1万円のオーディオIF、M-TRACK 2×2と3万円のコンデンサマイクで挑戦。リハスタでハイレゾレコーディングしてみた!

先日「6,980円のマイクで33万円のプロ御用達U87Aiとどこまで張り合えるのか!?」という記事を書いて、結構な話題になりました。このときはニコニコ生放送/AbemaTV FRESH!の番組、DTMステーションPlus!での実験ということでかなり大胆なマイク比較をしてみたのですが、marantz Professionalの6,980円のマイクでも、結構いいサウンドでレコーディングできることが実証できました。

これに味を占め、このマイクの発売元でもあるinMusicに機材協力をいただいた上で、またちょっと面白い実験にチャレンジしてみました。誰もが気軽に使えるリハーサルスタジオでハイレゾレコーディングをしたら、どの程度のクォリティーになるのかというテスト。機材としてはオーディオインターフェイスに実売10,800円のM-AUDIOM-TRACK 2×2を、マイクには実売29,800円のMPM-3000という前回使ったワングレード上のものを用意して、たったこれだけでレコーディングしてみたのです。実際、どんな手順で作業していったのかを紹介するとともに、できあがったサウンドを、ここで公開したいと思います。

リハスタでハイレゾ・レコーディングにチャレンジしてみた!

今回のリハスタ・ハイレゾ・レコーディングに協力をしてくれたのは、シンガーソングライターのMaminoさんとギターリストの石川恭平さん。普段は各地でライブ活動をされているお二人に、渋谷にある「サウンドスタジオノア渋谷2号店」に来てもらい、ここでレコーディングのための演奏をお願いしたのです。


今回のレコーディング実験に協力してくれたMaminoさん(右)と石川恭平さん(左) 

使ったのはB3スタジオという14帖の部屋。平日の日中だったので、3時間で税込み4,762円というとっても嬉しい料金!もちろんレコーディングスタジオではないので、レコーディングのための機材などは何もありませんが、マイクスタンドなどは一通り揃っているし、机も貸してもらえたので、これらは使わせてもらいました。


オーディオインターフェイス、M-TRACK 2×2(手前)と小さなデスクトップPC(奥のワインレッドの機材) 

私が自宅から持ち込んだのは小さな小さなデスクトップPC(IntelのNUC、CPUはCore-i3、メモリ8GB)にM-TRACK 2×2付属のDAWであるCubase LE 8をインストールしたもの。ここにはやはり付属アプリであるAIRのプラグイン集なども一通り入っています。

今回の主役のマイク、marantz ProfessionalのMPM-3000
一方、inMusicからはM-TRACK 2×2とコンデンサマイクのMPM-3000を持ってきてもらったのですが、「せっかくなので使ってみて!」と以前にも取り上げた6,980円のマイクであるMPM-1000および、同じmarantz Professionalのリフレクション・フィルターSound Shield(実売価格は15,800円)、さらにM-AUDIOのモニターヘッドホン、M-50(実売価格は6,980円)も持ってきてくれたので、これらも併せて使ってみることにしました。

Maminoさんには、Sound Shieldを取り付けた状態で歌ってもらった

セッティング自体はいたって簡単。PCにUSBケーブルでM-TRACK 2×2と接続。そのM-TRACK 2×2のマイク入力端子に、マイクを繋げるだけですね。このオーディオインターフェイスにはギター入力端子があるので、エレアコであれば、ここに直結するというワザもあるのですが、今回はマイクの実力を存分に確認してみようという狙いからあえてこの端子は使用せず。すべてマイク録りとしたのです。

練習の意味も込めて、まずは6,980円のマイク、MPM-1000でレコーディング

どういう手順でレコーディングしていくか、Maminoさん、石川さんと相談したところ、「まずギターを録り、その後、それに重ねる形でボーカルを録る。いい感じであれば、そこにコーラスとかギターソロとかも重ねてみようか……」という要望が。

最初、石川さんからは「クリックを聴きながら、レコーディングしたい」という要望もあったのですが、「ハイレゾでのレコーディングだし、できるだけ自然な雰囲気を出したいので、クリック無しでどうですか?」と提案したところ受け入れていただき、何もない状況でレコーディングしていったのです。

まずはMPM-1000でギターのレコーディングから

ちなみに、Cubaseのプロジェクト設定としては32bitFLOAT96kHz。あとで多少の編集作業があっても、極力音を劣化させないために、32bitFLOATにチャレンジ。また、まずは練習用という意味も込めて、6,980円のマイク、MPM-1000でのレコーディングから始めてみました。感度のいいコンデンサマイクですから、もちろんレコーディング中はエアコンをオフにして、静かな状態で録っていきましたよ!

