Hey! Say! JUMP、乃木坂46などへ楽曲提供を行う内田智之さんがDigital Performerを愛用するワケ

Digital Performer 11の最新バージョンである、Digital Performer 11.2がリリースされました。前身となるMIDIシーケンサのPerformerが誕生した1985年から数えて、もうすぐ40年を迎えるDigital Performer。昨年Digital Performer 11が発売され、数多くの進化がありましたが、Digital Performer 11.2ではARA2をサポートしたことにより、Melodyne 5 EssentialがDigital Performerの一機能のように使えるようになりました。またオーディオをMIDIに変換する機能が強化され、モノフォニックやビートのみならず、ボーカルハーモニー、ピアノ、ギターなどのポリフォニックのソース素材をも変換も可能。

DAWの老舗であるDigital Performerは、多くの作曲家に愛用されています。そんな中、Performer時代から現在まで、Digital Performerを毎日使用しているという、コナミやソニー・ミュージックパブリッシングで作曲を行う内田智之@higeMrT)さんに、Digital Performerを使い続ける理由や出会った経緯をインタビューしてみたので、紹介していきましょう。

Digital Performer 11.2の魅力をプロ作曲家 内田智之さんに聞いてみた


--内田さんは、どういったきっかけで音楽の世界に入られたのでしょうか?
内田:僕は幼少期から、音楽に触れていました。そのころは、ヤマハ音楽教室に通っており、小学校卒業するまで、エレクトーンを演奏していました。中学に上がってからは、ドラムを叩くようになり、大学に入るまで続けていました。その後、東京音楽大学の作曲映画放送コースに進み、そこから本格的に作家として活動してきました。

--幼少期からずっと音楽に触れていたんですね。
内田:卒業後からは、Mr.T名義でコナミ beatmaniaの作曲を行ったりしています。もともとbeatmaniaのゲーム内容が好きすぎたので、ゲームそのものプログラムも請け負っています。音ゲーなので、1つ1つの音の波形編集やユーザーがいうところの譜面の作成ですね。かれこれ20年ぐらいbeatmaniaの仕事をしていて、全部Digital Performerで作っています。また、作家としてソニー・ミュージックパブリッシングのオーディションを受けて、2009年から専属作家としてお世話になっています。

--すべての作業をDigital Performerで行っているとのことでしたが、いつから使い始めたのでしょうか?
内田:Digital Performerの前身であるPerformerは、大学生のころから使い始めました。高校生のころは、ハードウェアシーケンサのヤマハQX3を使っていたのですが、大学生の授業がPerformerで行われるということだったので、一気に揃えました。1994年のころ、Performerがバージョン4.2のときですね。買ってすぐは使えなかったので、半年ぐらいはQX3と並行して使用していたのですが、どのみち移行しなくてはいけなかったので、QX3でできることを1個1個Performerで試して使い方を覚え、QX3とはお別れしました。

Hey! Say! JUMP、乃木坂46などへの楽曲提供経験のある内田智之さん

--大学生の授業でPerformerを……というのは、どんな使い方だったのですか?
内田:大学1年生の後半には、DTMで曲を週1で提出する課題があったので、かなり鍛えられましたね。堀井勝美さんの授業だったのですが、テーマのアーティストで気に入った1曲をコピーして譜面を書き、その上で自分がそのアーティストに楽曲提供するつもりで、オリジナル曲を作り、打ち込んで録音して、譜面を書くまで、1週間で終える必要があったのです。入学前から厳しいといわれていた授業でして、ついてこれない生徒も続出していましたね。僕は当時10代後半で真面目だったので、ちゃんとこなして、学年トップを取りました。ただひたすらにPerformerを使い倒していました。

内田さんは、Digital Performer/Performerを使い続けるヘビーユーザー

--今も昔もDigital Performer/Performerで作曲をされているとのことですが、これまでほかのDAWを使うことはあったのでしょうか?
内田:大学2年生のころに友達とアーティスト活動をしていたのですが、そこでお世話になった事務所にProTools 3とヤマハのO2R、Digital Performer 1.6を揃えていただいたので、そこで初めてProToolsを使いました。またその後Digital Performer 2.0が登場する少し前に、Cubase 3.5がCPUだけでオーディオが使えるようになったので、ネイティブ環境でどのように動作するのか勉強するためにCubaseは使っていました。Digital Performer 2.0になってからは、いくつもDAWを使うのはめんどくさいので、最初から最後までDigital Performerで作業するようになりました。

