相性抜群だったSONAR X3と初音ミクV3の関係

今年1月にRolandからTASCAMへとセンセーショナルに移籍したDAW、SONAR X3。バージョンアップすべきかどうか迷っている人も少なくないと思います。まだSONAR X3のユーザー情報も少ないため、どんなメリットがあるのか、自分の目的が適うものなのか、ハッキリと掴めていない人もいるでしょう。

とくに気になるのがVOCALOIDとの相性です。もちろん、従来通りVOCALOID3 EditorでエクスポートしたWAVファイルを読み込んで……という使い方はできますが、初音ミクV3にバンドルされているクリプトン・フューチャー・メディアのPiapro Studioと組み合わせて使ってみたところ、とても使い勝手のいい環境を構築することができたので、その方法や使い方などについて紹介してみたいと思います。

相性は抜群によかったSONAR X3とPiapro Studio

VOCALOIDをどのようにDAWと連携させるかは、VOCALOIDユーザーにとっては非常に重要なテーマです。従来のWAVファイルをエクスポートしたりインポートする手法は確実ではあるけれど、非常に効率が悪く、使いやすいものではりません。


クリプトンが開発したVSTインストゥルメント型のVOCALOIDエディター、Piapro Studio 

そうした中、VOCALOIDとDAWをつなぐ架け橋として注目されているのが、Piapro Studioなのです。Piapro Studioについては、これまでもDTMステーションで何度も取り上げてきているので、詳細については過去記事も併せてご覧いただきたいのですが、簡単にいえば、クリプトンが開発したVOCALOIDのEditorであり、WindowsベースのDAWから見るとVSTインストゥルメントのプラグインとして利用できる、ちょっと不思議なツールです。

本家のVOCALOID3 Editorよりも分かりやすく、扱いやすいというメリットもある一方で、DAWの中には相性が悪く、イマイチしっくり動作しない、というものがあるのも事実です。そうした中で、最新のSONAR X3との相性は抜群でした。

SONAR X3 Producerが入っているマシンに、初音ミクV3をインストールした後、Crypton Software Installを使ってPiapro Studioをインストールします。いまSONAR X3を使っているユーザーの大半は64bit版を使っていると思うので、こちらも64bit版をインストールするようにします。


Cakewalk Plugin ManagerでPiapro Studioの入っているフォルダを指定する

インストールが完了したら、SONAR X3側でPiapro Studioが認識できるようにします。そのためには、「ユーティリティ」メニューから「Cakewalk Plug-in Manager」を起動して、「VSTの設定」の「オプション」を選択。ここで、Piapro Studioの入っているフォルダを指定するのです。通常は、「c:\program files\crypton\piapro studio vst x64」を指定すればいいはず。設定が終わったら、「VSTプラグインの検索」ボタンをクリックすると、しっかり認識されるはずです。


プラグインのInstrumentsの一覧の中に、Piapro Studio VSTiがある

ここで、SONAR X3の新規プロジェクトを作成した上で、SONAR X3のブラウザの「Plugins」からInstrumentsを選択してみましょう。その中のVST2フォルダを見ると、「Piapro Studio VSTi」という項目が見つかるはずです。これが見当たらなければ、うまく組み込めていないということなので、一度見直しをしてみてください。


インストゥルメントトラックとシンセのプロパティページにチェックが入っていることを確認する 

見つかったら、これをドラッグしてトラックに展開してみましょう。この際、プラグインシンセの挿入オプションというのが出てきますが、画面のようにインストゥルメントトラックとシンセのプロパティページにチェックが入っていればOKですよ。


初回起動時にアップデートの案内が出てくるので、アップデート作業を行う 

Piapro Studioをインストールした直後に、これを行うとアップデートの案内が出てくると思います。4月4日現在、version 1.2.1.2というものでしたので、これにアップデートしてしまいましょう。この際、この画面を表示させたまま、SONAR X3をいったん終了させて「アップデート」ボタンをクリックすればOKです。


インストゥルメントトラックは作るがこのトラックには何も入力しない 

改めてSONAR X3を起動して、同じようにトラックにPiapro Studio VSTiを組み込めば、準備完了です。はじめてPiapro Studioを使う人にとって、かなり違和感を感じると思う点は、このVSTインストゥルメントのトラックには何のデータも入力しない、という点です。普通なら、ここにMIDIのデータを入力していくのですが、このトラックは何も使わないし、このトラックを選択した状態でMIDIキーボードを弾いても、初音ミクは歌ってくれません。


