iPad用にVSTプラグインが動く48トラック本格派DAWが登場だって!?

ついに今年もスタートした世界最大の楽器の祭典、NAMM Show。私自身は財政上や経済上(って同じか…単に貧乏だ、と)の問題で日本にいるわけですが、ネット経由でいろいろな新製品情報がもう聞こえてきています。今後、実物を入手し次第、このDTMステーションや、AV WatchのDigital Audio Laboratoryなどで取り上げていこうと思っているのですが、これまで入ってきた情報のなかで、個人的にスゴィ!と思ったのが、アメリカ・シカゴにあるWaveMachine Labsが開発したiPad用のDAW、Auriaです。

これまでiPad用のDAWというと多機能性と価格でGarageBandが圧倒的な地位にいたわけですが、このAuriaはちょっと次元が違いそうですよ。24bit/44.1kHzに対応した48のオーディオトラック(モノでもステレオでも)を装備し、同時再生が可能。録音も最大で同時24トラックまで行けるというのです。
超強力なiPad用DAW、Auriaが間もなく登場する


機能ともフルスペックのものを積んでいるというから、本当か!?と思ってしまいます。確かにトラック数だけでいえば、以前にも「100トラック以上余裕で使えるiPad/iPhone用国産MTR、Rectools Unlimited」という記事でも紹介したとおりユードーも実現しているので、それほど驚くことではないのかもしれません。

Auriaは48トラックを装備し、各編集機能を備えた本格的なDAW

しかし、そのレコーディング機能、オーディオ編集機能がiPad用アプリとして尋常ではないんです。そう、各トラックの入力レベル調整はもちろん、オートメーションなども可能。

オートメーション機能も利用可能

波形エディットもいろいろとできるようになっています。デザイン的にも非常によくできているので、まずはAuriaのデモビデオを見てみてください。

このビデオにもいろいろ登場しているとおり、各トラックごとにエフェクトをかけてモニターするかどうかの設定ができるようになっています。このエフェクトにはさまざまな仕掛けがいっぱい。まずはPAPaudiowareと共同開発したビンテージ風のチャンネルストリップが各トラックに標準装備されているんです。見た目にもカッコイイですよね。
PSPaudiowareと共同開発したというチャンネルストリップ

さらに、驚くのがVSTプラグインをサポートしているということ。以前、ユードーの社長、南雲玲生さんにインタビューした際、実験的にiPhone上でVSTプラグインを動かすことができた、という話をされていたので、いつかそんなものが……とは思っていたのですが、ついにそれが実現できたというのです。

FabfilterのパラメトリックEQであるPro Q

具体的にいうとMoReVoxによるIRを装備したコンボリューションリバーブ、リバーブ(CalassicVerbと書かれているのでTC Electronicによるものなのかな?)、PSPaudiowareによるステレオディレイ、ステレオコーラスなどのVSTプラグインが標準装備されています。

さらに、アプリ内課金という形で、オプションのプラグインも追加できるようになる模様です。具体的にはPSPaudiowareのEchoMicro WarmerFabfilterPro QOverloudTH-2BeVerbなど、有名エフェクトが次々と登場してくる模様です。

マスタリング用エフェクトも標準装備 

でも、VSTプラグインサポートなら何でも動くのでは??と思ったら、さすがにそうではないようです。

WaveMachine Labsによると、これはSteinbergのVST 2.4のMac版SDKで開発したものが使えるとのことですが、やはりCPUが異なるために、WaveMachine Labs側でポーティングという作業を行ってiPadに最適化しているのです。そう、そのまま現状に流通しているVSTプラグインが使えるわけではないし、Intel CPUをエミュレーションしているというわけではないのです。きっちりとiPadのCPUであるA4、A5プロセッサ用に移植しているからこそ、高速に動作してくれるということなんでしょう。
【追記】
VocoveeなどのVSTエフェクト開発で著名なg200kgさんから、情報をいただいたので、追記。これ、プラグイン風ではあるけど、正確にはプラグインそのものではないいようです。アップルのルールとしてiOSアプリで後から機能追加するプラグインの仕組みを許していないから、アプリ内課金で追加した場合、プラグインだけを追加するのではなく、それを組み込んだ状態にアプリ全体を書き換える模様、とのことです。 g200kgさんのサイトでも情報源を含めて記述がされています。

これを見ると、かなりワクワクしてくるのですが、その一方でちょっと気になるのは、これってわざわざiPadを使わなくてもPCでやればいいのでは……、という単純な疑問。iPadってシンセを鳴らす、エフェクトを使うなど単純なことだけに特化したアプリが中心だったからこそ分かりやすかったし、親しみやすかったように思います。しかし、Auriaのようになってくると単に小さなPC上で動かしているDAWという感じで、画面が小さい分扱いづらいとか、CPUパワー不足を感じるなどの問題点が出てこないのかちょっと心配ではあります。

とはいえ、この小さなデバイスでどこまでできるかは非常に興味のあるところです。ちなみにiPad2ではフルスペック使えるけれど、CPUパワーの低いiPad1では24トラックに制限されるとのこと。現在の価格は未定ですがアナウンスによれば3月中には発売されるようなので、まずはその発売を待ちたいところです。

【追記】
先ほど、NAMM Showでのインタビュービデオを見たところ、価格は$49.99とのこと。日本円だと4,250円といった設定になるのでしょうか…。

【関連サイト】
WaveMachine LabsのAuria紹介サイト

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