボーカロイドのVSQXファイル
・伴奏のMIDIファイル
・伴奏のオーディオファイル(FLAC)
・ミックスしたMP3ファイル
のそれぞれ。

そのことから想像できるとおり、ほぼすべてのネタを丸ごとデータとして入手できるわけですから、アレンジも自由自在というわけなのです。

ここで、そのプレミアム会員としてボカロデューサーに作曲させたものがあるので、ご覧ください。

いかがですか?無料会員の場合、8小節までですが、プレミアム会員なら32小節まで可能。ここでは夏目漱石の「坊ちゃん」の冒頭を16小節分入力して作曲させてみました。先ほどの枕草子の場合、直接ブラウザで再生させましたが、今度はVOCALOID3 Editorにダウンロードした上で再生させているので、必要に応じてボーカルと伴奏のバランスを調整したり、ボーカルにリバーブやコンプを掛けるといったことも可能です。

このように漢字交じりの歌詞を入れて、普通に読んでくれるわけですが、どんな読みでも完璧というわけではないようです。ヤマハによると、読みについては、日々学習させていくので、賢くなっていっているそうですが、数字の読みは苦手なのだとか……。実際、「一週間」を「いちしゅうかん」と歌っていることに気付いた方もいると思います。でも、VOCALOID3 Editor上でのデータとなっているので、自由に修正することも可能です。

ここでは、この歌詞の修正だけでなく、さらにもう一歩進んでMIDIファイルを含めて、Cubaseに読み込み、VOCALOID Editor for Cubaseで再生させたのが以下のものです。

こちらはシンガーをオリジナルのZOLA PROJECT YUUから、蒼姫ラピスに変更するとともに、伴奏はMIDIファイルを利用してHALion Sonic SEを鳴らしているのですが、だいぶ違う雰囲気になりますよね。


ボカロデューサーで作成した楽曲の素材をダウンロードし、Cubase上で展開

もちろん、ここにイントロを追加するとか、Aメロ、Bメロ、サビ……といった展開を作っていくことも可能ですから、いじりがいはありそうですよ!

そして、もう一つボカロネットの強力な機能として挙げられるのがiVOCALOIDとの連携です。そう、PC版のVOCALOIDだけでなく、iPad、iPhoneのiVOCALOIDでも同様の連携が可能なので、通勤・通学中、iPadを使ってアレンジをして、ボカロストレージにアップロードし、自宅に戻ってから、PC上Cubaseとボカキューでじっくり仕上げに取り組む……なんてことまでできるわけです。


iVOCALOIDでもボカロネットとの連携が可能で、結果的にPCとのやりとりも簡単にできる 

以上、ボカロネットについて、本当に触りの部分だけを紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?自動作曲という面白さはもちろんのこと、ボーカロイドをクラウドと連携させることで、できることの可能性が大きく広がるのが、ボカロネットの大きなポイントです。とりあえず、無料会員でも十分にその楽しさ、スゴさを実感することができるので、VOCALOIDユーザーでも、まだVOCALOIDを使ったことがない人でも、試してみることを絶対的にお勧めします!
【関連リンク】
ボカロネット

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