最近、DTM界隈で注目を集めている新進プラグインメーカー・Techivation(テキベーション)が、新たなエキサイタープラグインM-Exciter(通常価格$90=約13,500円、8月20日まで$45=約6,700円)をリリースしました(WindowsおよびMacのVST、VST3、AU、AAXに対応)。ロンドンを拠点とする同社は、2022年頃から日本のDTMシーンでも徐々に名前が知られるようになり、シンプルな操作性と高音質を両立したプラグインで話題となっています。
今回登場したM-Exciterは、従来のエキサイターが抱えていた「明るさを上げると耳障りになる」という問題を独自の技術「スペクトラルハーモニック処理」で解決。高域の明瞭感と存在感を自然に付加しながら、マスタリンググレードの品質を実現しています。シンプルなインターフェースの背後には高度な技術が隠されており、ボーカルから楽器、そして最終的なマスターバスまで、あらゆる場面で威力を発揮する注目のツールです。

Techivationから画期的なエキサイター、M-Exciterがリリースされた
ロンドンの注目プラグインメーカー、Techivationとは?
DTMステーションとして初めて取り上げるTechivationは、ロンドンを拠点とする比較的新しいプラグインメーカーです。音楽プロデューサー、オーディオエンジニア、開発者のチームで構成されており、「音楽制作プロセスをよりスムーズに、より速く、より楽しくするツールの作成に情熱を注いでおり「イノベーションを愛し、改善と創造性に限界はないと信じている」という理念のもと、プラグイン開発を行っています。

ロンドンにある新進気鋭なプラグインメーカー、Techivation
2022年のブラックフライデー辺りから、Techivation社の名前を、DTM界隈でちらほら見かけるようになってきました。はじめに話題になったのは、T-Compressorの無料配布だったと思われます。その後、2023年にリリースされたM-Clarityが高い評価を受け、SNSを中心に日本でも注目を集めるようになりました。
同社の製品ラインナップは大きく3つのシリーズに分かれています:
Mシリーズ:マスタリンググレードの品質を持つ高機能プラグイン群
AIシリーズ:機械学習技術を活用した次世代プラグイン群
シンプルな操作性で的確な効果が得られるプラグインが揃っており、プラグインの扱いに慣れていない方でも使いやすいため、評判になっています。しかも高性能な処理ができるのにも関わらず、同様の効果が期待できる他社プラグインと比較して価格が低く設定されているので、予算を抑えてミックスプラグインを導入したい方にもおすすめです。
現在、同社では主な製品として以下のようなプラグインを展開しています:
M-Clarity 2 | 濁りや箱鳴り、耳障りな周波数を除去するダイナミックレゾナンスサプレッサー |
M-De-Esser 2 | 高精度なディエッサー |
M-Compressor | 周波数ごとに動的にスレッショルドが設定されるコンプレッサー |
M-Loudener | ダイナミックレンジを保ちながらラウドネスを向上 |
AI-Clarity | AIがオーディオ内の濁り・箱鳴り・ハーシュネスを自動分析・処理 |
AI-Compressor | AIによる自動ゲインリダクション調整コンプレッサー |
なお、現時点においては日本には代理店がなく、購入は同社公式サイトからの直接購入となり、このページ自体は英語サイトとなっています。でも、しっかりしたPDFの日本語マニュアルは各プラグインに用意されているため、安心して使用することができるのも大きなポイントとなっています
M-Exciterの革新的な技術、『スペクトラルハーモニック処理』とは
今回リリースされたM-Exciterは、従来のエキサイターとは一線を画す革新的な技術を搭載しています。7分程度の英語のビデオではありますが、以下の機能概要紹介ビデオを見ると、どんなものなのか掴めると思います。
みなさんご存じだと思いますが、そもそもエキサイターとは、音に明瞭感や存在感を与えるエフェクトであり、「シャキーン!」といった感じのサウンドにするツールとして知られています。高域の倍音を人工的に生成・付加することで、音をより明るく、前に出るような印象に変化させます。1970年代にAphex社が開発したAural Exciterが始まりとされ、以来多くのメーカーからさまざまなタイプのエキサイターがリリースされてきました。特に、デジタル録音が主流となった現代では、アナログ録音特有の「温かみ」や「艶」を補完するツールとして重宝されています。
M-Exciterは、他のエキサイターが抱える問題を解決するために開発されました。従来のツールは明るさを増加させる際に耳障りな音が混じったり、トランジェントを劣化させたりしがちでした。しかしM-Exciterはトラックのトーンバランスを尊重した制御されたハーモニック生成と成形を行うことで、ミキシングとマスタリングの両方で安心して使えるツールとなっています。
従来のエキサイターの問題点
一般的なエキサイターは、高域を単純にブーストしたり、サチュレーションで倍音を付加したりする方式を採用していますが、これらの手法には以下のような問題がありました:
2. トランジェントの劣化:位相の乱れによってアタック感が損なわれる
3. トーンバランスの崩れ:全体的な音楽的バランスが崩れやすい
M-Exciterの解決策、スペクトラルハーモニック処理
M-Exciterはこれらの問題を、独自の「スペクトラルハーモニック処理」で解決しています。この技術の特徴は以下の通りです。
入力されたオーディオを分析し、基音に基づいて新しい倍音を生成します。M-Exciterによって生成されたハーモニックコンテンツは、完璧な位相保持でスペクトラルブレンドされ、トランジェントが鋭くパンチのある状態を保ちます。
M-ClarityやM-De-Esserで培った技術を応用し、過度な高域強調を自動的に抑制します。M-Exciterは高度なスペクトラル抑制を使用してオーディオに追加される高周波エネルギーの量を制御し、耳障りで脆い音を避けています。
生成された倍音は元の音声と完璧に位相が保たれているため、トランジェントの鋭さとパンチ感が維持されます。
M-Exciterの機能とインターフェース解説
M-Exciterのインターフェースは、Techivationの哲学であるシンプルさを体現しており、必要な機能がすべて一画面に配置されています。各パラメーターなどについて簡単に紹介していきましょう。
主要パラメーター
Excite

