Pro Tools 11とFast TrackってDTMユーザーにとってどうなの?

実はいま、ドイツのフランクフルトに来ています。というのも、4月10から始まるmusikmesseを初めて取材しようとやってきたのですが、成田からフランクフルトに向かっている最中に、アメリカで開催されている放送機器展NAB2013で、AvidPro Toolsの新バージョン、Pro Tools 11およびオーディオインターフェイスのFast Track SoloおよびFast Track Duoを発表しました。

Avidはmusikmesseでもブースを出すようなので、きっとメインとして展示されると思うのですが、これがどんなものなのか、DTMユーザーにとって魅力的なものなのか、発表資料などを元にちょっと考えてみたいと思います。

Pro Tools 11およびFast Trackシリーズが発表になった



今回Avidが発表したのはDAWである
Pro Tools 11(72,660円)
Pro Tools HD 11(新規導入価格は不明)
の2種類とオーディオインターフェイスである
Fast Track Solo(18,585円)
Fast Track Duo(32,080円)

のそれぞれ。このうちPro Tools HD 11は基本的に個人のDTMユーザーが使うものではなく、レコーディングスタジオなどで導入する業務用だと思うので、除外するとDTMの範疇に入るのは3製品ということになります。

メジャーバージョンアップとなったPro Tools 11

一番注目すべきはPro Tools 11でしょう。ご存知のとおり、昔Pro Tools LEという名称でMboxにバンドルされていたものがPro Tools 9から単独発売されるようになり、ASIOCoreAudioに対応した他社のオーディオインターフェイスでも動作するようになりました。これによりCubaseやSONAR、StudioOneなどと横並びに比較できるDAWとなったわけですが、このたび、Pro Tools 10からメジャーバージョンアップということで、Pro Tools 11になったわけです。

AAE=Avid Audio Engineという64bitエンジンにより高速化を実現 

Avidの説明によると、今回バージョンアップのポイントは以下のとおり。

●完全に一新されたオーディオエンジンのデザインと64ビット・アーキテクチャ
・新たなAvid Audio Engine:ハードウェアの構成が同じ状態でPro Tools 10と比較すると数倍の処理能力を提供。
・64ビット・アーキテクチャ:バーチャル・インストゥルメントの同時使用可能数を指数関数的に増加させると共に、複雑なセッションの使用も可能。
・オフラインのバウンス作業:ミックス時間が最大でリアルタイムの150倍にスピードアップ。
・低レーテンシー入力バッファ:プラグインのパフォーマンスを阻害することなく、録音時のモニタリングにて超低レーテンシーを保証。
・ダイナミックなホスト処理:必要に応じて処理リソースを継続的に再割当てするため、使用可能なプラグイン数を最大限まで拡大。
●拡張されたメーター機能
・規格対応:ビルトイン・メーターの基準値の種類が増え、ピークおよび平均値からVU及びPPMまで、世界各地の放送規格に対応。

・ゲイン・リダクション:各チャンネルのダイナミックス・プラグインのゲイン・リダクションを表示。

ユーザーインターフェイスはPro Tools 8以降のものを踏襲している

いまひとつピンと来ないのですが、要するに従来32bitアプリケーションだったものが、今回ついに64bitになるとともに、高速化したというのが最大の売りのようです。ハッキリ見ているのではないので、よく分かりませんが、画面のデザインなどはPro Tools 8で一新されたものを、そのまま継承しているようですね。

バウンスのマルチアウト対応など機能向上もしている 

またバウンスにおいてマルチアウト対応するなど、細かな機能もいろいろ強化されているようですが、気になるのがプラグイン。そう、これまでPro ToolsといえばRTAS(CPUパワー=Nativeで動作するもの)、TDM(DSPを使って動作するもの)の2種類が採用されており、DTMユーザーは通常RTASを使っていました。しかし、前バージョンであるPro Tools 10で、RTAS、TDMととともにAAXというまったく新しいアーキテクチャのプラグインが採用されました。そしてAAXはNativeでもDSPでも動作するというのが大きな特徴となっていました。

