英コンソールメーカー、audientが出した14,000円のオーディオインターフェイスEVO4と上位版のEVO8を試してみた

あのアビーロード・スタジオにも大型コンソールが導入されていることで知られるプロオーディオ機器メーカーの英audient社。まさにプロ用御用達メーカーであり、高音質な機材を開発することで知られるメーカーですが、一方でaudientはDTM用途の手ごろな価格の製品も複数出しています。そのaudientが2020年に発売したのが2in/2outで実売価格14,000円(税別)前後というEVO4と、4in/4outで実売価格24,000円前後のEVO8。

少し丸みを帯びた可愛いデザインのオーディオインターフェイスで、WindowsやMacはもちろん、iPhone/iPadでも利用できるというUSB Type-C接続のもの。試しに新しいアーキテクチャのM1プロセッサ内蔵のMac miniで使ってみたら、こちらも問題なく動作させることができました。USBバスパワーで駆動できつつ+48Vのファンタム電源供給も可能で、非常に強力なループバック機能も備えるEVO4とEVO8、どんな機材なのか紹介してみましょう。

audientのEVO4(左)とEVO8(右)

audientはイギリスのハンプシャー州にあるプロオーディオ機器メーカーで、設立は1997年という会社。アビーロードスタジオに導入されているのは同社のフラグシップモデルであるコンソールで、ASP8024-HEというもの。

audientのフラグシップのコンソール、ASP8024-HE

ほかにもマイクプリアンプや、サラウンドモニターデバイス、そしてオーディオインターフェイスと数々の製品をラインナップしており、これまで数多くの賞を獲得してみた一流メーカーであるだけに、一般ユーザーにはなかなか手が出せない機材……という勝手なイメージを持っていました。が、そのaudientのコンセプトは、最高級な音を多くのクリエイターが手軽に使える価格で実現することだそうで、今年リリースされたEVO4やEVO8は、まさにそれを具現化したものです。

オーディオインターフェイスとしてはユニークな形状のEVO4、EVO8

ハーフラックタイプが多いオーディオインターフェイスの中で、EVO4やEVO8は、ちょっと珍しい形。トップパネルに大き目なローターリーエンコーダーが搭載されており、ここで出力音量や入力音量などをコントロールする形になっています。

EVO4のフロントにはギター入力とヘッドホン出力がある

EVO4はフロントにギター入力とヘッドホン出力が一つずつあり、リアにはメイン出力となるTRSフォンのステレオ出力があるとともに、マイクやラインの入力が可能なコンボジャックが2系統ある2in/2outという構成。前述の通り、USB Type-C端子を通じて、コンピュータと接続し、最大で24bit/96kHzに対応した機材になっています。

EVO4のリアにはコンボジャック入力が2つとTRSフォン出力が2つ用意されている

一方のEVO8のほうはEVO4を一回り大きくした形で、フロントにギター入力があるのとともに、ヘッドホン出力が2系統用意されています。また、リアにはTRSフォン出力が4系統とコンボジャック入力が4系統あり、同じく24bit/96kHz対応で4in/4outのオーディオインターフェイスとなっています。

EVO8のフロントにはギター入力とヘッドホンジャックが2つある

樹脂製のボディーなので非常に軽く、そのままカバンに入れて持ち歩いても、重くないのは嬉しいところです。USBバスパワー駆動さからACアダプタがいらないのもいいですね。

EVO8のリアにはコンボジャック入力が4つ、TRSフォン出力が4つある

いずれもUSBクラスコンプライアントなデバイスとなっているので、WindowsでもmacOSでもUSB接続すれば、とりあえずドライバ不要でそのまま使うことも可能です(※WindowsでASIOドライバを使う場合にはドライバインストールが必須です。またWindows 10 Creators Update以前のものはドライバをインストールしないと認識しない可能性があります)。とはいえ、audientにはWindows用、macOS用のドライバ兼コントローラーソフトがリリースされており、これらをインストールすることで、EVO4、EVO8のフル機能を発揮できるようになる仕掛けになっているのです。

ドライバをインストールすることでASIOを含め、フル機能を使うことが可能になる

Windows、Macでセッティングして、ヘッドホンで音を鳴らしてみると、なるほど非常にクリアな音で、そしてパワフルなサウンドが響いてくれます。携帯のアンテナ表示みたいなアイコンのボタンをクリックしてから、大きいノブを回すことで音量を調整できるようになっています。

EVO4の操作と連動するEVO Control

この際、常駐しているEVO Controlというソフトを表示させると、EVO4の操作をリアルタイムに反映して状況を表示することができます。反対にこのEVO Controlをマウスで動かすことで、リモートコントロールすることも可能になっています。

