定番波形編集ソフト、Sound it!がメジャーVerUPで超便利ソフトに!

国産DAWであるAbilityやSinger Song Writerの開発元としてお馴染みのインターネット社から、定番の波形編集ソフト、Sound it!が久しぶりにバージョンアップされ、Sound it! 8 Premium for Windows(以下Sound it! 8)として発売されました。DAWと違い、波形編集ソフトって、やや地味な印象をお持ちの方も少なくないと思います。確かに派手さは少ないかもしれませんが、今回のSound it!は、DTMユーザーにとっても、非常に便利で嬉しい機能がいっぱいなんです。

たとえば自由に曲間調整したギャップレスCDが簡単に焼けたり、DSDファイルの読み書きができたり、オリジナルのACIDizedファイルを作成できたり、さまざまなエフェクト処理ができたり、さらに今回の新バージョンでは、RolandのR-MIXそっくりなオーディオ処理機能が搭載されるなど、便利なツール、使える機能がテンコ盛り。さっそく、どんなソフトになっているのかを紹介してみたいと思います。

3月19日にインターネット社から発売された波形編集ソフト、Sound it! 8 Premium for Windows

Sound it!は音系の国産ソフトとして、古くから存在しているものなので、昔からDTMの世界やPCの世界を見てきた人であれば、よくご存じの製品だと思います。でも比較的最近のユーザーだと知らない方も少なくないと思うし、「名前だけは聞いたことあるけれど、よく分からない」とか「波形編集ソフトって、DAWとは違うの?」という方も多いと思うので、まずはSound it!とは何なのか、簡単に見ておきましょう。


Sound it! 8 Premium for Windowsのパッケージ。ダウンロード版もある

DAWについては先日の記事「今さら聞けない、DAWって何?」でも紹介したとおり、PC上で音楽を制作するソフトです。それに対し、Sound it!のような波形編集ソフトは、「音を録音したり調整するためのユーティリティ」と表現するといいかもしれません。つまり音楽を作るというよりも、音を加工するためのツールなんですね。そのためマルチトラックで多重録音するというようなことはできないし、テンポや拍子といった概念もありません。極めてシンプルに、録音したり、ファイルを読み込んだ上で、加工し、保存するものなんです。

波形編集ソフトとは、オーディオを波形で表示させて、直接編集できるソフト

そんなのDAWでできるんだから、大は小を兼ねるの考えでDAWでいいのでは?」と思うかもしれません。確かにDAWでできるケースもあるのですが、やっぱり小回りの利く波形編集ソフトは便利。ソフト自体が軽いので、サクサク動き、大きい録音データから、必要なところだけをポンポンと抜き出したり、トリミングしてノーマライズし、音圧を上げる……なんて作業が効率よくできますよ。


 さまざまなファイル形式を読み込んだり、書き出すことができる

また、さまざまなファイル形式のデータを読み込んだり、保存できるので、ファイルコンバーター的に使うこともできるのも大きなポイント。Sound it!の場合、以下のファイル形式の読み書きが可能になっています。

ファイルフォーマット 8 Premium
NEW
7 Premium (生産完了) 7 Basic
ファイルの種類 拡張子
WAV(非圧縮PCM) wav
MS-ADPCM wav
IMA-ADPCM wav
G.721 ADPCM wav
G.726 ADPCM wav
AIFF aif, aiff
Next/Sun(AU) au, and
RAW raw, pcm
MP3 mp3
Windows Media Audio wma ○(*4) ○(*4) ○(*4)
FLAC flac, flc
Ogg Vorbis ogg
Sound it ファイル (SIW)(*1) siw
AAC m4a
MPEG4 mp4 △(*5) △(*5) △(*5)
3GPP(*2) 着うた(*3) 3gp
着うたフル(*3)
3GPP2(*2) 着うた 3g2
ATRAC3/ATRACplus
/ATRAC Advanced Lossless
aa3 ×
Windows Media Video wmv △(*5) △(*5) △(*5)
DSDファイル(*6) DSF dsf × ×
DSDIFF dff × ×
WSD wsd × ×
(*1) Sound it! for Windows専用のファイル形式で、最大20GB(NTFSの場合)までサポートします。
(*2) 保存したファイルは着信音には設定できません。また、携帯電話への転送機能はありません。
(*3) 着うたは、FOMA 900シリーズ以降、着うたフルは、FOMA フル対応機種が必要です。着うたフルは、ダウンロードするサーバーが別途必要です。
(*4) WMA Pro, WMA Lossless, WMA Voiceコーデック、VBRに対応(要WMP11以降、Sound it! 6.0 Premium/Basic はVer6.00.4以降で対応)
(*5) ムービーファイルの音声トラックを開くことができます。ただし、音声トラックのエンコード方式が、AAC, AC3, MP1, MP2, MP3, WMALossless, WMAPro, WMAV1, WMAV2, WMAVoiceの場合に対応しています。これら以外の音声エンコード方式の WMV, MP4ファイルは開くことができません。また、ムービーファイルにより、ファイル詳細の表示や試聴ができない場合があります。
(*6) DSDファイルは、読み込み時に192K/24bit PCM WAVに変換し、保存時にDSDファイルフォーマット(DSF, DSDIFF, WSD)、およびサンプリングレート(2.8M/5.6M)を指定して保存します。

この中の大きなトピックはDSDファイルへの対応なのですが、この辺の詳細については、近いうちにAV Watchの私の連載、Digital Audio Laboratoryのほうで記事にする予定ですので、そちらをご覧ください。また上記のファイル形式には入れていませんが、オーディオCDから直接リッピングすることもできますよ。


