スポンサーリンク

ベータ版から約1年、700人以上のベータテスターのフィードバックから生まれた日本製「ポン出しアプリ」を試してみた

この記事は約12分で読めます。
この記事にはアフィリエイトなどPRが含まれています

以前DTMステーションでも紹介したことありましたが、「ポン出しアプリ」が7月18日に正式リリースされました。これはその名の通り、iPhoneやiPad、MacでBGMや効果音の「ポン出し」ができるアプリケーションで、ボタンをタップするだけで「ピンポン」「ブブー」といった効果音から、場面に応じたBGMまで、あらゆる音を任意のタイミングで再生可能。

ポン出しアプリは、昨年の秋からベータテストが開始されており、ベータテスターの参加応募数は700件以上。テレビ、配信、ラジオ、演劇、ライブ…などなど、あらゆる分野からフィードバックを受け、その一つひとつの声に応える形で開発が進められた結果、UIはiPhoneの設定画面のようにシンプルで直感的でありながら、現場で本当に必要とされる機能が搭載された、実践的なツールに仕上がっています。実際に正式リリースされたポン出しアプリを試してみたので、その機能や各分野での具体的な活用方法について、詳しく紹介していきましょう。

ベータ版から1年、待望の正式リリース!本当に必要な機能が搭載された「ポン出しアプリ」

スポンサーリンク
スポンサーリンク

現場の「困った」から生まれた、ユーザーと共に進化するツール

以前「iPhone/iPad/Macで使える日本製“ポン出しアプリ”が登場。誰でも無料で使えるベータテスター募集中」という記事で、初めてポン出しアプリを紹介しましたが、その開発のきっかけは、開発元の合同会社イホリシステムの代表が、知人の音効さんから「長年愛用してきたポン出しソフトが使えなくなり、代替となる信頼できるアプリがないので、そんなものを作ってみたら、需要はあると思いますよ」という提案を受けたことでした。

市場にはサンプラアプリが多数存在しますが、その多くは機能が過剰でUIが複雑であったり、逆にシンプルすぎて詳細な設定ができなかったり。また、海外製で日本語のサポートが不十分な場合、エラー発生時に迅速な対応が難しいなど、シンプルさ、安定性、直感的な操作性といった現場の要求をすべて満たすアプリは、なかなか見つからない状況だったのです。

そこでイホリシステムさんは、特定の個人のためではなく、不特定多数の現場の専門家が利用できるツールを目指し、ユーザーの意見を直接反映させる開発スタイルを選択。まさに前述の記事で募集したベータテスターをはじめ、現場から寄せられる具体的な要望を元に、一つひとつ丁寧に改良を重ねていったのです。その結果、現場が必要としていた機能と、専門家でなくとも理解しやすい操作性を両立したアプリケーションが完成しました。

プロの現場から生まれたアプリですが、プロ専用というわけでなく、実際に使ってみると、マニュアルいらずで直感的に使うことができるのも大きな特徴。これまで、音楽制作系のソフトなど触れたことのない人でも簡単に使うことができ、個人のライブ配信でちょっと音に凝ってみたい、というときにも最適なアプリとなっています。

手軽に音源を読み込み、ワンタッチで再生

さて、以前の記事でもポン出しアプリのベータ版で簡単な使い方は紹介していましたが、正式版がリリースされたので、改めて基本的な使い方を紹介しておきましょう。Mac版を使用して紹介しますが、どのデバイスでも同様の操作感で使うことができますよ。

起動すると、以下のような画面が表示されます。ポン出しアプリでは、まずグループを作成して、その中にプレイヤーを追加していく形で、データを管理することができます。

まずはグループを追加をクリック

「グループを追加」をクリックすると、新規グループが作成され、右側にプレイヤーを追加することができるようになります。初めのプレイヤーは、画面に表示されている「プレイヤーを追加」をクリックすることで追加できます。

新規グループが作成され、右側にプレイヤーを追加できる

すると、空のプレイヤーが作成されるので、ここにポン出しに使いたいファイルをドラッグ&ドロップします。

ポン出しに使いたいファイルをドラッグ&ドロップする

ドラッグ&ドロップしたファイルは、プレイヤーに読み込まれるので、再生ボタンを押せば、ポン出しすることが可能です。

プレイヤーの再生ボタンを押せば、ポン出しが可能

後はこの繰り返しで、右上から「空のプレイヤーを追加」をクリックして、ファイルをドラッグ&ドロップで読み込んだり、「ファイルから選ぶ」を選択して、複数のファイルを一度に読み込み、仕込みたい音をポン出しアプリに読み込んでいきます。