Exciteパラメーター
生成される倍音のブースト量をdBで設定します。選択した周波数範囲で生成された倍音のブースト量を設定し、高い値にするほどトラックに存在感と明るさが追加されます。0.0dBでも倍音は生成されているため、微細な調整が可能です。
Intensity

Intensityパレメーター
生成される倍音の強度と性格を調整します。0%に近いほど薄い音になり、100%に近いほど濃密で豊かな倍音が生成されます。
Softness

Softnessパラメーター
生成された倍音をどう活かすかを決める重要なパラメーターです。ハーモニクスの動的スペクトル抑制の相対的な閾値を設定し、M-Exciterによって生成されるスペクトル成分のみに影響するため、出力が元の信号よりも暗くなることはありません。diff(差分)ボタンを聴きながら変更すると、効果の具合が分かりやすくなります。
Airy/Clear/Warm
追加するハーモニクスの特性を選択できます。

Airy/Clear/Warm
Clear:他の2つのオプションのバランスを取った、開放的で豊かなサウンド
Warm:より強く、際立った特徴を持つハーモニクス
Frequency Range

周波数範囲指定
ハーモニクスが追加される周波数範囲をスライダーで設定します。下限は高周波成分が追加される周波数の下限を、上限は通常最大位置に設定されますが、下げることでより暗いサウンドを得ることも可能です。
インテリジェント機能
Mix Assist

DAWを再生しながらMix Assistantをクリック
プラグインが入力信号をキャプチャして分析し、処理パラメーターを自動的に設定するインテリジェント機能です。iZotopeのOzoneやNeutronのAssistant機能のような感じ…と説明すると分かりやすいかもしれません。

