先日も「DTMユーザー、ミュージシャン必見!『Think MIDI 2015』が12月に開催」という記事でお伝えしたとおり、12月12日、13日の2日間、東京・六本木にあるラフォーレミュージアム六本木でMIDIについて改めて考えてみよう、というイベント「Think MIDI 2015」が開催されます。

1981年のMIDI誕生から34年経った今も、DTM、電子楽器の世界の中枢であり続けるMIDIは、これまでどんな役割を果たしてきたのか、今どんな意味を持ち、これからどう変わっていくのでしょうか?「Think MIDI 2015」の総監督を務める松武秀樹さんにお話しを伺ってみました。みなさんご存じの通り松武さんは、日本シンセサイザ・プログラマー協会の代表理事であり、その昔、YMOの4人目のメンバーと言われた方。MIDI登場前のアナログシンセサイザー時代から活躍してきた松武さんにとってのMIDIがどう関わってきたのかも気になるところなので、いろいろと聞いていきましょう。


「Think MIDI 2015」の総監督である松武秀樹さんにお話しを伺いました

--今回のイベント、「Think MIDI 2015」という、ちょっと変わった名前になっていますが、これはどういう意味を持っているのでしょうか?
松武:多くの人にMIDIについて改めて考えてもらおうという意図を持つとともに、MIDIを知らない人に、ぜひ知ってもらいたいという思いを込めてネーミングしました。MIDIとはいったい何者なんだ、ってね。当初は「What's MIDI」とか「That's MIDI」なんて名前も考えていたんですよ。古い人なら、この言葉をご存じかもしれませんね(笑)。ただ、もう一度、あのときのことを考えてみよう、ということから「Think MIDI」になったんです。同期という意味の「Sync MIDI」を引っかけてもいるんですけどね。

 
紆余曲折の末、「Think MIDI 2015」というネーミングされた

--以前DTMステーションでも「今さら聞けない、『MIDIって何?』『MIDIって古いの?』」という記事を書いたのが、いまだによく読まれているのですが、とくに10代、20代といった世代の方だと、MIDIという単語をまったく知らないという人も多そうです。
松武:MIDIという単語を知らないとしても、みなさん1日に何度もMIDIに遭遇しているということを知っていただきたいですね。知らない間に近くにMIDIはあるんですよ。たとえば電車の発車ベルだって、MIDIを使って鳴っているし、自動販売機が出す音もMIDI、クルマの警報音だって、カラオケだってMIDIが使われていますからね。知らないところ、気づかないところで、MIDIの技術を使った恩恵を受けているんですよ。ぜひ、そのMIDIというものの正体が何かを「Think MIDI 2015」に来ていただいて、知ってほしいと思っています。

--一方で、MIDIを知っている人からは、MIDIなんてもう古いのでは…?という声も聞こえてきます。
松武:確かに音楽制作の世界では、「オーディオストレッチとかもあるし、MIDIなんてもういらないんじゃないですか?」、「便利だったかもしれないけど、MIDIなんかじゃ個性なくなっちゃうよね」……といったことを言う方もいるのですが、MIDIに対する捉え方が変化してきていることは確かだと思います。従来は自動演奏をするための仕掛け、といった印象も強く、事実そうした使い方が中心だったと思います。でも、今はMIDIケーブルを直接挿さなくても、コンピュータの内部で動かすシンセサイザをコントロールするのに幅広く使うのはもちろん、電子音が鳴るさまざまな機器の内部に組み込まれていたり、はたまた映像の世界だったり、DJ、VJといったところにもMIDIが利用されているんですよ。こうした世界において、MIDIは不可欠な存在となっており、それを代替えするようなものもないんです。よくこれだけのものが30年以上前に規格化できたものだと感心してしまいますね。そういう意味でも、なぜMIDIが誕生してこなくてはならなかったのかという理由を「Think MIDI 2015」を通じて伝えていきたいですね。


現在の機材にも34年前と同じMIDI端子が搭載されている 

--ところで、MIDIが生まれる以前のYMO時代からシンセサイザをコンピュータで操るということに携わってきた松武さんにとって、MIDIとはどんな付き合いをされてきたのですか?
松武:実のところ、MIDI登場当初はアンチだったんですよ。何でこんなものが出てきたんだ、1本のケーブルでいっぱいのデータを送らなくたって、1本ずつ繋いだほうが確実じゃないか、一遍に鳴ったら判断に困っちゃうよ…ってね。またOMNIだとか、コントロールチェンジだとか、チャンネルだとか、知らない用語がいっぱい出てきて覚えきれないよ…って思いましたよ。だから最初の1、2年は拒否反応でしたね。でもローランドからMC-500が登場し、ヤマハからQX1QX3が登場してくると、もう無視できない存在になってきたし、思っていたより使い方も簡単。当初、MIDIを規格化する際に想定していた機材が揃ってくると、どんどんと使いやすい存在へと進化していったんですよね。またMIDIクロックの仕組みによって、シーケンサとリズムマシンが同期できるようになってくると、もう必要不可欠な存在へと変わっていきましたね。さらにPCによって、MIDIとの関わりは決定的になりましたね。