「ファイルから選ぶ」からは、複数のファイルを読み込むこともできる

とりあえず、仕込みたいデータを読み込んだら、基本的な準備は完了。各プレイヤーにある歯車マークから、設定を行って、プレイヤーのタイトル、背景の色や文字の色を変更して視認性をよくしたり、ショートカットキーを割り当てたり、再生モードを変更したりして、より自分好みにカスタマイズしていきます。このほかにも多数機能がありますが、ぜひ自分で触って確かめてみてください。

歯車マークから、さまざまな詳細設定を行える

多様な現場での活用事例。ユーザーの声が形になった便利機能

ファイルを読み込んで再生する、というのはどのソフトでもできますが、ポン出しアプリならではの機能が搭載されているので、これらについては簡単にピックアップして紹介していきますね。

ラジオ、テレビ、配信で使うユーザーの声から生まれた、インポート/エクスポート機能、再生時に他のプレイヤーを停止機能、入れ替え機能

ラジオやテレビ、配信では、番組の進行に合わせてリアルタイムで効果音やBGMを出す、という使われ方が主流。また、たとえば音源を設定するディレクタなどの裏方と、実際にボタンを操作するMCやパーソンが分かれてるというケースも存在します。そんなユーザーからの声に答えた形で搭載されたのが、インポート/エクスポート機能です。

音源や設定を含めたグループの情報をエクスポートできる

ディレクタはMacを使って楽曲を仕込み、エクスポートしたデータをiPadに送り、それを読み込むことでiPhone/iPadからタッチ操作でポン出しすることが可能です。この機能は意外と、ほかのアプリには搭載されておらず、一度仕込んでしまえばMac/iPad/iPhoneで同じデータを共有できるのは、かなり便利ですよ。

インポートボタンをタップして、Macで仕込んだデータをそのままiPhoneやiPadで使うことができる

またポン出しアプリには、「再生時に他のプレイヤーを停止」という機能が搭載されています。通常モードでは、たとえばプレイヤー1を再生した後、プレイヤー2を再生すると、どちらも同時に再生されます。一方「再生時に他のプレイヤーを停止」をオンにしておくと、プレイヤー1を再生した後、プレイヤー2を再生すると、プレイヤー1は自動的に停止され、プレイヤー2だけが再生されるようになります。また一つひとつ個別に設定することもできますが、グループ全体や任意の複数プレイヤーを一括で「再生時に他のプレイヤーを停止」状態にすることも可能となっています。

「再生時に他のプレイヤーを停止」をオンにすると、1つずつプレイヤーが再生されるようになる

BGM1からBGM2に移行するときは、自動で停止してほしい。BGMが鳴っている最中にSEを鳴らすときは、BGMは流れ続けてほしい。長いドラムのロールをプレイヤー1に設定して、「ジャーン!」をプレイヤー2に設定し、流れに合わせて毎回好きなタイミングでSEを終わらせたい…などなど、あらゆる演出に対して対応できるようになっています。

任意の複数トラックを一括で設定変更することも可能

また、入れ替え機能も搭載しており、iPhone/iPadのアプリを入れ替えるように、簡単にプレイヤーを移動できるのも魅力。とりあえず必要なファイルを読み込んで後から順番を変更したり、自分が使いやすい形でポン出しを行うことができますよ。

ドラッグ&ドラップで簡単にプレイヤーの位置を替えられる

演劇・舞台の稽古時に便利なシークバーによる巻き戻しと早送り、フェードイン/フェードアウトの柔軟な設定

演劇の現場で必要とされたのは、本番で使う機能ではないが、稽古で必要不可欠な機能である、巻き戻しと早送り機能。ポン出しアプリでは、YouTubeの再生バーのように、プレイヤーの再生位置を任意に指定できるシーク機能が追加され、同じシーンを何度も繰り返し練習する際もいちいち頭から再生する必要はなく、スムーズな進行を行えるようになっています。

YouTubeの再生バーのように、プレイヤーの再生位置を任意に指定できるシーク機能が搭載されている

また、フェードイン/フェードアウトもプレイヤーごとにタイムを調整することができます。たとえば、プレイヤー1とプレイヤー2をそれぞれフェードイン/フェードアウト設定しておけば、クロスフェード状態になるので、スムーズにBGMを繋げたいときにも活用することが可能。

