小室哲哉さんが音色番号53を駆使したRoland JD-800、30周年を記念してプラグインで復活!もちろん全プリセットも完全復元!

1991年に発売された300,000円という価格で発売されたRolandのデジタルシンセサイザ、JD-800。90’sのミュージックシーンを支えた代表的音源のひとつであり、小室哲哉さんがJD-800独特なサウンドでもあるプリセット53番「Ac.Piano 1」を愛用したことでも知られるものです。これが30周年を迎えたことに合わせて、Roland自らがソフトウェア音源として復刻し、先日「JD-800 Model Expansion」として、Roland Cloudを通じて発売を開始しました。

このソフトウェア版のJD-800は、Windows、MacのプラグインであるZENOLOGYの拡張音源として動作するものであると同時に、RolandのハードウェアシンセサイザであるJUPITER-XおよびJUPITER-Xmの拡張音源としてPCのない環境でも忠実に再現してくれるのが大きなポイントです。もともとデジタルシンセサイザであったJD-800なので、この復刻版においては波形も完全な形で移植。もちろん、プリセットもすべてオリジナルを踏襲すると同時に、今の時代にもマッチしたプリセットも数多く追加されてのリリースとなっています。改めてJD-800とはどんなシンセサイザだったのか、そしてこの復刻版はどのように仕上がっていて、どのように使うものなのかなど見ていきましょう。

RolandがJD-800を30年ぶりに復刻。ZENOLOGYおよびJUPITER-X/Xmで忠実に再現

RolandのJD-800は数多くのミュージシャンに使われたシンセサイザですが、その代表曲の一つがglobeのDEPARTURES。

このビデオで小室さんが弾いているピアノこそ、JD-800のプリセット53番の音色、「Ac.Piano 1」ですね。もちろんJD-800はピアノサウンドに限らず、さまざまなサウンドが出せるシンセサイザとして当時大きな話題になり、賛否両論あったので、そのころを覚えている方も少なくないと思います。

1991年に発売されたJD-800。アナログシンセのように数多くのパラメータをフェーダーでいじれるのが特徴

きっと手元に資料類が残っているはず……と探してみたら、当然にようにいっぱい出てきました。80年代後半から2000年になるくらいまでのDTM周りのパンフレットは片っ端から保存し、年代・メーカーごとに整理しているので(単なる私の趣味です!)、1991年のRoland資料を引っ張り出したら見つかりました。

手元を探してみたら30年前のJD-800のカタログなどが見つかった

ちょうどミュージ郎、ミュージ郎Jr.などが登場したころのようで、それらとともに見つかったので、せっかくなので、そのうちの2つをスキャンしてPDFで保存したので、興味のある方はご覧になってみてください。

JD-800のカタログ。クリックするとPDFが入手できます

これらを見てもわかるのですが、「シンセサイザの原点」にこだわって開発された、当時として画期的なシンセサイザでした。時代の流れ的にいうと、YAMAHAがDX7を出し、Rolandが少し遅れてD50をリリースし、世の中が「アナログなんてもう古い、デジタルシンセ万歳!」という雰囲気になった後に、「やっぱりアナログ感覚で使えるシンセがいいのでは…」と登場したのがJD-800だったのです。

JD-800の発表資料。クリックするとPDFファイルが入手できます

現在のフィジカルモデリングではなく、あくまでもデジタルシンセでオシレーターにはウェーブフォームを用いたもの。具体的には以下の108の波形が収録されていました。

JD-800に搭載されていた108種類のウェーブフォーム

ただD50などとは違い、パラメーターのすべてを前面に出し、フェーダーでコントロールできるようにしたことで、アナログシンセのように直感的に使えたから絶賛された一方、「アナログシンセの音のほうがいい!」というアナログ派と論争になってきた記憶があります。