新たに追加されたSPTIという機能を使用すると、CDをより自由に焼けるようになる 

そのCDに関連して、今回のバージョンで大きく強化された機能の一つがCDのライティングに関するものです。従来のSound it!でももちろんCDの書き込みは可能でしたが、新バージョンでは、SPTI(SCSI Pass-Through Interface)というシステムを利用することによって、トラックとトラックの間の時間をどのくらいの時間にするかを設定できるようになったのです。なお、SPTIに非対応なドライブもあるようなので、事前に試用版で使用可否を確認することをお勧めします。


CDを焼く場合、まずプレイリストを作成し、各曲間の時間やクロスフェードの設定を行う

たとえば1曲目と2曲目の曲間は2秒だけど、2曲目と3曲目は1秒にするといったことができるほか、曲間を0秒にする、いわゆるギャップレスの設定も可能。また曲の終わりから次の曲の頭をクロスフェードでつなげるといったことも可能なんですよ。これは、単純に手持ちのWAVやMP3などのファイルを並べるだけでできるので、自分専用CDを焼くためだけにSound it!を購入するのもありだと思いますよ。

一方、今回のバージョンアップでの一番の目玉といえるのは、何といってもF-REXの搭載でしょう。そう冒頭でも書いた通り、これ、RolandのR-MIXとほぼ同等のもので、見た目も使い勝手もそっくりですね。

R-MIXをご存じない方に説明すると、楽曲の中からボーカルだけを抜き出したり、ベースパートだけを消すなど、魔法のようなことができるツールです。なぜそんなことができるのかというと、このF-REXの画面を見てもわかるように、まず音をリアルタイムに解析して、横軸がステレオの左右、縦軸が周波数、そして色が音の強さというようにグラフィック化します。すると、センターに定位しているボーカル、左の下に定位しているベース……のように見えてくるのです。

Sound it! 8 Premium for Windowsの目玉機能、F-REX 
それを抜き出して消してしまったり、そこだけを抽出するといった処理のほか、ボーカルを囲んだ部分にリバーブをかけるとか、ギターを囲んだ部分にコンプレッサをかけるといった処理をすることで、既存のCDをマルチトラックのデータのように編集し、リミックスすることが可能になるというわけなのです。

もっとも、すべての楽曲でギターやベース、キーボードが抜き出せるというわけではなく、比較的、左右の定位がクッキリした曲で、かつ激しい音圧処理などをかけていない曲でないと、なかなかうまい効果を発揮できませんが、結構面白く使うことができますよ。

ちなみに、このF-REXはVSTプラグインとしてSound it!に組み込まれているので、ほかのDAWなどで使えるかを試してみました。が、結論からいうと、ダメみたいですね。もしかして、Ability Proならば……と思ったけれど、3月14日現在では使えませんでした。この辺はAbility側のアップデートできっと使えるようになるのでは……と期待しているところです。

さて、もう一つ今回のSound it!のバージョンアップでの大きな新機能であり、DAWにはない、まさに仕事の道具的に使える機能が「バッチ処理機能」です。バッチ処理とは古くからあるコンピュータ用語で、ある決まった手続きを自動的に順番に処理していく、ということ。ここでいうバッチ処理というのは、「まずエフェクトをかけて、頭をフェードインし、ノーマライズをかけた結果を、MP3の128kbpsの形式で保存する」といった一連の処理をいいます。


一連の処理を自動的に行うことを可能にするバッチ処理機能 

こうした処理を自分の好きな内容で設定した上で、所定のフォルダに処理したいファイルを入れておきます。そしてバッチ処理を実行すれば、あとは多少時間がかかっても、待っていれば自動的にすべてコンピュータが処理してくれるというわけなのです。単純に「数多くあるオーディオファイルをMP3に変換する」とか、「ハイレゾデータを16bit/44.1kHzに変換する」なんていうときにも便利に使えそうですよね。


非常に便利に使える「カット/ペースト(クロスフェード)」機能

さらにもう1点、今回の新機能の中で、個人的に使える!と思ったのが、「カット/ペースト(クロスフェード)」というものでした。これ、オーディオの一部を切り取ったり、何かと差し替えるといった場合に、音がスムーズにつながるようにしてくれるという機能です。本当に10~30msecといったごく短い時間の音をクロスフェードというものなんですが、これによって「ブチッ」となってしまう現象を防ぐことができるんですよね。とっても地味な機能ではありますが、オーディオのカット&ペーストが、とっても気持ちよくできるようになりますよ。


Sonnox Oxford社の高性能ノイズリダクションプラグイン3つが標準で搭載されている

そのほか、新バージョンになって従来からのVST2対応に加え、VST3対応したこと、またAbilityなどと同様64bitネイティブ対応のアプリケーションになった点も見逃せないですね。


インストール時に32bit版か64bit版かを選択できる

以上、Sound it! 8 Premium for Windowsの新機能を中心に見てみましたが、いかがだったでしょうか? もちろん従来のバージョンと同様に、数多くのエフェクトが搭載されているし、Sonnoxが開発したノイズリダクションのプラグインも3つ収録されているので、これでテープのヒスノイズやレコードのプチプチノイズ、電源からくるハムノイズを取り除くといったこともできます。また、自分で録音したサウンドをACID用のループファイルに仕立て上げるといったこともできるし、音質や音程をそのままに、3分20秒あるオーディオを3分45秒に引き延ばす…なんて使い方も可能など、とにかく便利なソフトなのです。これまで波形編集ソフトなんて使ったことがない、という方も、国産ソフトで日本語のヘルプも充実しているので、一度試してみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
Sound it! 8 Premium for Windows製品情報
Sound it! 8 Premium for Windows試用版ダウンロード

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