同じMPM-1000でMaminoさんがボーカルを重ねていく
演奏してくれたのはMaminoさんオリジナルの「運命の糸」という曲。「クリックないとハシってしまうかも……」と言ってた石川さんではありますが、ノーミスで一発で決めてくれました。プレイバックしてみると、さすが32bitFLAOT/96kHzだからなのか、マイクがいいのか、ものすごいリアリティーあるサウンドで録れていますね。

続いて同じMPM-1000を使いながら、マイクセッティング位置をボーカル用に変更。このトラックをバックにMaminoさんに歌ってもらいました。この際、ギタートラックはMaminoさんのヘッドホンに返すとともに、ボーカル入力に対しても軽くリバーブを掛ける形で返します。これらはすべてヘッドホンのみで鳴らし、スタジオ内のPAなどにはまったく音を出しません。これならリハスタであっても音が回り込む可能性を最小限に留めることができますから。

Maminoさんも上手いですね。こちらも一発で決めてくれました。Maminoさんからは、「これにハモりを入れたい」という要望が出たので、これはハモりのある位置の直前にロケーションを合わせ、必要な個所のみを3トラック目にレコーディング。3時間パックのスタジオなので、効率よく録らないと終わらないですからね。


ギターもソロパートを重ねていくことで一通り終了

さらに石川さんから、ソロも入れたいとのことだったので、再度マイクのセッティングを変更し、こちらもソロのある場所だけを4トラック目に録音していきました。

このハモりと、ギターソロのところは、それぞれ2回ずつレコーディングして、2回目のテイクを採用することに決定。そのデータを持ち帰り、私がCubase LE上で簡単にミックスし、24bit/96kHzで書き出した結果が以下のデータです。

「運命の糸」(マイク:MPM-1000) 24bit/96kHz wav
「運命の糸」(マイク:MPM-1000) MP3 128kbps 

いかがですか?かなりいい音で録れていると思いませんか?あえてコンプもEQも掛けず、録ったままの音。ミックス作業といっても、PANとレベルを調整したのと、リバーブの掛け具合を調整したシンプルなもの。音圧的に物足りないという方もいるかもしれませんが、せっかくのハイレゾサウンドですから、ダイナミックレンジを大切にして、音を一切潰さないというのもいいかな、と。ちなみに、ここで使っているリバーブはM-TRACK 2×2付属のAIRのプラグインセットに入っている、AIR Reverb x64というものですね。


リバーブはM-TRACK 2×2にバンドルされているAIR Reverbを使用 

ここまでのレコーディングが終わってから、本番(?)であるMPM-3000のレコーディングへ。最初のセッティングなどに多少時間がかかってしまったこともあり、その時点で時計を見ると2時間弱が経過していました。「やはり時間的に厳しそうだから、MPM-1000で録音したギタートラックは生かし、そこにMPM-3000のボーカルだけを別トラックにレコーディングしてみよう」と少し作戦変更。

今度はMPM-3000を使ってMaminoさんのボーカルをレコーディング
マイクを接続し直して、Maminoさんに歌ってもらったところ、今度はそれぞれ一発でOKに。みんな慣れてきたということもあったのかもしれませんが、予想外に時間も余ってしまいました。「だったら、やっぱりギターもMPM-3000で録ってみようよ」ということになり、またまた作戦を変更することになりました。

が、当初の話でクリックを入れていないので、ギターのイントロのスタート時点をどうタイミング合わせるかが難しいところ。ここは少し試行錯誤したのですが、私が「1、2、3、4」とカウントを数えるとともに、スタートボタンを押す形で何度かトライ。石川さんには、その先も無理やりMPM-1000でのれコーディオングに合わせながら弾いてもらったので、ややノリが悪くなった面があるのは否定できませんが、なんとか3時間の時間いっぱいでレコーディングを終えることができました。それが以下のデータです。

「運命の糸」(マイク:MPM-3000) 24bit/96kHz wav
「運命の糸」(マイク:MPM-3000) MP3 128kbps  

どうですか?こちらがMPM-3000のマイクで4トラック分をレコーディングしたものですが、先ほどのMPM-1000のものと比較して、サウンドは結構違うのがお分かりいただけるでしょうか?やはりMPM-1000でのギターのほうが、演奏的に勢いは感じるし、マイクの特性もあって、荒々しい感じではあるけど、少しノイジーであるという点もありそうです。


