新開発のツイーターRS7を搭載した、繊細なディテールを表現するモニタースピーカー、EVE Audio SC2070

EVE Audioから新しいフラグシップモデルのモニタースピーカーSC2070が発売されました。これまでEVE Audioのフラグシップモデルには、3wayモニタースピーカーのSC3070、4wayモニタースピーカーのSC4070がありましたが、ここに2wayモニタースピーカーのSC2070が新登場した格好です。2wayよりも3way、3wayよりも4wayの方が、それぞれツイーターやウーファーなどが担当する周波数が絞られてくるので、比較的帯域バランスがよいとされています。

しかし、SC2070では、ほかのフラグシップモデルのツイーターと比べサイズが1.5倍ある、新開発のAir Motion Transformer RS7というツイーターを搭載することにより、低音域、中音域、高音域のバランスを整えるとともに、コンパクトながらも広い周波数レンジを持ち、高い中音域の解像度を実現しているのです。プロのスタジオを想定して開発されているので、価格は1本242,000円(税込)と高額ですが、価格以上の完成度を誇るSC2070。また近年、EVE Audioは、工場を変更、さまざまな設計を見直し、より高い品質の製品を開発する会社へと、新しく生まれ変わっていたりもするので、このあたりも含め紹介していきましょう。

新開発のツイーターRS7を搭載した、繊細なディテールを表現するモニタースピーカーEVE Audio SC2070

2011年設立ベルリンのスピーカーメーカーEVE Audioとは

EVE Audioは2011年5月に設立された、ベルリンに拠点を置くドイツのモニタースピーカーメーカー。機械工学や音響を勉強し、業界で30年以上のキャリアを持つ、ADAM AUDIOの元CEOであるRoland Stenz氏がEVE Audioの代表であり、自ら製品開発に携わっています。ADAMに対してEVEということなんですかね(笑)。
ベルリンのオフィスでは、研究開発や設計が行われ、プロトタイプの実験を行ったりする、さまざまな実験場を完備。無響室や16秒ほどの残響を測定できる反響室など、開発段階や検品段階での精密な測定を可能としています。また、EVE Audioのスピーカーは、DSPを搭載しているのですが、こちらも自社で開発。製品のプロセスすべてを統括できる仕組みが整っているのが、EVE Audioの強みとなっているのです。

そんなEVE Audioは一時期、とある1つのコンデンサの寿命が短かったという問題があり、耐久性に難があるとされていました。しかし、現在はしっかりとした寿命の長い日本製のコンデンサに変更され、この耐久性問題は正式にクリアしています。また近年さまざまな設計が見直され、新しいプロダクトとして生まれ変わり、製品の安定感、精度の向上が行われているのです。製造工場も変わり、パーツも見直すことにより、今までのモデルよりも故障が減り、品質が上がるなど、細かなアップデートが行われました。見た目やサウンドは一緒ですが、より品質が高く耐久性のある製品になっているというわけですね。

生まれ変わった新生EVE AudioのSC2070

EVE Audioは、4つのラインナップ+フラグシップシリーズを展開している

さて、EVE Audioラインナップについて見てみましょう。EVE Audioは現在4つのラインナップ+フラグシップシリーズで構成されています。4つのラインナップはそれぞれ2way、3way、4way、サブウーファーというグループの中に、各製品が並んでいます。

2way、3way、4way、サブウーファーの4ラインナップ展開

SCやTSの後に続く頭の数字が、2way、3way、4wayなのかを表し、0を挟んで次の数字がウーファーのサイズを表しています。そしてフラグシップシリーズは、新しく登場したSC2070、SC3070とSC4070の3モデルが存在しており、最後に0という数字が割り当てられています。

SC2070、SC3070、SC4070の3機種で構成されるフラグシップシリーズ

フラグシップモデルのSC2070とSC207、SC3070を比較試聴

つまり、新しく登場したSC2070は、SC207の上位機種にあたり、フラグシップシリーズの中で2wayのモデルというポジションになります。実際、SC2070、SC207、SC3070を比較試聴した感想として、SC2070はSC207と比べて、圧倒的にレンジが広く、解像度も高かったです。サウンドのキャラクターは同じなのですが、まさにSC207の上位互換という印象でした。