JD-800は今回、ZENOLOGYの拡張音源としてリリースされた

そんなJD-800が30年ぶりに復刻されたのです。これまでもRolandのソフトウェア音源にあったような気もしていたのですが、存在していたのはJD-800をサンプリングした音であり、JD-800は今回が初とのこと。また、今回リリースされたものはJD-800の単体音源ではなく、以前にも「クラウド型のソフト音源サービス、Roland Cloudが大きく進化し、国内でも本格スタート。現行ハードウェア製品と音色互換を持つソフトシンセZENOLOGYもリリース」、「無料で使えるRolandのDAW、Zenbeatsの新バージョンに搭載された音源ZC1と、ZENOLOGY ProやJUPITER-X/Xm、FANTOMとのシームレスな関係」といった記事でも紹介したRolandのソフトウェア音源、ZENOLOGYの拡張音源として登場したものです。つまり、まずはZENOLOGYをインストールし、その上でJD-800 Model Expansionをインストールすることで使えるようになっています。

実際、どんな音なのか、そのソフトウェア版のJD-800のデモサウンドが以下にあるので、聴いてみてください。

いかにも90’sサウンドといった感じのものがいっぱいですね。これを入手するもっとも簡単な方法はRoland Cloudのに加入し、Pro(月額9.99ドルまたは年額99.00ドル)またはUltimate(月額19,99ドルまたは年額199ドル)のメンバーシップになること。初めての加入であれば、最初の1か月間はUltimateを無料で使うことができるので、そこで試してみるというのもアリだと思います。

買い切りのLifetime Keyの価格は3月29日現在、日本円で18,608円

ただ、サブスクリプションのサービスは嫌いだ、という人も少なくないと思います。そんな場合は、買い切りのライセンスであるLifetime Keyというのを購入してしまえば、サブスクリプションの加入と関係なく、ずっと使い続けることが可能です。JD-800 Model ExpansionのLifetime Keyの価格は149.00ドル。3月29日現在は日本円で税込みで18,608円。これでJD-800そのもののサウンドが完全な形で手に入ると考えれば手ごろだと思います。

ZEN-Coreエンジンで動作するプラグイン音源、ZONOLOGY

ちなみに、JD-800 Model Expansionは前述の通り、ZENOLOGYが入っていることが前提なので、ZENOLOGYも必要になるのですが、このZENOLOGYには

ZENOLOGY Lite
ZENOLOGY
ZENOLOGY Pro

と3種類があり、そのいずれでも同じように使うことが可能です。このうちZENOLOGY LiteはRoland Cloud Freeという無料の会員でも入手可能なもので、JD-800のモデルをフルエディットして使用することが可能です。ただ、このLiteだけはエディットした音色データの保存および音色のエクスポート、インポートができないのが注意点です。

またZENOLOGY Proは229ドルでLifetime Keyが用意されていますが、ZENOLOGYはLifetime Keyはなく、Roland Cloud Core(月額2.99ドルまたは年額29,99ドル)以上のメンバーシップに入ることで入手可能なものとなっています。

JD-800のプリセット音色であるパッチ・リスト

そのZENOLOGYでプリセット一覧を開き、JD-800の音色一覧を見ると全部で128音色あります。オリジナルのJD-800は先ほどのカタログにもあったとおり全部で64音色だったので、さらに64個増えているのは、現在のトップ・サウンド・デザイナーが新たに作ったから、とのこと。見てみると分かる通り、前半の64がオリジナル音色、後半の64が新音色となっています。

プリセット一覧を見るとJD-800の音色が128種類用意されている

ただし、小室さんが使っていた53番のプリセットが0035番となっているのはなぜか…。これ、単純な話で、JD-800の場合、先ほどの表を見ても分かるとおり、プリセット番号が8×8で構成されていて11、12、13、…18、21、22、23…28となっていたから、普通に十進数で表すと35番であったということです。

