NIからMIDI 2.0対応のキーボードコントローラ、Kontrol S-Series MK3が発表。Kontaktからの直接連携も可能に

9月12日、Native Instrumentsからキーボードコントローラの最上位モデル、Kontrol S-Series MK3が3モデル発表され、予約受付も開始されました。今回発表されたのは49鍵モデルのKontrol S49 MK3(税込メーカー希望小売価格:107,400円)、61鍵モデルのKontrol S61 MK3(同:121,700円)、そして88鍵モデルのKontrol S88 MK3(同:186,200円)のそれぞれで、出荷は10月中旬ごろとのこと。詳細はまだハッキリわからないものの、MIDI 2.0対応を打ち出しており、DTMの世界に大きな衝撃を与えそうです。

3モデルともイタリアの鍵盤メーカー、Fatar社製のキーベッドを利用した高級機であり、多くのプロミュージシャンからも評価が高いキーボードの第3世代モデルという位置づけです。これまでKOMPLETE KONTROL S-Seriesと呼ばれていたのが、今回名称からKOMPLETEが消える一方、Komplete Kontrolソフトウェアなしに、Kontaktから直接利用できるようになったのも大きな特徴。また高解像度のフルカラーディスプレイを搭載するとともに、アルマイト処理されたアルミニウム製のノブやピッチベンドホイール、モジュレーションホイールを搭載しているのもポイントとなっています。先日、内覧会が行われ、その実物を見てきたので、Kontrol S-Series MK3とはどんなものなのか、紹介してみたいと思います。

Native Instrumentsからキーボードコントローラの最上位モデル、Kontrol S-Series MK3が3モデル発表

NIの最上位シリーズとしてのKontrol S-Series MK3

Kontrol S-Series(KOMPLETE KONTROL S-Series)は、2014年に初代製品(MK1)が登場しました。これによりKOMPLETEインストゥルメントをブラウズ、コントロールすることができ、あたかもハードウェアのシンセサイザを操作しているような感覚で、ソフトウェア音源を演奏することができるという画期的な方法が確立されました。また、KOMPLETEのアーティキュレーションスイッチに相当する鍵盤をLEDでガイドしてくれる、という点も非常に便利で、多くのKOMPLETEユーザーが導入を進めて行きました。
その後、2015年にNKS(Native Kontrol Standard)という規格が誕生。Kontrol S-Seriesの機能をオープンすることにより、サードパーティ製の音源であっても、NI製品同様、ハードウェアとソフトウェア間をシームレスに扱えるようになり、これまで以上に注目される製品となっていったのです。

MIDI 2.0に対応し、Kontaktからの直接連携も可能になった

その後、2017年にMK1からの大幅アップデートされたKOMPLETE KONTROL MK2が登場し、Komplete Kontrolソフトウェアの演奏以外にも、DAWのトランスポーズやミキシングも行える、スマートキーボードへと進化しました。そして今回、KOMPLETE KONTROL S-Series(KKS)改め、Kontrol S-Series(KS) MK3が誕生しました。NIロゴも従来のものから新しいデザインに変わり、新生NI機材として登場したのです。ちなみにこのKontrol S-Seriesは、KOMPLETE KONTROL A(KKA)シリーズ、KOMPLETE KONTROL(KKM) Mシリーズの上位モデルであり、NI製品の中で最上位のモデル、という位置づけになっています。

新製品であるKontrol S61 MK3(上)と従来製品であるKOMPLETE KONTROL S61 MK2(下)

ラインナップは、セミウェイトキーの49鍵モデルKontrol S49 MK3、61鍵モデルKontrol S61 MK3、ハンマーアクションキーの88鍵モデルKontrol S88。すべての機種にFatar社製のキーベッドを採用しています。なお、MK1のころに存在していた25鍵盤モデルは、MK2にもありませんでしたが、MK3でも復活はしていないです。そして、Kontrol S-Series MK3では、シリーズ初Fatar社共同開発のポリフォニックアフタータッチ鍵盤を採用。和音それぞれを個別にモジュレーションして変化させる、といったことのできるMIDI 2.0に対応しています。詳しくは後述していますが、これによりさらに演奏の幅が広がりました。

大型ディスプレイ、アルミニウム製のホイールやノブを搭載

ディスプレイは、MK2に採用された2つのカラーディスプレイから、大型の高解像度フルカラーディスプレイに変更され、ステージなどの暗い環境下でも高い視認性を確保しています。またスケールやキースイッチを光で示す、ライトガイドのデザインも見直され、ピッチ、モジュレーションホイール、タッチストリップ、エンコーダー周りにもLEDを搭載。さらにノブ、エンコーダー、ホイールは、アルマイト処理されたアルミニウム製となり、高級感のある仕上がりとなっています。ボタン類は防塵加工が行われ、ボタンの隙間にホコリなどが入らないような工夫も施されています。

ホイール、ツマミ類はアルマイト処理されたアルミニウム製となり、ボタン類は防塵のボタンアイランドという加工が施されている

またタッチストリップの位置がピッチベンド・モジュレーションホイールの上部に移動しています。これは激しく演奏しているとタッチストリップに触れてしまうというケースがあると、ユーザーからの要望があったからとのこと。こういった細かいところまでもKontrol S-Series MK3では改善し、デザインされているそうです。

