Eventideが物理モデリングでスプリングリバーブ=バネ・エコーをプラグイン化

数々の名作エフェクトを生み出してきたアメリカの老舗メーカー、Eventide(イーブンタイド)。最近はそれらの名作を自らの手で、そして完璧な形でプラグイン化を行っていますが、先日また新たなプラグインが発表されました。名前もシンプルに、Spring、というのがそれ。

Springは、昔ながらのスプリングリバーブ、いわゆる、バネ・エコーを物理モデリングで再現したもので、Eventideの名作を復元した、というわけではないのですが、オールディーズな雰囲気も出せる特殊なエフェクトです。ギターアンプ内蔵のスプリングリバーブ風なサウンドが出せるのはもちろん、物理モデリングにより、現実にはないようなスプリングリバーブサウンドまで作り出せるのが特徴となっています。そのSpringは9,800円(税抜)と低価格な設定になっています。実際どんなものなのか試してみたところ、とっても面白いエフェクトだったので、紹介してみましょう。

Eventideがリリースしたスプリングリバーブのプラグイン、Spring

みなさんはスプリングリバーブってご存知ですか?いまでこそリバーブはデジタルで簡単に作り出せる時代ですが、その昔は超ローテクでリバーブを実現していました。スタジオのユニットバスにスピーカーとマイクを設置して残響音を作り出すエコーチェンバー、大きな鉄板に音を伝えて振動させることで残響音を作り出すプレートリバーブなどがありましたが、最も手軽で広く普及していたリバーブがバネを利用するスプリングリバーブです。

スプリングリバーブの中身(EventideのYouTube解説ビデオよりキャプチャ)

仕組みを簡単に説明すると、まず音を振動に変換した上で、バネに振動を伝えます。その振動が、バネの反対側で再度音に変換するというものです。このバネの揺れはすぐに止まらないので、これが残響音として使えるという単純な原理です。

スプリングリバーブの原理。音の信号を振動に変換した上でバネで伝送すると震えた音になる

単純であるために安く作れるけれど、音を振動に変え、その振動を音に戻すろいう手法だけに音質の劣化という欠点があるほか、機材を叩くと振動ですごい音が出てしまう、なんて欠点もあったりします。そのスプリングリバーブ、いまもギターアンプなどに使われているので、必ずしもビンテージ機材ともいいきれませんが、独特な効果を出すことができるリバーブなのです。

そのスプリングリバーブを物理モデリングによってプラグイン化するとともに、自由自在にスプリングリバーブの特性をエディットできるようにしたのが、EventideのSpringなのです。実際、どんな音が出るのか、Eventideがデモビデオを作っているので、ぜひご覧になってみてください。

いかがですか?いろいろな音源に対してSpringを掛けているわけですが、一般のデジタルリバーブとは明らかに異なる独特な気持ちのいい響きになっていますよね。

 

まずは数多くのプリセットが用意されているので、これを試してみるといいと思います。リバーブというと、センド・リターンで使うのが一般的ではありますし、このSpringもそのように使うことも可能ではありますが、基本的にはインサーションエフェクトで使うことをお勧めします。

トラックにインサーションエフェクトとして挿入して使うのが基本

でも、たかだかバネを通すだけのスプリングリバーブに、なんでこんなにいっぱいのパラメータがあるのか……。これを使って、さまざまな特性のスプリングリバーブをシミュレーションできるからなのですが、それぞれのパラメータについて簡単に紹介してみましょう。

まずNUM SPRINGSというのはバネの数を調整するもの。スプリングリバーブの音を「バネくさい音」なんて表現することがありますが、1つのバネだけだとどうしても特徴のありすぎる音になってしまいます。そのため一般のスプリングリバーブでは少し質の異なるバネを2本または3本入れて構成しているのですが、その数を調整できるというわけ。しかも単純に1、2、3とするのではなく、その中間値をモーフィングできるのが、まさに物理モデリングならではのSpringなのです。

NUM SPRINGSパラメータとTANKボタン

また画面左側にあるTANKボタンでSML=Small、LRG=Largeとあるのはスプリングリバーブの箱=タンクの大きさのこと。これを切り替えることで響きに結構大きな違いがでてきます。そしてTENSIONはバネの硬さを調整するもの。硬くすると振動が直接的に伝わり、柔らかくするとより揺れが大きくなりながら伝わるので、残響音に大きな違いがでてきます。またDECAYは揺れの減衰を調整するものになっているようです。

一方、画面右にあるLOWとHIGH、そしてRESONACEは低域および広域の減衰を調整するためのもの。名前から見てもフィルターのようなものと考えていいのですが、シンセサイザにおけるローパスやハイパスでのカットオフ・レゾナンスの調整とはちょっと違う音ではありますね。

低域、広域の周波数減衰をコントロールするパラメータ

一方、画面下側にあるのがトレモロ。スプリングリバーブ効果にトレモロ効果を合わせることで、ビヨヨヨーンという感じのバネの音という感じをさらに強化することが可能になっています。そのトレモロをスプリングリバーブの前に置くか=PRE、後ろに置くか=PSTでその効果は大きく変わってきて、その際のウェット音とドライ音の調整をミキサーで調整する格好です。PREのときはVERB MIX、PSTのときはMIXとなるようになっています。

そしてそのトレモロの深さをINTENSITYで調整し、レートをSPEEDで調整できるようになっています。ちなみにそのスピードは画面右側のTEMPOのところでSYNCにするとDAWのテンポと同期させることも可能だし、TAPボタンを押すことでタップテンポにすることも可能です。

さて、ここでとっても面白いのが画面下のほうにあるリボンです。これはSpringに用意されたさまざまなパラメータをモーフィングするためのものとなっています。つまり左側での設定と右側での設定を行ったうえで、その中間値を自由に動かすことが可能になっているのです。もちろんDAWでオートメーションを掛けることも可能ではありますが、MIDIのコントロールチェンジ#CC1にアサインされているので、これを使ってペダルなどで調整するということも可能です。

リボンを用いてパラメータの値をモーフィングできる

なお、Springのエフェクト効果のオン/オフを行うACTIVEは#CC2、2つの設定値を切り替えるHOTSWITCHは#CC3、タップテンポ用のTAPは#CC4に割り振られています。

以上、Eventideの新しいプラグイン、Springについて紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?WindowsのVST2/3、AAX、MacのVST2/3、AAX、AUに対応して9,800円なのが、今なら2,800円なので、買わないほうが損という感じですよね(海外版は$29なので、日本で買ったほうが安いのもポイント)。

iPhoneやiPadで使えるSpringも存在する

なお、ほぼ同じ動きをするiOS版のSpringも同時にリリースされており、こちらもセールでApp Storeで1,840円で入手することが可能。Windows/Mac版とプリセットデータのやりとりも可能になっています。

H910などのセールが2月25日までと期間短縮されています

一方で、EventideではSpringの発売記念セールと並行してEventide Fan Favorite Saleというものが行われています。これは先日の「John Lennon、U2、Van Halen、Ozzy Osbourneなどが愛用した音作りの要、H910のプラグインが今なら61%オフの9,800円!」という記事でも紹介したとおり。ただし当初2月29日までのセール予定だったものが、SpringおよびH910以外は2月25日までと期間短縮されているので、気になる製品がある方は早めにチェックしておくとよさそうです。

【関連情報】
Eventide Spring製品情報

【購入】
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