MatrixBrute、DrumBruteの投入でアナログシンセ、アナログドラムマシンに攻勢をかけるArturiaの狙い

フランスのシンセサイザメーカーのArturia(アートリア)。ソフトウェア音源であるV Collectionのほか、MiniBruteMicroBrute、またSPARKBeatStep……と、さまざまな製品展開をしていますが、新たに非常にパワフルなモノフォニックシンセ、MatrixBrute(マトリクス・ブルート、定価:298,000円 ※2月発売予定)および、強力なアナログドラムマシンDrumBrute(ドラム・ブルート、定価:70,000円)が登場しました。

実は、国内におけるArturiaの発売元は、これまで何社かを変遷してきましたが、現在はKORG Import Division(KID)に落ち着いています。ある意味、KORG製品と真っ向対決する製品群を持つArturia製品を手掛けるという、ちょっと面白い関係になっていますが、競合するよりも、協調するところのほうが多いという考え方なんでしょうね。そのMatrixBruteおよびDrumBruteの発売にあたり、Arturiaの社長、Frederic Brun(フレデリック・ブルン)さんにインタビューをしたので、その内容を紹介しましょう。

MatrixBruteやDrumBruteを新たに発売したフランスArturiaの社長、Frederic Brunさんに話を伺った



--MiniBrute、MicroBruteは大ヒットしました。私自身もMicroBruteを購入して使っていますが、今回はまた凄いものを出してきたんですね。まずはMiniBruteやMicroBruteから見ると巨大なシンセサイザである、MatrixBruteの製品概要について教えてください。

Frederic:ArturiaではMiniBrute、MicroBruiteというアナログシンセを開発し、世界中のユーザーに受け入れられてきました。アナログシンセが世界的にも注目される中、手ごろな価格でコンパクトなものが作れたのがよかったのですが、一方でこれらをもっと推し進めたものを作りたいとも思っていました。より多くのプリセットも使えるようにしたかったし、モジュラー・シンセサイザーのような機能を持たせたい、プログラマブルであることも目指したい……と構想を固めていったのです。


モノフォニックのシンセサイザでありながら、かなり大きなボディーとなっているMatrixBrute 

--実際、MatrixBruteの製品開発プロジェクトとしては、いつごろからスタートしていたのですか?

Frederic:ちょうど3年前から開発・設計を始めています。アナログ・シグナル・パス、いろいろなオシレータなどの開発を進めるとともに、シンセ用のフィルターのレジェンドともいえる回路を2つ搭載しています。具体的にはMoogのladderフィルター、Steiner-Parkerの2つです。やはりこの回路は、今でもシンセサイザーの音作りにおいて、大きな威力を発揮してくれるので、これを再現させたいという思いがあったのです。またBruteオシレーターと名づけた3系統のアナログオシレーターを搭載したり、複雑なモジュレーションに対応可能なLFOを2基、さらにVCO/LFO兼用タイプも合わせると、合計3系統のLFOを搭載しました。そして5つのアナログ・エフェクトを搭載するなど、MatrixBruteにはたくさんのイノベーションが詰まっているのです。


インタビューに答えてくれた社長、Frederic Brunさん

--MicroBruteなどでは、音色はアナログのツマミで調整するだけだったので、音色の保存もツマミの位置をペンで記録するなど、原始的なことしかできませんでしたが、今回はプリセットもあるんですよね。

Frederic:はい、MatrixBruteでは256種類のメモリを用意するとともに7人の著名なサウンド・デザイナーによるプリセットを作ってもらい、ここに搭載しています。今までに誰も聴いたことのないような新世代サウンドを作ったので、新しい音の可能性を感じていただけると思いますし、エキサイティングなサウンドを実感していただけると思います。また新開発のシーケンサー・セクション、新しいタイプのバス機能、こういったもので強力なサウンド・セットとなるはずです。


e-inkのデバイスを用いた16×16のマトリクスを用いてパッチングやシーケンス作成、プリセットの読み込みを行う 

--そしてMatrixBruteの名前からしても、最大の特徴となるのが、このマトリクス部分ですよね。

Frederic:はいMatrixBruteの心臓部となるのが、このマトリクスです。MicroBruteなどでも簡単なパッチは可能となっていましたが、MatrixBruteのマトリクスを使うことで、各モジュール同士をケーブル不要で自由自在につなぐことが可能になっています。これにより複雑なモジュレーション設定やステップシーケンスの作成、プリセットの呼び出しなどが行えます。モジュレーション設定においては、モジュレーション・ソースとデスティネーションをそれぞれ16種類アサイン可能となっています。またステップ・シーケンサーのほうは、ステップ、アクセント、スライド、モジュレーションの各データを入力可能な64ステップのシーケンサーとなっており、その操作もすべてこのマトリクスで行っていきます。