SC2070(左)とSC207(右)を聴き比べ

一方SC3070と比較すると、2wayと3wayでのコンセプトの違いみたいなものを感じました。具体的には、中音域の部分です。2wayはツイーターとウーファーで構成されていますが、3wayは中音域をカバーするスコーカーが搭載が追加されているので、SC3070の方が中音域が立体的で前に来る感じがしました。同じようなサウンドのクオリティなので、どちらが優秀というのではなく、この辺は単純に好みの問題になってきますね。

フラグシップモデルのSC3070とも比較してきた

EVE Audioの共通した特徴。独自のリボンツイーターを搭載

そんなEVE Audioのモニタースピーカーは、共通したいくつかの特徴があります。まずはツイーター。これは、Air Motion Transformer (AMT)という、独自の構造をしており、これにより歪みを適格に抑制しています。また電力効率がよく、品質を安定させて製造できるという利点も兼ねており、さまざまなバランスを考えて採用されています。また、このリボンツイーターは基本的に採用されているサイズは一緒。ウーファーのサイズが変わっても、ツイーターが同じなので、高音域のバランスや質感が製品間で保たれる工夫が行われています。もちろん、アンプや筐体の大きさによって、すべてが同じというわけではないですが、他社と比べるとEVE Audioの方が共通したサウンドを感じることができます。

独自開発のリボンツイーター

硬さと軽量さを両立した、シルバーコーンウーファー

次にウーファーについて。これはシルバーコーンウーファーというものを採用しており、SCという略称で表記されます。EVE Audioのラインナップの頭にSCがついていますが、このシルバーコーンウーファーを指しているのです。これは、グラスファイバーでコーティングされたダイアフラムとなっており、硬さと軽量さを両立し、駆動のしやすさを確保しています。制御性が高く、ダイアフラムが揺れてから止まるまでの精度が優れた作りが特徴です。

制御性が高く、ダイアフラムが揺れてから止まるまでの精度が高いシルバーコーンウーファー

余計な色付けがない、クラスDアンプを採用

続いてEVE AudioのアンプはクラスDアンプ=デジタルアンプを採用している点について。EVE Audioがアナログのアンプを採用しないという理由としては、サイズと熱がポイント。たとえば、クラスABのものだと、サイズも大きく、発熱も大きく、それに対応するためのコンポーネントも必要になります。これをクラスDアンプではクリアできるわけです。一方、音質については、現代のクラスDアンプは比較しても、音質的なデメリットはないと考えているとのこと。むしろ、信号に余計な色付けがなく、原音を忠実に再現することができ、高効率なため、クラスDアンプを搭載しています。

EVE AudioのスピーカーはクラスDアンプを採用している

フロントに搭載されたスマートノブで、ボリュームやフィルターをコントロール

また、クラスDアンプのためにDSPを採用している恩恵として、EVE Audioのスピーカーにはスマートノブというものがフロントに搭載されています。ローターノブとスイッチを内蔵しており、ボリュームはもちろんのこと、各種フィルター、ノブ周辺のLEDの光り方、ピーク表示、などさまざまな機能が装備されています。普通のアナログアンプのスピーカーであればバックパネル側に回って調整して、戻って聴いて、再度調整する…といったことが必要ですが、スマートノブを使えばフロントのパネルからすべてコントロールすることができるのです。

フロントのスマートノブを使って、ボリュームやフィルターをコントロールできる

SC2070のために開発されたツイーターRS7を搭載

さて、ここからはSC2070について詳しくみていきましょう。先ほどEVE Audioのスピーカーに共通する特徴として、ツイーターがすべて同じサイズで作られていると書きましたが、このSC2070は例外で、この機種のみ特別に開発された、RS7と呼ばれるAir Motion Transformerが搭載されています。違いは振動板面積で、このRS7は従来のものより1.5倍のサイズで設計されています。大きくなったことにより、広い周波数帯をカバーしながら、歪みをより抑えることができます。これにより、これまでウーファーに担わせていた中音域をツイーターで再生できるようになるので、結果中音域の解像度を高めることにつながっています。

