DAW専用のSkylake Core i7/Windows 10マシンを10万円で組んでみた

みなさんは、DAWを動かすPCってどんなものを使ってますか?Windows PCを使っている人、Macを使っている人、またデスクトップPCの人、ノートPCの人などそれぞれだと思います。私自身は、仕事柄、WindowsもMacもいろいろ使っていますが、メインマシンとしては長年自作のデスクトップPCを使っています。そして以前は半年に1度くらい、最新マシンを作っては、ヤドカリのように新しいPC環境へと引っ越していたのですが、最近はあまりPC自体への魅力も薄れてしまって、2年半も使い続けていたのです。

とはいえ、数か月前からマシンの調子がやや怪しくなってきたのと、さすがにこのままでは時代遅れになるのでは……なんて思うようになり、久しぶりに新しいマシンを組んでみたのです。みなさんの参考になる点もあるのではないかと思うので、どんなマシンなのかについて紹介してみたいと思います。


Core i7 6700を搭載した小型なDTM専用PCを作ってみた


前回、マシンを組んだ2年半前にも「DTM用にHaswell Core i7/Windows 8.1マシンを組んでみた」という記事で紹介しているので、旧マシンについてはそちらを参照していただきたいのですが、私が市販のPCを買わず、自作している理由は単純。変なソフトやドライバがプリインストールされていてDAWの動作が不安定になると嫌なので、できるだけスッキリ、シンプルにさせたいということ。


今回購入したベアボーン、ShuttleのXH170Vとその付属品 

マシンを組むといったって、最近はベアボーンと呼ばれる半完成品のマシンにCPUとメモリ、SSD、HDDなどを入れるだけなので、手際よくやれば組み立てに30分もかからないですしね(Windowsのインストールや環境設定には半日を要しますが…)。

その2年半前のマシン、インテルのCPU的にいうとHaswellという第4世代Coreプロセッサを使っていました。起動の際やや調子悪いことがあるとはいえ、Cubase Pro 8.5でもSONAR Platinumでも、Studio One 3.2でもABILITY 2.0 Proでも快適に動き、速度的、環境的にもまったく不満はありません。

だからこそ、長期間何も気にせず使ってきたわけですが、現在インテルのCPUもSkylakeという第6世代Coreプロセッサの時代。2世代も進んでしまうと、DTMステーションの記事などを書いていく上で、ちょっとマズイのでは……と思うようになり、数週間前からリサーチをしていたのです。

そんな中、私が求めたスペックとしては、以下のような要件でした。
・CPUはCore i7 6700または6700K
・メモリは16GB以上
・CドライブはSSD
・Dドライブは5TBのHDD
CPU以外は、これまで使っていたマシンを踏襲しています。それに加え、新しい条件としては
・今より静かなPCにしたい
・4Kディスプレイに対応させたい
・USB 3.1対応の端子が欲しい
という3点を考えてみました。4Kディスプレイはディスプレイの買い替えも伴うので、今すぐ使うわけではないですが、せっかく新調するなら対応させたいところ。一方のUSB 3.1は、M-Audioが新オーディオインターフェイスM-TRACKシリーズがUSB Type-C接続だというので、やっぱり欲しいな……と。

もちろん、4Kディスプレイ対応もUSB 3.1も拡張スロットで対応させればいいだけの話なんですが、もう拡張スロットなんて使わず、シンプルに小さいマシンでいいんじゃないかな…という考えもありました。だって、以前インプレスのAV Watchのタイアップ記事で作ったインテルの超小型PC、NUCで十分、DAWも動いたから、もう大きいマシンなんて不要かも…とも感じていたからです。

左の黒いのが今回購入したXH170V、その赤いのがインテルのNUC、右の大きいのが旧マシンのSZ87R
ただ、手元にある膨大なデータが入った5TBのHDDはNASなどにせず、ローカルに置いておきたいという思いがあり、NUCの選択肢はなし。HDDのバックアップをスムーズに行うために外部接続のeSATA端子は欲しい……。そうやって絞り込んでいった結果、決めたのがShuttleのベアボーン、「XH170V」という製品でした。写真で旧マシン、NUCと並べて比較してみると大きさがよくわかりますよね。

ただし、諦めた点もいくつかありました。
・光学ドライブは内蔵できない
・USB 3.1は結局なし

といったところ。このPC、光学ドライブは装備可能なのですが、その場合HDDは2.5インチとの組み合わせになることが前提。3.5インチHDDにすると光学ドライブが使えないんですよね。まあ、最近はCD、DVD、Blu-rayなどを使うケースも頻繁ではないので、外付けドライブとすることにしました。


