これでモニタースピーカーは不要!? あのDeeMaxの姉妹プラグインDeeSpeakerが無料配布

ああ、あのマキシマイザーでしょ!」とレバーを持ち上げるポーズをしながら話題にする人をよく見かけるようになったDotec-AudioDeeMax(笑)。そのDeeMaxの姉妹プラグインであるDeeシリーズ第5弾のプラグインが、先日、無料でリリースされました。

 

DeeSpeakerというこのVST/AU対応のプラグインは、ヘッドホンでスピーカーサウンドを再現するというちょっと変り種のプラグイン。1メートル先に45度の角度で設置されたスピーカーをバーチャルで実現してくれるため、モニタースピーカーを持っていない人でも、ミックス段階、マスタリング段階において、それなりの音作りができるという便利なツールなのです。実際、どんなものなのか、どのようにして使うのか試してみました。


Dotec-AudioのDeeシリーズの第5弾、DeeSpeakerが無料でリリース

DeeMaxのインパクトが強すぎたので、ほかのDeeシリーズの存在を忘れてしまった方も少なくないと思いますが、今回登場したDeeSpeakerはシリーズ5番目となるもの。スタートは2015年8月にリリースされたコンプレッサでDeeComp、第2弾が9月に登場されたフリーウェアのパンであるDeePanpot。さらに第3弾が11月リリースのDeeMaxで、第4弾が12月リリースのゲイン調整のフリーウェアであるDeeGain、と1、2ヶ月置きに新ソフトを出し、ついに第5弾というわけなのです。


Dotec-AudioのDeeシリーズはこれで5ラインナップとなった 

 

これらDeeシリーズに共通するのは、フランク重虎さんというミュージシャン自らがプラグインのアイディアを出し、そのエンジン部分を開発しているという点。また、そのエンジンをVSTやAUなどのプラグインとして実装するのが、ふむふむソフトの飯島進仁さん、そして強烈で独特なデザインを作り出しているのが出雲重機さんという、3人のメンバーがタッグを組んで開発しているという点も共通となっています。


開発は従来のDeeシリーズと同様、フランク重虎さんを中心に、飯島進仁さん、出雲重機さんの3人

 

では、今回のDeeSpeakerとはどんなものなのでしょうか?使ってみるとすぐに分かりますが、DeeMaxなどと同様、ユーザーインターフェイスというか使い方は、あまりにも単純なんです。

 

まずDAWのマスタートラックの最終段にDeeSpeakerを組み込みます。するとDeeSpeakerが起動してくるので、この状態のままヘッドホンでプロジェクトを再生してみてください。まあ、このままだとDeeSpeakerはオフの状態であるため、とくに音に変化はないはずです。


スイッチオフの状態ではモノクロの画面 

 

ここで中央部のMONITORと書かれた辺りをクリックしてみてください。するとグッとくる雰囲気でオレンジ色に点灯するとともに、ヘッドホンからの音も変わります。おそらく多くの場合、音の派手さがなくなる感じではないでしょうか?それまでのクッキリしたステレオ感がなくなり、音が若干滲んだ感じになるかもしれません。


中央部をクリックするとオンになり、ヘッドホンから出てくる音の雰囲気も変わる

これこそがスピーカーで聴いた音なわけですよね。これはエフェクトではないし、音の好き嫌いの話ではないんです。DTMユーザーの場合、すべてヘッドホンで音作りをしているケースが多いと思いますが、人に聴かせることを考えたら、絶対にモニタースピーカーでも音を出してチェックをする必要があります。ただ、モニタースピーカーを持ってない人、なかなか家で大きな音を出せないためモニタースピーカーを使えない人などは、それをバーチャルに再現するDeeSpeakerで確認できる、というわけなのです。

 

もし、この音だと物足りないと感じたなら、それに合わせた音作りをしていけばいいわけだし、左右の分離をよりハッキリさせたいなら、前段で工夫していけばいいのです。そんなチェックが簡単にできてしまうのですから、便利なプラグインですよね。

