エンジンを64bit-floatに刷新。新世代DAWとなったCubase Pro 9.5誕生

毎年恒例、年末のバージョンアップの季節。ことしは例年より3週間ほど早い11月15日にCubaseの新バージョンが誕生しました。今回発売されるのはCubase Pro 9.5Cubase Artist 9.5Cubase Elements 9.5の3ラインナップ。またこのタイミングで非売品で製品バンドル版であるCubase AICubase AI 9.5になるとのこと(現時点ではCubase LE 9.5が登場するのかどうかは不明)。通常、x.5というバージョンは上位2つのバージョンだけの対応で、Elements以下は対象外だっただけに、今回はちょっと異例の展開となっています

その背景にはCubaseのオーディオエンジンを従来の32bit浮動小数点処理(32bit-float)のものから64bit浮動小数点処理(64bit-float)のものへ載せ替えることがあるようです。32bit-floatで不満があった方はほとんどいないのでは…と思うものの、競合他社が64bit-floatで高音質を謳っているからには負けていられない、ということなのでしょう。エンジン側の体制が整った今、少しでも早くと時期を前倒しし、全ラインナップで戦いに挑む、ということなんだと思います。そこで、Cubase 9.5のファーストインプレッションとして、エンジン部分を中心に何が変わったのかなどを紹介していきましょう。

11月15日、例年より3週間近く早くCubaseの新バージョン、Cubase 9.5がリリース


そもそも64bit-floatとか32bit-floatって何?」という方も多いと思います。普通はあんまり深追いしなくて大丈夫です。これは完全に数学の世界の話であり、オーディオをミキシングしたり、エフェクトをかけたりする際の演算の仕方がより精密なり、結果として高音質になる、ということを意味してるんです。だいぶ以前、AV Watchの連載で「ハイレゾで注目の32bit-floatで、オーディオの常識が変わる?」という記事を書いているので、興味のある方はチェックしてみてくださいね。


Cubase Pro 9.5をインストールしてみた。この時点ではとくに従来と違いはなさそうだが…

ちなみにCPUやOSに関連するアプリの話として32bit版とか64bit版というのがあって、、言葉は似てます。でもこれらと32bit-float、64bit-floatとはまったく何も関係ない話ですから、混乱しないように気を付けてくださいね! ちなみにCubaseは前バージョンのCubase 9から32bit版は廃止されて64bit版になってます。

まあ、詳細な仕組みは分からなくても、やっぱり音質がいいに越したことはないですよね。Cubaseも、業界最高水準の64bit-flaotに対応したので、ほかに引けを取らない最高レベルの音質になったというわけです。


「デバイス設定」から「スタジオ設定」に名称変更になったこの画面に新項目「プロセッシング精度」が

今回事前に入手したCubase Pro 9.5を使ってみたのですが、スタジオ設定(これまではずっとデバイス設定という名称だったのが変わったようです)のVSTオーディオシステムを開くと、これまでなかった「プロセッシング精度」という項目が追加されました。デフォルトでは32bitになっているのを64bitに変更することで、Cubase全体を高音質化することが可能です。それにより若干処理が重くなる可能性はありますので、動作と音質を確認しつつ変更してみてください。


プロセッシング精度を64bitにすることで、ミックスなどの処理が高音質に

もっともエンジンだけ64bit-float対応しても、プラグインが対応していなければ、そこがボトルネックとなって音質が落ちてしまいます。最近は各社のプラグインでも64bit-float対応したものが増えてきていますが、まだまだ揃ってないのが実情。そうした中、Cubaseでは、64bit-float対応しているプラグインをチェックする機能を持っており、これを使って調べるとCubaseバンドルのSteinbergのプラグインはすべて64bit対応できてるみたいですね。これはなかなか優秀です。


プラグインマネジャーで64bit-float対応のエフェクトだけを抽出することも可能

では次にUI的部分を見てみましょう。前バージョンのCubase 9からゾーニングというものが登場し、右ゾーン、左ゾーン、下ゾーンといったものを表示可能になりましたが、今回右ゾーン部分がかなり進化してきました。


右ゾーンにマスターメーターを表示することが可能になった

まずは「メーター」というセクションのが追加され、ここでマスターメーター・ラウドネスメーターを表示可能になりました。プロジェクト画面を見ながら最終マスターのレベルをチェックできるのは意外と便利ですね。また、メディアセクションには「ファイルブラウザー」というものが追加されました。これはWindowsならエクスプローラー、MacならFinderに相当するもの。これによって、サードパーティーのループ素材などを読み込ませる際、エクスプローラーやFinderからドラッグ&ドロップしなくてはならなかったものが、これによって、CubaseからHDD/SSD内を直接覗けるようになったのは、結構便利ですね。


同じく右ゾーンにControl Roomの表示も可能に

さらにこの右ゾーンにControl Roomセクションもできました。これはCubase Pro 9.5のみですが、キューとモニターのミックスに直接アクセス可能になっていますよ。


メトロノーム設定に「クリック音」タブ「クリックパターン」タブが追加された

もう一つCubase Pro 9.5のみの対応で、画期的かもと思うのがメトロノームの進化です。これまでもメトロノームはオーディオで鳴らすかMIDIで鳴らすかといった設定は可能だったのですが、これが思い切り進化しました。メトロノームの設定画面にクリック音とクリックパターンというタブが登場し、ここで細かく設定できるようになったのです。


さまざまなメトロノームのクリックパターンを選択することが可能

従来普通にオーディオで鳴らすと「ピッポッポッポッ」となってましたが、まずこれをホントのメトロノーム風の音にしたり、カウベルで「カンカンカンカン」と鳴らしたりと、さまざまなカスタムサウンドが用意されました。