タッチストリップの位置がピッチベンド・モジュレーションホイールの上部に移動した

ほかにも端子類のアップデートが行われ、USB MIDI・USB-Cバスパワーに対応。加えて、サステイン、エクスプレッション、2つの割り当て可能なペダル入力を装備しました。

Kontrol S-Series MK3(上)とKOMPLETE KONTROL MK2(下)の端子比較。USB-C端子が搭載され、ペダル入力が増設された

MIDI 2.0対応を打ち出したKontrol S-Series MK3

さて、今回のKontrol S-Series MK3、Native Instrumentsの発表資料を見ると、小さく記載されているだけなのですが、DTMステーション的に最大のニュースとして捉えられるのは、このキーボードがMIDI 2.0対応である、ということです。

MIDI 2.0については、DTMステーションでも「日米合意でMIDI 2.0が正式規格としてリリース。MIDI 2.0で変わる新たな電子楽器の世界」、「MIDIが38年ぶりのバージョンアップでMIDI 2.0に。従来のMIDI 1.0との互換性を保ちつつ機能強化」、「MIDI 2.0の詳細が発表!MIDI 1.0との互換性を保ちつつベロシティーは128段階から65,536段階に、ピッチベンドも32bit化など、より高解像度に」といった記事で取り上げてきましたが、発表から4年近くたっても、なかなか具体的な製品が出ていないのが実情です。

日本のAMEIとアメリカのMMAが2020年に合意した規格、MIDI 2.0

MIDI 2.0の発表当初からRolandが同社のキーボード、A-88MK2をファームウェアアップデートでMIDI 2.0対応させる、という発表をしているものの、2023年9月現在まだそのファームウェアが出てきていない、というのも実情。そんな中、各楽器メーカーを押しのけて、Native InstrumentsがMIDI 2.0対応を打ち出したというのは一大事件なのでは…と思っています。

フランスのExpressive Eが先日発表したOsmoseがMIDI 2.0対応を匂わせてはいるものの、こちらも正式にMIDI 2.0と言っていないので、おそらく正式にMIDI 2.0を打ち出した最初の製品になるのではないでしょうか?

もっともNative Instrumentsも「MIDI 2.0対応」という情報以外は何も言ってないので、何がどう対応しているのかはよく分からないのが実情。ただ発表資料に「次世代NKSテクノロジーによる比類のないソフトウェア統合により、Kontakt、パートナー社の音源、エフェクト、サウンドとのダイレクトで没入感のある連携が可能」とあるので、ここにMIDI 2.0が何らかで絡んでいる可能性もありそうです。

そうなると今後はKOMPLETEそのもののMIDI 2.0も焦点となってきそうですが、こちらは現状すぐに対応というわけではないと思います。他社ではありますがソフトウェア音源としてMIDI 2.0対応を打ち出しているものとして、先日「MIDI 2.0に対応した初の音源!?新世代RGBエンジン搭載のバーチャル・ピアノ、Ivory 3 German Dが発売開始」という記事で紹介したIvory 3がありますが、ぜひこの辺との互換性などもチェックしていければと思っているところです。

Kontaktと直接連携可能に

Komplete Kontrolのスピーディーなブラウジング、バーチャルシンセやライブラリのパラメータ調整、コントロールなど、より高速なナビゲーションが可能になったKontrol S-Series MK3。さらに、これまではKomplete Kontrolを経由するのが基本でしたが、Kontaktと直接やりとり可能になりました。もちろん、これまで同様にDAWのトランスポート機能、ミキサーなどのコントロールも行えます。

Kontaktと直接やりとり可能になり、より便利になった

Komplete Selectなどがバンドル

今回、Kontrol S-Series MK3に付属されているソフトウェアは以下の6種類です。

Komplete Select
Komplete Kontrol ソフトウェア
Stradivari Cello
Guitar Rig LE
Elements Suite
Hypha

Kontrol S-Series MK3を購入する人であれば、すでにKOMPLETEシリーズを持っている人が大半なのでは……とも思いますが、Komplete Selectも入っているので、今回初めてNative Instruments製品を導入する、という人でも、それなりの数のインストゥルメントやエフェクトがカバーされることになります。また博物館に飾られていた本物のストラディバリウスを収録した音源Stradivari Celloをはじめ、Guitar Rig LE、 iZotope Elements Suite、Hyphaといった、MK2ではバンドルされていなかった製品も、Kontrol S-Series MK3には付属しています。

Stradivari Cello、Guitar Rig LE、 iZotope Elements Suite、Hyphaといった製品も、Kontrol S-Series MK3には付属している

さらに国内でプリオーダーした人は、6種のプラグインバンドルMI Plugin Pack 2023もゲット可能。ここには、 以下の6つの製品がバンドルされています。

Mntra Pripyat
UJAM Virtual Guitarist SILK
Cinesamples Musio 3ヶ月ライセンス
Audiomovers LISTENTO Pro 1ヶ月ライセンス
Inject 1ヶ月ライセンス
Omnibus 1ヶ月ライセンス

以上、Kontrol S-Series MK3の概要を紹介しました。詳細はまだわらないもののMIDI 2.0対応を打ち出しているので、そのうちNIからMIDI 2.0対応の音源も続々誕生するのでは、と思います。バンドル製品も増え、自宅でもステージでもより使いやすくなったKontrol S-Series MK3をぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。

【関連情報】
Kontrol S-Series MK3製品情報

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