--当時は、それぞれのDAWに特徴があったように思いますが、今のDAWはどれもできることが同じように見えるけど、Digital Performerを使う理由はなんなのでしょうか?
内田:もちろん使い続けてきたから馴染んでいるということはありますが、Digital PerformerはMIDIの編集能力が高いという強みがあると思います。打ち込みをベースに音楽制作したい人にとっては、MIDIの土台がしっかりしていることは重要なんです。90年代のような作り込みを求めるのであれば、Digital Performer一択だと思います。

Audio To MIDI機能を使って、オーディオをMIDI化することができる

--たしかにDigital PerformerのMIDI編集は強力ですね。
内田:表現をつけるためのコントロールチェンジが適格に正確に素早くできるのはポイントです。コンティニュアスデータを生成という機能では、コントロールチェンジに限らず、ノートエクスプレッション、ピッチベンドなど、カーブや解像度を指定した範囲で、狙った通りの編集ができるので、毎日使っています。ベタ打ちに表情をつける際に使っていますね。実際に弾くという方法もありますが、より正確に希望通りの演奏にしたいときには、コンティニュアスデータを使用します。見えないところですが、自分が作っているデータも美しくありたいという気持ちがあるんです。最近は音源が付属していることも多いですが、やはり打ち込みの基本は、MIDI。その根幹がちゃんとしているのがDigital Performerですね。

コンティニュアスデータを生成が打ち込みに表情をつける秘訣

--ほかにもDigital Performerで気に入っている点はありますか?
内田:Digital Performer 10からエフェクトが充実してきていますね。僕自身Digital Performerに最初から入っているEQとコンプが好きで、なにも考えなければ、すべてのトラックにかけてしまうほど溺愛しています。その2つのプラグインを使うためだけでも、ほかのDAWに移行できないです。

付属のEQ、コンプを愛用しているとのこと

--Digital Performerがバージョン11.2になりましたが、内田さんはどう見ていますか?
内田:Digital Performer 11.2では、ARA2によってMelodyneが統合できるようになったので、凄く嬉しく思っています。Melodyneは2005年ぐらいから使い続けているので、ようやく1つのウィンドウで扱うことができて、素早くピッチ編集ができるので最高です。絶対手放せない2つのツールがようやく繋がりました。本音でいうと、Digital Performerの新機能は他社のDAWより出遅れることもあるのですが、実装時にはいつも同じかそれ以上のクオリティで機能が搭載されていくので、そこは信頼して使い続けています。また、オーディオデータをMIDIとして変換できる機能が強化されたので、和音のオーディオをMIDIに変換して、シンセを重ねるといった使い方ができるようになりました。

Digital Performer上の一機能のようにMelodyneを扱える

--ちなみに最近はDigital Performer以外にどういったプラグインを使っていますか?
内田:ここ数年でびっくりしたのは、RXですね。リズム、ベース、ボーカル、それ以外を別々に書き出せるのは、高校生のころからした夢のような機能ですよ。耳コピの仕事が来たときに、より精度を上げるために利用しています。またMOTU Mach Fiveは発売直後から使っていて、当時ソフトウェア音源に乗り換えたのをきっかけに30Uぐらいの音源ラックはすべて売りました。

--ハードウェアはどうですか?
内田:MIDI入力用にヤマハのCP4を使っています。ちなみにCP4は、USBで繋がずにUSB MIDIインターフェイスのMOTU Fastlaneを使ってPCとやり取りしています。外部のMIDI音源を簡単に繋げますし、MOTUのMIDIインターフェイスは、MIDI精度の信頼性が高いので、これを使っています。オーディオインターフェイスは、Power Macだった時代は、MOTU 2408を使っていて、その後MOTU 828を使い、流れで896mk3を使っていました。ほかにもTravelerやUltraLiteを持っていたのですが、数年前からAntelope AudioのOrionに浮気しています。2019年までTraveler mk3を使っていたのですが、壊れてしまい、AntelopeのFPGAにも興味があってOrion Studioを使っています。次壊れてしまったら、MOTU一筋できたので戻そうかなとは思っています。ちなみに出先用として、Microbook IIcを2台持っています。

--最後に内田さんの今後の展望について教えてください。
内田:ゲーム向けでも、アーティスト向けでも、自分らしさを無くさずに楽しんで、なおかつ商業的にも成功することが夢ですね。2020年からYouTubeでの動画配信をスタートして、そこには音楽ゲームが好きでDTMを始めてみたいと思っている方も多いので、自分の音楽とDTMを結びつける形で発信を続けていきたいですね。

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Digital Performer 11.2リリースノート
HIGESTUDIO /内田智之チャンネル

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