ご協力してくださった方も多いと思いますが、DTMステーションでは、DTMユーザーに向けたさまざまなアンケート調査を行っています。「使っているDAW調査」や「WindowsとMacの比率調査」また「好きな音源メーカー調査」……などなどですが、毎年同じ調査をしてその推移の変化を時系列的にも観測しているのが「使っているオーディオインターフェイス調査」です。
ちょうど先月、2017年2月の調査として「あなたは、どこのメーカーのオーディオインターフェイスを使ってますか?」というものを行ったところですが、その結果、初めてSteinberg/YAMAHAがシェア1位となり、しかも昨年まで1位だったRoland/EDIROLを大きく引き離して圧倒的な1位へと躍進したのです。でも、なぜ急にここまでSteinberg/YAMAHAのオーディオインターフェイスのシェアが伸びたのか、少し検証してみたいと思います。
先日実施したアンケートで、Steinberg/YAMAHAのオーディオインターフェイスのシェアが1位になった
DTMステーションのアンケート調査は、基本的に選択肢から選んで投票してもらう形をとっています。そのため、オーディオインターフェイス調査といっても、具体的な型番まで並べると数が多くなりすぎて実施しずらいため、毎回「オーディオインターフェイスメーカー」として一括りにしています。またSteinbergとYAMAHA、RolandとEDIROLなどブランドが違っても実質同じメーカー、近いブランドは一括りにしているのですが、今年の結果が先ほどのとおり、投票数827あるうちの1位がSteinberg/YAMAHAとなっているんです。
2017年のアンケート調査結果を円グラフで見るとシェアがハッキリ見えてくる
同じデータを円グラフで示すと、こんな感じで、Steinberg/YAMAHAが全体の約1/4、23%のシェアをとっているんですね。
Steinbergのオーディオインターフェイス、URシリーズ
「メーカーの人が組織票で入れた結果なんじゃないの?」と穿った見方をする方もいるかもしれません。確かにそういうケースもあるかもしれませんが、システム的には同じIPアドレスからの投票はできないようにしているので、個人の複数投票や同じ会社からの複数投票はかなり排除できているから、かなり信ぴょう性のあるデータになっているのではないか……と思っているところではあります。
2014年のアンケート調査結果
2015年のアンケート調査結果
2016年のアンケート調査結果
では、これを時系列的に見てみるとどうなのでしょうか?2014年、2015年、2016年、そして今回の2017年と4年連続で見てきたので、それぞれの結果を見ると、その動きが如述に現れています。そう2014年ではRolandが圧倒的なシェアNo.1だったものが、徐々に落ちてきて、ついに今年Steinberg/YAMAHAに逆転されたわけです。この数年、Rolandから目立った新製品が出ていなかったのも大きな要因かもしれませんよね。
このグラフを見て注意すべき点としては「今年買ったオーディオインターフェイスは何ですか?」ではなく「あなたは、どこのオーディオインターフェイスを使っていますか?」であるという点。つまり、何年前に買ったものでも、いいわけで、その年のトレンドを大きく反映しているわけではない、という点です。それでも、やはり最近買ったオーディオインターフェイスを使っている人が多いでしょうから、ある程度の動向は見えてくるわけです。
では、ここからSteinberg/YAMAHAが1位になった理由は考察してみることにしましょう。まあ、Steinberg/YAMAHAとまとめてみたものの、実質的にはその大半はSteinbergブランドのURシリーズを意味していると思われます。「なんでSteinbergとYAMAHAがまとめられているの?」と疑問に感じる方もいるかもしれませんが、ドイツメーカーであるSteinbergは現在YAMAHAの100%子会社であるという事実とともに、このオーディオインターフェイスのハードウェア設計自体をYAMAHAが行っているからですね。
改めて、このURシリーズにどんなものがあるかを並べてみると、現行機種としては以下の6種類があります。
UR12 | UR22mkII | UR242 | UR44 | UR28M | UR824 | |
入出力合計 | 2IN/2OUT | 2IN/2OUT | 2IN/4OUT | 4IN/4OUT | 6IN/8OUT | 24IN/24OUT |
アナログ入力 | 1XLR,1TS | 2Combo | 2Combo, 2TRS |
4Combo, 2TRS |
2Combo, 2TRS |
8Combo |
マイク入力 | 1 | 2 | 2 | 4 | 4 | 8 |
Hi-Z入力 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 |
アナログ出力 | 2RCA | 2 | 2 | 4 | 6 | 8 |
最高bit/kHz | 24/192 | 24/96 | 24/192 | |||
USBバスパワー | ○ | ○ | × | × | × | × |
