DTM初心者のためのオーディオインターフェイス選び 2015

以前、「DTMをはじめよう!」という記事を書き、多くの反響をいただきました。その記事では、本当に初めてDTMをスタートさせる人を目的別に3つに分類してみましたが、その1つが「ボーカルや自分の演奏する楽器を録音してみたい」というもの。この目的を実現するためには、オーディオインターフェイスDAWが必要になりますが、「最近のほとんどのオーディオインターフェイスには、結構立派なDAWが付属してくるので、オーディオインターフェイスを1つ購入すればいい」という話を書きました。

とはいえ、具体的にどんな製品があり、どのような観点から選べばいいのかというのは、初心者にとってなかなか難しいところだと思います。もちろん、ただ安ければいいわけではないし、有名メーカーならOKというわけでもありません。そこで、ここでは初めてDTMにチャレンジする人のために、どうやって選べばいいか、具体的にどんな製品があるのかを含めて紹介してみたいと思います。


いろいろあるオーディオインターフェイス、その選び方を紹介しましょう



■オーディオインターフェイスって何?
オーディオインターフェイスなんて言葉を聞いたことも、実物を見たこともない」という方もいるでしょう。これはPCで音=オーディオを入出力するための装置です。「でもPC本体で音も出せるし、録音もできるのでは…」と思う方も多いはず。そう、確かにWindowsPCもMacも、サウンド機能が搭載されているので、録音もできるし、音も出すことは可能ですが、DTM用と考えると問題も多いのです。

まずは音質。「別にそこまでこだわらないよ」という方でも、やはりここは重要なポイント。とくに入力性能は重要であり、PC内蔵の機能ではまともに使うことはできない、もしくは使うのは非常に難しいと考えたほうがいいのです。

たとえばマイクをつなぐことを考えてみてください。確かにオモチャのPCマイクなら接続できますが、ボーカル用のマイクを接続できないし、入力レベルをコントロールすることもできません。ギターを接続するということも考えても同様です。

そんなの入力端子に合ったアダプタで変換すれば…」と思うかもしれませんが、信号レベルや電気的特性が異なるため、まともに接続できず、無理やり接続しても、本来の音で録音することは困難なのです。

そこで、登場するのがDTM用途として存在するオーディオインターフェイスです。これを使えば、マイクや各種楽器と接続できるし、いい音で聴くこともできます。やはりDTMをする上では必要不可欠であり、まず揃えておくべき機材なのです。

以前はPCとの接続方法がいろいろありましたが、現在はUSB接続が基本となっていいます。

■スペックと選び方のポイント
でも、どうやって選べばいいの?」、「いくらぐらいするものなの?」……と不安に思う方もいるでしょう。確かに、初めてのモノ選びはなかなか難しいけれど、どんなものがあるのかを調べていくだけ勉強にもなるし、結構楽しいものですよ。また価格的にはピンからキリまであり、安いものだと1万円程度からあります。

初心者だから一番安いものでいいや」、というのは間違え。探すと「オーディオインターフェイス」と銘打った5,000円程度のものもありますが、マイクや楽器を接続するという用途では使えなかったり、DAWが付属していなかったりしますから要注意です。

さて、ではそのスペックの見方ですが、各製品のカタログやWebページを見ると、いろいろなことが書かれているので、混乱しそうです。もちろん、それぞれ意味のあることではありますが、初心者ユーザーがチェックするべきは以下の3ポイントです。

●入力端子をチェック
ボーカルを録りたい、エレキギターを録りたい、アコースティック楽器をマイクで録りたい……、人によってニーズは異なると思いますが、まずはそこを確認した上で、入力端子にそれが接続できるかを確認しましょう。

左の3つ穴があるのがキャノンジャック、右が標準ジャック

端子形状としては大きく3種類。ギターなどのシールドが接続できる標準ジャック(TSフォンTRSフォンなどという場合もあります)、マイク接続のための3端子のキャノン(XLRという場合もあります)、そして標準ジャックでもキャノンでも接続可能なコンボジャックのそれぞれ。


キャノンジャックと標準ジャックの2つを兼ね備えたコンボジャックが2つ並んでいる

また、端子が合えばすべてOKではないのが難しいところ。コンデンサマイクと言われる高感度のマイクを接続する場合は、ファンタム電源と呼ばれる+48Vの電気をオーディオインターフェイスから供給する必要があります。これがあるかどうかはチェックしておいたほうがいいですね。「そんなマイク持っていないから…」という人も、そのうち欲しくなることもあるので、とくにアコースティック楽器をマイクで録音することを考えているのなら、ファンタム電源搭載機を選ぶのが無難です。