MatrixBruteのリアパネル 

--リア・パネルにもたくさんの端子がありますよね。
Frederic:はい、12IN/12OUTのCV端子を装備するとともにゲートI/O、シンクI/Oなどを装備して外部とのやりとりも自在になっています。またファームウェアやプリセットを変更することをマネージメントする革新的なソフトウェアを搭載しているので、MatrixBruteはあらゆるシステムのコントロール・センターとなることができます。ここでポイントとなるのはコントロールするのはデジタルだけど、それ以外はすべてアナログであるという点です。もちろん、音、オーディオに関する部分は完全なアナログとなっているのです。一方でMatrix部分はプリセットを ロードし、リレーションをクリエイトするだけで、外部のコンピュータとの動作には関係しないようになっているのです。

MiniBruteやMicroBruteの資産も継承しつつ、新開発の回路、機能も数多く取り入れたMatrixBrute

--MatrixBruteのシンセサイザー部分は今までのBruteシリーズとは異なるのかそれとも同じものなのか?
Frederic:いくつかは過去のArturia製品から持ってきていますが、もちろん新開発の部分もあります。たとえばSteiner parkerフィルターなどは過去の製品に使った部分もあるけれども、新しい技術も加えています。もう少し具体的いいうとSteiner-ParkerフィルターにはこれまでのものにはなかったDriveコントロールを追加しています。また今までの12dB/Octスロープに加えて24db/Octスロープも装備しました。一方Moogのラダー・フィルターにもDriveコントロール、12dB&24dB/Octスロープ切り替え、ローパス、パイパス、バンドパス・モードを追加しています。

--ところで、昨今アナログシンセもいろいろと登場してきましたが、Fredericさんから見て、競合機種ってどの辺になりますか?

Frederic:もっとも正面からぶつかるのはMoog Voyagerだと思います。そしてDave Smith Instrumentのシンセ、BehringerのDeep Mind 12。そして、もちろんKORGのシンセサイザーも強力な競合だと思います。でも、そうした競合製品とは、お互いに協調する部分も数多くあります。だからこそ、日本での取り扱いをKORGにお願いしたのです。


数多くのビンテージシンセをソフトウェアで再現させるV Collection 5は今後もArutiraの主力製品の一つだという 

--ソフトウェアからスタートしたArturia、最近はハードウェアシンセが続いていますが、もうソフトウェアは収束する方向なんですか?
Frederic:やめません。実際V Collectionは非常に成功していて、ARTURIAの売り上げに大変貢献しています。今後も続けていきます。ですので、ソフトウェア、ハードウェアの両方を続けていく予定です。使う場所によって、ニーズは異なります。ベッドルームではソフトウェアがいいでしょうし、ステージではハードウェアを使いたいというニーズがあります。ですから両方をバランスよく売っていきたいですね。
 
--でも、ソフトウェア新製品を開発していく予定があるのでしょうか?

Frederic:いま詳細はお話できませんが、もちろん常に新しい、イノベイティブなソフトウェアを目指してを開発を続けているところです。


MatrixBruteとともに、アナログドラムマシンであるDrumBruteも発売を開始した 

--そしてもう一つ、今回新製品としてアナログのドラムマシン、DrumBruteを投入していますが、これはどういう位置づけの機材なのでしょうか?
Frederic:これまでARTURIAにとって、ドラム・マシンといえばSparkでした。ご存じのとおりSparkはコンピュータでアナログ・ドラムマシンをエミュレーションするものでしたが、MiniBruteでアナログ・シンセサイザーのマーケットに参入したので、こうなることは自然な流れでした。やはりリアルなアナログ機材を使うことにより、強力でピュアなサウンドが手に入れられます。これはミュージシャンにとっては素晴らしいことですし、それが有機的に、直感的にプログラムできるとなればなおさらでしょう。DrumBruteは非常に幅広いサウンド・パレットを持っており、音作りの可能性もありますので、多くのミュージシャンに受け入れられるはずだと考えております。

--アナログシンセと同様、アナログドラムマシンというのも他社から出ています。たとえば、AKAIではRhythm Wolfなど、非常に安価なものも登場していますよね。

Frederic:各社それぞれ狙っている方向性も違うと思います。ただ、DrumBruteは、あらゆる力を注ぎこんで開発した最高のドラム音源であり、音的にも最高のもので、シーケンサの機能・性能、そして操作性においても、他社製品の先を行く進歩的なものだと自負しております。


非常に強力なドラム音源に仕上がったというDrumBrute 

--アナログのドラムマシン市場はまだまだ大きく存在していると思いますか?
Frederic:そうだと考えているからこそ、DrumBruteをこのタイミングで出しました。DrumBruteを発表してすぐに世界中から、想定していた以上のオーダーが入り、大きな手ごたえを感じているところです。このDrumBruteこの状況を競合各社も見ているので、すでにいくつかのメーカーが開発に着手したという情報もキャッチしましたし、今後も参入してくるメーカーもあるのではないでしょうか?でも、その中においてもDrumBruteは現代のアナログドラムマシンの中心的存在になるはずだと考えています。ぜひ、日本の多くのみなさんにもDrumBruteの良さ、面白さを体感してもらえればと思っております。
 
--ありがとうございました。
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Arutira日本語サイト(KID)

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