8月1日(金)と8月2日(土)の2日間にわたって恵比寿にあるイベントスペースEBiS303で、「ヘッドホン・ヘッドホンアンプ大試聴会2025」が開催されました。劇伴作家の和田貴史(@beagle_wada)さんと実業家・プロデューサーの6スタ(@6studio_dtm)さんがナビゲーターを務めた、音楽制作に特化したこのイベントには、20ブランド以上が集結。普段なかなか一堂に会することのないモニターヘッドホンやヘッドホンアンプ、オーディオインターフェイスを自由に試聴できるという、音楽制作者にとって非常に嬉しい内容となっていました。
実際に私も参加し、さまざまな機材をじっくりと試聴してきました。自分のリファレンス音源を持ち込んで、心ゆくまで製品を比較検討できるまたとない機会ということもあり、会場には多くの来場者が訪れていました。そんな「ヘッドホン・ヘッドホンアンプ大試聴会2025」がどのようなイベントだったのか、会場の様子やブースをピックアップしつつ紹介していきましょう。
音楽制作に特化したイベント、ヘッドホン・ヘッドホンアンプ大試聴会2025
以前、開催前に「もうヘッドホン選びで迷わない!20ブランド以上を一挙比較「ヘッドホン・ヘッドホンアンプ大試聴会2025」8月1日、2日開催決定!」という記事で紹介しましたが、このイベントの大きな特徴は、なんといっても音楽制作にフォーカスしている点。オーディオファン向けのヘッドホンイベントはこれまでにも数多く開催されてきましたが、プロやセミプロの作曲家、エンジニア、DTMユーザーをメインターゲットに据えたものは初めてだと思います。
ヘッドホン・ヘッドホンアンプ大試聴会2025の開催と連携して、和田さんと6スタさんのYouTubeチャンネルでは、モニターヘッドホンやヘッドホンアンプの比較が行われていました。イベント開催後ではありますが、音楽制作者であればかなり参考になる動画だと思うので、お時間ある方は、ぜひ観てみてください。
そんなヘッドホン・ヘッドホンアンプ大試聴会2025には、数多くのブランドが参加し、以下のようなヘッドホンやヘッドホンアンプ、オーディオインターフェイス、ケーブルなどを試聴することができました。
株式会社 ヤマハミュージックジャパン |
・ヤマハ / HPH-MT8 |
・ヤマハ / HPH-MT7 |
・ヤマハ / HPH-MT5 |
・Zildjian / ALCHEM-E Perfect Tune |
株式会社峰電 |
・峰電 / honest |
・峰電 / FilterPLUS Premium |
・峰電 / The Focus Premium |
・峰電 / RAW Signal |
株式会社フックアップ |
・Rupert Neve Designs / RNHP |
・Heritage Audio / O.H.M Headphone Matching Amplifier
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Audeze |
・Audeze / LCD-X |
・Audeze / MM500 |
・Audeze / MM100 |
・Audeze / LCD-2 |
oz design |
・oz design / Ultimate Headphone Amplifier TRS/XLR4 両対応
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・oz design OZHPA-2 |
株式会社アユート |
・ULTRASONE / Signature MASTER MkII
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・ULTRASONE / Signature FUSION Open Back
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・ULTRASONE / Signature FUSION |
・ULTRASONE / Signature PURE WHITE
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TAGO STUDIO TAKASAKI |
・TAGO STUDIO TAKASAKI / T3-01 |
・TAGO STUDIO TAKASAKI / T3-02 |
・TAGO STUDIO TAKASAKI / T3-03 |
・TAGO STUDIO TAKASAKI / Historic Phone Cask of Ichiro’s Malt
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FitEar |
・FitEar / Pro Audio Monitor-1 |
・FitEar / Pro Audio Monitor-1 Studio Reference
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株式会社アンブレラカンパニー |
・Umbrella Company / HP-ADAPTER |