上のミューとしている4トラックがMPM-1000によるもの、下の4トラックがMPM-3000によるもの 

一方でボーカルのほうは、MPM-3000のほうが、明らかに声に伸びがあって、キレイですよね。これはMPM-1000とMPM-3000で、特性が異なるということとともにマイクの出力ゲインが結構違い、MPM-1000ではM-TRACK 2×2のマイクプリアンプのレベルをかなり上げていることにも起因していると思います。好みの問題かもしれませんが、やっぱりクオリティーはMPM-3000が断然上かな、と。

このようにして、リハスタでの3時間パックでのレコーディングは無事終わったのですが、Maminoさん、石川さんはその日のために、もう1曲を用意していたとのこと。チラッとだけ聴かせてもらったら、これがまたとってもいい曲だったんですよ。


1時間の休憩の後、再度スタジオノアのB3スタジオへ

ちょっと予算オーバーにはなるけれど、スタジオの時間延長をお願いしてみたら、別の方の個人練習の予約が入っているので、延長は不可とのこと。「1時間後であれば、空いてますが、もう夕方なのでパック料金は適用されず、通常料金で1時間3、348円です」と。まあ、こんな機会も滅多にないので、1時間の休憩を挟み、2時間追加してもう1曲チャレンジしてみることにしました。


ギター、ボーカルのレコーディング終了後、Maminoさん、鍵盤ハーモニカを使ったパートも録音

今度は、先ほどの反省(!?)からクリックを入れてレコーディング。時間に余裕があるわけではないから、MPM-3000だけでギター、ボーカルをそれぞれ2トラックずつレコーディングするとともに、Maminoさんが鍵盤ハーモニカもプレイして、計5トラックという構成でレコーディングしましたよ。


レコーディングからミックスまで、すべてM-TRACK 2×2付属のCubase LE 8で仕上げた

手法としては、先ほどとまったく同じで、Cubase LE 8に32bitFLAOT/96kHzでレコーディングし、私が自宅に持ち帰って簡単ミックス。この先、ミックスした状態をすぐにMP3で書き出すとともに、Facebookのメッセージを使って石川さん、Maminoさんに聴いてもらい、気になるところを少し調整して、再度確認…ということを繰り返し、完成させたものです。

「雨があがったら」(マイク:MPM-3000) 24bit/96kHz wav
「雨があがったら」(マイク:MPM-3000) MP3 128kbps  

リフレクション・フィルターとM-AUDIOのモニターヘッドホンは使いましたが、基本的には10,800円のオーディオインターフェイス、M-TRACK 2×2と、29,800円のマイクMPM-3000だけを使い、リハスタでハイレゾレコーディングができたわけですから、なかなか面白いとですよね。


レコーディングのモニターに使っていたのがM-AUDIOのヘッドホン、M-50 

 
巷では「ニセレゾ」なんて言われるコンテンツが流通する昨今、自分だけの本当のハイレゾ作品を作ってみるというのも、DTMの新しい楽しみ方だと思いませんか?

なお、ここでレコーディングした作品の試聴会が、10月8日、13時から、inMusic協力のもと、e☆イヤホンにて開催されることになりました。この試聴会に参加された方には、データダウンロードコードが無料配布されるとのことですので、お時間ある方はぜひ参加してみてくださいね。
【価格チェック】
◎Amazon ⇒ M-TRACK 2×2
◎サウンドハウス ⇒ M-TRACK 2×2
◎Amazon ⇒ MPM-1000
◎サウンドハウス ⇒ MPM-1000
◎Amazon ⇒ MPM-3000
◎サウンドハウス ⇒ MPM-3000
Amazon ⇒ M-AUDIO M-50
サウンドハウス ⇒ M-AUDIO M-50
Amazon ⇒ Sound Shield
サウンドハウス ⇒ Sound Shield

【関連情報】
M-TRACK 2×2製品情報 
MPM-1000製品情報
MPM-3000製品情報
M-AUDIO M-50製品情報
Sound Shield製品情報
Maminoのブログ
ギタリスト・石川恭平のブログ
【試聴会】
日時:10月8日 13:00 ~ 17:00
場所: e☆イヤホン秋葉原店 〒101-0021 東京都千代田区外神田4-6-7 カンダエイトビル
参加費:無料

モバイルバージョンを終了