エクシングからCeVIO用のソングボイスとして「Color Voice Series」6製品が発表された
石原:JOYSOUNDのカラオケのサービスの一つとして2013年秋から「ボーカルアシスト」という機能を搭載させていました。これはカラオケのガイドメロディーを歌ってくれるというもので、従来であればサックスなどで鳴らしていたものを歌で歌わせるというものです。男性ボイス、女性ボイスがありますが、ここに名古屋工業大学(以下、名工大)で開発したHMM音声合成の技術を使っていたというのが、キッカケです。
石原:以前からテクノスピーチ(名工大と連携して音声合成・音声認識に関連したシステムの研究開発する会社)とやり取りしていたというのもありますが、このHMMエンジンなら、カラオケのMIDIデータと歌詞、後は歌詞テロップの色塗り情報(歌詞において歌うところの色が変わっていく情報)を用いてタイミングを合わせるだけでできてしまう、つまり調教などの処理をせず、ベタ打ちだけで簡単にボーカルパートを自然な形で作れるというのがポイントでした。MIDIデータも歌詞データも膨大な数がありますから、ほぼ自動で変換するだけでいいというのは、当社にとって非常に大きなメリットでした。
石原:名工大のものは、学術用に作られたものということで権利上の都合もあり、商用で用いるものは別途作る必要がありました。また、様々なカラオケ楽曲を歌わせるのに適した歌唱ボイスが必要とも思いましたので、オリジナルで男性の歌声と女性の歌声を作っています。CeVIOの話が持ち上がったのはその後だったので、「さとうささら」よりも先に作っていたんですよ。
石原:その通りです。せっかくノウハウも溜まったので製品化を…ということになったのですが、すでにVOCALOIDで素晴らしい歌声ライブラリがたくさんあり、大きな世界が出来上がっています。そのVOCALOIDの世界は、可愛い女の子、アイドル的なキャラクタで広く知られているので、それとは違うものにしようと考えました。すでに発売している「赤咲 湊(あかさきみなと)」はロック、ポップス、ダンスなどを得意とした力強い歌い方をする男性キャラクタで、「緑咲 香澄(みどりざきかすみ)」はバラード、ジャズ、キッズソングなどが歌える、歌のお姉さん的なキャラクタとしています。まずは、ぜひその歌声を聴いてみてください。BGMなしで、歌声だけを聴くと、その特徴がより分かりやすいと思います。
石原:そうですね、さらに3月19日に発売する「銀咲 大和(ぎんさきやまと)」は50代のお酒好きなダンディーなおじさんをイメージしたキャラクタで、演歌、歌謡曲、フォークなどに向けた歌声にしています。また、「金咲 小春(きんざきこはる)」は気品溢れる大人の女性ということで、やはり同じ演歌、歌謡曲、フォークなどに向く音源になっています。
石原:ぜひ、いろいろな使い方をしていただければと思っています。もちろん、VOCALOIDを使っているようなみなさんにも、並行して使っていただけると嬉しいですし、とにかく調教なしにベタ打ちで入力できますから、これからDTMをはじめたいという方にお勧めしたいです。さらに、プロのレコーディング現場などでの仮歌用などで活用していただけるようになるといいなと思っています。
石原:ソングボイスを制作するにあたっては、まず声の元となる方にたくさんの歌をうたってもらい、それらを楽譜にしていくという作業があります。さらに波形データと整合性の取れているデータをテクノスピーチに送り、チューニングを行う……という一連の制作工程があるため、最初は半年以上の時間がかかりました。ただ、最近はだいぶ慣れてきたこともあり、効率も上がり4か月程度でできていますね。
石原:収録時の歌唱をとても良く再現されていると思います。銀咲さんにおいては、「あれ?本人か?」と思うほどの再現力で、波形のチェックをしている際に、オリジナルの歌声データを持ってきてしまったかと思ったほどです。赤咲君に関しては、レコーディング時に「声を張り上げて、ダミ声で歌ってください!」「ビブラートにしないようにできるだけ単調に!」なんて指示を出していたら、その通りの歌声になっちゃったんです。社内では「ジャイアン」なんて呼んでたんですけどね……。これでは、楽曲に乗せたときにあまりにも単調でつまらないものになってしまうため、チューニングを行なった結果、このような製品になりました。
川出:CeVIOのUIは私が担当しているのですが、歌手の変更はトラックの先頭の「C」ボタンを押すか、キーボードショートカット「C」キーで切り替えが可能です。もっともエクシングさんのシリーズが出るまでは「さとうささら」しか存在しなかったので、切り替えそのものが不要だったわけですが…。赤咲緑咲のテスト中、初めて触れる人から切り替え方が分からないという声をいただいていたので、トップメニューや右クリックメニューの「トラックのキャスト」からも変更できるように改良しています。
川出:HMMエンジンの仕様を画面に再現する結果、流儀や作法に違いは出ます。たとえば、1つの音符に複数の文字を入れられることも、ユーザーの皆様になかなか伝わっていないようです。4分音符に2文字入れようとして、8分音符2つにしてしまうと、それは4分音符の音ではなく、8分音符2つという歌い方になってしまうんです。CeVIOでは、最初は譜面通りの入力をしてみてください。そうすれば、何の調整なしでも意外と自然に歌ってくれるはずですよ。また先日、CeVIOサイトでも公開したのですが、これまで発表していなかったコマンドがあるんですよ。
川出:隠していたというつもりはなかったのですが、全角で「’」(アポストロフィ)を入れると、そのひとつ前のカナの母音が脱落して子音だけの発音になります。たとえば、歌詞に「いぇす」と入力すると「yesu」と、最後の「す」をはっきり発声しますが、「いぇす’」と入力すると母音「u」が脱落して「yes」と、より自然な発声になります。
--ありがとうございました。
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