仙台の5人のベンチャーが開発した小型デジタルDJ機が秀逸!より高機能・低価格化してクラウドファンディング実施中

某元楽器店・店長からの連絡で「すごいDJ機材があるから、ぜひ見てみて!」と言われて知ったのが仙台にある小さな会社、JD Soundが開発したA4サイズのデジタルDJマシン、GO-DJ Plusというもの。5人の社員全員が開発エンジニアで、社長自らDJ機器内部のプログラムを書いているというバリバリのテクノロジー会社が作り出した機材です。

 

試作品を持ってみたところ、820gと非常に軽量ながら、驚くべく高機能・高性能システムだったんです。SDカードに入れた楽曲を利用して左右のDECKでDJプレイができるのはもちろんのこと、フィルター含め数多くのエフェクトが搭載されていたり、サンプラーとしての機能があったり、シーケンサ機能があったり、ドラムマシンとして叩けたり、さらにはPCで動くCGのダンサー同期させて躍らせることができるなど……これでもか、というほどの機能が詰まっています。そのGO-DJ Plusが現在37,800円という価格でクラウドファンディングの形で販売がスタートされたとのこと。実際、どんな機材なのか見てみました。


A4サイズの軽量なデジタルDJマシン、GO-DJ Plusの試作機


何はともあれ、まずはこのGO-DJ Plusの紹介ビデオがあるので、これを見て見るとその概要が分かると思いますよ。

だいたいの雰囲気はお分かりいただけたでしょうか? DJというと、やはりターンテーブルが2つある高価なDJ機材を用意して……というイメージを持つ方も多いと思いますが、このGO-DJ Plusはこれ一つに全部入りという機材。とっても軽く、DJプレイなんてしたことない…という人でも気軽に使えてしまうのが楽しいところです。


試作品で820gととっても軽量なGO-DJ Plus

 

音源にはMP3、WAV、AIFFが使えるのでUSB経由で16GBの内蔵メモリー(音楽データ領域は14GBで、そのほかに録音領域1GB、システム領域1GBがあります)にコピーするか、SDカードを利用することで、自由に使うことができます。また左右に表示されるターンテーブル風な画面はタッチスクリーンとなっているので、スクラッチ操作なども思い通りに行えますよ。


LCDに映し出されるターンテーブルをタッチして操作する 

 

またビデオにもあったとおり、スクラッチするだけでなく、テンポ・拍に合わせた形でループしたりリピートさせたり、ビートジャンプしたり……、ともう思いつくプレイはなんでもできてしまいますね。


MP3やWAV、AIFFのファイルを読み込むと、自動的にBPMも識別される

もちろん曲のBPM(曲のテンポ情報)はファイルを読み込み時に自動で判定されるので、テンポ合わせなどもスマートに行えます。自動で同期させるだけでなく、自分でタップしたテンポでプレイするなど再生速度やピッチも自由に動かしながら、フェーダーを使って左右のプレイヤーのバランスを調整し、ミックスしていくことができるんですね。


ノブやスライダーを動かして操作していく 

 

そのサウンドはヘッドホンで聴いたり、RCAのメイン出力から出していくだけでなく、本体にはパワフルなステレオアンプ内蔵スピーカーが用意されているので、これだけで楽しめてしまうのも嬉しいところ。そのほかにもステレオミニジャックでの外部ライン入力およびマイク入力も用意されており、マイク入力のほうは、モード設定によりコンデンサマイク、ダイナミックマイクが選択できるなど、結構作りこんでありますよ。


メイン出力はRCAでのLINE OUT 

 

また面白いのがエフェクト。左右のプレイヤーに対してGO-DJ Plus内蔵のエフェクトを掛けていくことができるんです。まずは左右のディスプレイの上にはLO、MID、HIの3chのEQがあるので、そのつまみで調整していくことで、それぞれ別にEQを変えられ、かなりドラスティックに音色をいじっていくことができます。


EQのほかに6種類のエフェクトも搭載

さらに、それとは別にFX Selectというツマミを動かしていくことで、フェイザー、フランジャー、ディレイ、VCF、ロール、ビットクラッシャーと独立した6つのエフェクトが搭載されており、それぞれ掛かり具合を調整しながら使っていくことができます。しかも、どれか1つを選択するのではなく、全部を同時に使えてしまうのもGO-DJ Plusのすごいところ。エフェクトをいっぱい使ったら、ほかの機能に制限がかかるという心配もないんです。これの処理能力のパワフルさは凄いですよ!


