今さら!?今ごろ!?でもやっぱり正しかったReason 9.5のVST対応

5月29日、スウェーデンのPropellerhead Software(プロペラヘッド・ソフトウェア)からReasonの新バージョン、Reason 9.5がリリースされました。Reason 9からのマイナーバージョンアップということで、Reason 9ユーザーは無償アップデートが可能となっているのですが、2000年登場のReason史上でいうと、まさに画期的なバージョンアップとなっています。

というのも、これまで禁断とされてきたVSTプラグインに対応してしまったのです。1か月前に「ReasonがVST対応する」というニュースが流れたときには「ええ?今さらか?」とも思いましたが、現時点のDTMでVST対応って当たり前の話すぎて、本来話題にもならないようなネタ。でもReasonだけはちょっと特別でもあるんですよね。このリリースされたばかりのReason 9.5をちょっと使ってみたので紹介してみたいと思います。

ついにVSTプラグイン対応したReason 9.5がリリースされた


最近DTMを始めた、というような方だと、そもそもPropellerhead SoftwareのReasonといってもピンとこないかもしれません。また名前は聞いたことはあるけれど、どんなソフトなのかよく知らないという人も少なくないと思うので、まずは簡単にReasonについて紹介しておきましょう。

ラックマウント型のシステムであるのが最大の特徴のPropellerheadのReason
これはもともと統合型ソフトウェアシンセサイザなどと呼ばれたソフトであり、最近ではDAWとして位置づけられるケースもありますが、CubaseやStudio One、Pro Tools、SONAR、Ability……といったいわゆるDAWとはちょっと雰囲気の異なるソフトです。

アナログシンセやドラムマシンなど、さまざまな音源、エフェクトがラックマウント型のモジュールとして用意されている

というのもこのReasonの中枢にあるのがラックなんです。そう、箱型の機材をマウントするラックがあり、ここにアナログシンセやサンプラー、グラニュラーシンセ、ドラムマシンといった音源、さらにはディレイ、ディストーション、リバーブ、コーラス……といったエフェクトを組み込んで使うソフトとなっているのです。

ラックの裏側を見るとケーブルがぶらん・ぶらんと揺れながら接続されている

この考え方、見た目、使い勝手は2000年の登場したときからまったく変わっていません。TABキーを押すとラックの裏側が見えて、ここに数多くのケーブルがぶら下がり、ぶらん・ぶらんと揺れるアニメーションが表示されるのも昔から。もちろん、このケーブルはちゃんと意味を持っており、接続先を変更すれば、それによって信号の流れも変わり、音も変わっていく仕掛けになっています。こんなものが17年も前に登場したのはやっぱり画期的でしたし、今でもReasonを初めて見たときの衝撃は忘れません。

MIDIシーケンス機能も搭載されており、Reasonだけで楽曲制作ができるのが当初からの売りだった
このReasonにはMIDIシーケンサ機能も装備されていたので、このラックにシンセやエフェクトを組み込んで、シーケンサを動かすことで曲を作っていくというのがReasonのもともとのコンセプトであり、その基本は今も変わっていませんが、時代とともに、機能も進化していったのです。その過程で、オーディオのレコーディングができるようになり、大規模なミキシングコンソールが装備されるようになり、Reasonだけで何でもできるようになっていったのです。

ただ、この長いReasonの歴史の中で、頑なに拒否してきたのが、プラグインへの対応でした。10年前に、当時のPropellerheadの社長兼CEOであるErnst Nathorist-Boosさんとマーケティング担当の副社長のTimothy SelfさんにAllAboutの記事でインタビューしたことがありましたが、そのときのやり取りが以下のものでした。

藤本:個人的にReasonがすごいなと感じているもうひとつに、プラグイン全盛の中で、あくまでも独自のデバイスで完結させていたことです。普通ならバージョンアップなどの段階で、プラグイン対応したり、DAW化していきそうなイメージですが、あえてReason独自の世界にこだわったことがよかったんだと思います。

Ernst:もう、本当にユーザーからいつも、いつも言われていますよ。「VSTプラグインに対応しないのか?」ってね(笑)。でもReasonはこれ自体が楽器なんです。もちろんラックという概念を取り入れたのが大きな特徴ですが、その音源にも自信を持っているので、こうしているのです。

Timothy:一方、DAWはCubaseやProTools、SONARなど、いろいろないいものがあるじゃないですか。それと敢えて競合させる必要はなく、お互い協調できるソフトとしてReasonは存在しています。だからこそReWireといった技術も最初から備えているし、REX、REMOTEなども使って互換性を高めているわけです。

