画期的プラグインを次々と生み出す日本のプラグインメーカー、Dotec-Audio(ドーテック・オーディオ)。最近では海外でも着実に実績を上げてきているようで、あの無敵のマキシマイザー、DeeMaxは国内外問わず大人気となっています。これまでDeeMaxのほか、太い音を作るDeeFat、強力なコンプDeeComp、オートメーションを書かなくて済む魔法のプラグインDeeTrimなど、誰もが驚く強力なエフェクトが生み出されてきたわけですが、ここにきてまた新たなエフェクトが誕生しました。

今回登場したのは、セミ・オートイコライザーのDeeEQというもの。ミックスダウン時やマスタリング時のEQを掛ける際のプロのテクニック・ノウハウを人工知能的に詰め込んだことで、ユーザーは感覚的に操作するだけで、いい具合の音に仕上げることができるという魔法のツールなんです。これが、どんな仕組みなのか、これまでのEQとどう違うのかなど、開発者であるDotec-Audioのフランク重虎さん、飯島進仁さんに話を伺ってみました。


Dotec-Audioの新製品、DeeEQが誕生。 Photo by らいと 
EQ=イコライザというと、オーディオ機器にも入っているもっともポピュラーなエフェクトでありながらも、どう使うと効果的なのかは、なかなか難しい奥の深いエフェクトです。主には周波数帯域ごとに上げたり、下げたりできるグラフィックEQと、特定の帯域にポイントを絞った上でブーストしたり、抑圧していくパラメトリックEQの2種類がありますが、今回登場したDeeEQは、これらとはかなり違ったユーザーインターフェイスとなっています。

基本的にはこれまでのDotec-Audioのソフトと同様、1パラメータでグイッと操作できる一方、もうちょっと低域を持ち上げたいとか、高域をちょっとだけ抑えたいなど、音の雰囲気を感覚的に捉えて操作できるよう、もう1つパラメータを用意した2パラメータ方式となっているんです。

とはいえ、「2パラメータでEQを操作するって、どういうこと?」と不思議に思う方も多いと思うので、まずは以下のビデオをご覧ください。



どうですか?これまでのEQの常識を覆す、トンでもないEQであることがお分かりいただけたのではないでしょうか?実際、どんな仕掛けになっていて、どうやって使うのかお二人に聞いていきましょう。


Dotec-Audioの飯島進仁さん(左)とフランク重虎さん(右) 

--また、すごいプラグインを作っちゃいましたね!
重虎:これまで作ったDeeMaxもDeeFatも、「知識がまったくなくても、1ノブ操作ですぐに使える」というコンセプトで作ってきたので、そんなEQができれば……と思って考えて作ったのがDeeEQなんです。EQなのに縦のスライダーと横のスライダーが1つずつという今までにないアプローチのプラグインになりました。プロの現場では、「220Hzを3dB下げたい」、「2.4kHzを2dB上げるといいかな」なんて会話とともに、細かな操作をしていくのですが、やはり経験がないとなかなか難しいものです。でも音を聴けば、「もうちょっと高音が欲しい」とか「もこもこした低域をもう少し抑えたい」といった思いは、DTMユーザーなら誰でも持つのではないでしょうか?そんな思いを直感的な操作で実現できるのが、DeeEQなんです。


普通のパラメトリックEQ(右)なら、経験を元に、かなり複雑な操作が必要なところ、DeeEQ(左)なら感覚で簡単操作

--でもEQって、本当にさまざまな使い方があるじゃないですか?これは万能なEQということなんですか?
重虎:たとえば低域と高域をバッサリカットしてラジオボイスを作る、といったエフェクト的なものは、ここでは対象としていません。DeeEQが狙っているのは、あくまでも最終的な音作りです。作品を作ってみたけど、なんとなく高域がキンキンしているとか、モコモコした低域が気になる…というようなところをEQでキレイにして、整えることを目的としているんです。だから、各トラックの最終段で使ったり、マスターコンプの手前や、マルチバンドコンプで抑えたところに味付けとして使うEQということですね。
 