3.5秒間、音を分析して、最適なパラメーターを自動設定する
M-Exciterは3.5秒間のオーディオをキャプチャするため、トラックの最も特徴的な部分を再生することで、最適な結果が得られます。その上で、手動で調整するというのが効率的な使い方だと思います。
Quality設定

Quality設定
オーバーサンプリング設定により、処理能力と音質のトレードオフを調整できます。高いオーバーサンプリングにすることでより良い音質になりますが、その分多くのCPUパワーを必要とするため、システムの性能に合わせて選択するのがよさそうです。
LR/MS処理

LRかMSかを指定の上、どこに聴かせるかを選択する
ステレオ処理においてLR(左右)とMS(ミッド-サイド)モードを切り替えることができます。LRであれば、M-Exciteをかける左右バランスを調整できるのに対し、MSにすることで、真ん中のみに効果を出すとか、取り巻く周りのサウンドに対して効果を出す、といった使い方が可能になります。
M-Exciterの 実践的な使用方法とTips
ボーカル処理での活用
ボーカルトラックにM-Exciterを適用する際は、以下の手順が効果的です。
2. Frequency Rangeの調整:2-5kHz帯域を中心に設定し、子音の明瞭度を向上
3. Softnessで制御:シビランスが強調されすぎないよう、適度なSoftnessを設定
楽器トラックでの使用例
楽器トラックにおいては、M-Exciterを以下のような使い方をすると、手軽にいい感じに仕立て上げることが可能です。
ピアノ:Airy設定で高域全体を自然に拡張し、空気感を追加
ドラム:個別のドラムトラック(特にスネアとハイハット)に適用し、アタック感を向上
なお、M-Exciterは各トラックにかけるだけでなく、曲全体に効果をもたらすマスタリングでの活用も可能です。その場合は、マスターバスにM-Excieをインサートするわけですが、その場合は控えめな設定が重要です。具体的にはExciteを+2dB以下に設定するとともに、Mixコントロールを20~30%程度に設定し、全体のバランスを崩さないよう、Diffボタンで追加される成分を確認してみてください。
8月20日まで半額となるイントロセール実施中
M-Exciterは現在、イントロダクトリーセール中で以下の価格設定となっています:
イントロ価格:$45(2025年8月20日まで)
ロイヤリティ割引
既存のTechivationユーザーには特別価格が用意されています。
Full BundleまたはM-Bundle所有者:$25
Full Accessユーザー:無料
14日間無料トライアル
購入前に機能をすべて試せる14日間の無料トライアル版が公式サイトで提供されています。

14日間使えるトライアル版を入手できる
この無料トライアル版のダウンロードページにアクセスすると、まずTechivationのアカウント作成が必要となります。メールアドレスとパスワードの設定は必要ですが、この時点ではクレジットカード情報の登録も不要なので、まずは入手してみるといいですよ。

初回アクセス時はメールとパスワードを指定してアカウントを作成する必要がある
バンドル製品もお得
なおM-Exciter単体だけでなく、Techivationのプラグインを複数使いたい場合は、以下のバンドルがお得です:
Full Bundle:現在リリースされている全19製品を収録($1,991⇒$584)
Full Access:今後リリースされる新製品も含む生涯アクセスプラン($2,999⇒$779)
もし、Techivationの別のプラグインの購入を考えているのであれば、こうしたバンドル版も検討してみるといいかもしれません。
以上、Techivation M-Exciterについて紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?M-Exciterは従来のエキサイターの概念を覆す革新的なプラグインといえそうです。シンプルなインターフェースの背後に隠された高度なスペクトラル処理技術により、音楽的で自然な高域の明瞭感を実現しています。
い
イントロ価格での販売が8月20日までとなっているので、ぜひ、この機会に検討してみてはいかがでしょうか?
【関連情報】
Techivation M-Exciter製品情報
M-Exciter 14日間トライアル版ダウンロード
【価格チェック&購入】
◎Techivation ⇒ M-Exciter
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