そうReWireはPropellerheadがReasonを他のDAWと連携させるために開発したものであり、それがあるからプラグインは不要である、と言い切っていたんですよね。おそらく、その当時だって、ReasonをVST対応させることは難しいことではなかったと思うのですが、それがReasonのポリシーであり、存在理由でもあると、していたんですよね。

Rack Extension対応デバイスとしてKORGが出したPolysix

とはいえ、ユーザーからも、周辺からもプラグイン対応については、ずっと言われ続けてきたんだろうと思います。そこでせめて拡張機能は持たせようということで、2012年のReason 6.5で「Rack Extension」という仕様が公開され、デバイスの追加ができるようになりました。その結果、KORGがPolysixなどを出すようになったのですが、あくまでもReason専用の拡張機能だったので、今ひとつパッとしない印象はありました。

環境設定画面でVSTプラグインフォルダを指定する。が、これも基本的には自動で見つかる

そうした中、ついにReasonが禁断のVSTプラグインに手を出してしまったんですよね。Reasonの世界観を壊すことになるからプラグインには対応しない、と言っていたのに……。本当に「今さら」であり「今ごろ」であるわけですが、「ようやく」でもあるんです。そしてReason 9からReason 9.5へのバージョンアップでの進化点は「ほぼVST対応だけ」。この時代にVST対応がニュースになるなんて、ほかのソフトでは考えられないですからね。

インストゥルメントもエフェクトも、VST Pluginsとして一覧表示されるのでこれをラックへドロップするだけ

で、使ってみました。ちょっと心配していた「世界観が崩れる」とか「デザイン的にマッチしない」なんてことはなく、ものすごくスマートに収まっているんですよ。ほかのソフトと同様、環境設定においてVSTプラグインのあるフォルダを指定しておけば、もうそれで使えるようになります。


リアもVSTプラグインがスマートに接続されている

もちろんVSTインストゥルメントもVSTエフェクトも使えるようになり、それぞれReasonのインストゥルメント一覧の下、エフェクト一覧の下に組み込んだVSTプラグインが並びます。まあ、アイコンは表示されず、素朴にVST Pluginと書かれているだけなのですが、これをドラッグ&ドロップでラックにもっていっても、ラックにはいきなり各プラグインのデザイン画面が表示されるのではなく、Reasonデザインのシンプルなデバイスが組み込まれるだけです。


組み込んだラックをクリックするとVSTプラグインの画面が現れる

ここで、このデバイスをクリックして初めて、各プラグインが表示されるんですね。使い方はほかの音源やエフェクトと同様。組み込めば自動的にパッチ接続されて、MIDIキーボードを弾けば演奏できるし、エフェクトをかけることも可能。とってもスッキリとうまくできています。

プラグインの各パラメータをCVに割り当ててコントロールすることも可能
また各パラメータをシーケンサなどからコントロールしたいというときはCV PROGRAMMERというパネルを開くことで、アサインしていくことが可能です。ここまできれいに作れるのなら、Reasonの最初のころのバージョンで対応していてもよかったのでは……と思ってしまいますが、17年が経過して、ついに世の中の潮流に乗らなくては……と考えたということなんですかね。

Dotec-Audioもいち早くReason 9.5への正式対応をアナウンスしていた
ちなみに、あのDeeMaxなどを開発・販売しているDotec-Audioは、Reason 9.5リリース直後に、いち早く問題なく動作することを発表していましたが、ほかのプラグインもいくつか試してみたところ、どれもほぼ問題なく動作するようです。


組み込んだプラグインは一覧表示される。ただし32bitVSTは基本的に対象外

ただし、Reason 9.5は64bit版となっているため、32bitプラグインは使うことはできません。jBridgeなどを使うことで、無理やり使うことは可能のようですが、下手なトラブルを起こさないためにも64bitプラグインだけに絞るのがいいのではないでしょうか?


メニューを見ると「VSTデバイスのキーボードショートカットを有効化」といったものも用意されていた

以上、ごく簡単ではありますがReason 9.5のVSTプラグイン対応についてレポートしてみました。問題は最近、影が薄くなってきていたReasonがこれで脚光を浴びて、また第一線の制作ツールとして利用されるようになるのか、という点。個人的には、Reasonはすごく使いやすいツールだと思うし、これでネックだった拡張性、VST対応もクリアしたので、とてもいいものになったと思うので、また見直されるべきではないかな…なんて思っているところでs。

まだReasonを使ったことがないという人も、この機会にデモ版の入手して試すことから始めてみてはいかがでしょうか?

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【関連サイト】
Propellerhead日本語サイト

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