USB 3.1は必要になった時点でPCI Expressに挿すことに 

そしてもう一つのUSB 3.1については、世の中的にまだあまり標準化されてないんですかね!? これを搭載したマザーボード自体が少ないようで、探してもほとんど製品がないんです。これについては、必要になったところでPCI Expressのボードでも挿せばいいか、と見送った次第です。

マシンが確定したら、次は部品集めです。前回はベアボーン本体はAmazonが一番安かったので、ネット購入していましたが、それ以外は主に秋葉原のPCショップ。今回もまずはパーツごとに調べていきました。その結果、やはりShuttleのベアボーン、XH170V本体は26,503円とAmazonが最安値でした。次にCPUは最高速のCore i7 6700K(4GHz)にするか、1つグレードを落とした6700(3.4GHz)にするかで悩みました。


CPUはインテルのCore i7 6700に決定 

相場を見ると6700Kが4万円程度で、6700が3万6000円程度。1割の価格差だから6700Kにすべきかな……とは思ったのですが、今CPUのパワー不足は感じないし、今回の小さなボディーで、ファンもそれほど威力はなさそうなだから熱問題も考慮して、6700にしておきました。で、パーツチェックで、いつも愛用しているサハロフの秋葉原レポートや価格.comで調べてみると、やはり35,870円とAmazonが最安値でした。

※追記
実は、XH170Vは6700Kはサポートされていないことが分かりました。たまたま6700を選んだの正解だったようです。


CPUは大きなBOXに入っているけれど、ファンは不要なので使うのは小さなプロセッサ部分のみ 

続いてメモリ。こいつはいつもサハロフの秋葉原レポートを頼りに最安値のものをアキバでGETしてきたのですが、なんとこれもAmazonが最安値。選んだのはTrancendのノートPC用メモリPC3L-12800 DDR3L 1600 8GB×2というもの。これが7,423円なんですからちょっと驚きです。アキバ価格と大きな差があるわけではないですが、お店を回って、モノを探して、支払いをして……なんてことを考えれば、Amazonのクリック一発は楽ですからね…。

本体、CPU、メモリはAmazonで購入、HDDおよびSSDはアキバのショップで購入
一方、HDDは数日前にアキバのツクモで東芝の5TB(7200回転)のMD04ACA50Dというドライブを16,178円をバックアップ用に購入しており、ちょうどDドライブを丸ごとコピーしたところだったので、これを使うことにしました。また、唯一SSDドライブだけはアキバの東映無線がAmazonより少し安かったので、やはりTrancendのTS128MTS800という128GBのものを6,480円で、これを購入してみました。

それにしても、完成品のPCはともかくとして、いわゆるバルク品と流通していたようなPCパーツまでAmazonのほうが安いことには愕然としました。これじゃあ、いずれアキバのショップも経営的に危ないんじゃないか……と。「心配するくらいならAmazonなんかで買わず、アキバで買えよ!」という声は聞こえてきそうではありますが、やっぱり便利だし、安いとねぇ……。


M.2という規格の小さなSSDドライブ。これで128GBの容量がある 

ちなみに、今回初めて知ったのが、M.2という規格のSSD。旧マシンはSATA接続のドライブを2.5インチベイにマウントして使っていたのですが、今回のマシンではメモリなどと同様の小さな1枚のカードなんです。以前、NUCを組んだときはmSATAというものを使っていましたが、それとはまた違う新しい規格なんですね。浦島太郎気分ではありましたが、こうやって、久しぶりにPCを選定し、部品を購入すると、いろいろ勉強になりますね。

Amazonのほうは夜中に注文したところ、翌朝9時前に宅急便で届いて驚きました。その後、別の用事もあってアキバに出かけて上記のSSDを購入し、帰宅してからマシンを組み立てていきました。


本体のふたを開いて、中にCPUやメモリ、SSDなどをセットしていく 

日本語の組み立てマニュアルもあるので、これを見ながら組み立てたところ30分ほどで完成しました。実は、最初の最初、ICEモジュールというCPUの冷却モジュールを取り外すことができず、10分ほど戸惑ったのは事実です。


CPU冷却のためのICEモジュールをマザーボードから取り外せずに焦ったけれど……

念のために英語マニュアルを読んだら、ネジの回し方が左右逆に翻訳されていたことを発見し、事なきを得ました。その後はトラブルもなく、初心者がやっても1時間もかからずにできるだろうと思いましたよ。


メモリの取り付けもとっても簡単 

さっそく動作を確認しようと、PCにマウス、キーボード、ACアダプタを接続し、続いてディスプレイを接続しようと思ったら、また浦島太郎に……。このXH170Vは、3つものディスプレイに接続できて、4Kにも対応しているというのが売りだったのですが、DVI端子が見当たらないのです。