縦のスライダーと横のスライダーの2つのパラメータだけで操作できてしまうDeeEQ 

--なるほど、使ってみるとすごくいい感じに効いてくれますね。もちろん自分で作った曲に使うのが本来なんだとは思いますが、CDなど、既存の曲に掛けても、気持ちいいですね。
重虎:はい、縦のスライダーを使ってブーストしても、上がって欲しくない帯域は、全体の増量分に合わせてうまいこと下げ、カットするときも、質感を損なわず、音やせせずに下げる。オイシイところだけをいじるようにしているんですよ。またDeeEQの特徴は、主に低域、高域を調整するようにしていて、あえて中域はほとんど触らないようにしていることです。初心者はよく中域をブーストさせて、全体を壊してしまいがちですが、最終段のEQではなるべくいじるところを最小限にするのがポイント。だから、DeeEQでも真ん中はいじっていないんです。もちろん、初心者だけでなく、プロの方に使っていただくのもいいと思います。多くのプロのエンジニアが行っているのと同様の調整を自動で行うのですから、作業の手間が大幅に省けると思いますよ。


ミュージシャンとして活躍する一方、Deeシリーズのエンジンを自ら開発するフランク重虎さん

--操作は、これまでのDeeMaxやDeeFatと同じように簡単ですが、内部的には結構複雑なことをやっているということなんですか?
重虎:そうですね。たとえばちょっとブーストするだけなら、あるポイントを軽く持ち上げればいいのですが、さらにもう少し上げると、複数のポイントを設定してそれぞれ持ち上げたり、下げたりといった調整を内部的に行い、シームレスに繋いでいるんですよ。もう少し具体的いいうと、6kHz以上をハイシェルフで持ち上げ、出過ぎる場合はローパスを16kHzあたりに掛けるとか、低域を持ち上げる際は120Hzとか300Hzとか、こもった音の部分をパラEQで下げるといったことを内部的にしているんですよ。


ハイを下げるといった操作も単にカットするだけでなく、ローを微妙に調整することがあるが、そんな操作もDeeEQなら簡単 

--その辺、もう少し種明かしをしてもらってもいいでしょうか?
重虎:たとえば低音を上げようという場合、普通はベースとキックドラムを中心に主張したいということになりますが、その場合、美味しく聴こえるポイントというのがあるんです。キックの下のアタック感を強調しつつ、ベースの音域キックの音程的にぶつかる部分を少し下げてやらないと、もこもこした質感になってしまいます。それをパラEQを使ってストーンと切ってやるんですね。さらに低音の温かみというのも重要になってきます。それは、どの音楽ジャンルの曲でも、ルートキーが違っても共通するところがあるので、そこをほどよくブーストしてあげる。そのブースト量も3dB上げるのか、グイッと8dB上げるかで、バランスが変わってくるので、その微調整なんかも行っているんですよ。

--なかなか複雑そうですね。それが、単純なパラメータだけで操作できるというのはスゴイです。でもEQって、モニター環境によっても、操作に違いが出たりしやすいですよね。
重虎:自分の買ったヘッドホンがいいと思って、それに合わせたEQ処理をした後、スピーカーで聴いたらずいぶん変な音になっていた……ということはありがちです。知識や経験があれば、そうしたモニター環境の違いをある程度勘案して作業することができますが、多くのDTMユーザーの場合、なかなか難しい面があると思います。なので、モニター環境の問題を不安に感じることなく、ぜひDeeEQを信じて使っていただければと思います。

(以下、追記:2016.10.18 20時)
--ところで、先日iZotopeからNeutronというすべて自動で行うプラグインが出ましたが、DeeEQはこれとかなり競合するのではないでしょうか?
重虎:Neutronは私も試してみましたが、とってもよくできていて面白いですね。NeutronのEQ部分は、全自動のフルオートEQもしくはマニュアル、一方のDeeEQはセミオートEQという違いがあるんです。当初DeeEQもフルオートにしようかとも考えましたが、どうしても機械では判別できない「作り手の好み」があります。そして、その好みが音楽的にも大変重要な要素だと思い、DeeEQはセミオートにしたのです。ちょうど、DeeEQのベータ版ができたころに、Neutronが発表されたので、違う方向性のソフトでよかった、とも思いました(苦笑)。