クリックパターンを自由に変更することも可能

さらに、そのパターンを自由に変更したり、パターン自体を自分で作ることも可能になりました。たとえば4/4において「キッコッコッコッ」と鳴っていたのを「キコココカコココ」のように8分刻みで鳴らすことができるわけですね。


拍子トラックを利用してメトロノームパターンを切り替えていくことも可能

またCubaseには拍子トラックというものがあり、曲の途中で拍子変更をすることが可能になっています。この拍子トラックでメトロノーム設定もできるため、たとえば同じ4/4のままでも、ある一部だけをより細かくクリックを鳴らしたいといったことも実現可能になっているのです。


重いエフェクトなどをオフラインで利用できるダイレクトオフラインプロセシング

続いて取り上げたいのがNuendoでは搭載されていたダイレクトオフラインプロセシングがCubase Pro 9.5でも対応可能になったことです。普通エフェクトはリアルタイムにかけるのにたいし、ダイレクトオフラインプロセシングでは事前に処理してしまうというものです。もちろんフリーズなどでも同様のことはできるのですが、これを使うことでほとんどリアルタイムで使うのと同様の感覚で使用でき、もちろん再生時には処理済みだから負荷がかからないんですよね。負荷の大きいエフェクトなどにはすごく大きなメリットがありますよ。ちなみに、この機能、デフォルトではF7キーに割り当てられてます。

プラグインのインサートスロットが16個となり、プリとポストの境を自由に設定できるようになった

また大きな進化点としてはインサートスロットが従来の8つから16個に増えたことです。多くの人は、8つでも使い切ってなかったとは思いますが、人によってはエフェクトにとにかく力を入れたりしますからね。ちなみに、16個のうちどこまでをプリフェーダー、どこからをポストフェーダーにするかといった設定も自由にできるようになっています。


HALion Sonic SEに新たに搭載されたシンセサイザエンジン、FLUX

プラグイン関連としては、HALion Sonic SE用のウェーブテーブルシンセサイザーライブラリにFLUXという新しいシンセが追加されています。これ、いわゆるワブルサウンドであったり、ゴージャスなパッドサウンドを作ることができる音源で、2つ並ぶオシレーターに70種類以上あるブニョブニョと動く波形を読み込んで鳴らすタイプのシンセサイザとなっています。まだ軽く触っただけなので、まだちゃんと理解できてないのですが、プリセットも100種類程度あるし、モジュレーションもソースとデスティネーションを自由に設定できるマトリックス型になっていて、アルペジエーターもなかなか強力と、かなり面白そうな音源ですよ。


オーバーホールがされたTube Compressor

またプラグインエフェクトのほうもTube Compressor、Vintage Compressor、Magnetoが刷新されているのもポイント。Steinbergによれば、Cubase標準搭載のプラグインエフェクトでもっとも人気の高いのがこの3つだそうで、これらをオーバーホール(笑)したのだとか。これによってユーザーインターフェイスも少し変わり、よりよいパフォーマンスが得られるようになっているそうです。

テープサチュレーション用としてより使いやすくなったMagneto mkIII

ほかにもオートメーションカーブをより滑らかに表現できるようにしたり、グリッドモードが小節、拍、クォンタイズ値に加えて「ズームに適応」という項目が加わったため、画面拡大していくと、それにともなってグリッドが細かく表示されるといった便利な機能も追加されています。

ズームに合わせてグリッド線が引かれるモードが追加された

さらにオートメーションスケーリングツールの改良、オートメーションレンジツールの搭載、プロダクションプリセットの搭載、サンプラートラックの強化……と強化点を数えればキリがないほど。そうした中、個人的に「ついに来た!」と思ったのが、Nuendo 8に搭載されていた新ビデオエンジンの搭載です。WindowsにおいてはAppleがQuickTimeが開発を中止してしまったため、iPhoneで録画したビデオをCubaseで扱う場合どうするかが問題になっていました。が、今回の新ビデオエンジンの搭載によりQuickTimeに依存せずにMOVファイルが扱えるようになったこと、またその他のビデオCODECや外部ビデオカードにも対応しているなど、ビデオを扱うという意味ではなかなか大きな進化といえそうですよ。


QuickTimeに依存しないオリジナルのビデオCODECが搭載されたのも歓迎!

以上、Cubase Pro 9.5を中心に新バージョンのCubase 9.5についてざっと紹介してみました。この新バージョンは本日11月15日からオンライン上でのバージョンアップが可能になっており、たとえばCubase Pro 9からCubase Pro 9.5であれば7,560円、Cubase Artist 9からCubase Artist 9.5なら6,480円などとなっています。

パッケージ版については、従来のものがそのまま販売となり、オンラインアクティベートした段階でCubase 9.5に切り替わるようです。また10月18日以降に購入した人は、いわゆるグレースピリオド期間の対象として無償バージョンアップが可能となっています。ただしCubase AIは対象外であるため、本日以降にアクティベートした人がCubase AI 9.5となるようです。

なお、11月28日放送予定の第95回DTMステーションPlus!では、アーティストのCUTTさんをお迎えして、Cubase 9.5特集をお送りする予定です。CUTTさんの実際のCubase活用法などをじっくりご紹介できるので、ぜひご覧ください。

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【DTMステーションPlus!】
第95回放送 11月28日 20:30~22:30
・ニコニコ生放送  http://live.nicovideo.jp/watch/lv308519685
・Fresh! by CyberAgent  https://freshlive.tv/dtmstationplus/168604

【関連情報】
Cubase 9.5製品情報
Steinberg Online Shop

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