この画面をクリックすると、裏に隠れているPiapro Studioが表に表示される

では、どうするのか?その入力をPiapro Studioで行うのです。おそらく、Piapro StudioはSONAR X3の画面の裏側に隠れてしまっていると思いますが、SONAR X3に表示されている、Piapro Studioのラックをクリックすると、画面が登場してくるはずです。


Piapro Studioの画面が表示されたら、左上の「+」ボタンをクリックしてトラックを追加していく

そう、見かけ上VSTインストゥルメントとなってはいるものの、これが1つの独立したソフトウェアのようになっており、Piapro Studio内にトラックを作成して、初音ミクに歌わせていくのです。その入力法についての詳細は割愛しますが、必要に応じて、複数トラックを作ってハモらせていくことも可能です。その場合でも、SONAR X3上はあくまでも1つのVSTインストゥルメントのトラックとなっているのです。なお、仕様上、SONAR X3(ほかのDAWでも)に複数のPiapro Studioを組み込むことはできません。

Piapro Studio上のプレイボタンで再生する場合は、SONAR X3側の別のトラックは鳴らない
Piapro Studio上のプレイボタンをクリックして歌わせることもできるし、SONAR X3側のプレイボタンを押しても再生することができます。初音ミク単独で試したいときは、Piapro Studio上のプレイボタン、ほかのトラックと同時に鳴らしたい場合には、SONAR X3のプレイボタンと使い分けるようにしてください。

さて、先ほどこのVSTインストゥルメントのトラックには何のデータも入れないとは説明しましたが、トラック自体は非常に重要であり、初音ミクの歌声は、このトラックを通ってミキサーへと出ていくのです。画面左にはSONAR X3自慢のProChannelがあるので、ここでEQをいじったり、真空管アンプを使ったり、NEVEやSSLシミュレーションのコンソールを通して音作りをすることで、初音ミクの声がドラスティックに変化していきます。


初音ミクの歌声はPro Channelで加工することができる

また、インサーションのエフェクトとして、コーラスやディレイ、ボーカル用のストリップなどをかけていくと、VOCALOIDの歌声もずいぶんとバリエーションも出てきて面白い音作りができますよ。

いずれの場合も、Piapro Studioで入力したメロディーを変更しても、すぐに別のトラックと合わせて再生することができるので、本当に効率よく便利ですね。


オーディオのエクスポートで、いったん初音ミクの歌声をオーディオとして書き出す

さらに、普通の初音ミク、VOCALOIDの歌声とはニュアンスを変えるために有効なのがCelemonyのMelodyneを使うという技です。そのためには、一度、VOCALOIDの歌声をオーディオトラックにバウンスする必要があるので、「ファイル」メニューの「エクスポート」-「オーディオ」で目的のトラックをWAVとして書き出します。


その後、新たにオーディオトラックを作成して、そこに読み込み、Melodyne用のRegion FXを作成

その後、別のトラックに読み込んで、Melodyneで編集すると、Piapro Studio上でVOCALOIDのエディットをするのとはまったく違う雰囲気のものに仕立てることができて独特な雰囲気にすることができますよ。


あとは画面下のMelodyneのエディターで自在にエディットしていくことができる 

なお、以前の記事、「Piapro Studioでクリプトン製以外のVOCALOIDを使ってみよう!」でも書いた通り、初音ミクに限らず、各種VOCALOIDの歌声ライブラリもPiapro Studio上で使うことができるので、SONAR X3と組み合わせて使う上で、大きな威力を発揮してくれるはずです。
※追記(2014.7.27)
コメント欄のところで、Piapro Studioを使ったら重くてドロップアウトが生じたという報告がありました。確かにPiapro Studioは一般のVSTプラグインと異なり、それなりに処理能力を有するためCPUパワー、メモリサイズが足りないと処理が追いつかず、ドロップアウトが起こる可能性はあります。その場合は、オーディオインターフェイスのバッファサイズを大きく設定した上で、試してみてください。

【製品情報】
SONAR X3製品情報
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