・Umbrella Company / BTL-ADAPTER |
・GRACE design / m900 |
・Umbrella Company / ヘッドホンアンプ(試作機出展予定)
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株式会社エミライ |
・Bricasti Design / M3H |
・Benchmark / HPA4 |
・Benchmark / DAC3 HGC |
・Ferrum Audio / ERCO Gen2 |
・CHORD / Hugo2 |
・FIIO / K17 |
・FIIO / R9 |
・iFi audio / iDSD Valkyrie |
・iFi audio / iCAN Phantom |
・iFi audio / Pro iDSD Signature |
YURI-HIVE |
・リケーブル:2.5mm x2 to XLR 4pin/TRS
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・リケーブル:miniXLR to XLR 4pin/TRS
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・リケーブル:3.5mm to XLR 4pin/TRS
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・リケーブル:3.5mm x2 to XLR 4pin/TRS
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・リケーブル:バヨネッタ式2.5mm to XLR 4pin/TRS
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・USB:A to B / B to C / C to C (2.0) |
・other:75Ω Term |
Austrian Audio |
・Austrian Audio / Hi-X20 |
・Austrian Audio / Hi-X65 |
・Austrian Audio / The Composer |
・Austrian Audio / Full Score One |
Yamaha / Steinberg / Universal Audio / Lynx Studio Technology / Solid State Logic (SSL) / Black Lion Audio / MOTU / Neumann / RME / Focusrite / PreSonus / Antelope Audio / Apogee / AMS Neve / Prism Sound / ESI / Bitwig GmbH / Reloop
持ち込んだヘッドホンやブースで借りたヘッドホンでいろいろなヘッドホンアンプやオーディオインターフェイスを試聴したり、用意されている音源はもちろん、持ち込んだ音源でチェックしたり、普段の環境に近い形で機材を吟味できるイベントとなっていました。
オーディオインターフェイスも多数用意されていたので、普段自分が使っているオーディオインターフェイスにブースから借りてきたヘッドホンを繋いで確認するというのは、なかなかできるものではないので、参加者にとってはかなり有意義なイベントだったと思います。
また、和田さんと6スタさんのブースも用意されており、お二人が所有しているヘッドホンを試聴したり、直接ヘッドホン選びの相談もすることができました。
プロにモニタリング環境を相談できる機会もなかなかないので、それだけでも参加する価値のあるイベントでしたよ。
また、来場者向けにはプレゼントキャンペーンも行われていました。スタンプラリー形式でブースを回って応募できる抽選会となっており、AudezeのMM-100といった豪華な製品も対象となっていました。
さて、前述の通り非常に多くのブランドが出展していたので、その中でも特に印象的だったいくつかのブースについて、担当者の方に伺ったお話も交えながら紹介していきましょう。
グラミー賞を13回受賞したエンジニアが全面監修のもと開発された開放型平面磁界型ヘッドフォン
まず足を運んだのは、平面磁界駆動型という独自のドライバ技術で知られるアメリカのブランド、Audeze(オーデジー)のブースです。ここでは、スタジオユースで特に人気の高い5つのモデルが展示されていました。
担当者の方にお話を伺ったところ、特に注目すべきは、グラミー賞を多数受賞しているエンジニア、マニー・マロキンさんが監修したMMシリーズとのこと。マニー・マロキンさんがスタジオや自宅、さらには移動中の飛行機の中など、どんな環境でも一貫したモニターサウンドを得るために開発したのがMM-500であり、そのサウンドをより多くのクリエイタに届けるために登場したのがMM-100なのだそうです。
また、ビクタースタジオやソニースタジオといった国内の著名なスタジオにも導入実績があるというのがLCD-X。実際にプロの現場で使用されているヘッドホンも試聴することができました。また、Audezeの代名詞ともいえるロングセラーモデルがLCD-2や密閉型モデルとしてLCD-S20も展示されており、MM-100のような開放型とのサウンドキャラクターの違いを明確に聴き比べることができました。
