オーストリアのデジタルオーディオ技術企業SONIBLEから、AIを活用したリバーブプラグインの最新版「SMART:REVERB 2」が登場しました。SONIBLEといえば、これまでにSMART:EQやSMART:COMPなど、AIによる自動分析機能を搭載したプラグインシリーズで高い評価を得てきた企業。同社は、レコーディングとライブサウンドに長年携わったエンジニアたちが立ち上げたオーストリア・グラーツを拠点とするメーカーで、現場で煩雑になりがちな作業の最適化をコンセプトに、機械学習とオーディオ信号処理技術を融合させることで、従来のプラグインとは一線を画すAIを駆使した音響処理ツールを開発し続けています。
そんなSONIBLEが新たにリリースしたSMART:REVERB 2は、従来のリバーブプラグインの概念を大きく変える革新的な製品となっています。最大の特徴は、AIが楽曲のコンテンツを分析し、最適なリバーブセッティングを自動で提案する「コンテンツアウェア」機能。これにより、リバーブの深い知識がなくても、プロクオリティの空間演出を簡単に実現できるようになっているのです。また現在、SMART:REVERB 2のリリース記念として7月17日までの期間限定で、新規購入の場合、通常価格19,919円(税込)のところ31%オフの13,121円(税込)で販売中(価格は日々の為替相場によって変動します)。さらに、SMART:REVERBバージョン1を持っている方向けのアップグレード版は、4,279円(税込)で発売されています。そんなSMART:REVERB 2を実際に試してみたので、紹介していきましょう。
SONIBLEが目指すインテリジェントな音響処理技術
SMART:REVERB 2について詳しく見ていく前に、開発元であるSONIBLEについて簡単に紹介しておきましょう。同社は、オーストリア・グラーツ工科大学の音響エンジニアリングプログラムの卒業生たちによって設立されたスタートアップ企業。最大の特徴は、音響信号処理と機械学習技術を組み合わせることで、従来のオーディオプラグインでは実現できなかった音響処理を可能にしている点にあります。
これまでにリリースされたSMART:EQは、楽曲の周波数特性を自動分析して最適なイコライジングを提案し、SMART:COMPでは音源に応じたコンプレッサー設定を自動で調整してくれます。こうしたSMARTシリーズは、単に便利なプリセットを提供するのではなく、実際に楽曲のオーディオ内容を分析して、その結果に基づいた処理を行う点が画期的。現在では、このSMARTシリーズに加え、より使いやすさに特化したpureシリーズも展開し、独自路線を歩みながらもプラグインとしての性能の高さで技術力を見せています。
今回のSMART:REVERB 2も、この技術的アプローチを踏襲したもの。リバーブという音響処理の分野においてAIの可能性を押し広げる製品となっています。特にSONIBLEの技術力を支えているのは、同社が長年にわたって蓄積してきた音響心理学の知見。単純にアルゴリズムで処理するのではなく、人間の聴覚特性や音楽的な文脈を理解した上でAI処理を行うため、機械的ではなく自然で音楽的な結果が得られるのです。
AIによる楽曲分析で最適なリバーブ設定を自動提案
SMART:REVERB 2の核となる機能が、AIによる楽曲分析機能です。この「コンテンツアウェア」機能は、楽曲の内容を分析して最適なリバーブ設定を自動で提案してくれます。使用方法は非常にシンプル。まずドラム、ボーカル、楽器など、トラックの種類を示すプロファイルをドロップダウンメニューから選択します。
次に、プラグインが楽曲を分析すると、AIがダイナミクス、周波数成分、楽曲の特性などを学習し、それに対して最適なリバーブ設定を適用してくれるという流れ。重要なのは、この処理がオリジナルの音源を損なわないよう配慮されていることです。なお、SMART:REVERB 2は従来のセンド・リターン方式ではなく、各トラックにインサートして使用することを前提に設計されています。これにより、各楽器の特性を正確に分析し、個別に最適化されたリバーブ処理が可能になるのです。
たとえばボーカルトラックにおいては、歌詞の明瞭度を保ちながら適度な空間感を付加し、ドラムトラックでは各パーツの分離感を維持しつつ自然な残響を加えるといった、楽器特性に応じた最適化が自動で行われます。また、楽曲のジャンルやBPM、ダイナミクスレンジなども考慮されるため、バラードからアップテンポなダンストラックまで、幅広い楽曲に対応できるのです。
直感的パラメータで複雑なリバーブ設定を制御
SMART:REVERB 2のもう一つの革新は、従来のリバーブプラグインで必要とされていた複雑なパラメータ調整を、直感的な操作に置き換えたことです。通常のリバーブプラグインでは、プリディレイ、ディケイタイム、ルームサイズ、ハイカット、ローカットなど、多数のパラメータを個別に調整する必要がありました。
しかし、SMART:REVERB 2では、これらの複雑な設定が「Distance」「Size」「Width」「Color」「Clarity」という5つの知覚ベースのコントロールに集約されています。これらのパラメータは、従来のアナログ回路の動作を模倣するのではなく、人間の聴覚がどのように空間を認識するかという観点から設計されているのが特徴。
Distance(距離感)コントロールでは、音源を前方または後方に配置する感覚で調整でき、Size(サイズ)では空間の大きさを、Width(幅)では空間の広がりを制御できます。Color(カラー)では明るさや暖かさといった音色的特徴を変化させることができ、Clarity(クラリティ)では楽曲全体のバランスを考慮した明瞭度を調整可能です。
たとえばボーカルの距離感を調整したい場合、従来であればプリディレイ、アーリーリフレクション、ディケイタイムなど複数のパラメータを調整する必要がありましたが、SMART:REVERB 2ではDistanceノブを回すだけで、これらすべてが連動して最適な設定となるのです。
最大6トラックを連携管理するグループ機能