ドラムマシン機能を搭載しており、液晶を叩くかパッドを叩くことで演奏できる

このようにDJマシンとして充実した機能を持っているだけでなく、楽器としての機能を持っているというのも、DTM的観点から見て嬉しいところです。ディスプレイの下にパッドが8つ並んでいることからも想像できる通り、ここを叩くとドラムが鳴り、曲のプレイと合わせて演奏することが可能です。


16ステップのサンプラー機能も搭載

さらに、16ステップのシーケンサも用意されているんで、これでパターンを組んでいくことも可能で、それを曲のテンポ同期させて鳴らすこともできれば、このドラムに対して、先ほどのエフェクトを掛けていくこともできるなど、かなりマニアックなプレイまで実現してくれます。


実はドラムマシン=サンプラーであり、好きな音をサンプリングしてパッドに割り振ることができる 

 

またユニークなのは、このドラムマシン、サンプラーとしても使える機能を装備しているんです。そのサンプリングは曲から取り込むこともできれば、外部入力からのサンプリングも可能であり、取り込んだ後は、再生開始位置を調整することができるなど、そのきめ細かなUI、機能には感心してしまうばかり。ホントによくできていますね。


楽器として演奏することも可能

一方で、鍵盤の画面やギターの画面まで用意されているのは、驚きです。楽器として、さまざまな音色が用意されていて、キーボードプレイできるばかりか、ギター画面においては左のディスプレイ上でコードを抑え、右の画面で弦を弾けるという、トンでもないところまで作りこまれているんですよ。


ギタープレイもできるなど、これでもかというほどの機能が搭載されている 

 

こうした各プレイについてもビデオがあるので、これを見てみると、より実感が沸くと思いますよ。

ところで、最初のビデオを見て「MONSTERってどういうこと!?」と疑問に思われた方もいらっしゃると思います。そう、これ、あのMONSTER CABLEのMONSETERのロゴですよね!?


なんでGO-DJ PlusにMONSTERのロゴが…!?

実はこのGO-DJ Plusは仙台の小さな会社が突然生み出したもの、というわけではなく前身となる同社のDJマシンがあるんです。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、2012年に発売されたGO-DJという、もっと小さな機材で、MONSTERブランド製品として世界的に流通しているもの。国内では59,800円(税別)で販売されています。


先日、お話しをうかがったJD Sound社長の宮崎晃一郎さん

JD Soundの社長、宮崎晃一郎さんによると「全員エンジニアの会社で、営業といったって私が兼務でするくらいだったこともあり、製品を出してもほとんど誰にも知られることもなく、反響もなかったんです。ところが2013年のSXSWに出店してみたところ、斜め向かいのブースにMONSTERがいたので製品を見てもらいました。その結果、意気投合してライセンス契約となったんですよ。もっとも製造・販売はあくまでも我々が行い、MONSTERのブランドを使わせてもらい、MONSTERの流通にも乗せてもらうという契約ですね」とのこと。


上がクラウドファンディング中のGO-DJ Plusの試作機、下が現在発売中のGO-DJ 

 

その契約が新機種、GO-DJ Plusにも有効であるため、MONSTERブランドが付いている、ということなんですね。そうなると気になってくるのは、GO-DJとGO-DJ Plusがどう違うのか、という点です。この点についても宮崎さんに聞いてみました。

 

システムソフトウェアという面ではまったく同じです。だからこそ、今回スピーディーに開発することができましたわけで、できることも基本的に同様です。ただ、機能的にいえば、GO-DJ Plusが格段に上ですね。アンプ内蔵スピーカーがあるので、これだけで音を出して試すことができるし、サイズ的に大きいだけにより多くのノブを搭載することができたので、より直感的にEQ操作などもできるようになっています。さらに、パッドも別途搭載したので、思い切り叩いてリズムを鳴らすことができるなど、断然使いやすくなっているんですよ

 

と宮崎さん。とはいえ、価格的に見てGO-DJが59,800円(税別)で、GO-DJ Plusが37,800円(こちらは税込み!)というのは何か裏があるのでは……と気になってしまいます。


