魔法びんのサーモスがスピーカーを開発・販売しているのをご存知でしょうか?約1年前に「魔法びんがスピーカーに!?サブモニターにピッタリなサーモスのVECLOS」という記事を書いたこともありましたが、このとき紹介したサーモスのSSA-40Sはすごく小さいのにとっても高音質と好評のスピーカーであり、私自身もこの記事を書いて以来、ずっと愛用しています。

そのサーモスから、本気の「アクティブ ニアフィールド モニター MSA-380S」が12月1日に発売されます。「何?このバズーカみたいなのは!?」という形のMSA-380Sですが、やはり魔法びんの真空二重構造を応用したサーモス独自の真空エンクロージャーという技術を使ったモニタースピーカーであり、まさに高解像度!という強烈なサウンドを出してくれるのです。発売前にそのMSA-380Sを入手できたので、これがどんなものなのか、ファーストインプレッションとして紹介してみましょう。


魔法びんの仕組みを応用したニアフィールド・モニター、VECLOS、MSA-380Sを試してみた

SSA-40Sを使ったことのある方なら「ついに来た!」と歓喜の声が上がりそうな一方で、知らない方にとっては「は??魔法びんの真空二重構造のスピーカー!?」と不思議に思われるのではないでしょうか?

手のひらに乗る小さなスピーカー、SSA-40S

そう、このサーモスが生み出した真空エンクロージャーという技術は、ステンレス魔法びんで使われている保温のための真空二重構造をスピーカーの世界に展開したもの。真空部分があることで、より高い剛性を実現し、小さいながらも非常に高音質なサウンドを出せるスピーカーを実現したものなのです。

サーモスによると「真空の効果はその層の厚さとは関係がなく、たとえ1mmの真空層でも効果を発揮します」とのこと。サーモスが長年にわたり培ってきた高度な金属プレス加工技術により、最も薄い部分で1mm以下の間隔を保つ容器を作ることができ、コンパクトにすることができたのだとか。従来の木製キャビネット(MDF)よりも側面の厚みを約1/8と薄くしながら高い剛性を実現していているそうですよ。


真空層があることで高い剛性を実現し、高音質なサウンドを出せる

一般的にスピーカーというと、「重くて大きいものがいい音」という常識がありますが、真空エンクロージャーを利用したサーモスのスピーカーはそんな常識を根底から壊しちゃうものなのです。

実際、普段私が使っているこの小さなスピーカー、SSA-40Sはこのコンパクトサイズからは信じられないようなサウンドが飛び出してくるので、気に入ってしまったのです。ただ、SSA-40Sは、もともとモニター用として開発されたものではなく、iPhoneなどと接続できるカジュアルなスピーカーとして販売されているものだけに、モニタースピーカーとしてみた場合、少し物足りなく感じる点があったのも事実です。

具体的にいうと、「無音のまま一定時間置いておくと電源が切れてしまう」、「バッテリーでの動作が基本となっていて、充電ケーブルを接続したままの状態だと、やや見栄えが悪い」、「もうちょっと出力パワーが欲しいときがある」「できればもう少し低音域も出てくれると嬉しい」といった思いを個人的に持っていました。

そうした不満をすべて解消するとともに、超高性能なモニタースピーカーとして新たに誕生してきたのが、MSA-380Sだったのです。


角度は5度刻みで自由に調整することが可能

ブラックボディーのちょっと見慣れない雰囲気のデザインとなっているMSA-380S。四角い台の上に丸い円筒型のモノが乗った構造になっているのですが、この下の部分がアンプで、上の円筒型がスピーカーです。そして、このスピーカー部の角度をカチカチカチと段階的に切り替えられるようになっており、自分の耳に目がけて音を出すことを可能にしてくれています。

普通ニアフィールドモニターって、スピーカーの位置から耳の位置まで70cm~150cm程度の距離があると思いますが、MSA-380Sでは、スピーカーの角度をうまく調整することで、耳までの距離を20~30cm程度と超近距離に調整することが可能です。そのため、ヘッドホンに近い左右分離を実現できるとともに、音が拡散しないために、迫力ある大音量で音をチェックすることが可能になるのです。