さらにSMART:REVERB 2で特に注目すべきは、最大6つのトラックを連携して管理できるグループ機能です。この機能により、複数のSMART:REVERB 2インスタンスがリアルタイムで通信し合い、統一された音響空間を創造することができます。
このグループモードでは、各トラックを単一のウィンドウ内で管理でき、楽器の奥行き配置が直感的に行えます。たとえばボーカルを前方中央に、コーラスを後方に、楽器類をその間に配置するといった、空間の前後感を視覚的に操作できるのです。
さらに、リバーブマトリクス機能により、Room、Hall、Plate、Springという4つの基本的なリバーブタイプを2Dインターフェース上で自由にブレンドすることが可能。従来のプリセット選択とは異なり、これらのアルゴリズムを連続的に混合できるため、より細かなニュアンスのコントロールが実現されています。
各トラックが相互に影響し合い、お互いのリバーブ成分が被らないよう自動的に調整されるため、全体として調和の取れたリバーブ処理が実現されます。この新しいアプローチにより、ヴィンテージ系のリバーブのように音を重ねて1つの音として作り上げるアプローチとは対照的に、ナチュラルで響きの成分を自然に付加するコンセプトとなっています。
この6トラック連携機能の真価は、実際のミックス作業において発揮されます。従来のワークフローでは、各楽器に個別のリバーブを設定し、それらが互いに干渉しないよう慎重にバランスを取る必要がありました。しかし、SMART:REVERB 2では、6つの楽器を同一の仮想空間に配置し、相互の関係性を考慮した処理が自動で行われるため、自然で統一感のある空間演出が簡単に実現できます。
マニュアルオーバーライドで細かな調整も可能
そんなAIによる自動設定と直感的なコントロールが特徴のSMART:REVERB 2ですが、より細かな調整を求めるユーザーのために、詳細なマニュアルコントロールも用意されています。「Manual Override」機能を有効にすることで、AIによる自動設定を無効化し、従来のリバーブプラグインのような手動調整に切り替えることも可能です。これにより、基本的にはAIやメインコントロールで操作し、もう少しこだわりたい方は詳細設定に進むという、段階的なアプローチが可能になっているのです。また、ゲイン機能、特殊リバーブエフェクト、リバーブアンマスキング機能など、プロフェッショナルな制作に必要な機能も充実しています。
周波数帯域別の詳細調整も可能で、低域、中域、高域それぞれでリバーブの強度や特性を個別に設定できます。これにより、たとえば低域では控えめなリバーブを適用して楽曲の土台をしっかりと保ちながら、高域では豊かな空間感を演出するといった、従来のリバーブプラグインでは複雑な設定が必要だった処理を簡単に実現できます。
他社製品との比較で見えるSMART:REVERB 2の独自性
リバーブプラグインには、Lexicon、Eventide、Valhalla DSP、FabFilterなど、多くの優秀な製品が存在しますが、これまで紹介したようにSMART:REVERB 2では、別の方法でリバーブをコントロールすることが可能となっています。
従来のリバーブプラグインの多くは、非常に高品質なアルゴリズムと豊富なパラメータを提供する一方で、設定の複雑さがネックとなることがありました。たとえばLexiconの名機をモデリングしたプラグインでは、本物のハードウェアと同様の詳細な設定が可能ですが、初心者には扱いが困難で、プロでも最適な設定に到達するまでに時間がかかることが少なくありません。
一方、SMART:REVERB 2は「高品質」と「使いやすさ」を両立させた点が画期的です。AIによる分析機能により、初心者でもプロレベルの設定が瞬時に得られ、同時に6つのトラックを連携管理できる機能は、他の製品では実現されていないユニークなアプローチです。
また、多くのリバーブプラグインがヴィンテージハードウェアのエミュレーションに重点を置く中、SMART:REVERB 2は現代的なワークフローに最適化された設計となっています。これにより、既存の製品と競合するのではなく、エミュレーション系は音作りとして捉え、SMART:REVERB 2で空間を整えていくなど、補完的な関係を築けるのも大きなメリットといえますね。
セール情報と価格設定
そんなSMART:REVERB 2は現在セール中です。SMART:REVERB 2は7月17日まで31%オフの特別価格で販売中。新規購入の場合は通常価格19,919円(税込)のところ、13,121円(税込)で購入可能となっています。また、バージョン1からのアップグレードも同期間中に限り特別価格4,279円(税込)で提供されています。
またCubaseのグレースピリオドのような、特別優待期間が用意されています。「SMART:REVERBバージョン1のシリアルナンバーを2025年3月17日(月)以降にSONIBLE社WEBサイトにご登録されたユーザー様は、同社からSMART:REVERB 2の無償配布クーポンがメールで配布される予定です。該当するお客様は製品をお求めいただく必要はございませんので、同社からのご連絡をお待ちください」とのことです。
なお、今回のセールではSMART:REVERB 2だけでなく、SONIBLEの他の製品もセール対象となっています。SMART:EQやSMART:COMP、pure:EQやpure:COMPなどのSMARTシリーズ・pureシリーズも特別価格で購入できるため、この機会にぜひチェックしてみてください。
以上、SMART:REVERB 2について紹介しました。SONIBLEが得意とするAI技術とオーディオ処理の融合により、リバーブプラグインの新たな可能性を示す製品となっています。AIによる楽曲分析、直感的なパラメータ操作、複数トラックの連携管理、そして詳細な手動調整という4つの要素が組み合わさることで、初心者からプロフェッショナルまで幅広いユーザーの音楽制作をサポートしてくれます。セール中のこの機会に、次世代リバーブの可能性を体験してみてはいかがでしょうか。
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