従来の1.5倍のサイズで設計された、新開発のツイーターRS7

より解像度の高い中音域を実現

近い製品であるSC207と比べると、SC207のクロスオーバーが2800Hzだったのに対し、SC2070は1800Hzまで下がっています。これによりツイーター側で1kHz分多く中音域を再生できるので、ここでより解像度の高い中音域が再生可能となっているのです。このおかげで、ウーファーは低音域の再生に集中することができるので、SC207が44Hzから再生可能な一方、SC2070は38Hzから再生できるという仕様になっています。またSC3070が35Hzから再生可能なのを考えると、2wayなのに3Hzしか変わらないのは、かなり優秀だと思います。

ツイーターでより広い中音域を再生することにより解像度を上げ、ウーファーの低音も確保している

リアパネルにはXLR、RCA端子を装備。スマートノブでの誤操作を防ぐコントロールロック機能も搭載

リアパネルは、ほかの製品とほぼ同じ仕様で、バランスのXLR、アンバランスのRCA端子を搭載。ディップスイッチでは、業務機器レベルと民生機器レベルの切り替えが可能で、その隣には、フロントのノブでボリュームやフィルターをロックするスイッチが搭載されています。フロントのスマートノブでうっかり操作しないようにするための、工夫もしっかりされているわけです。

XLRまたはRCAでの接続が可能

ノイズを極限まで抑えたバスレフポート

バスレフは、リア側に搭載してあり、エアフローのノイズやポートノイズを低減させる仕様となっています。バスレフがリアについているので、壁際に置きにくいか、というとそうではなく、ベタ付けは難しいですが、壁に近づけた設置もできるような設計になっています。

壁に近づけて配置しても問題のないバスレフポート

中音域をコントロールするBellEQを新たに追加し、より細かいチューニングが可能に

フロントには、前述の通りスマートノブが搭載してあり、ここでボリュームや各種フィルターをコントロール可能。フィルターは、ハイシェルフ、ローシェルフ以外にも、デスクフィルターというコンソールなどからの反射を抑えるためのフィルターも搭載しています。また新しく加わったフィルターとして、中音域をコントロールするBellEQも追加。これにより、DSPによる細かいチューニングが可能となっています。

ウーファーは、従来製品と同様にシルバーコーンウーファーを採用し、アンプはツイーターが100W、ウーファーが150Wの計250Wとなっています。ADコンバーターは、BurrBrown製の24bit/192kHz。再生可能周波数の上は25kHzまでという仕様です。

東京、大阪、名古屋で試聴が可能。INTERBEE会場にも出店予定

また、NAMM Showで毎年行われるTECアワードにSC2070は現在ノミネートされています。2021年にはSC4070がTECアワードで受賞しているので、それ続くかどうか楽しみなところでもありますね。さらに現在、SC2070を以下のスケジュールで、試聴することができるので、ぜひチェックしてみてください。

11/6〜11/13:Rock oN Umeda
11/15~11/17:INTERBEE会場 Media Integrationブース
11/20〜11/27:宮地楽器
11/30〜12/7:Rock oN 渋谷店
11/30〜12/7:島村楽器 梅田ロフト店
12/16〜12/24:島村楽器名古屋パルコ

以上、SC2070について紹介しました。ちなみにEVE Audioは今後5年間に渡って、製品やブランドの認知度を高めるためのプランを計画しているとのこと。今後の動きに注目ですね。ぜひEVE Audioのサウンドは唯一無二なので、興味のある方は試聴に行かれてみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
SC2070製品情報

【価格チェック&購入】
◎MIオンラインストア ⇒ SC2070
◎Rock oN ⇒ SC2070(ペア)
◎宮地楽器 ⇒ SC2070(ペア)
◎OTAIRECORD ⇒ SC2070
◎Amazon ⇒ SC2070
◎サウンドハウス ⇒ SC2070

モバイルバージョンを終了