手前がMSA-380S、中央が5インチのモニタースピーカーMSP-5STUDIO、右がSSA-40S

普段使っているヤマハの5インチのモニタースピーカーと並べて置いてみると、圧倒的に小さいサイズで、またステンレスのボディーであるために1台約850gと非常に軽量。でもその大きさ、重さからは信じられないほどのサウンドが飛び出してくるのです。机の高さ、椅子の高さによって、角度を変えられるからこそ、耳へ直接放射可能となり、この音量、明瞭さ、音の解像度が実現できているんですね。ちなみにその角度はカチカチと動かすことで最大45°まで、5°刻みで調整できるようになっています。


角度を縮めていけば、一般のモニタースピーカーと同様水平に音を出すことも可能

SSA-40Sと比較すれば、まさに爆音ともいえる音量であり、かつ低音もかなり出てくれます。まあ、サブウーファー的な超重低音を出すスピーカーではありませんが、モニター用としてみれば十分すぎるものですね。

またSSA-40Sと違ってBluetooth接続ではなく、有線接続であり、しかもTRSフォンで接続する形なので音質的な心配もないし、レイテンシーもゼロ。左右完全独立した同じユニットが2つという構造で、それぞれにACアダプタを接続する形。SSA-40Sのようなバッテリー駆動でもないから、作業途中に電源が切れるというような心配もないですね。

ところで、MSA-380Sがユニークなのは、その構造。実は下のマグネシウム合金の台座部分がアンプで、上の円筒形部分がスピーカーと分離独立しているんです。そして上部と下部は付属のスピーカーケーブル2本で接続する形になっているんです。そのため、やろうと思えば、このアンプでほかのスピーカーを駆動するとか、反対に別のアンプで、上部のスピーカーを鳴らすなんてこともできるわけですね。


リアを見ると、台座部分のアンプから上部のスピーカーユニットへ2本のケーブルで接続する形になっている

アンプ部分はフルバランス構成の増幅回路となっており、厳選されたオーディオ用部品を使用し、安定した出力と低ノイズ、低歪みを実現しているとのこと。ディスクリート構成の電圧増幅段には、オーディオ用に開発されたハイスピードで低歪率、低ノイズ、広帯域なFET入力オペアンプを採用しているそうですが、この辺の回路はパイオニアの技術協力でスピーカー部分を最適に駆動させるように設計されているといいます。SSA-40Sもそうでしたが、このVECLOSブランドの魔法びんのステンレス真空二重構造のスピーカーは、パイオニアの技術協力で開発されているんですね。


アンプ回路はパイオニアの技術協力によって設計されている

軽量ながらもオールメタリックのモニタースピーカーというのもユニークなところですが、MSA-380Sの「真空エンクロージャー」に使われているのはステンレス。ここに採用されているステンレスは高い剛性によって、不要な共振を抑制し、明瞭感と定位感を向上させているとのこと。さらにコンパクトなフロントバッフルとシリンダー形状が、不要な音の回折を低減し、明確な定位と立体感のある音場を再現しているそうです。またスピーカーユニットの取り付けには魔法びんの止水技術を応用し、エンクロージャーにねじこむ方式を採用されているそうですよ。


また見れば分かるとおり、MSA-380Sのスピーカー部分はシングル・スピーカー構造が採用され、振動板はピュアのアルミとなっています。多くのモニタースピーカーのように高域を担当するトゥイーターと中低域を担当するウーファーを組み合わせる形ではなく、1つのスピーカーユニットで全音域をカバーするフルレンジ・スピーカーユニットとなっているからこそ、クリアで安定したサウンドが出せるというのも事実です。このスピーカーユニットはパイオニア製で、専用開発により音質の最適化を行っているようです。


音量調整はフロントのVOLUMEノブで左右独立して行う

しかも今回のMSA-380Sにおいては、実際にレコーディングエンジニアもサウンドチェックに参加し、チューニングや、回路の見直しを図ってきたそうですから、まさに業務用のニアフィールドモニターとして存分に使える機材に仕上がっているわけですね。

実際、今回音を聴いてみても、非常に高解像であり、従来のモニタースピーカーとは一線を画すものだと感じました。とはいえ、ペアで実売価格約15万円(税別)とそれなりの価格の製品ですから、一度自分の耳でしっかりとそのサウンドを確認してみたいところでしょう。発売日は12月1日で、Rock oN Companyや宮地楽器などで展示される予定なので、これらの店舗でサウンドチェックできるほか、11月15日~17日に幕張メッセで開催されるInterBEE2017でもブース出展されるとのことなので、参加される方は、一度立ち寄って音をチェックしてみるといいと思いますよ。

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【製品情報】
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