コード進行やフレーズを生成するAIプラグインが発売開始。Orb Producer Suiteは、超優秀なDTMアシスタントだった

「DTMを始めてみたけど、全然曲が作れない」「コード進行ってどうしていけばいいんだろう」「なかなかカッコいいフレーズが思いつかない」……など、オリジナル曲を作ろうと思ったときには、うまくいかないことがいっぱい。DTMの世界には、そんな悩みに答えてくれる強力なツールが存在します。Hexachords社のOrb Producer Suiteは人工知能を用いて作曲を手助けしてくれる、DTM初心者にもお勧めな便利なプラグインで、9月11日から国内でもbeatcloud.jpを通じて12,500円(税込)発売が開始されました(※発売記念として9月いっぱい8,600円のセール価格となっています)。

このOrb Producer Suiteには、Orb ChordsOrb MelodyOrb BassOrb Arpeggiosという4つのプラグインが含まれており、コード進行、メロディーライン、ベースライン、アルペジオフレーズを自動で生成してくれます。完全な自動作曲ツールではなく、あくまでもAIアシスタントという立場のプラグイン。そのため生成したフレーズをDAWにMIDIデータとして読み込み、編集していくことも可能です。楽曲のジャンルごとにコード進行が用意されていたり、強力なウェーブテーブルシンセが搭載されているOrb Producer Suiteを実際に試してみたので、紹介してみましょう。

AIアシスタントが、コード進行やフレーズを自動生成してくれるプラグインOrb Producer Suite


Orb Producer Suiteは、4つのプラグインがセットになった製品であり、それぞれ
Orb Chords-コードバッキング
Orb Melody-メロディーライン
Orb Bass-ベースライン
Orb Arpeggios-アルペジオフレーズ

を担当しています。これらを使って、フレーズを生成し楽曲を作っていくというもので、必要に応じてコード進行からフレーズの生成、リズムパターン作成まで任せることもできる一方、コードは自分で指定して、フレーズだけ自動で作ってもらう、ということも可能になっています。

Orb Producer Suiteは4つのプラグインがセットになった製品となっている

実際にこのOrb Producer Suiteではこのティーザーのビデオにあるような雰囲気の楽曲を自動生成することが可能です(ドラム機能はないので、ループ素材などを利用する)。

ご存知の方もいるかもしれませんが、Hexachords社から以前よりOrb Composerというスタンドアローンの自動作曲ソフトがリリースされていました。それに対し、このOrb Producer Suiteは、DAW上に立ち上げて使うプラグインとなっています。WindowsでもMacでも使うことができて、VST3またはAUプラグインに対応しているので、ほぼすべてのDAWで利用することが可能。DAWで立ち上げて使えるので、簡単に自分の楽曲に活かすことができるのが特徴。初心者でも使えるし、長年作曲をしてきている人にとっても新しいアイデアを思い付くきっかけを作ることができそうです。

DAW上にVST3またはAUプラグインとして使えるので、簡単に楽曲制作に活かせる

では、ここからは実際にStudio Oneを立ち上げて使ってみます。まずは、コードバッキングを担当しているOrb Chordsが、ほかのプラグインたちのマスターになるので、Orb Chordsを立ち上げます。Orb Chordsを立ち上げていないと、ほかのOrb Melody、Orb Bass、Orb Arpeggiosが無効の状態になってしまうので、まずはOrb Chordsを立ち上げましょう。
まずはマスターとなるOrb Chordsを立ち上げる

Orb Chordsを立ち上げたら、ほかのOrb Melody、Orb Bass、Orb Arpeggiosもそれぞれ立ち上げていきます。そうすると、とくに設定することなく、それぞれのプラグインがリンクして、全体的な機能を使う準備が整います。

その後Orb Melody、Orb Bass、Orb Arpeggiosを立ち上げると、特に設定することなく自動でリンクする

Orb Producer Suiteでは、トランスポーズ機能やコード進行など、4つのプラグインが共通で同期する機能と、単体でフレーズの自動生成パラメータを変更するなどの個別で動作する機能があります。

まず、共通で同期する機能について。これはトランスポーズ機能の再生や停止ボタンを押すと、同時にすべてのプラグインが再生・停止するというもの。この際DAW シンクというボタンをオンにしておくと、DAWとも同期し、DAWで操作した再生・停止もOrb Producer Suiteに反映されるようになります。


共通で同期する機能と個別で動作する機能がある

「テーマ1」と書かれている部分は、イントロ・Aメロ・Bメロ・サビ……、といったセクションごとにフレーズを変えるときに使い、「+」ボタンを押すと、テーマを増やしていくことができます。それぞれ、コード進行やフレーズを保持させておくことができるので、よさそうなフレーズが生成されたからキープしておく、といった使い方もできます。

テーマを使えば、各セクションごとに違うコード進行やフレーズを作成可能

キー、スケール、拍子、小節では、それぞれの設定を手動で行うことがきます。これらも、4つのプラグインが共通設定になっているので、作りたい楽曲のキーや拍子に合わせて設定していきます。


作りたい楽曲のキー、スケール、拍子などをまずは設定する

コード進行と表示されている部分では、もともと用意されているコード進行のプリセットを選択して、呼び出すことが可能です。マイナー、メジャー、メランコリック、エキサイティング、エレクトロ、クラシカル……といった、曲の雰囲気やジャンルごとに分けられたコード進行から選択できるようになっているので、コード進行の知識がなくても、カッコいいコード進行を楽曲制作に活かせます。また「I-III-VII-I」のようなローマ数字でコード進行が表示されているので、使っているうちに定番のコード進行を覚えるのにも役立ちそうです。