ZENOLOGYにJD-800のロゴが表示されるととおに、パネル画面がオレンジに

これら、JD-800のプリセットを選ぶと、ZENOLOGYのパネルにJD-800の表記が現れるとともに、画面がオレンジ色になります。ここで鍵盤を弾いてみると、まさにJD-800の音が鳴るわけです。

さらに、EDITボタンをクリックすると、画面は大きく広がり、JD-800の全パラメータが表示されます。ただ、これを見ても分かる通り、JD-800オリジナルのユーザーインターフェイスというわけではなく、ZENOLOGY用の画面になているんですね。

エディット画面を開くと、JD-800の各パラメーターが詳細に表示される

ごく簡単に紹介すると、まず重要になるのが画面右上にあるSTRUCTURE。ここを見るとPARTIAL 1~4と4つのレイヤーがありますが、この1つのパーシャルが基本的に1つのシンセサイザであり、それを4つレイヤー=重ねることができるのがJD-800というシンセなのです。

JD-800は4つのパーシャルで構成されている

音色プリセットによってどのパーシャルがオンになっているか異なりますがLAYERというボタンを押すことで、オン/オフを切り替えることが可能。また隣のACTIVEというボタンがオンになっているパーシャルを下のエディット画面で表示させ、パラメータ調整できるようになっているのです。

そのエディット画面の中央にあるのがシンセサイザの中枢部。LFOが1つ、ピッチ・エンベロープ(PITCH ENV)、フィルター・エンベロープ(TVF ENV)、アンプ・エンベロープ(TVA ENV)と3つのエンベロープジェネレーターがあり、いずれもADSRという単純なものではなく、複雑なエンベロープを作れるのが特徴ともなっています。

オリジナルのJD-800と同様、108種類のウェーブフォームが収録されている

またオシレーターであるWGでは、前述したとおりJD-800のオリジナルと同じ108のウェーブフォームが選択できるようになっているので、ここに何を選ぶかによって、サウンドは大きく変わってきます。

画面一番下がエフェクト部。左にEQ、中央がマルチエフェクト、右にコーラス、ディレイ、リバーブが用意されている形となっています。

JD-800のエフェクト部分

そんなZENOLOGY上で動くJD-800ですが、冒頭でも紹介した通り、これはZENOLOGY上のほか、JUPITER-XおよびJUPITER-Xm上でも動作するようになっています。これを実現するためには、ZENOLOGY用とは別にJUPITER-X/Xm専用のLifetime Keyが必須となっており、これを使ってファイルをダウンロードし、USBメモリーを介して、JUPITER-X/Xmに読み込ませることで、利用可能になります。

Lifetime Keyを使いJD-800 Model ExpansionをインストールすることでJUPITER-XmでもJD-800を再現できる

JUPITER-X/Xmユーザーであればよくご存じの通り、ここには予めJUPITER-8、JUNO-106、JX-8P、SH-101の4つの拡張音源が入っていますが、今回それに加え、オプションとしてJD-800も利用できるようになったのです。

JUPITER-Xでも同様にJD-800を再現できる

もちろん、新旧トータル128あるプリセットが読み込めるほか、JD-800の各パラメーターはJUPITER-X/Xm上の各ツマミに割り当てられているので、これらを動かすことで、より直感的にエディットしていくことが可能です。もちろん、PC上のZENOLOGYで作った音色を転送して、JUPITER-X/Xmで読み込んで利用するといったこともできます。

JD-800の各パラメーターがJUPITER-X/Xm上のツマミやフェーダーに割り振られる

この復刻したJD-800をZENOLOGYというソフトウェア音源として使うのか、JUPITER-X/Xmというハードウェア音源で使うのか、それを決めるのはユーザーの考え方次第。中古市場で、結構高値で流通しているJD-800ですが、オリジナルと同じ音を再現できることを考えると、買いである音源ではないでしょうか?

【関連情報】
JD-800 Model Expansion製品情報
Roland Cloudサイト

【価格チェック&購入】
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