GO-DJ Plusの生産はかつでウォークマンなどが作られた宮城県石巻市の工場で行われる 

 

GO-DJのほうは、とにかく小さくしたので、製造コストがかかってしまったのに対し、GO-DJ Plusはサイズを大きくした分、作るのが楽になり、コストも下げられています。またプロモーション、マーケティング調査という意味もあって、クラウドファンディングを使っているため、本来は53,784円(税込)のところ、この価格に設定しているんです」とのことです。また今回の生産は宮城県石巻市にあるかつてソニーのウォークマンなどを作っていた工場だそうで、純粋なMade in Japanの製品。しかも被災地から純国産・純日本開発の製品が出ていくというのはちょっと嬉しいところですよね。

 

ところでクラウドファンディングって、まだ使ったことがない方、よくわからない、という方も多いと思います。一言でいえば「ネットを使って資金を集める仕組み」なんですが、目標額が集まれば企画としてGOサインがでる、というちょっと変わった通販である、と考えればいいと思います。GO-DJ Plusの場合、Makuakeというサイトでのクラウドファンディングで2000万円が目標額。3月28日現在、16,599,000円が集まっているので、目標達成はほぼ確実であり、企画自体が無効になることはなさそうです(仮にそうなった場合は返金されますよ)。また期間としては5月31日までの募集となっています。もっともクラウドファンディング終了後の生産となるため、製品が届くのは10月中旬の予定とのことです。このタイムラグが一般の通販との大きな違いといえるかもしれませんね。

 

ただ正直なところ2000万円では、赤字かトントンというところで、もう少し売れてくれないことにはビジネスとしては厳しいところです。ただ、こうした企画を通して、多くの人にGO-DJ Plusの面白さが伝わってくれると嬉しいですね」と宮崎さんは話します。


GO-DJ、GO-DJ Plusの心臓部には、かつての宮崎さん達が所属していたファインアーク開発のプロセッサ、FS-503が搭載されている 

 

もう一つ宮崎さんと話をしていて、驚いたのは、その中身がすべてJD Soundのメンバーによって作られたシステムであるという点です。そう、ここにはCPU/DSPであるプロセッサ、FS-503というものが入っているんですが、これ自体も彼らによる開発なんです。正確にいうと、5人中4人は、仙台にあったファインアークというLSI開発メーカーの出身であり、宮崎さんを含め、その多くはモトローラでプロセッサ開発をしていた人達。その辺の詳細を書くと長くなってしまうので割愛しますが、ファインアーク時代に作り出した6コアのプロセッサ、FS-503を内部に採用しているんですね。


ファインアーク社は解散してしまったが、ここで開発されたチップは今も生産されている 

 

58MHzで動作するプロセッサなので、今の時代で見て決して高速なチップではありませんが、LinuxやAndroidなどのOSは使わず、すべて直接アセンブラで書いているために、十分な処理速度が得られています。また非常に消費電力が小さいため、LCD点灯時で12時間、消灯時なら24時間のバッテリー駆動ができるんですよ」と驚きの長時間プレイが実現できるようです。

 

ネットで検索してみたところ、この辺のテクノロジー話は以前、週刊アスキーでのインタビュー記事もあったので、そちらも参考にしてみると面白いと思います。


MotionScoreに対応したことで、CGのダンスと同期させることが可能 

 

なお、GO-DJ Plusは「MotionScore」という新技術に対応させたことで、PCと同期させてCGを動かすことも可能にしていたり、SDカードスロットにWi-Fiカードを刺すことで、楽曲を直接ダウンロード購入するための機能も装備する予定なんだとか。さらにここに搭載されたノブなどをPC上のDJソフトやDAWなどのコントローラとして使うための機能を搭載することも検討しているとのことなので、まだまだ発展していきそうです。

 

この辺についても、またいずれ実現してきたところで記事にしてみたいと思っていますが、まずは早めにGO-DJ Plusを1台GETしておくといいのではないでしょうか!

【クラウドファンディング】
◎Makuake ⇒ GO-DJ Plus

【関連情報】

JD Sound会社情報
MONSTER GO-DJ製品情報

世界のMonster社が惚れた 地方ベンチャーがつくった小型DJ機器GO-DJ(週刊アスキー)

 

モバイルバージョンを終了