CCモード | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
ループバック機能 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
DSP機能 | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ |
実売価格(税抜) | 10,000円前後 | 15,000円前後 | 20,000円前後 | 30,000円前後 | 35,000円前後 | 80,000円前後 |
この中ではUR28Mのみ、24bit/96kHz対応となっていますが、それ以外はすべて24bit/192kHz対応の最新型。いずれも金属ボディーのがっちりしたものでありながら、とくにUR12が10,000円、UR22mkIIが15,000円と、1万円台で入手できてしまう価格設定が、このDTM市場で大きなインパクトを与えているんですよね。
低価格なUR12とUR22mkIIがマーケットを大きくけん引しているのは間違いない
そしてURシリーズが人気であるもう一つの大きな理由がCubase AIがバンドルされていること。先日も「URシリーズなどに付属のCubase AI 9を無料でGETしてみた!」という記事でも紹介しましたが、初めてDTMを始めてみようという人が、URシリーズを購入すれば、とりあえず一通りの機能・性能を備えたDAWであるCubaseの最新版がセットで入手できるというのは、ちょっと驚きの事実ですよね。
URシリーズにバンドルされているCubase AI 9
もっとも、現在ある各社のオーディオインターフェイスには、何らかのDAWが付属するのが一般的になりましたが、それが人気のDAWであるCubaseであることは、初心者にとって安心材料の一つになっているのではないでしょうか?
2016年10月のDAWの利用に関するアンケート調査結果
ちなみにDAWに関する2016年10月に行った最新のアンケート調査「あなたが普段使っているDAWはどれですか?」では、Cubaseが4年連続1位となっているのとも大きな関係がありそうです。
ところでURシリーズ、6機種を眺めた際、「UR12とUR22mkII」、「UR242~UR824」の間には大きな違いがあるのにお気づきですか?おそらく数の上ではUR12とUR22mkIIが圧倒的に多いとは思うものの、UR242以上は入出力のポート数が多いというだけでなく、DSPが搭載されているんです。そのDSP搭載であることを狙って購入する人もかなりいるのでそうはいでしょうか?
DSPとはDigital Signal Prosessorの略であり、オーディオ信号を処理する専用のICのこと。そう、これを利用することで、PCに負荷をかけることなく、エフェクト処理をしたり、ミックスをしたりすることができるんですよね。実際、URシリーズ上位4機種ではEQ、コンプ、リバーブ、またギターアンプシミュレーション機能などが搭載されていて、これらをオーディオインターフェイスのハードウェア機能として、使うことができるんです。従来「DSP搭載のオーディオインターフェイスというと、かなり高価なものである」というのが一般常識だったと思いますが、それが20,000円程度のオーディオインターフェイスでも搭載されるようになったという価格破壊もURシリーズが人気である一因だろうと思います。
URシリーズ上位機種にはDSPが搭載されており、ミキサー機能やエフェクトをハード的に持っている
ちなみに、このDSP機能はソフトウェアでコントロールできるようになっているだけに留まらず、Cubaseとのセット利用であれば、完全にCubaseの内部機能として使えるような仕組みになっているんです。
そして、URシリーズはSteinbergブランドの製品ではありつつも、その流通をYAMAHAが行っているというのも、大きくシェアを伸ばしてきた背景にあることも間違いないと思います。YAMAHAの営業力・ネットワーク力があれば、ネット通販はもちろんのこと、全国津々浦々の楽器店にまでいきわたるでしょうからね。
ユーザーとしては、こうした質の高いオーディオインターフェイスが、極めて安い価格で入手できるというのはとっても嬉しいことです。が、この先、他社がURシリーズ狙い撃ちで何かを仕掛けてくることもあるだろうし、どこからか画期的な製品が出てくる可能性も否定できません。これからオーディオインターフェイスのシェアがどのように変化していくのかは楽しみなところでありますが、DTMステーションでは今後も毎年調査を進めていく予定ですので、ぜひ読者のみなさんもご協力いただけると幸いです。
【価格チェック】
◎Amazon ⇒ UR12
◎サウンドハウス ⇒ UR12
◎Amazon ⇒ UR22mkII
◎サウンドハウス ⇒ UR22mkII
◎Amazon ⇒ UR242
◎サウンドハウス ⇒ UR242
◎Amazon ⇒ UR44
◎サウンドハウス ⇒ UR44
◎Amazon ⇒ UR28M
◎サウンドハウス ⇒ UR28M
◎Amazon ⇒ UR824
◎サウンドハウス ⇒ UR824
【製品情報】
Steinberg URシリーズ線品情報