48VまたはPHANTOMなどと書かれたスイッチをオンにすると入力端子にファンタム電源の供給ができる 

もうひとつチェックしたいのが、ギターやベースを直で接続できるのかという点。標準ジャックがあれば、確かに物理的な接続はできますが、エレキギターやベースの場合、一般的なオーディオ機器と電気的特性が異なり、通常の入力だと本来の音で録音できないのです。そこで多くのオーディオインターフェイスにはHi-Zとかハイインピーダンスと呼ばれるモードが搭載されており、これを使うことでギター、ベースと直で接続できるようになるのです。ギタリスト、ベーシストの方は要チェックのポイントです。


Hi-ZまたはINSTRUMENTSなどと書かれたスイッチで入力切替が可能になっているかもチェックポイント

なお、ここでは初心者DTMユーザー向けということで、入力端子の数については、あまり考えませんが、もしバンドメンバーの一発録りに使うのが目的…というようなことであれば、値は張りますが、それ相応の入力端子数を搭載した機材を選ぶようにしましょう。

●オーディオ性能をチェック
オーディオインターフェイスの性能を示す重要なスペックが
量子化ビット数
サンプリングレート
の2つです。いきなり難しい言葉で困惑する方もいると思いますが、これだけは覚えてしまいましょう。量子化ビット数は、サンプリングビットなどということもありますが、値として登場してくるのは通常16bitか24bitのいずれか。オーディオインターフェイスと呼ばれるものの多くは24bitとなっているので、そのことだけは確認しておきましょう。難しくなるので詳細は割愛しますが、24bitを選んでおけば間違いありません。

一方サンプリングレートはサンプリング周波数と言うこともあり、どこまで高い音を収録できるのかという性能です。医学的には人間の耳で聞こえる高い音は20kHzが限界といわれており、それを捉えるには倍の40kHz以上のサンプリングレートに対応していればOKなのです。ただ、より細かなニュアンスを捉えるにはより高いサンプリングレートが必要であると言われてもいます。

とはいえ、ここは初心者用。まだそこまで細かいことにこだわらないほうがいいと私は思いますし、安いオーディオインターフェイスで、そこまで顕著な違いは出ないと思うのです。だから個人的には48kHzに対応していればいいのでは、と考えています。ただ、こだわるなら96kHzさらには192kHzに対応した機材を選ぶのもいいと思いますよ。

●付属DAWも重要なポイント

そしてもう一つ重大なポイントがバンドルされているDAWです。DAWの詳細については、ここでは書ききれませんが、DTMでレコーディングやエディット、ミキシング、マスタリング……といった一連の作業をしていくソフトがDAWです。


Cubase AI 7の画面。こんなすごいソフトがオーディオインターフェイスに付属している

そのDAWは通常、単体のソフトとして販売されており、1万円~10万円程度という価格になっているのですが、そのDAWがオーディオインターフェイスに付属しているので、まずはこれを使ってみるべきでしょう。ただ、オマケ扱いであるだけに、マニュアルもないし、セッティング方法なども記載されていません(PDFなどで入っているものもありますが)。その意味では、別途しっかりしたマニュアルの付属したDAWを同時に買うのがいいのでしょうが、ネット上にいろいろな情報もあるので、それを頼りに試してみるのもいいと思います。また知り合いで教えてくれそうな人がいるのなら、その人と同じDAWが入っているオーディオインターフェイスを選ぶというのもいいですね。


SONAR X3 LEの画面。一般的な使い方ならこのソフトがあれば十分過ぎるほど

ちなみに付属DAWを活用できるように書いた本もあります。Cubase AI7やCubase LE7で使える「Cubase 7シリーズ徹底操作ガイド」(リットーミュージック)やSONAR LE用に書いた「BASIC MASTER X1 LE」(BNN新社)がそれ。こんな本と併せて活用するとうのもおすすめですよ!

■初心者用おすすめ5機材
いまオーディオインターフェイスは、国内外、さまざまなメーカーから数多くの製品が出ているので、どれを選べばいいか、見つけ出すのは大変。そこでここでは5つの機材をピックアップしてみました。

いずれも初心者用として使え、性能もしっかりとした機材。もちろんDAWも付属しています。価格的には15,000円前後のものをピックアップしています。確かにより安い10,000円程度のものもありますが、今後、使い続けていくことを考えると、15,000円程度のものが良さそうだったので、参考にしてみてください。

なお、もうワンランク上のものが欲しい、ということであれば「3万円で買えるワンランク上のオーディオインターフェイス選び」という記事もあるので、合わせて参照いただければと思います。