DTMユーザーが最初の1台として選ぶなら、10万円以下という価格ながら上位機種の思想を受け継ぐMM-100が面白そうです。一般的なオーディオインターフェイスのヘッドホン出力でも十分に性能を発揮できるように設計されている点も、多くのユーザーにとって嬉しいポイントだと思います。
音楽を「楽しむ」ためのハイエンドオーディオBricasti Design
続いて向かったのは、ひときわ異彩を放っていたBricasti Designのブースです。ここに展示されていたのは、個人で所有するには覚悟のいる、まさにハイエンドオーディオの世界に属する約150万円のヘッドホンアンプM3H。普段、音楽制作用の機材に触れる機会が多いDTMユーザーにとって、こうした純粋なリスニングを追求したオーディオの世界に触れられるのも、このイベントならではの大きな魅力ですね。
担当者の方によると、このM3Hはもともと非常に評価の高いDAコンバータM3に、高品質なヘッドホンアンプ機能を搭載したモデル。スタジオで使われるモニター用機材が音を正確に分析することを目的としているのに対し、M3Hはあくまで音楽を豊かに楽しむために作られている点が大きな違いなのだとか。
そのために、強力な電源部を搭載したり、デジタル回路とアナログ回路の基板を完全に分離してノイズの回り込みを防いだり、あるいはシャーシの剛性を高めて外部からの振動の影響を徹底的に排除したりと、業務用機材とは異なるアプローチで高音質を追求しています。
実際にそのサウンドを聴いてみると、解像度の高さはもちろんなのですが、それ以上に音の厚みや温かみ、そして音楽そのものの持つ魅力が伝わってくるのが印象的でした。制作用のモニターヘッドホンで聴くのとはまったく違う、まさに音楽に浸るためのサウンド。こうしたリスニング向けのハイエンド機材のサウンドを知ることで、逆にモニター用機材に求められる性能とは何かを再認識することができますね。制作者にとっても、こうしたハイエンドオーディオのサウンドを体験することは、大切なことだと感じました。
オーディオインターフェイスによる音の変化を体感
今回の試聴会では、ヘッドホンだけでなく、それを駆動するオーディオインターフェイスもエントリークラスからハイエンドクラスまで、数多く用意されていました。このオーディオインターフェイスブースの狙いについて、担当の足立さんにお話を伺うことができました。
「このイベントの大きな目的の一つは、来場者に自分のヘッドホンを持参してもらい、普段使っている環境との違いを体験してもらうことです。特に、ヘッドホンは接続するオーディオインターフェイスやヘッドホンアンプによって、驚くほど音が変わります。その変化を実際に体感していただくために、さまざまな価格帯の製品を用意しました」と足立さん。
ブースには、ラックマウントタイプのハイエンド機であるApogee Symphony StudioやAntelope Audio Orion Studioから、デスクトップタイプの最高峰ともいえるLynxのHILO 2、NeumannのMT 48などが並び、一方で、多くのDTMユーザーに愛用されているUniversal AudioのApolloシリーズといったミドルクラス、さらには初心者向けのエントリークラスの製品まで並んでいました。多くのユーザーが所有しているオーディオインターフェイスからスタジオでも使われている機材まで、比較試聴することができました。
以上、2日間にわたって開催された「ヘッドホン・ヘッドホンアンプ大試聴会2025」の模様を紹介しました。今回のイベントは、音楽制作においてモニター環境がいかに重要であるかを、多くの参加者が改めて実感する貴重な機会となったと思います。インターネットで多くの情報が手に入る時代ではありますが、音に関する機材、特にヘッドホンのような最終的な出口となる製品は、やはり自分の耳で実際に聴いてみなければ、なかなか分からないことも多いです。だからこそ、数多くの製品を同一条件下で比較試聴できるこうしたイベントは、クリエイタにとって非常に価値あるものですね。
なお先日、和田さん、6スタさん、足立さんの3人で、イベントの振り返り配信も行っています。この中で当選者の発表をするとともに、来場者のアンケート結果で人気だったヘッドホン・ヘッドホンアンプなどをピックアップしているので、当日参加できなかった方も参考になると思います。
また、メーカーの担当者や他のクリエイタと直接交流できるという点も、リアルイベントならではの大きなメリット。次回の開催について、まだ確定はしていないものの、好評だったことから来年も実施するとのこと。詳細が決まったら、また記事でお知らせする予定ですので、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?
【関連情報】
「もうヘッドホン選びで迷わない!20ブランド以上を一挙比較「ヘッドホン・ヘッドホンアンプ大試聴会2025」8月1日、2日開催決定!」
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