1~4のボタンを押すことで、各入力のゲイン調整ができるようになる

入力は1、2、3、4(EVO4は1と2のみ)というノブで調整できるようになっているほか、緑のマイクボタンを押すことで自動

調整することも可能です。また48Vボタンを押すことで、マイクにファンタム電源を送ることも可能になっています。

こうしたファンタム電源を送ることができること自体は、各社のどのオーディオインターフェイスでも当たり前のように搭載されていますが、EVO8の場合、4つのコンボジャックがあり、4つともにファンタム電源を送ってコンデンサマイクを動かすことができ、それをUSBバスパワーで駆動できてしまうというのは、すごくいいと思います。
*EVO 8がUSB-Cに接続され1.5Aが供給されていれば、4チャンネル全てに電源供給され、USB-Aポートに接続(給電)されているときは、2チャンネルにのみ供給されます

M1 Macでも問題なくドライバソフトをインストールすることができた

ここで気になったのが、このEVO4、EVO8をM1 Macで使うことができるのか、という点。USBクラスコンプライアントなので、接続すればすぐに認識したのはもちろんですが、ドライバソフトのほうも、あっさりインストールできてしまい、なんら問題なく使うことができました。おそらくドライバというよりは、コントローラーアプリケーションということだから問題なく動いたのだと思います。

M1 MacにおいてEVO ControlもEVO Loop-back Mixerも使うことができた

そのソフトを入れることで使えるようになる重要な機能がループバックです。DAWや各種ソフトから見ると、通常の入出力とは別にLoop-backという入出力があり、これを利用することで、たとえばオーディオ再生する音をZOOMやSkypeなどに送ったり、ゲームのなど音をネット配信できるだけでなく、ZOOMやGoogle Meet、Skypeなどの音をDAWやレコーダーソフトに録音していくことも可能になります。

ループバックさせる音を自在に設定できるEVO Loop-back Mixer

そのループバック用にLoop-back Mixerというユーティリティが利用できるのが重要な点です。たとえばEVO8の場合、コンボジャック入力が4つあるほか、PCからの出力が4つあるわけですが、それぞれのバランスを整えた上でLoop-backへと送ることができるのです。この際4in/4outに加え、各アプリケーションの出力としてLoop-backを選んだ際、独立したチャンネルとしてここにミックスして加えることが可能になっています。

ARTIST MIXという機能も用意されている

また、EVO8には、2つのヘッドホン出力があるわけですが、それぞれ同じ内容で音量だけを変えることができるほか、Artist Mixというモードに切り替えることで、ヘッドホン1、ヘッドホン2それぞれ、別々のミックスで音を鳴らすといったことも可能になっているのです。この辺のルーティングのわかりやすさ、便利さは、さすがコンソールメーカーのaudientならでは、ということなのだと思います。

iPhoneとEVO4の間にLightning-USBアダプタと電源供給タイプのUSBハブを挟むことで使うことができた

ところで、EVO4、EVO8はiOSデバイスでも動作すると記載されていますが、使い方には注意点があります。USB Type-C端子のiPad Proは何ら問題なく使える一方、それ以外のLightning端子を持つiPhoneやiPadの場合、Lightning-USBアダプタを使うとともに、電力供給の問題で間に電源供給可能なUSBハブを挟む必要があるのです。多くの機材ではLightning-USB3アダプタを使えば、USBハブなしに動くのですが、EVO4およびEVO8の場合はUSBハブが必須でした。また、iOSデバイスの場合はドライバー兼コントローラーソフトがないため、ループバック機能は使えません。

WaldorfのPPG 2.2vを入手することができる

なお、EVO4、EVO8は、この低価格ながら、さまざまなオマケソフトを入手できるというのも重要なポイントです。具体的にはSteinbergのCubase LE 10、Retologue 2のほか、Waldorfのソフトウェア音源であるPPG 2.2v、Atack、エフェクトとしてD-Poleが用意されているほか、Two notesのスピーカーキャビネットシミュレーターのWall of Sound、GForce Softwareのメロトロン再現音源のM-Tron Pro LE、ピアノサウンド変換ソフトのSubito Piano……などなど、これらだけで十分元が取れてしまうのでは……というソフトウェア群です。

Two notesのスピーカーキャビネットシミュレーターのWall of Sound

聴いた感じでは、入力音、再生音ともに、非常に優れたサウンドのaudientのEVO4とEVO8。その音質特性のテストは、また改めてAV Watchの記事でいずれやってみようと思っていますが、手ごろな価格でコンパクトで、持ち運びがしやすく、高音質でありながら、数多くのプラグインなどが入手できるのですから、今すぐ購入しても損はないはず。

audient製品、ぜひ今度はiDシリーズなど、上位版のオーディオインターフェイスなども取り上げてみたいと思っています。

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