--つまりDeeEQはNeutronと競合する敵ではない、と?
重虎:まったく敵対感なんてないですよ!むしろDeeEQとNeutronをうまく使い分けて利用してもらいたいな、と思っています。自由に組み合わせてこそプラグインなんですから。
(ここまで)

重虎さんが開発したエンジン部分をVST/AUのプラグインへ実装する飯島進仁さん

--そういえば、今回のUIは、今までとずいぶん違って、おとなしいというか、サッパリしているというか……。
飯島:DeeMaxが金属的でマッドな感じ、DeeFatが光モノでキラキラな感じだったので、次はどうしようか……と考えていたんです。そこで出てきたのが80年代の電気製品のイメージです。ゲームウォッチであったり、ハンドヘルドコンピュータのような、白黒の液晶=LCDを搭載したもの。ドットマトリクスじゃないLCDを搭載したプラグインなんて今まで見たことないし、バカっぽくて面白いんじゃないかなって、重虎さんとも相談したんですよね。そうしたコンセプトを今回もデザイナーの出雲重機さんにじっくりと伝えたところ、まさにイメージ通りのものが上がってきたわけです。


DeeEQの中枢部分にLCD風な画面が搭載されている

--このLCD、質感が笑えるほどよくできてますね!微妙に滲んだ雰囲気だったり、ロゴの印刷したような雰囲気だったり……。
飯島:出雲重機さんが、我々の意図を十分にくみ取ってくれた結果、うまい具合にできましたね。DeeFatでの派手なグライコ風画面と同様、LCD部分には、それほど深い意味はないんですけどね。
重虎:中域はいじらないから、メインのスライダーを下げれば、かまぼこがたに上と下がカットされ、スライダーを持ち上げればV字型になる。また、その際に横のスライダーの位置によって、低域、高域がどうなるかを示しているんですけど、まあ、それほど厳密なものではなく、デザインですね(笑)。

--そしてやっぱり気になるのはDeeEQの価格です。
飯島:これもDeeMaxやDeeFatと同様に49ドルです。もちろん、シリアルキー割引もあるので、これまでDotec-AudioのDeeシリーズ製品を購入いただいた方は15ドル引きで購入できるようになっています。また先日より、郵便振り込み・銀行振り込みにも対応するようにしまして、その場合は日本円で5,000円となっています。


今回のM3でのDeeシリーズ、イメージ写真 Photo by らいと

--確かにこれまでクレジットカードでしか対応していなかったから、買いたくても購入できなかった人も少なくなさそうですよね。
飯島:そうなんですよ。前回、M3(音系・メディアミックス同人即売会)に出展したときにいらしてくれたお客さんの声を聞いても、その辺を強く実感しました。そのM3がまた10月30日にあるので、今回もDotec-Audioとして出展するとともに、このDeeEQはもちろん、DeeMax、DeeFat、DeeComp、DeeTrimなど、各Deeシリーズを特別価格で販売する予定です。ぜひ、M3ブースでお待ちしております。

--ありがとうございました。

このDeeEQだけでなく、DeeMaxやDeeFatを組み合わせて使う場合、どうするのが効果的なのか、Deeシリーズ同士の関係性も気になるところ。その辺は、さすがに実際に音を出しながらでないと、なかなかつかみにくいところですが、フランク重虎さん、飯島進仁さんにお願いしたところ、M3後の11月8日、ニコニコ生放送(11月12日のAbemaTV FRESH!)のDTMステーションPlus!にゲスト出演していただけることになりました。そこでも、じっくりとレクチャーしていただこうと思っていますので、すでにDeeシリーズをお使いの方も、ちょっと興味があるという方も、ぜひご覧になってみてください。

DeeMaxダウンロード
DeeFatダウンロード

Dotec-Audioサイト

【DTMステーションPlus!放送】
11月8日 21:00~ ニコニコ生放送 第68回DTMステーションPlus!
11月12日 21:00~ AbemaTV FRESH! 第68回DTMステーションPlus!

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