改めて、この新レーベル「DTMステーションCreative」について紹介すると、これはDTMステーションの新企画として、私と作曲家の多田彰文さんとで立ち上げたレーベルです。先日、「DTMステーション、M3-2018春に参戦。作曲家の多田彰文さんと新レーベル始動し予算・会計も大公開。第1弾シンガーは小寺可南子さん!」という記事でも紹介した通り、まず第1弾の作品として、シンガーにはコテカナこと小寺可南子(@cana_ko_tera)さんを迎えてのミニアルバム「Sweet My Heart」を制作したわけです。
- Sweet My Heart
- Appreciation 100
- Sweet My Heart インストルメンタル
- Appreciation 100 インストルメンタル
となっているのですが、特徴となるは2曲目、4曲目のAppreciation 100がVRミックスとなっている点。これは普通のヘッドホン、ステレオスピーカーで聴いても立体的な音で飛び出してくるちょっと不思議な仕掛けを施しているという楽曲です。このVRミックスの詳細は、先日の記事「ヘッドホンやステレオスピーカーで360度サウンドを実現するVRミックスとは」で書いているので、そちらをご覧いただきたいのですが、ミックスはすべてレコーディングエンジニアの飛澤正人さんにお願いしています。
納品されたCDは1,000枚。100枚ずつ10箱に分けて到着した荷物の山
そして、このアルバムのリリース日を、今回4月29日のM3にするとターゲットを定め、3月に入ってから急ピッチで制作を進めてきました。その結果、1,000枚でプレスしたCDが4月20日に無事納品となり、M3会場へは、スタッフみんなで手分けして、重たいCDを会場へと持ち込んだのでした。そのCD制作にかかったコストについては、以下の通りでした。これは以前報告していたものと、ほぼ変わっていませんが、若干の変動があったので、その辺を修正しています。
CDタイトル | Sweet My Heart | |||
【概要】 | ||||
内容・曲数 | 4曲入り | (歌2曲・同曲インスト2曲) | ||
頒布・販売価格(税込) | ¥1,000 | |||
作成枚数 | 1,000枚 | |||
サンプル(資料用見本)設定枚数 | 50枚 | |||
頒布・販売枚数 | 950枚 | |||
完売時売上見込 | ¥950,000 | |||
【制作費】 | ||||
多田彰文 作詞料(2曲分) | ¥0 | 著作権印税処理 | → JASRACからの分配 | |
多田彰文 作曲料(2曲分) | ¥0 | 著作権印税処理 | → JASRACからの分配 | |
多田彰文 編曲料(2曲分) | ¥200,000 | |||
ミュージシャン演奏代(2曲分) | ¥0 | 編曲料に含む | ||
小寺可南子 歌唱料(2曲分) | ¥100,000 | 歌唱印税処理 | → CD1枚毎に5% | |
歌唱録音スタジオ使用料 | ¥19,440 | |||
飛澤正人 Mix&Mastering料(Noramal) | ¥70,000 | |||
飛澤正人 Mix&Mastering料(VR mix) | ¥100,000 | ※本来23万円のものを特別価格で | ||
MasterDisk作成料 | ¥5,000 | |||
レコーディングアシスタント料(中村太樹) | ¥5,000 | |||
ジャケット制作料(50,000円相当) | ¥0 | 多田プロデュース印税処理 | ||
プレス発注料 | ¥76,820 | 1,000枚分 | ||
小寺可南子PHOTO使用料(中村ユタカ) | ¥5,000 | 3/31追記 | ||
JASRAC著作権使用料 | ¥64,800 | 1,000枚分 | ||
宣伝物作成料(POP・フライヤー等) | ¥0 | 多田プロデュース印税処理 | ||
藤本健 プロデュース料 | ¥0 | プロデュース印税処理 | → CD1枚毎に15% | |
多田彰文 プロデュース料 | ¥0 | プロデュース印税処理 | → CD1枚毎に10% | |
M3出展費用 | ¥14,100 | |||
雑費(ケータリング他) | ¥8,056 | |||
制作費合計 | ¥668,216 | |||
損益分岐点 (制作費のみで算定) |
669枚以上 |
- できるだけ安く抑えられるところ
- 海外でのプレスでも構わない
- JANコード(バーコード)の発行ができること
といった条件から、Press Stationというところにお願いすることにしました。何といっても、名前にグッと来たので(笑)!
このバーコードのJANコードを取得してくれる業者というのも今後流通を考える上でのポイント
1,000枚で基本料金が69,000円で送料、消費税込み。9営業日で発送とのことなので、条件としてもピッタリ。ここにJANコード発行費用(1,080円)、 4P二つ折りジャケットセット(+3,500円)にするとともに、念のための保険?として「ご入稿素材優先チェックサービス」(3,240円)という少し早く納品されるオプションを追加して、トータル76,820円(税込)となりました。つまり1枚当たり76.82円でプレスできちゃうんですね。
段ボールを開けると、中にはCDが100枚ギッシリ詰まっている
さて、そうした作ったCD、リリース日である、M3で実際にどのくらい売れるものなのでしょうか?私たちも初めての経験だけに、なかなか予想もつきません。以前、M3を取材(?)、いや偵察(!?)したとき、一部のサークルでは長蛇の列ができて「最後尾はこちら!」なんて札を持った人が整理していました。ただ、多くのサークルでは、そんなに列ができるわけではないので、「どうなるんだろう…」とワクワクしつつも、不安もいっぱい。
4月29日の当日、東京流通センター入り口には、M3-2018春のポスターが設置されている
今回、我々のブースは第二展示場1階の「か-18a,b」というところ。M3準備会から書類が届いたときは、あまりよく分かっていなかったのですが、壁側のかなりいい位置だったんですよね。いわゆる「壁サークル」というヤツ。とっても光栄なことではあるけど、これでヘマをした.ら、二度と出られなくなっちゃいますから、責任重大でもあります。
サークル参加者の入場時間の9時に集合して、多田さんお手製のポップやロゴ入りテーブルクロスもかけて、まずは設営。ブースで試聴もできるように、VRミックスの動画を入れたiPadも私のものと、多田さんのものを設置して、1時間ほどで完了。
ちなみに、ほかのM3経験者からの話を聞いたところ、すごく売れているサークルでも、購入者=ファンとの交流もあるので、対応できるのは300人程度が限界、とのこと。つまり、11:00~15:30の4時間半の開催時間において、話をしたり、サインをしたりということを考えると、最大でもその程度なのでしょう。
開場前、3人並んで、準備万端!