●Steinberg / UR22 付属DAW:Cubase AI 7

Steinbergというブランド名になっていますが、実質的にはYAMAHAの製品です。24bit/192kHzに対応しており、2つのコンボジャックを装備。ファンタム電源供給可能で、右チャンネルのみHi-Z入力に対応させることができます。ずっしりとくる高級感ある堅牢なアルミ・ボディーです。マイク入力1つ+ギター入力1つでもいいなら、さらに安いUR12という機材もあり、お勧めです。
【関連記事】
Steinberg/YAMAHA純正の1万円オーディオIF、UR12は買いなのか!?
大ヒットUSBオーディオIF、UR22の兄貴分、UR242が誕生
【メーカーサイト】

http://japan.steinberg.net/de/products/hardware/ur_series/ur22.html
【価格チェック】
◎Amazon ⇒ UR22
◎サウンドハウス ⇒ UR22
◎Amazon ⇒ UR12
◎サウンドハウス ⇒ UR12
●Focusrite / Scarlett 2i2 付属DAW:Ableton Live 9 Lite

イギリスの老舗、Focusriteの製品で、24bit/96kHzに対応。フロントに2つのコンボジャックがあり、左右ともにHi-Z対応にすることが可能です。また左右ともにファンタム電源供給が可能となっています。レッドボディーはアルミシャーシでかなり頑丈です。なお、これにコンデンサマイク、ヘッドホン、各種プラグインとCubase LE7をバンドルしたScarlett Studioパック製品もお勧めです。
【関連記事】
コンデンサマイク、モニターヘッドホン、オーディオIF、Cubase、プラグインがセットのFocusrite・DTMパックが25,000円だ
【メーカーサイト】
http://www.h-resolution.com/Focusrite/Scarlett2i2.html
【価格チェック】
◎Amazon ⇒ Scarlett 2i2
◎サウンドハウス ⇒ Scarlett 2i2
◎Amazon ⇒ Scarlett Studio
◎サウンドハウス ⇒ Scarlett Studio
●Roland / DUO-CAPTURE EX 付属DAW:Ableton Live 9 Lite

定評あるRolandのオーディオインターフェイスの入門モデル。コンボジャックを2つ搭載し、ファンタム電源、Hi-Z入力もサポートしています。INPUT 1のほうはHi-Zにも対応しています。24bit/48kHzというスペックですが、Lightning-USBカメラアダプタを使えばiPadとの接続もできるのも大きな特徴でこの場合は電池駆動します。
【関連記事】
DUO-CAPTURE EXを使ってみた
【メーカーサイト】
http://www.roland.co.jp/products/jp/DUO-CAPTURE_EX/
【価格チェック】
◎Amazon ⇒ DUO-CAPTURE EX
◎サウンドハウス ⇒ DUO-CAPTURE EX

●TASCAM / US-366 付属DAW:SONAR X3 LE,Ableton Live 9 Lite

最大同時6入力が可能で、24bit/192kHz対応、機材内部にエフェクトも搭載しているなど、今回のラインナップの中ではやや異色というほど高スペックな機材です。アナログ入出力だけでなくデジタル入出力も装備しているので、さまざまな機材との接続も可能。ニコニコ生放送やUSTREAMなどネット放送でも活用できるのもポイント。
【関連記事】
最大6IN/6OUTで、DSPエフェクト搭載のTASCAM US-366を使ってみた
【メーカーサイト】
http://tascam.jp/product/us-366/
【価格チェック】
◎Amazon ⇒ US-366
◎サウンドハウス ⇒ US-366

●PreSonus / AudioBox iTwo 付属DAW:StudioOne Artist

24bit/96kHz対応で、2つのコンボジャックを搭載。ヘッドホン出力とメイン出力はリアパネルにあります。ファンタム電源があるほか、INPUT 1、2それぞれ独立したHi-Z切り替えスイッチも搭載されているのでマイク、ギター、ラインと何でも接続も可能です。マイク、ラインそれぞれ1系統でよければ、さらにコンパクトで安価なAudioBox iOneもあります。またコンデンサマイクとヘッドホンをセットにしたAudioBox iTwo STUDIOというパック製品も用意されています。
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DAW、オーディオIF、マイク、ヘッドホン全部入りで27,800円、PreSonus AudioBox iTwo STUDIOがスゴイ!
【メーカーサイト】
http://www.mi7.co.jp/products/presonus/audioboxi/
【価格チェック】
◎Amazon ⇒ AudioBox iTwo
◎サウンドハウス ⇒ AudioBox iTwo
◎Amazon ⇒ AudioBox iOne
◎サウンドハウス ⇒ Audio iOne
◎Amazon ⇒ AudioBox iTwo STUDIO
◎サウンドハウス ⇒ AudioBox iTwo STUDIO
※この記事は2013年7月30日に書いた記事を2014年4月24日、2015年5月6日に加筆・修正したものです。

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