フェードイン/フェードアウト、クロスフェードの設定も自由自在

さらに「フェード無効化」ボタンを有効にしておくと、このフェードイン/フェードアウト設定が無効化され、すべてのプレイヤーが一時的にカットイン/カットアウトするようになります。このタイミングではフェードイン/フェードアウトするようにしたいけれど、別のタイミングでは再生でいきなり流れ、停止では即座に音が消える、みたいな場合でも柔軟に対応することができるようになっています。

フェード無効化をオンにすると、フェードイン/フェードアウトを一時的にオフにすることができる

外部コントローラ接続機能と簡易的な波形編集機能も搭載

また、音楽ライブで使っているユーザーの中には、ポン出しアプリを楽器のように使っているケースもあるようです。iPhoneやiPadを直接タップするだけでなく、MIDIパッドなどを接続してポン出ししているケースもあるのだとか。もちろん、MIDIパッドやキーボードなど、外部コントローラ接続機能の利用は、音楽ライブでの利用に限らず、さまざまなケースで使われています。ちなみにポン出しアプリは、ショートカットキーの割り当てができるので、たとえばテンキーなどを接続して0〜9にプレイヤーを割り当て、手軽なUSB接続のテンキーを使ったポン出しも可能。

タッチやクリックでのポン出しもできるし、MIDIキーボードを使ったポン出し、テンキーを使ったポン出しなど、いろいろな使い方をすることができるようになっています。

テンキーなどを接続して、そのキーにプレイヤーの再生/停止を割り当てることも可能

またポン出しをする際に大事なのは、そもそもの音声ファイルの処理。もともとの音声ファイルの頭に無音が入っていては、タイミングよくポン出しすることができません。通常であれば、サンプラなどにデータを読み込む前に、そもそもの音声ファイルの頭の無音部分をDAWなどでカットする必要がありますが、ポン出しアプリには始めと終わりをカットできる機能が搭載されているので、いろいろなツールを使うことなく、これ1つでちゃんとした音声データを作ることができます。

ポン出しアプリ内で、オーディオファイルの始めと終わりをカットすることができる

価格と動作環境

これまで前述してきた通り、ポン出しアプリは、iPhone/iPad/Macで使用することが可能です。対応OSバージョンは以下の通り。

iPhone iOS 17.0以降
iPad iPadOS 17.0以降
Mac macOS 14.6以降

なお、ポン出しアプリはサブスクリプションとなっており、価格は以下のようになっています。

エディター(1週間)¥150
エディター(1ヶ月)¥300
エディター(1年)¥2,000

正確には、エディター(1週間)が0.99ドル、エディター(1ヶ月)が1.99ドル、エディター(1年)が12.99ドルで登録されており、App Storeなどでの日本円表記はAppleによる自動的為替計算によるものだそうです。また、無料期間は3日間ついているので、まずはインストールして試してみてはいかがでしょうか?

ちなみに、インストールは無料で行うことができサブスクリプション未購入の場合は、

・グループのインポート
・グループのエクスポート
・グループの削除
・プレイヤーの再生
・音量設定画面へのアクセス

のみ使うことができます。音源を仕込むことはできないが、仕込み終わっているデータであれば使えるというわけですね。音源を設定する担当者と実際にポン出しを行う担当者が別で、ポン出し担当者にデータを渡して再生してもらうような場合、一度設定した後はしばらく編集をせず再生のみ行う場合、イベントの開催期間が空くなどの理由でデータのみ残しておきたい場合などが、無料版でできる範囲となっています。

学生の方で、文化祭や学祭などのタイミングでしか使わないという場合も、エディター1ヶ月や1週間だけ利用するということも可能なのは、かなり良心的ですよね。1ヶ月だけ使って、また来年も1ヶ月だけ契約するといった使い方もできてしまうのは、ほかのポン出し系のソフトだと難しかったりするので、嬉しいところだと思います。

以上、ポン出しアプリについて紹介しました。正式リリースされたとはいえ、現在もフィードバックは絶賛受付中とのこと。記事で紹介したように、もしかしたら自分の分野では、あったほうがいいなという機能も搭載されるかもしれないので、ぜひ「ポン出しアプリ」を一度インストールしてみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
ポン出しアプリ製品情報
公式マニュアル

この記事を書いた人

ライター、サウンドエンジニア。有限会社フラクタル・デザイン所属。ブログ型ニュースサイトのDTMステーションで、DTM関連の記事を執筆。またTV、配信、ライブ、舞台、ドラマにおいて、レコーディング、ミキシング、PA、MAを担当するなど、幅広く活動している。

中村太樹をフォローする
iPad/iPhone

コメント