実は、当初はアンチMIDIだったと語る松武さん

--MC-8とかMC-4のイメージが強い松武さんの、PCとの関わりについてもとっても興味があるところです。
松武:MIDIと同様、PCも最初はしばらく手を出しませんでした。QX3とかMC-500は使っていたし、それぞれストレスなく打つことはできたんだけど、PCは難しそうだなぁ……と思って。PC-8001のころも存在は知っていたし、カモンミュージックレコンポーザーなども横目では見ていたけど、あまりピンと来なくてね。結局本格的に使うようになったのはMac SE/30を買ってPerformerを使うようになってからですね。Visionも使ったけど、これは僕の感覚に合わなかったし、Nortator LOGICもイマイチで…。結局、MIDIを数値入力できるPerformerで落ち着き、それ以来はPCとMIDIは自分にとって切っても切れない関係になっていきましたね。SC-88などの時代になって、誰もが「MIDIってこういうことだよね」って実感できたのではないでしょうか。たった1本のケーブルで多チャンネルを制御して、これだけで全パートを演奏してしまう。ちょうどこのころに、日本シンセサイザー・プログラマー協会(JSPA)もでき、プログラムをする人と実演する人が一心同体のようになっていきました。

--日進月歩のデジタルの世界において、機能的、スピード的にMIDIが限界に来ているというようなことはないのでしょうか?
松武:MIDIは34年前に規格化されたとは思えないほど、先進的な機能を持ち、網羅的なものになっています。実際、私自身がまだMIDIのすべてを使い切っていませんからね。まだまだ、ここに内包される大きな可能性があるというのは嬉しいことですよ。一方で、確かにスピード面での物足りなさは出てきているかもしれません。ただし、大容量伝送する際はUSBを使うなり、LANを使って高速に送ることもできますしね。MIDIというプロトコルは僕らにとっての救世主であったし、それは今でも今後も変わらないと思います。

--今後、MIDIはまだ発展していくものだと思いますか?
松武:現に、MIDIは時代に合わせて今も進化し続けています。Bluetooth LEでMIDIを飛ばせるようになったり、Webブラウザ上でMIDIが鳴らせるなど、以前は考えもしなかったようなことが現実になってきています。今回の「Think MIDI 2015」の中でも楽器メーカーの業界団体であるAMEIWeb MIDIに関するデモや紹介を行うので、これからのMIDIの世界の一端を覗き見ることができると思いますよ。


アナログとデジタルの架け橋となるのが、MIDI

--最近、またアナログシンセサイザがブーム的に広がっているように思いますが、その点をMIDIに重ね合わせるとどうでしょうか?
松武:MIDIの登場とほぼ同じころにデジタルの音源が登場し、その後、デジタル一辺倒になっていきました。当時からデジタルの音がキレイだとか、アナログは音が太くていいいとか、戦いもあったように思います。確かにデジタルはアナログに追いつきたかったし、そのために苦労はしてきたけど、結局はそれぞれ違うものだったのです。だから、無意味な競争はやめましょう、それぞれアナログのいいところ、デジタルのいいところを、お互いで補い合い、助け合って、新しい音楽を作っていく。そのためにそれぞれを繋げるものがMIDIなんですよ。

--最後に、「Think MIDI 2015」にいらっしゃるみなさんへ一言お願いします。
松武:1日目はMIDI's LEGEND DAY、2日目はCREATIVE MUSIC DAYと題し、異なるテーマで多くの人にMIDIの面白さ、楽しさを味わっていただこうと思っています。MIDIを生み出した梯郁太郎さんやシンセサイザーを日本に広め、今も現役で活躍されている冨田勲先生をはじめ、千住明さん、服部克久さん、向谷実さん、浅倉大介さん、大島ミチルさん……と、この2日間に、すごい人たちが集結します。これだけの人物が一堂に会するということは、これまでにもなかったし、これからもそうないのではないでしょうか。昔からシンセサイザーを楽しんできた方はもちろんのこと、高校生や大学生など、クリエイターを目指す方や、音楽に興味を持つ多くの方たちに、来ていただけたらと思います。

--ありがとうございました。


Think MIDI 2015音楽プロデューサーの篠田元一さん(左)、松武さんとともに、記念撮影

【イベント概要】
主催  :公益財団法人 かけはし芸術文化振興財団
ライブ :パネラー
     冨田勲、服部克久、千住明、大島ミチル、伊藤圭一、梯郁太郎
     ゲスト(50音順)
     浅倉大介、阿部薫、伊藤賢治、氏家克典、梯郁夫、白井良明、
     難波弘之、西脇辰弥、根岸孝旨、増田隆宣、向谷実、
     総監督
     松武秀樹
     音楽プロデューサー
     篠田元一
企画  :トート株式会社
会場  :ラフォーレミュージアム六本木
日時  :12月12日(土)11時00分~18時30分
     12月13日(日)10時00分~17時30分
入場料 :各日 一般      当日2,000円/前売1,800円
        高校生以上学生 当日1,000円/前売900円 ※全て税込
        中学生以下   無料
協力  :一般社団法人 音楽電子事業協会(AMEI)
     一般社団法人 日本シンセサイザープログラマー協会(JSPA)
     楽器ハード/ソフトメーカー
     都内周辺音楽大学/専門学校、都内有名楽器店
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