そして今回のPro Tools 11では古いアーキテクチャであるRTAS、TDMを捨て、完全にAAXのプラグイン環境に移行したようなのです。Avidのページを見ても、その辺のことがまったく触れられていませんでしたが、Pro Tools 10が出たときに、Avidではそのようにアナウンスしていたので、そうなのでしょう。だからこそ、これまでできていなかった64bit化が実現でき、高速化が実現できたのだと思います。

【追記】
先ほど、musikmesseの会場で確認をしたところ、やはりPro Tools 11はRTAS、TDMのサポートはなく、ラッパーなども存在しないとのことでした。ただし、Pro Tools 11を買うとPro Tools 10のライセンスもセットでついてきて、1台のマシンにPro Tools 11およびPro Tools 10と同居が可能とのこと。こうすることで、RTASなどのプラグインが使えるということでした。

パフォーマンスは大幅に向上する一方で、RTASなどが切り捨てられている

ただ、サードパーティーのプラグインを見ると、AAX対応できているのは僅かなのが実情。またこれまでエフェクトにせよソフトシンセにせよ、RTASの資産は使えないようなので、これらがプラグインを重要視している人は、現時点での乗り換えは禁物かもしれません。

まあ、そのうち、どこかがRTAS-AAXラッパーなどというものを出してきそうな気もするのですが、この辺は様子見ではないでしょうか?とはいえ、Pro Tools 10からのバージョンアップ価格は\31,080と、それほど高くはないし、ものすごく高速化するようなので、Pro Tools 9や10のスピードに不満があった人は乗り換えてみる価値はありそうですね。

マイクプリを2つ、ライン入出力を2つずつ搭載しているFast Track Duo

一方、Fast Trackは、M-Audio(以前、M-AudioはAvidのブランドでしたが、現在はAvidからinMusic=Alesis、AKAI、Numarkの親会社に売却された)ブランドのオーディオインターフェイスでしたが、AvidブランドとなってFast Track SoloおよびDuoの2種類が発表されました。

入力はマイクイン、インストゥルメントインの1つずつと、ライン出力というシンプルな構成のFast Track Solo

いずれも24bit/48kHzで、Soloにはマイクプリアンプ1つとインストゥルメント入力1つを装備、Duoにはマイクプリアンプ/インストゥルメント入力を2つ、ライン入力2つを装備とのこと。Duoのほうが同時4ch入力できるのかはハッキリしませんが、マイク2つを接続するならDuoということのようですね。ただ、世の中24bit/96kHz、24bit/192kHz対応が当たり前となる中、スペック的に見劣りする点が気になるところではありますね。

一方で面白いのはこれがiPadと接続可能ということ。CCKやLightning-30ピンアダプタなどは不要とのことだから、そのことだけでiPadユーザーには嬉しい存在です。この仕様を見る限り、これらはUSB クラス・コンプライアントなデバイスで、CoreAudio対応デバイス、ということですね。ただし、Pro ToolsのiPad版ああるわけではないので、GarageBandやCubasisなどで使うということになるのでしょうか……。
Fast TrackシリーズにバンドルされるPro Tools 10ベースの簡易版、Pro Tools Express
また、Windows、Mac用のPro Tools Expressソフトウェアがバンドルされます。これは従来からあったPro Tools SEの後継のようですが、オーディオインターフェイス+Pro Tools機能限定版という組み合わせであることを考えると、Mboxという名前がなくなり、Fast Trackとなったと考えるのがいいのでしょうか……。

DAWとしてみると16トラック限定なので、あまり本格的な使い方は難しいと思われますが、エフェクトやソフトシンセも使えるようなので、ぜひ近々試してみようと思います。これがPro Tools 11と同様の64bitアプリになっているのか、AAX対応のプラグインなのかについても確認したいと思いますが、それほどの機能や拡張性を期待すべきものではないと思います。
なお、発売は、Pro Tools 11は2013年の第2四半期後半とのことなので6月ごろでしょうか?Fast Track Solo/Duoは4月12日発売とのことです。

モバイルバージョンを終了