どれだけのCDを搬入すべきか多田さんと相談したところ「1,000枚もプレスしたんだから、売り切れて頒布物がなくなるのが最悪。念のため多めに持っていこう」ということになり、不可能は承知で400枚ほど持ち込んだのでした。
各自手分けしてCD・100枚入り段ボール箱を会場へ持参
11時の開場直前にコテカナさん自撮りによる記念撮影。いよいよスタート
左側の角のサークルを見ると、いつの間にか数十メートルにおよぶ行列ができていて驚きましたが、ウチにも着実に人が来てくれています。買いにいらしてくれたみなさんとは、ちょっとずつではありますが、お話させてもらったところ、コテカナさんファン、多田さんのファン、DTMステーションの記事の読者のみなさん、そしてDTMステーションPlus!の視聴者のみなさんなどいろいろ。中には名古屋、関西、北海道、九州など遠方からの方もいて頭が下がる思いでした。
もっとも、最大で列は3、4人という程度で、大行列ができるというところまでには至りませんでした(まあ、当たり前)。多田さんは念のために「最後尾」と看板まで作ってくれていましたが、出番はありませんでしたね(笑)。やはり最初の1時間が一番が人が多く、平均して1分に1枚程度が売れていったのです。
3D表示のデモビデオを見てくれるお客様もいっぱい
その後、少しずつペースは落ちていきましたが、知り合いの作曲家さん、ボカロPさん、楽器メーカーの方なども来ていただき、とても楽しい時間を過ごすことができました。CD1枚1,000円なので、会計におけるトラブルもなく進んでいき、13時過ぎに、目標の100枚を達成。さらにペースは落ちながらも、売れていって15:30に無事M3は終了となりました。
午後に入り、レコーディングエンジニアの飛澤さんも応援に駆けつけてくれた
終了後、すぐに売り上げ金額の勘定です。CDの残数と突き合わせながら、お札を数えていくと……
トータル155,000円の売り上げ
となりました。つまり「155枚が売れた」ということですね。ドタバタでの会計ながら、ミスも事故もなかったようです。では、これが多い金額なのかというと、先ほどの制作費から考えると、プロデュース費用(つまり私の収入と、多田さんのプロデュース料)がゼロの制作費だけで見ても、
約51万円の赤字。
前途多難な結果とはなりました。
真剣に売上金を数える筆者
とはいえ、今回制作したCDはM3だけのために作ったわけではありません。多田さんの大活躍とコテカナさんの熱唱、そして飛澤さんによる匠の技も組み合わさっての最高傑作ができたのです。まさにこれから大ヒットを目指して広めていくべき、売っていくべき作品だと思うので、次のステージへ向けて、まずは赤字解消を目指して行こうと策を考えているところです。
実はここにおいても、いろいろと検討しました。Amazonで売る、各レコード店・CDショップでの販売などなど方法はたくさんあります。自分がAmazonヘビーユーザーであることから考えれば、「Amazonで売ってほしい」という声がたくさんあるだろうことは、もちろん承知しているので、その線をまず考えたのです。
調べてみると「e託販売サービス」というのがあるんですね。まさに我々のようなインディーズでCDを売るための手段です。ところが、調べてみるとなかなか厳しい条件なんですよね。まず、これを利用するためだけに年間9,720円(税込み)の委託費用が必要となります。さらに、Amazonへの卸価格は60%なので、1枚ごとに400円を手数料として渡す計算になるわけです。さらに、100枚とかをドンとAmazonに在庫してもらえるならともかく、実績のない我々のようなインディーズレーベルだと、注文があるたびに数枚ずつAmazonに送る必要があるため、送料もかなりかかってしまいます。
インディーズレーベルがタワーレコードやHMVなどの大手CDショップで販売してもらうという手法もいくつかあるようですが、やはり当然のことながら中間マージンというのは大きいみたいですね。それを考えると、M3のような同人即売会、またライブなどで手売りというのは、基本的に売り上げが100%手元に入るわけですから、ものすごく大きな意義があることを改めて認識します。
Amazonなどに頼らず、自ら通販できるサイト、「DTM Station Creativeオンラインストア」を開設
ネット通販の形でも、このCDを購入いただけるようになりました
というわけで、改めてM3にご来場いただいたみなさんにお礼を申し上げるとともに、通販サイト「DTM Station Creativeオンラインストア」をスタートさせましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
【関連情報】
DTM Station Creativeオンラインストア
【CD購入ページ】
◎DTM Station Creativeオンラインストア ⇒ Sweet My Heart