コード進行のプリセットが用意されているので、初心者でも使いやすい

またコード進行を任意のものに変更することも可能で、目的のコードをクリックして、上部にあるコードを選択し、タイプからメジャーかマイナーなどコードタイプを選び、セブンスコードやテンションも色から選べるようになってます。さらにコードを追加したり、コードの開始位置の変更など、自由にカスタマイズしていくこともできます。

コード進行をカスタマイズしていくことができる

そして、ランダマイズボタンを押すことにより、Orb Producer Suiteの4つのプラグインのすべてのパラメータを自動的にいい感じに設定していくことができ、コード進行からフレーズまで、一気に生成してくれます。

ランダマイズボタンを使うと、いい感じにコード進行やフレーズを自動生成してくれる。

たとえば、アルペジオパターンとか演奏フレーズが気に入ったものが出てきたら、コード進行だけをランダムに変更することも可能。その際は、ランダマイズボタンの右隣りあるコードのみをランダマイズするボタンをクリックします。押すごとにいろいろなコード進行が生成されるので、試聴しながらいいコード進行を探せます。

コード進行だけをランダマイズで変えていくことができる

またさらにその右隣りのボタンでは、コード進行をランダマイズするという部分は同じなのですが、コードが切り替わるタイミングが変わります。ノーマルのコードランダマイズでは、小節あたまでコードが切り替わったのに対し、ここでは1小節内で複数のコードが切り替わるようになります。

1小節内で複数のコードが切り替わるように設定することも可能

ここまでで操作した機能は、すべてのプラグイン共通で動作するものでした。ここからは、個別で動作するパラメータを見ていきます。左下に配置してあるセクションでは、設定すると以下の通りにパターンが生成されていきます。

ここでの操作は個別に動作するので、コード・ベース・アルペジオ・メロディそれぞれで最適なフレーズ生成していける

・デンシティー ノートの細かさを設定するパラメータ。値を上げると細かいフレーズが生成されます。
・リズム フレーズの複雑さを設定できます。値を上げると簡単なリズムからより難しいリズムが生成されます。
・フレーズレングス フレーズパターンの周期が変更できます。数値が1の場合、1小節で1パターンのフレーズが生成されますが、2、3、4、と値を変更すると、それぞれの小節で1パターンのフレーズが生成されます。
・オクターブ オクターブを上下することが可能です。
・シンコペーション 値を大きくすると、2つ目以降のコートがうしろにずれ、小さくすると前にずれます。
・ポリフォニー 和音数を変更できます。たとえば、4の場合は4和音のコードが生成されます。
・サイレンス ノートの各長さを設定するパラメータ。プラス方向に変更すると各ノートが短くなり、マイナス方向ではノートのスタート位置がうしろにずれ、結果ノートの長さが短くなります。

最後、Orb Chordsではスプレッド、それ以外のプラグインではヒューマンタッチとなっているパラメータは、以下の通りです。

・スプレッド コードの間隔を調整できます。
・ヒューマンタッチ ノートのタイミングや長さに変化をつけ、人間らしいフレーズを生成できます。DAWにも搭載されているヒューマナイズ機能と同様の機能です。

そして、中央にあるORBボタンでは、ここのパラメータを自動的に変化していき、上下のオンオフボタンを押すと、そこに対応しているパラメータを固定しながら、ランダムにフレーズを生成してくことが可能です。


固定しておきたいパラメータはそのままにして、ランダマイズを行っていける

ここで作っていったフレーズは、右下にある「DAWにドラック&ドロップ」からドラック&ドロップで、DAWにMIDIデータとして読み込むことが可能です。もちろん読み込んだあとに、自分で好きなように音符を足したり引いたりしていけます。自由にMIDIデータを引っ張ってこれるので、お気に入りのシンセを使って、自動生成されたフレーズを鳴らすことも可能ですよ。


生成したフレーズをドラック&ドロップでDAWに読み込めるので、その後自由にMIDIデータを扱うことが可能

またOrb Producer Suiteには、本格的なウェーブテーブルシンセが装備されており、それぞれ2つのオシレーター、フィルター、エンベロープ、LFOにモジュレーション、エフェクトが搭載されたものとなっています。

本格的なウェーブテーブルシンセが装備されている

プリセットは各音色ごとに分かりやすく、分類されており、生成したフレーズをこれを使って鳴らすことが可能です。

プリセットも豊富に用意されているので、これを使って楽曲を完成の形まで持っていくことができる

実際に自分の楽曲にこのシンセサウンドを取り入れたいのであれば、別売りで「Orb Synth」という独立したインストゥルメントが8,800円で販売されているので、ぜひチェックしてみてください。

本格的なウェーブテーブルシンセOrb Synthも単体で販売されている

以上、Orb Producer Suiteでしたが、AIプラグインとなっているので、同じパラメータに設定しても同じフレーズが出てこないです。本当に生成されるフレーズは無限大。といっても、使えないフレーズが生成されるのではなく、使えるレベルのフレーズが生成されるのがすごいところだと思います。このOrb Producer Suiteはbeatcloud.jpで12,500円(税込)で販売されています(9月いっぱいは発売記念価格で8,600円、Orb Synthは4,900円)。デモ版も用意されているので、ぜひAIによる自動作曲を試してみてはいかがでしょうか?

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Orb Producer Suite製品情報

【価格チェック&購入】
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