リアパネルを見ると、DVI端子がないことに気付いてビックリ…

よく見てみると見たことの名DP端子なるものが2つとHDMI端子。とりあえず、その場ではHDMIに接続して使いましたが、4K接続にはDP=DisplayPortというものを使うそうなんですね。


翌日購入したDP-DVI変換アダプタを使いFullHD対応ディスプレイへ接続した

調べてみるとDisplayPort-DVI変換アダプタというのが、やはりAmazonで850円であったので、これを注文。ついでに光学ドライブとしてBUFFALOのUSB2接続Blu-rayドライブBRXL-PC6VU2/Nというのが5,981円であったので、これもセットで注文しました。いずれも、やはりネットで調べる限り、Amazonが最安値だったんですよね。

メーカー 品名 購入店 価格
ベアボーン本体 Shuttle XH170V Amazon 26,503
CPU インテル I7 6700 BOX Amazon 35,870
メモリ Trancend DDR3L 1600 8GB×2 Amazon 7,423
HDD 東芝 MD04ACA50D 5TB ツクモ 16,178
SSD Trancend TS128MTS800 東映無線 6,480
光学ドライブ BUFFALO BRXL-PC6VU2/N Amazon 5,480
アダプタ Cyberplugs DP-DVI変換アダプタ Amazon 850
合計 98,784

以上、すべてをまとめるとトータル10万円弱ということになります。本来はこれにWindows 10のOSが必要になってきますが、私の手元には以前に購入したWindows 7やWindows 8があるので、これをいったんインストールして、Windows 10にアップグレード。今年の7月29日までなら無料で手に入るので、これを入手しない手はないですからね。


最後に3.5インチのHDDを組み込んで、完成 

ちなみに、現行のWindows 10であれば、DAWなどを動かす環境して、問題なく安定して動いてくれますよ!もっとも古いバージョンのDAWや一部古いオーディオインターフェイスなどの場合、動かないものもありますが、その点は自分の機材が使えるかをチェックしておいたほうがいいですね。


フロントパネルのカバーを開けると、USB 3.0×2、USB 2.0×2、マイク、ヘッドホンジャックなどが用意されている 

こうして組み上げたマシンは、いま快適に動いてくれています。オーディオインターフェイスとしてTASCAMのUS-2×2、US-4×4、ZOOMのUAC-2、SteinbergのUR22mkIIやUR242、RolandのQUAD-CAPTUREなど、一通り接続するとともに、Cubase Pro 8.5、ABILITY PRO 2、SONAR Platinum、Studio One 3.2なども動かしてみましたが、まったく問題なさそうです。まだ、細かなチェックまではできていませんが、ほぼ大丈夫ではないでしょうか。

では、これまでのマシンと比較して、何か変わったか、というと、実はあまり違いを感じません。確かにマシンが圧倒的に静かになったということはありますが、DAWを動かす上ではあまり違いはなさそうですね。

旧マシンのベンチマーク結果
そこでベンチマークテストをしてみました。ここでは、以前にも使ったWIN SCORE SHAREというフリーウェア(これ、波形編集ソフトのSoundEngine FREEと同じ作者によるソフトだったんですね!)でテストしたのですが、ちょっとガッカリ。旧マシンと新マシン、CPUに2世代も差があるのに、結果はほとんど変わりません。

新マシンのベンチマーク結果は従来のものとほとんど変わらなかった

もしかして、違うベンチマークなら……とCrystalMarkというソフトも使ってみましたが、これもやっぱり大差ない状況。ん~、なんかもうPCの処理能力は行きつくところまで来ちゃったんですかね…。


別のベンチマークテストのソフトを使ったけれど、結局あまり変わらず… 

なお、このマシンの消費電力も計ってみました。旧マシンであるHaswellでも十分低消費電力となっていたのですが、それから2世代進んでどう変わったのか。Windows 10を起動し、ブラウザでWebページを見ている程度なら20W前後と、従来より30%程度省電力化できています。さらにオーディオインターフェイスを接続し、DAWを動かして、ある程度のプラグインを使いながら再生すると35W程度。こちらもやはり省電力化されています。とはいえ、そもそも消費電力が少なくなっていたので、電気代で見るとわずかかもしれませんが……。


ブラウザを見ている程度なら20W前後、DAWを動かしても35W程度と超低消費電力マシンになっている

焦って新調することもなかったのかもしれませんが、近いうちに4Kディスプレイを購入するなど、このマシンの威力を徐々に味わっていければ…と思っているところです。

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