 

でも、なぜこんなものをフリーで出してくれているのか、その背景について、フランク重虎さんに、伺ってみました。

 

別にDeeSpeakerが独自性があって、特殊なものというわけではありません。同種の優秀なプラグインはいろいろとあり、私自身も利用していたのですが、ちゃんと道具として使うにはスピーカー設置の知識や経験がかなり求められるというのが実情です。そのため、よく分からなくて困ってる方もいる人も多いのでは……と思ったのがDeeSpeakerを開発することにしたキッカケです」(フランク重虎さん)

 

では、実際どんなユーザーがどんな目的で使うことを想定しているのでしょうか?

 

騒音の問題などから常にヘッドホンで作ってる方も多いと思います。また最近はヘッドホンだけで曲作りをしている人も増えているようですが、作った後でスピーカーで聴いたら思い描いた音と全然違った……なんて経験のある方と思います。そんなことにならないように、一つの参考としてDeeSpeakerを使っていただけるといいですね


お話しを伺ったミュージシャン、DJであり、Deeシリーズの開発者でもあるフランク重虎さん 

 

ヘッドホンでスピーカーをエミュレーションするプラグインなので、最後のところで使うのだとは思いますが、使い方についても伺ってみました。
これはマスターアウトプットの最終段に使ってください。原音の音量に反響音が加わるため、もしオーディオインターフェースに送るピークがクリップしてしまう場合はマスターのフェーダーを下げて使ってください。そして作業が終わって書き出すときはDeeSpeakerをバイパスにしてフェーダーを戻してください。この辺は他のモニターシミュレータと同様ですね

 

最後に、なぜDeeSpeakerのような便利なプラグインを無料でリリースすることにしたのかも伺ってみました。

 

DeeCompやDeeMaxと違い、有料にするほどの独自エンジンではありません。ごく当たり前に知られている音響の技術を精度よく組み合わせただけのものだからです。スピーカーセッティングに関しましても、道具として使う上で王道なセッティングを採用しているに過ぎません。そんなプラグインですから、多くの方に使っていただきたいという思いから無料にしているんです。強い特徴があるとしたら出雲重機氏のデザインですね(笑)。ぜひ、このUIの雰囲気も楽しみながら使ってみてください

 

とのこと。まあ、このDeeSpeakerがあれば、モニタースピーカーが不要というわけにもいかないと思います。やっぱり、スピーカーならではの空気感というものもありますしね。とはいえ、ヘッドホンだけで作っていると陥る失敗を避ける便利なツールであることは間違いないと思います。

このフランク重虎さんの好意に甘え、ぜひ、みんなでタダで使わせていただきましょう!

 

 

【関連リンク】

 

Commentsこの記事についたコメント

5件のコメント
  • 人生の消化試合

    素晴らしい!有料のプラグインで1万円以上するものが普通なのに。

    2016年2月10日 3:58 PM
  • 匿名

    少しの音量でも音割れも確認しやすくてすごすぎる・・・

    2016年2月16日 2:11 AM
  • bee

    protools10でVST変換するアダプタ使ってインサートしてみたのですが、音が出ませんでした。
    protoolsでは使えないのでしょうか?

    2016年4月7日 9:36 PM
  • 藤本健

    beeさん
    ProToolsのAAXプラグインは彼らも計画はしているようですが、時間がかかってるみたいですね。VST変換アダプター/ラッパーはいろいろありますが何を使っていますか??相性問題があるのかもしれませんね。

    2016年4月7日 11:47 PM
  • bee

    藤本様
    ご回答ありがとうございます。
    使用したのはFXPANSION VST-RTAS ADAPTER 2です。
    AAXではなく、RTASなんですよね。PatchWorkで試してみようかと考えておりますが
    どうでしょうか。。。

    2016年4月8日 11:58 PM

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です